「うーんラッキーだったねこれは。まさか福引で大当たりするなんて」
今日行ったショッピングセンターで『総額七千円以上の商品を購入した方に豪華賞品が当たるチャンス!』って感じの福引が開催されてた。
しかも景品の内訳を見る感じかなり豪華。なんでこんなに豪華だったんだろうね。
1等が沖縄旅行、2等が最新ゲーム機+ゲームカセット3種。3等が僕も当たった高級果物セットで、4等は巨大なサメのぬいぐるみ。5等がお菓子つかみ取り券で、6等が箱ティッシュだった。
このセットの中身は白桃3個、オレンジ2個、マスカット2房、巨峰2房、キウイ5個、あと白い苺2パック(計30個)。
数が多いからもちろんそれ相応に箱も大きい。
・・・うん。たった八千円の買い物でこんなに良いものをもらえたなんて。なんか申し訳なくなってくるんだけど。いや本当に。
というか白い苺なんて実物初めてみたよ。すごく美味しいってことはよく聞くけど、食べたことないから僕全然わかんない。
・・・どうせならこれで美味しいスイーツとか作りたいよね。
「夕雅、この果物はなんだい?」
「あ、二刃さん。それ福引で当てました。明日ケーキを作る予定だから勝手に食べちゃダメです」
「そうかい。・・・今日の夕飯のデザートに良さそうと思ったんだがね」
「これは僕が当てたものなので僕が決めまーす。・・・手伝ってくれるならつまみ食いを許可しますけど」
「・・・うん、明日は暇だし手伝うとしようか。こんな良い果物なんてなかなか食べる機会はないからね」
よし協力者確保。1人でもできるけど人手がある方が楽だからねー。
翌日。
僕と二刃さんだけが今日は休み。他の皆は全員学校だったり任務だったりと用事がある。
「さて、今回はこのマスカット、苺、キウイ、オレンジでケーキを作ります。ここにない白桃、巨峰は今は使いません」
「そうなのかい。てっきり全部贅沢に使ってしまうのかと思ってたよ」
「それもいいですが、また他に使いたいので。ゼリーとか好きな人多いですよね。四怨とか」
「ああ、確かにね」
というか僕ゼリー嫌いな人知らない。
「では、早速始めます。朝からスポンジはもう焼いておいたので、あとはクリームを作って塗ることと果物をカットして盛り付けるだけです」
「やけに準備が早いじゃないか」
「そりゃおよそ2年ぶりのお菓子作りですから。はしゃいじゃいました」
「意外と子供っぽいところもあるんだね。嫌いじゃないよ、そういうのは」
「ついでに言っておきますと、この家の人はたくさん食べるのでホールケーキを3つ作ります。あと8号サイズにしましたので直径はおよそ25センチあります」
ちなみに普通はこのサイズ1つで16人分くらい。つまりその3倍。
「それなら全員がちゃんと食べられそうだね。いいじゃないか」
「では、この生クリームを混ぜてください。混ぜやすいように200mlずつに分けておきました」
「・・・多くないかい?」
「このケーキに塗って、その後デコレーションするんですからこれぐらいは必要になります。全部合わせておよそ1.6リットルですかね」
そして混ぜ始めた。かなり量が多いから辛くはないけど時間がかかる。
「あ、そうそう。混ぜ終わったと感じたらそこの小鉢の砂糖を一杯分入れてくださいね」
「ん、これかい?」
「そうですそうです。8グラム分入れてあります」
「それじゃ、ほいっと」
「入れたらしっかり混ぜてくださいね」
「わかってるさそれくらいは。なんだい、心配性だねぇ」
「嫌五なら適当にしそうだなと思いましたので一応言いました」
「ああ・・・確かにね」
全部混ぜ終わった。やっぱりクリーム作りは時間がかかるね。
「で、これをスポンジに塗っていくのかい?」
「そうですそうです。後ろの机にスポンジがありますので取ってきてくれません? 僕は果物を出しておきますので」
「良いけども3つ全部かい?」
「そうです。お願いしますね」
・・・僕のとクリームの固さが同じかちょっと確認しようかな。変に違ってたらムラができちゃうし。
そう思って二刃さんが混ぜたクリームを軽く混ぜてみた。
「えっ!? ちょ、ええええええぇ!?」
