拝啓、天国のお母さん。
太陽の作画崩壊した顔をもとに戻す方法を教えてください。
「嫌五、勝手に変なナレーションつけるのやめて」
「え〜? でも夕雅も似たようなこと考えてるだろ?」
「・・・まあ否定はしないね。というか次は嫌五の番でしょ。早く回しなよ」
「へーい」
5人で人生ゲーム『スパイの日常』(辛三&四怨作)をしてる。僕、太陽、六美ちゃん、嫌五、辛三の5人。
最近いろんなことがあったからか太陽の顔が変なことになっちゃってる。
六美ちゃんがさらわれたり、スパイと戦ったり、七悪くんの治療薬を打たれたり。
その反動なのかどうかよくわからないけど、顔があの世に行っちゃってる。
「おーい、太陽ー? 起ーきーてー。・・・ダメだねー、応答がない」
「叩いたら治るかな?」
「絶対にダメ。辛三兄ちゃんの力で太陽叩いたら嫌五みたいな顔になっちゃう」
「それもそっか・・・」
「泣くよ?」
翌日。
「夕雅〜。賭けしねーか?」
「カケ? なにそれ」
「賭けだ。ギャンブルとかそっち系の賭け」
「・・・嫌五、お小遣いを使い切っちゃったからって僕にたかるのはどうかと思うよ・・・」
「ち・が・う・わ!小遣いがなくなったわけじゃねーよ!ただの遊びみたいなもんだ」
「・・・遊びだったらまあいいけど・・・。なにするの?」
「太陽が俺達を売るかどうかの賭け」
ピッポッパ
「もしもし二刃さん? なんか太陽だけじゃなく嫌五もおかしくなってるんですけど」
「だー!ちょっと話ぐらい聞けー!」
「えーと、その仏山さんが太陽を尋問するから太陽がどんな結果になるか、の賭けってこと?」
「そ。ちなみに今は俺、凶一郎兄ちゃん、四怨、あと辛三兄ちゃんが参加してるぞ」
「へー。で、内分けは?」
「俺が太陽が口を割って夕雅のことがバレるに五千、四怨がボコボコにされるに五千、辛三兄ちゃんが無事に口を割らず生還するに一万、凶一郎兄ちゃんが太陽が死ぬに一万」
「凶一郎さんのそれは願望では?・・・ま、参加しようかな」
「お、何にする?」
「一切口を割らず、挑発にも乗らず、逆にこれがそういう試験だって気づくに五万かなー」
「・・・強気だな。いいのか? この前のバイト代大半飛ぶぞ?」
「そのときは僕が太陽のことをよく理解していなかったことへの罰になるだけだよー。大丈夫、僕正解するから」
「フラグ回収待ってるぜー。ま、失敗したら焼き肉でも奢ってくれよ」
結果。
辛三と僕の勝ち。五千円もらった。いえーい。
「ちきしょー、負けたー!というかそこはフラグ回収するところだろ!?」
「ま、さすがは血の繋がった兄ってことだな。太陽のことよくわかってるじゃねーか」
「そりゃ16年以上一緒にいるからね。たった数ヶ月の嫌五たちには負けないよ」
「ちぇっ、ま、これは完敗か。・・・ところで、この太陽の位置がもし俺だったら何に賭ける?」
「「「口を割るに一万」」」
「全員で声を揃えるんじゃねーよ!」
冗談だってー。この家族が兄弟愛強いのはわかってるよ。絶対そんなことしないって。
またまた数日後。
今日は夕飯の手伝いをしてた。六美ちゃんがメインで進めてるけど、サポートとして僕が入る形でやってる。
「サラダの具材はこれでオッケー?」
「えっと、トマト、きゅうり、大豆、ブロッコリー、コーン・・・うん、大丈夫!じゃあ、それにドレッシングを加えて混ぜておいてくれる?」
「了解」
「あ、それと上の棚から毒出してくれない?」
「ん。どの毒?」
「うーん、我ながらなかなか。カレーに合う毒は・・・シアン系かな。お願い」
「えーっと、シアンー・・・あった。はい」
その時、太陽が入ってきた。・・・ブラをつけようとしながら。
「悪い、六美・・・」
「なーに、太陽?」
あ、ちょっとまずいかな。
「ブ・・・ブラってどうやって留めるんだっけ・・・」
その言葉の破壊力により六美ちゃんは毒のビンを勢いよく傾けてしまった。
・・・なんとかカップを間に挟めたからセーフ。
もしそのまま毒がたっぷり入っちゃってたら凶一郎さんたちはともかく、僕と太陽はお腹が壊れちゃってただろうね。
「大丈夫、太陽のどんな趣味でも私受け入れる」
「いやいや変装の練習してただけだって!」
六美ちゃんは目を逸らしちゃってる。
そりゃそうでしょ太陽。僕も一瞬( ゚д゚)ポカーンとなっちゃったよ。
