「2週間後の結婚披露宴が決まったよ」
「おー、もうか」
「もう知れ渡ってるっちゃ知れ渡ってるがな」
「・・・結婚披露宴? 太陽と六美ちゃんのですよね。もうするんですか」
「色々裏の奴らの都合もあるもんでな。早めに決めておく方が楽なんだよ」
「安心しな、普通のとそんなに変わらない。挨拶だったり料理を食べながら来客と会話するぐらいさ」
「あ思ったより普通だった」
「あと夕雅はスーツが必要だな。今何も持ってねーだろ」
「昔も自分のは持ってなかったけど」
「・・・なんかすまん」
「大丈夫だよー。とりあえず明日服屋行ってくるね」
「待て、ウチの行きつけの服屋を紹介してやる。そこだと仕事が早いもんでな」
「あ、そうですか? ならお言葉に甘えさせていただきますね」
6日後。
「えーっと、今日は明日の会場設営をすれば良いんだっけ?」
「そ。昨日言ったと思うが、服はもうあるから後は会場と料理だけだ。料理はシェフが来るから問題ないぞ」
「オッケー。で、場所はどこ?」
「ついてきたらわかるからまずは来い」
はーい。
そしてなんやかんやあって設営完了。というか庭めっちゃ広いね。
そして当日の朝。
「六美、おはよ・・・」
「おはよう、太陽」
ウェディングドレス姿の六美ちゃんが太陽を出迎えていた。そしてそのまま嫌五が太陽を着替えさせる。一瞬で白いタキシードに。
「ホラ、さっさと行くよ。夜桜式結婚披露宴の時間だ」
わー、たくさん来てる。
「この業界は集まれる日なんてそう多くないからな。昨日だったり明日だったりしたらたぶんこの半分行ってたかどうかすら不明だな」
へー、この人たち全員スパイなんだ。和服姿のおばあさんや、メガネを掛けた子どもだった、り・・・待って待って待って。全裸の男がいる。
「えーっと四怨、ごめん質問していい? あそこにいる露出狂も任務受けてたりするスパイなの? ほら、あの股間だけ葉っぱで隠してる変態」
「あー、名前は知らんが、確かそういうスパイがいるってことは知ってる。たぶんアイツのことだろうな」
「全裸のスパイなんて嫌五以外にいないと思ってたんだけど」
というか一応ここって披露宴で、ちゃんと形式張った服を着て参加するものだと思ってたんだけど。全裸オーケーなのね。
「流石に嫌五もこういうところでは服を着る。アレがおかしいだけなはずだ」
「うーん・・・。まあ、いいか・・・気にしないようにしよう」
ちょっと新郎新婦のところに行こうかな。
「太陽、大丈夫? スーツとかきつかったりしない?」
「あ、兄貴来たのか。別にきつかったりはしないけど」
「ならよかった。こういう場所って初だろうから何か緊張してないかなって思ってさ」
「いや、特に緊張とかは何も・・・」
「あの、すいません新郎の太陽さん!現役最高齢スパイの風魔氏がぜひご挨拶をと!」
「フガフガ」
「は、はあ・・・」
「あ、すいません邪魔ですね。ちょっとどきます」
風魔氏が太陽に花束を渡そうとした。けど、花束から刃物が飛び出して太陽の顔を突き刺そうとした。なんとか太陽は避けたけど。
「フォフォフォ、わしの杖を避けるとはなかなかだのう」
こういう場でも油断はできない、ってことかな。って、誰か来た。
「裏社会でも披露宴は祝いの場だが、祝うに足るかを測る場でもある。
凶一郎さんがどこからかやって来て説明してくれた。でも凶一郎さん。なんですかその全身をすっぽり覆っている魚の服は。
「魚!?」
太陽も僕と同じリアクション。
「祝いの席で長子が着る『めで鯛スーツ』、伝統だ」
「伝統なら何でも受け入れるんだ!?」
うん。なんとも言えないけど、気が抜ける格好だね。緊張感ゼロの見た目だよ。
「この披露宴はお前や六美が仕事相手としてふさわしいか本気で試される場。万が一殺されても文句は言えない。でも俺はお前に死んでほしくはないし、葬儀を連想するため披露宴ではつけない黒ネクタイをしてるのもお前への嫌がらせなんかじゃなーいぞ♡」
白々しい。切っちゃ駄目かなあのネクタイ。ああでも鋼蜘蛛で編まれてたら切れないや。
「六美は俺が死守する。つまりこの場において、一番のカモはお前だ朝野太陽」
「何それえええええええええええ!」
凶一郎さんが出した鋼蜘蛛で太陽がぐるぐる巻きにされた。切っちゃ駄目かなあの糸。ああでも切れない。
「さあ皆さん彼は賞金首なので引き出物にぴったりですよ〜♡」
「長男この野郎!!」
うーん、やっぱり性格悪い。
『こら、凶一郎。いい加減にしなさい』
止めようと動こうとしたら、急にスクリーンに女性の顔が映し出された。
・・・誰?