なんでか天井まで吹き飛ばされた。
「はい、二刃さん。何か言うことは?」
「普通の料理をするときは合気を込めない」
「はい、よろしい。しっかり混ぜてとは言いましたが、合気を込めてとは言ってません。二度としないでください。普段から合気を使っていてついうっかり、というのはまあしょうがないとします。でももう一回同じことをしたら二刃さんの分を半分凶一郎さんに渡すことになりますので」
「それは嫌だね。・・・わかったよ」
「反省したのなら良いんです。・・・では、続きをしますか」
「よし、塗るとしようかね」
「あ、全体に塗るのは待ってください。もう1つ2つやることがあるのでその後です」
「ん、何するんだい?」
「スポンジを横に3等分して、間にクリームと果物を挟みます」
「ああ、そういえばそうだったね。・・・なら、果物のカットかい?」
「そういうことです。最初はキウイをカットします。あ、1個は残します」
そう言って冷蔵庫に入れておいた。
「まず2個の皮をむいて、縦に4等分にカットしたあと等間隔で6等分します。残りの2個は縦に半分にカットして6等分です」
「ほうほう。・・・えっと、こういうことかい?」
「それで大丈夫です。じゃ、やりましょうか。終わったら苺とスポンジもカットしますよ」
「あいよ」
カットした後、1層目にキウイ、2層目に苺を挟んだ。
「こっちのスポンジには挟まないのかい?」
「その1個はマスカットを挟みます。この2個のクリームを塗る工程が終わってからそっちに取り掛かるので勝手にいじっちゃ駄目です」
「ほう」
「では、クリームを塗ります。こっちのケーキお願いします」
「コツとかあるのかい?」
「特にこれと言ったものはないですが、強いて言えばそれほど力を込めすぎないことくらいですかね。・・・ああ、ボウル1つ分のクリームじゃ足りないので2つ分使って良いです。余ったらデコレーションに回します」
「了解。それじゃ、やっていこうかね」
「では、塗り終わったのでこっちのケーキに挟む分のマスカットをカットします。・・・15粒あったら十分ですかね」
「これは半分にカットするだけでいいのかい?」
「付いていた部分から半分です」
「あ、こっちだったかい」
同じように挟んだ後、クリームも塗った。
「あとはデコレーションするだけです」
「ようやくか。かなり時間がかかったね」
「じゃあ、その片方は任せますね」
「・・・あたしが1人で?」
「2人で1個に取り掛かってたら皆来ちゃいますよ。冷やす時間もほしいのでお願いします」
まあたぶん1人でやっても普通に冷やす時間は取れるだろうけど。したいことあるからちょっと任せる。
「・・・なら、しょうがないか。失敗しても文句言わないでおくれよ?」
「言いませんよ。誰でも最初は失敗するものです」
僕も最初は失敗ばっかりでしたから。クッキー焦がしたりしてましたし。
そして完成。
フルーツケーキが2つとマスカットケーキが1つできた。
「あたしとしてはいい出来だったと思ってたけど、見てみると夕雅はさすがの腕前だね。あたしのとは完成度がぜんぜん違う」
「そりゃあ年季が違いますからね。二刃さんが合気が強いのと同じです。でも二刃さんのもなかなか悪くはないと思いますよ。綺麗な出来です」
「そんなに謙遜しなくたって良いんだよ。家族なんだしはっきり言ったっていいさ」
「いや、普通に本心ですけど」
「・・・ん?」
「え?」
「「・・・・・・・・・・・・・」」
僕何か変なことでも言った?
「・・・まあ良いです。それより、余ってる・・・というか余らせたので食べていいですよ」
「そ、そうかい。なら、いただこうかね」
そう言って苺を口に入れた二刃さんの表情がすっかり変わる。見たことない顔だったけど、喜んでいるのが伝わってくる。
しっかりしてるところが多く見えてましたけど可愛らしい一面もあるんですね」
・・・急に二刃さんの顔が赤くなった。
「ちょっ、どうしました!? 顔真っ赤ですよ!?」
「い、いや、その・・・かわ・・・」
「川?」
「・・・さっき、あたしのことを『可愛い』って・・・」
・・・・・・・え? 声に出てた?