六美ちゃんが留め方を教えていると、ジリリリリと電話が鳴り出した。
「緊急みたい。ちょっと夕雅お兄ちゃん出てくれる?」
「オッケー。・・・3番か。辛三に何かあったのかな」
受話器を取って耳に当てると、ものすごい大声が聞こえた。耳壊れる。
「六美いい助けてくれえええええええええ!」
・・・あ。
「はっ」
目が覚めると、大画面の辛三がなにかブツブツ話しているところだった。
「どういう状況」
「あ、兄貴起きた」
「ホントだ。・・・夕雅お兄ちゃんも一緒に行ってくれない?」
「どこに?」
「えーっと、辛三兄さんが偽札製造会社に潜入してるんだけど、武器がなくなったから動けないってことらしい。一応目的の偽造紙原版は回収できたっぽいけど」
「ああ、辛三って武器がないとめちゃくちゃヘタレになっちゃうからね・・・。で、その武器を届けに行くのに僕も行くってこと?」
「ついでにお弁当とおやつもだけどね」
「りょーかい。ところで、その工場ってどこ?」
「俺達が通ってる高校の裏通りのところ。場所は案内するから」
「オッケー。なら、行こっか」
「・・・6階の物置に隠れてるらしい」
「ふーん。ここかな?」ピッピッピッピ
ドアを開けると、そこには見覚えのある緑髪が。
「あ、いた」
「太陽っ・・・夕雅っ・・・!」
「辛三兄さん、無事で良かった。これ六美に頼まれた銃・・・」
「ごわがったあああああああああああああああああ!!」
「!?」
安心した辛三が太陽に勢いよく抱きついた。
「ああこの鉄と真鍮と硝煙の匂い・・・!砲身のツヤとグリップのざらつき・・・!」
「ああ、できたにはできたけど・・・」
あ、今気づいたけど僕六美ちゃんと通信繋ぐのしてなかった。帰ったら繋いでおかないと。この前メンテナンスで1回外してつけ忘れちゃってた。
「ホントにこれで大丈夫かなァ・・・?」
「フロントサイトの凸凹感が・・・」
・・・誰かの足音。2・・・いや、3人か。このあとにも5人くらい来てるね。
「!? いたぞ!」
その言葉に辛三と僕は同時に反応。
辛三は銃で敵を無力化。僕は閃光弾を投げて目眩ましにする。辛三は大丈夫だろうから何もしてなかったけど、太陽はちょっと不安だったから僕が壁になった。おかげで3人共目に異常はなし。
「これを持ってれば迂闊には撃たれない」
辛三が太陽に原版を渡してた。
「太陽は後ろについてきてくれ。夕雅は背後から来る敵を頼む」
「了解」
ドアのところから飛び出すと、そこには4人が目を押さえてうずくまっていた。
辛三は敵の急所を攻撃して、僕は麻痺毒の針を刺して安全化する。
・・・また足音。手榴弾を懐から取り出して奥の曲がり角に投げ込む。
「侵入者発見・・・えっ?」
僕が投げた手榴弾を辛三が撃ち抜いた。そのまま爆発する。というかどうやってあの一瞬で照準を合わせてんの。
「わあああああ!?」
「こっちだ2人とも!」
ベルトコンベアがあるところに出た。こういうところは狙われやすい。
背後に目を向けると、黒い男がライフルを構えてこっちを狙っている。
今の僕では相手にナイフを当てるのはできない。かといって何もしなかったら誰か怪我する。
一瞬迷って、持っている武器を持てる分だけ投げつけることにした。できるだけ同時に、僕達をそのまま狙える射線がなくなるように。まあ、射線は運だけど。
「後ろにいる!」
そう言った瞬間、投げたナイフが甲高い音を立てて破裂した。よし、運は良かった。
その音に2人も後ろを向く。一瞬で状況を把握したのか、すぐに辛三が銃を構えて引き金を引いた。
弾は黒い男に向かって飛び、ライフルを破壊した。
また何度か引き金を引いて連射。全弾敵に向かって飛び、黒い男はその場に倒れた。
さすがの射撃技術。ハンドガンであんなに離れた敵に全弾命中させるなんて僕ではできそうもない。たぶんマシンガンでも微妙。
「ありがとう、夕雅。俺じゃ気づけなかった」
「運が良かっただけだよ。後ろにだけ集中してたから気づけたんだし、あの人の弾が逸れないとも限らなかったからねー」
「そう・・・?」
「そーそー。それより今日は六美ちゃんがカレーを作ってくれてるよ。早く帰って食べよー」
「そう・・・そっか。うん。よし、じゃあ早く脱出して家に帰ろう。2人とも、こっちだよ」
カレーは美味しかった。
「夕雅、どんな武器がほしい?」
「へ?」