「母さん!?」
「え、あの人って六美ちゃんたちのお母さんなの?」
『何撮ってるの母さん。俺何もしてないよ?』
『六美の結婚披露宴用のビデオレターよ。あなた絶対なにかやらかしてるだろうから先に叱っといたの』
わー、子どもの凶一郎さん。小さい六美ちゃんを抱いてる。今とは全然違って凄い純朴そうな見た目。それがなぜこんな変態に。
「これは2歳の六美・・・、ということは俺が7歳か」
なぜこの一瞬でこの映像の六美ちゃんが2歳とわかるんだろう。変態のなせる技かな。
「こんなビデオが残ってたなんて・・・!」
『何言ってるの母さん。だ~い好きな六美のお祝いの席で僕がやらかすわけないじゃん!』
『にーに、や』
違った。この頃から結構変態だった。変わってない。
『だ~い好きだからお母さん心配なの』
「こんな映像、初めて知ったぞ・・・」
「あれ、凶一郎さんもこの映像のこと知らなかったんですか?」
「ああ、一切知らん。二刃!俺はこんな映像把握してないぞ!」
「当たり前さね。昔母さんが撮ってあたしにたくしたのさ。あんたをたしなめるためにね」
『よしよし、もう大丈夫だよ六美』
『ねーね♡』
昔の二刃さん、今とほとんど変化がないように見えるんだけど気のせいかな。
「二刃姉ちゃん全然変わらないね」
「妖怪だしな」
ああやっぱり兄弟でも変わってないように見えるんだ。あと後ろで二刃さんが殴るポーズしてるから嫌五は気をつけてね。
『放せえええええ俺の六美を返せええええ!』
「兄貴も全然変わらないな・・・」
「変態だ」
そして近くの人がなにか話してる。あと嫌五殴られてる。
「姉ちゃんごめべべべべべ」
「9代目の当主・・・残念だったな。仕事相手として信用できる相手だった」
「もう亡くなって5年、いや4年くらいか・・・」
・・・やっぱり亡くなってたんだ。親のことを話そうとしないし一切会わないからなにか事情があるんだろうと思ってはいたけど。
映像に意識を向けると、映像内では大乱闘が起きていた。
『結婚おめでとう、六美。きっとそっちはこれよりず〜っとひどい有り様なんでしょうね。凶一郎なんか下手したらあなたの旦那さんを手に掛けようとしてたりして』
さすがお母さん。大正解。
『この間お父さんが任務中粉々に吹っ飛んじゃって。こりゃあたしも長くないな、と思って急きょこのビデオを撮ることにしました』
待って粉々になって生き延びてるの? お父さん人間です?
すると、またさっきの人たちがヒソヒソ話しだした。
「9代目の旦那って・・・」
「ああ。確かろくでなしだって言われてた奴だな」
・・・ろくでなし?
と思ったけど、映像が進んでいくから一旦後回し。
『こんなめちゃくちゃな家にあんたたちを産んじゃってごめんね、でもお母さんはあんたたちと過ごせて幸せだったよ』
映像内では小さい凶一郎さんたちがお母さんに捕まってる。でもまだケンカし続けてる。流石に止まろう?