「声出てました!? すみません聞かなかったことに!」
「できるわけないに決まってるさね!」
・・・・・どうしよ。
まあなんやかんやあってその場は収まった。ケーキは冷やしておく。
「で、では夕飯を食べ終わったら出しましょうか」
「そ、そうだね」
二刃さんはまだ顔が赤い。多分僕も。
「あの余ったクリームどうします? ケーキに使う分は終わったのですが」
「あ、ああ多分置いといたら勝手に誰か食べると思うよ。ケーキと一緒に皿に入れて出しておこうか」
「そうしますか」
さて、夕食を食べ終わった。ちなみに今日はデザートを出すってことは六美ちゃんにだけ言ってある。
「二刃さん、そろそろ出すので手伝ってください」
「はいよ。全部だね?」
「そうですそうです。マスカットの方とクリームお願いしますね」
「ん? 2人で何か作ったのか?」
「昨日夕雅がショッピングセンターで福引きをして、果物の詰め合わせを当てたんだ。それでケーキを作るってことになってね。あたしは手伝いさ」
「へー。でもせっかく夕雅が当てたんだし1人で食っても良かったのに」
「それじゃつまらないでしょ。皆で食べた方が美味しいよ」
「「「へぇ〜」」」ニヨニヨ
「何その顔。前も見たけどさ。・・・まあいいや。出しますか」
「僕が持ってきた2つはマスカット、オレンジ、いちご、キウイで作ったフルーツケーキで、二刃さんが持ってきた方がマスカットだけで作ったケーキです。クリームは余ったので欲しい人はご自由に」
「兄貴、なんで敬語?」
「雰囲気ー」
そう言いながら机に置く。
「僕から見て左が二刃さんが作ったケーキで、右が僕が作ったケーキです。マスカットケーキは僕が作りました」
「お前が作ったケーキ? これが? プロレベルだろどう見ても」
「太陽お兄ちゃんに夕雅お兄ちゃんは料理が得意って聞いてたけど、これは想像以上・・・」
僕の作ったケーキを見ていた六美ちゃんが聞いてきた。
「ね、ねえ夕雅お兄ちゃん?この白っぽいのってまさか・・・」
「予想しているであろう白苺ですね」
「「「「「・・・はい?」」」」」
「高級フルーツをスイーツに使うの昔から夢だったんですよ。良い機会だったので」
「いやいや待て待て待て!な、なんて物をケーキにしてんだよ!」
「ダメでした?」
「いや、だ、ダメってわけじゃねえけど・・・なんか『美味しそう』って感情より『もったいねえ』って感情が勝ってる」
「あたしもそれだ。嫌五と同じ感情」
そうかな? って思ったら凶一郎さんが話してきた。
「まあ、作ってしまったのならしょうがないだろう。早く食べないと俺が全部食ってしまうぞ」
凶一郎さんはすでにマスカットケーキを食べ始めていた。
「それにしても、なかなか美味いじゃないか。この紅茶とよく合う」
「それは良かったです。甘さは大丈夫でしたか?」
「・・・そうだな、強いて言えばもう少し控えめだと俺の好きな紅茶とよく合うようになるだろう。これはこれで美味いが」
「なるほど。次回はそうしてみましょうか」
「凶一郎はもう食べているんだし、あんたたちも早く食べな。」
そう言っている二刃さんは自分が作った方のフルーツケーキを皿に取って食べている。時々顔が笑ってる。
「・・・なんだか、色々言いたいことはあったけどどうでも良くなっちゃった。食べよ?太陽」
「・・・そうだな。食べるか。取り分けてくるよ」
「あたしも食べるか。嫌五も食えよ」
「・・・はは、そうだな四怨」
僕も座って食べ始める。・・・うん、成功だね。ちゃんと美味しいや。
「あ、そうそう。冷蔵庫に桃とぶどうが入ってますが、別の料理で使いますので食べないでくださいね」
「了解した」
「おっけー」
「はーい」
「店で買うとしたら何円かかるんだアレ。めっちゃ美味かったけど」
「こんな贅沢なケーキ初めてだな。そもそも高級な果物自体そんなに食べる機会があるわけじゃないし」
「白い苺なんて初めてだったし、夕雅お兄ちゃん凄いね。あんな綺麗なケーキ作れるなんて」
「昔からカステラとかクッキーとか作ってくれてたけど、本気で料理したらあんなケーキも作れるんだな・・・」
「俺、今度夕雅専用の武器作ろうかな・・・どんなのが良いか聞かないと」
「・・・夕雅お兄ちゃんに女子力負けてる気がする。もっと頑張らないと」
作らなかったのは主に材料費の問題だね。フルーツ高いから。後六美ちゃん、十分女子力あると思うけど。
というか女子力勝負に持ち込まないで。僕男だから。
あとケーキのお礼なのかどうかはわかんないけど、夜にゴリアテがもふもふさせてくれた。なかなか気持ちいい。
裏設定4
ケーキ作りの技術はほとんどバイト先で盗んだ。小さい頃は他に作っていたお菓子よりヘタだった。