何のこと? 何か約束してたっけ。
「この前のケーキのお礼に、夕雅の専用武器を作ろうかなって」
「あ、そういうこと。・・・ごめん、自分でもどんな武器が良いかわかってない」
「あー、そっか・・・。ちょっと俺の部屋来てくれない?」
なんだろ。
「前に色んな種類の武器作ってた時期があったんだけど、この中から合ってる武器を探せないかなって」
見せてきたのはいろんな武器が入った箱。刀や銃もあれば、チャクラムだったり鎖鎌だったりと数十種類の武器が入ってる。
「わ、大量。・・・まあ、色々試してみようかな」
刀・・・ちょっと危ない。というか一部ハゲた。
銃・・・いつも携帯してるから除外。
斧・・・持ち運びが大変。
短剣・・・いつも携帯してるから除外。
ヌンチャク・・・頭に当たった。たんこぶできてそう。
鞭・・・絡まって辛三に助けてもらった。
その他諸々・・・全然使えない。
扇・・・あり。
「・・・使った中だと扇か。一番使えてたのは」
「そうだね。僕もこれが一番しっくり来た。・・・昔ちょっと中学校で使ってたからかもしれないけど」
「・・・ん?」
「あ、言ってなかったっけ。僕中学校では一応演劇部だったんだ。高校では調理部だったけど。で、清の王朝の劇をすることになってたんだけど、舞踊担当だったんだよね僕」
なおそもそもダンスチームのサブリーダーだった。
「あ、そうだったのか。まあ、ちょっと原型を作ってみるから待ってて。明日渡すから」
「そう? ありがとね、辛三。・・・でも、また今度ケーキじゃないけどもお菓子作る予定なんだけど」
「あ・・・まあ、そのときはそのとき考えるから」
翌日。
「夕雅っている? どこにもいなくて・・・。武器が完成したから渡しに来たんだけど」
「夕雅お兄ちゃんは今日バイトだよ。夕方には帰ってくるって」
「あ、そっか。そういえばそうだったね」
「辛三お兄ちゃん、どんな武器を作ったの? この前作るって言ってたのは聞いてたけど、どんな武器を作るのか聞いてなかったからさ」
「うん、俺もよくわからなかった。だから夕雅に部屋に来てもらって色々試してもらった。その結果、一番しっくり来たのがこの『扇』だったよ」
「『扇』? 夕雅お兄ちゃん珍しい武器選んだんだね」
「まあ珍しいけど・・・。鋼蜘蛛の方が珍しいし」
「アレはそもそも使えるのは凶一郎お兄ちゃんだけでしょ」
「ただいまー」
「おかえり、夕雅お兄ちゃん。辛三兄ちゃんが完成したって言ってたよ」
「あ、もうできたんだ。さすがの早さだね」
コンコン
「辛三いるー?」
ガチャ
「あ、おかえり夕雅。できたよ。入って入って」
どんな感じだろー。
「これが完成した夕雅専用武器『
「わー、かっこいいね。ありがとう、辛三」
「昨日も言ったけどこれはケーキのお礼だから。それももう少し後で渡すつもりだった専用武器を予定より早く渡しただけだからね」
「あ、ということは太陽はまだなんだね」
「そうそう」
「へー、でも凄いね。こんなの作ってくれたんだ。想像以上だよ。持ちやすいし広げやすいし」
「でも、一つ問題があって・・・」
「ん、何か不具合でもあるの?」
「いや、今のところ不具合はないんだけど、うちの家族に扇を武器にして戦う人っていないからさ。夕雅に戦い方を教えられないっていう・・・」
「あ、それだけか。大丈夫だよ、自分でなんとかしてみるから」
「そう? でも・・・ま、いいか。壊れたり追加して欲しい機能があったらすぐに教えてね。作り直すから」
「うん。ありがとう」
さて、どうしようかな。辛三には自分でなんとかしてみせるって言ったけど、何すれば良いのか正直よくわかってなかったりする。
・・・・まあ、とりあえず舞ってみようか。
5年以上も前のことなのに、今でも同じように再現できる。あのときはたくさん練習したからね。違うのは、この扇子が辛三に作ってもらった武器だということ、そして僕の身体だ。
・・・・ああ、懐かしい。メンバーの皆はどんな道に進んだんだろう。僕は大っぴらには言えない仕事に就いちゃったけど、皆は今どうしているのか気になるなあ。
まあ、一部の顔は忘れちゃったけど。
10分ほど舞い続けた。でも特に思いついたことはなし。
・・・まあ、今は思いつかなくてもいつかは思いつくよね。たぶん。
裏設定5
学生の時はめっちゃモテた。そのことを夕雅は自覚していない。