『そう思える家庭をあなたも作ってね。それが私の願いよ。・・・それから、六美の旦那さん。六美を選んでくれてありがとう。この子の運命を受け止めるのはとても大変なことだけど、どうか娘をよろしくお願いします』
「はい・・・!」
良いシーンだなぁと思ってたら、凶一郎さんが今にも太陽に襲いかかりそうだった。
掴んで止めようとする。
「旦那気取りめ・・・」
「旦那ですからっ・・・止まってください凶一郎さんっ」
全員で止めてるのに動きが止まらない。どんだけ力強いの。
「六美お姉ちゃん、そろそろタイムリミットかも・・・」
「フフ、わかったわ。・・・というわけで、今日は皆様お越し下さりありがとうございました。私も夜桜10代目の当主として、先代である母が残してくれたスパイ一家「夜桜」を守り抜けるよう精一杯努めますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。それでは皆さんご起立ください。私達の新たな門出を、万雷の銃弾シャワーでお見送りください」
「「なんて?」」
僕と太陽の発言がハモった。二刃さんや七悪くんが動じてないってことはこれも伝統・・・なんだろうけど。
「さて、あの子達がバージンロードを抜けるよ。全員で護衛だ。夕雅も呆けてないで早くしな」
「え? あ、はい」
2人に銃を向けている人たちを倒すように立つ。
・・・まって、今気づいた。僕って防御用の技術ない。枝垂の防御範囲は結構狭いから・・・。
しょうがないから撃つ前の人を倒すように攻撃していく。撃たれちゃった弾はゴメンだけど太陽には避けてもらうってことで。
相手を吹き飛ばすだけだったら花吹雪でなんとかなるんだけど、味方を守るとなると問題しかないね。今度また新しく考えよう。
そう考えながらも、銃弾は大量に放たれ僕達はそれを防ぎ続けていた。
なんとか致命傷は避けたよ。
結婚披露宴が終わった5日後。
守る用の技を考えてる途中だった僕に太陽が話しかけてきた。
「兄貴、ちょっと一緒に来てくれ」
「あれ、太陽。何か用でもできた?」
「七悪が研究所に潜入して、毒薬を回収したは良いんだけど色々あってそこで眠ってる。外部に知られる前に回収するから手伝ってほしい」
「ん、色々あってが気になるけどオッケー。で、場所はどこ?」
「万代田区南西駅から5分ほどのところらしい。兄貴知ってるか?」
南西駅から5分・・・あ、あの工場のことか。
「うん。場所はわかった。道は教えるからついて来て」
「よし、ここだね」
「早く行くぞ、兄貴。いつどんなやつが殺しに来るかわからないんだ」
それもそうだね。じゃ、入ろっか。
難なく入れたけど、様子が変。もちろん職員たちは襲いかかってくるんだけど、一部の人は僕達が来る前から倒れていた。
・・・もう、誰か来ちゃったのかな。
そう思っていたら、曲がり角に隠れていた人が太陽に銃を構えていた。
太陽に知らせようとした時、どこからか分銅付きの鎖が飛んできた。・・・え?
「っ!?」
飛んできた方を見ると、2人の男性が立っていた。
「危なかったな、少年!」
「奇遇だな、君たちも任務か? 朝野太陽、そして朝野夕雅」
なんで僕達の名前を知ってるんだろう。太陽はともかく僕まで。
「何!? 朝野太陽!? どこだ!?」
いや目の前にいますけど。
「目の前を見なよド近眼」
あ、目が悪いのね。
「冷たいぞ翠!さっき戦闘中にメガネを無くした相棒にそんな言い方・・・」
「おでこ触りなド天然」
「あったー!?」
「この人何ですか?」
「バカだ、気にするな」
・・・まあそれは良いか。さっき太陽を助けてくれた礼を言っておかないと。
「さっきは弟を助けてくれてありがとうございます。えーっと、翠さんで良かったですかね?」
「別に礼は良い。さっき君が言った通り、僕は蒼翠。そこのバカは同僚の犬神王牙だ」
そう言って名刺を渡してきた。小さく『内閣諜報室』と書かれてる。
「僕らは政府直属の諜報機関『ヒナギク』。いわゆる公務員スパイだ」
・・・この前呼んだ雑誌に書かれてたな。
夜桜家みたいな自営業じゃなく、国からの命令で動くエリートスパイだってあった。あとフリーランスよりモテるとも書いてあった。
いやまあそこはどうでもいいんだけど。今の所そっち系興味ないし。
「この研究所を無力化するために派遣されてきた」
「おおホントだ!朝野太陽だ!隣のやつが朝野夕雅か!」
あ、王牙さんは僕の顔知らなかったのね。
ザッザッザッ
・・・背後から足音。4人・・・いや、3人だね。まだ残ってたんだ。
「兄貴?」
「ちょっと待って。すぐ終わるから」
銃を構えて引き金に指をかけておく。姿が見えた。
閃光弾を撃ち込んでから音響爆弾。よし、無力化完了。
「よし、終わったよ。先に進もう」
「・・・今、背後から来ていることに気づいていたのか?」
「え? はい。音が聞こえたので」
「そうか。・・・王牙、所内の状況はどうだ?」
「南南東の方角、高さ−47度より靴音が5人分。違う場所に3人いたが、さっきの銃撃で消えた。隠れた可能性が高い。あと、パラベラム弾の匂いだ。武装してる」
すご。音ならともかく匂いまでわかるんだ。
「王牙さんって耳と鼻良いんですね」
「おお? まあな!俺の特技の一つだ!でも夕雅もなかなかの察知能力だったぞ!」
「王牙さんにはかないませんよ。人数ならわかりますけど、方角までは僕じゃまだ上手くわかりません。嗅覚は普通ですし」
「やっぱり中枢は地下か・・・。各自の任務達成に最善を尽くそう。それでは・・・」
「いーや、せっかくだし一緒に行くぞ!味方は多いほうがいいしな!」
行く方向は同じだから結局同時行動だっただろうけどね。
「ここが最後の研究室か」
ドアを開けると、何人かの縛られた研究者たちと寝ている七悪くんがいた。
「七悪!」
太陽が寝ている七悪くんに近寄って守ろうとする。
ジャララッ
・・・鎖の音? 王牙さん?
目を向けると、王牙さんが鎖を投げるところだった。
「避けて太陽!」
ガッと音がなり、同時に分銅と太陽のナイフが衝突した。
「何を・・・!?」
「お前こそ何をしてる、太陽!危ないからそこをどけ!その男を殺すのが俺達の任務だ!」
・・・は?
「言っただろう。この任務を無力化するのが僕達の任務だと。兵器を吸収したその男は危険物そのもの。国の安全のためにも、彼ごと葬るのが最善だ」
まあ、理屈はわかる。・・・けど、兄としては納得できない。
「研究所の監視中に君たちの会話も傍受していたんだ。彼の所在地と侵入用データを持つ君たちのおかげで、無駄なくここに来れた。礼を言う。後は彼を殺せば任務完了だ。さあ今すぐそこを・・・」
「ふざけるな。俺の弟を殺したきゃ、俺を殺していけ・・・!」
太陽が七悪くんをかばうように前に立ち、八重を構える。
「やめろ太陽・・・!」
「時間の無駄だ」
王牙さんがそう言うとほぼ同時、翠さんが一瞬で太陽を切り裂いた。
「太陽!」
「スパイに感情的な問答は必要ない」
その直後、太陽が地面に倒れる。僕は2人を守れる位置に移動する。
「初対面なのに気を許す警戒心のなさ。即座に撃たずこちらの出方を伺う緩慢さ。・・・『夜桜』とはこの程度か?」
・・・・・・へえ。
「翠!またお前の悪いクセが・・・」
「王牙、止まれ。・・・一応忠告しよう。そこをどけ、朝野夕雅」
枝垂を構える。
「いえ、どきませんよ。・・・僕が壁にならなきゃ2人が殺されてしまうので。兄としてどくわけには行きません」
「・・・邪魔をするな。時間が無駄になる。さっさとどけ」
そう言うと刀をこっちに向けて、さっき太陽にした動きと同じ行動をしてきた。
「・・・む」
「あ、防げちゃった。・・・この程度ですか? 初心者が防げてしまう程度だなんて、エリートも思ってたより弱いんですね」
心臓あたりを守るように枝垂を構えた。そしたらなんかうまく行った。
「っ!危ないですって!」
無言でまた攻撃してきた。防いで避けて、なんとか凌ぐ。でも傷はどんどん増えていく。致命傷じゃないのが唯一の救いかな。
・・・というか僕ってこんなに動体視力良かったっけ? と思ったけど、たぶん訓練の成果が出てるんだろうね。
すると、翠さんが距離を取った。・・・なら。枝垂を閉じ、構え、押し付ける。
咲け。――
「ぐっ!?」
「翠!・・・朝野夕雅!お前・・・!」
「やめろ、王牙」
「翠・・・?」
「コイツは僕が殺す。あの危険人物を守る人間を生かしてはおけない」
危険人物、か。そりゃ危険かもしれないけど、僕の義弟だ。殺させてたまるか。
・・・できることなら殺し合いにはなりたくなかったんだけどな。まあ、しょうがないか。
そう思って、左手の枝垂を閉じる。防御するにはそっちのほうが何かと都合がいいからね。
「1つ質問だ。なぜこうも兄弟に技量の差がある? お前と太陽はほぼ同時に夜桜家に入ったはずだ」
急に質問してきた。まあ、時間稼ぎになるから答えようかな。
「簡単なこと。太陽は高校生。僕は成人。訓練時間は僕のほうが圧倒的に多いからですよ」
「・・・そういえば大学には行っていないんだったな。それが理由か」
「行けるのなら行きたいところはあったんですけどね」
そこも知られてるんだ。
そのまま僕の方に足音もなく走ってきた。・・・そんなに時間稼ぎできなかった。
刀と枝垂がぶつかって火花が飛び散ると同時、声が聞こえた。
「ま、待ってください」
・・・起きたの!?
「危ないからまだ寝てて!」
「ち、違うよ、夕雅お兄ちゃん」
「へ?」
「たった今、『ソドム』の無毒化が完了しました。僕の汗に細菌毒が含まれていないことを示す、このパッチテストが証拠です」
・・・ゼエゼエ言ってるね。相当無茶して解毒したでしょ。
翠さんの攻撃も止んだ。
「・・・そうか。パッチテストの紙は資料として回収しておく。あと、切り傷によく聞く軟膏だ」
なんか不思議な感じがする軟膏だね。
「弟は役に立たないが、兄の方は優秀だな。おそらく公務員スパイになってもうまくやっていけるだろう。なってみたらどうだ?」
「嫌でーす。あなたみたいな政府の機械にはなるつもり無いのでー」
「・・・そうか。なら良い。だが、気が変わったらいつでも話せ。行こう、王牙」
「お、おう」
そう言ってその場から音もなく消え去った。
・・・急げ急げ。太陽の応急手当をしないと。
「夕雅めっちゃ話題になってるな」
「何がー?」
「あれ、知らねーの? 見てみろよこの記事」
「えーっと・・・『夜桜家の新星!朝野夕雅について徹底調査!』・・・なにコレ?」
「この前の研究所のやつ、スパイデーの職員に見られてたっぽいぞ。その証拠に、ホラここにガッツリ写真が」
そこには僕が翠さんに向かって花吹雪を放ったところだった。
「『僕が壁にならなきゃ、2人が殺されてしまうので。兄としてどくわけには行きません』だってよ」
待って待って。記憶が間違ってなければ一言一句違わずに書かれてるんだけど。めっちゃ恥ずかしい。
「ヒナギクの勧誘に『嫌です』って答えたってのも書いてるなー」
絶対ボイスレコーダーとか何かで録音されてたねこれ。
「あと、『女性スパイが選ぶ 守ってもらいたい男性スパイランキング』の3位になってるな。えーっと、どれどれ? 『あの顔で『もう大丈夫だよ』って言ってもらいたい』、『兄弟愛・・・推せる』、『凶一郎さんから夕雅さんに乗り換えました』だってよ。モテモテだな」
「なにそれ、僕そんなの知らないんだけど」
あと情報回るの早すぎない? それ2日前のことだよ?
「そりゃ本人に聞くわけねーだろ。そもそも女性じゃねーんだし。ま、良かったんじゃねーの? 人気出て」
いや、家族を守れたらそれで十分なんだけどね。別に人気とかどーでもいい。
「じゃ、また夕飯のときにでも話そうぜー。『夜桜の守り手』ー」
「・・・え!? 待ってそれもしかして僕!? 何その呼び方!」
「そこに書いてあったぞ」
そう言ってスパイデーを指差す。
ページをパラパラ捲ってみると、ドデンと『夜桜の守り手、朝野夕雅の大活躍!あの『ヒナギク』のお墨付きか!?』と書かれてた。
「・・・うっわー、これか・・・・・・なんかこの呼ばれ方やだな」
読んでみたら色々書いてある。
『夜桜の新しい戦力か』とか、『扇を使用する理由は? 考えられる理由を徹底考察!』とか。あと、いい感じの言葉だけじゃなく、否定的な言葉もいくつかあった。
『長男の暴力政権も終了間近か』とか、『無様をさらした弟を守る兄』とか。うん、怒るよ?
誰の弟が無様をさらしたって? 僕怒ること少ないけどこれは流石に許せないよ?
・・・はあ、まあいっか。こう書いたほうが売れるんだろうしそこは否定しないでおこう。でもまた同じようなことを書いたら元気薬打ちに行こう。5本ほど。
じゃ、いつも通り練習してこよう。防御面をどうにかしないとねー。
裏設定
夕雅は致命傷になりそうな攻撃を避ける能力が高い。しかし限度はある。