Moonlight Mythology   作:かんべー

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無題、神が残した序章。

『誰もが沈黙した後、神なる蝶が全てを掬ぶ』

誰もが只人だと思った臆病な少女は、全てを知り、覚悟を決める。己を犠牲にしたとしても、大切な誰かを守るために。

 

『信仰は刃となり、其の神を打ち倒す』

無口な狩人はその経験を経て怒りを手にした。その怒りを捨てるか、昇華させるか。それは彼女に委ねられている。

 

『その裏切りはいずれ其方に選択を迫り、一度離れた心を繋ぐ』

ただ別れが嫌だと思った。ただそれだけだったはずの少女は、一度の過ちで全てを失った。もう誤りはしない、もう...自分の手で何かを決めたりはしない。そう誓った。

 

『神々が零した涙はやがて反旗を翻し、因習に牙を剥く』

生まれついた宿命は幼い命を地獄へ追いやった。そこで生きてきた少年は、何を信念とし、何を目的として生きていくのだろうか?

 

『その王冠はお前のために存在してきた』

無垢な幼子は親の死によって表舞台に立たされた。操り糸に絡めとられ、自由は失われた。それでも、ヒーローを目指し、己の生を見つめている。

 

『この宝冠はお前だけを受け入れる』

親の愛を知らない幼子は何も手に入れられなかった。それを恨み、妬み、羨んだ。その感情はいずれ何になるのか、まだそれを考えられるほど大人ではない。

 

『天上に魅せられた其方は全てを計算し尽くし、世界を切り開く』

あの日、あの夜。少年は天上の世界に魅了された。美しく、手の届かないような世界を、己の手で明かすことを願った。

 

『離別を経、子猫は温かな愛に寝転んだ』

さよならばかりの人生は冷たく痛々しい爪痕が残っている。だがしかし、他の人を想うその子猫はあとは幸せになるだけだろう。

 

『不完全な者こそが、英雄に相応しい』

からっぽだった人形は神へと成らない道を歩む。感情を知り、人々を導く英雄と成るために。

 

『全てを果たした創造主は、新たな世を紡ぐ』

あたくしは...いえ。

 

 

「もしもあの時に戻れたら、あたくし達は違う選択をするかしら。

 逃れられない運命に抗う?

 大切な人との別れを惜しむ?

 

 でも…あたくし達は。運命や使命に抗い続けるあたくし達なら。きっと、また、出会える。そうでしょう?」

 

聖書を手にした少女はただひたすらに書き連ねていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────

 

彼女の世界は産声を上げた。

 

彼女の世界は成長した。

 

彼女の世界は隆盛した。

 

彼女の世界は終わりへと向かった。

 

彼女の世界は年老いた。

 

彼女の世界は朽ちた。

 

彼女の世界は亡くなった。

 

彼女の世界への餞として、最後まで見届けた。彼女は、それで満足だっただろうか。

 

彼女は旅立った。

意味もなく。

目的もなく。

ただ歩いた。

数多の世界を渡り、爪痕は残さず。

神話の積み重なりの中に身を埋めた。

 

だが今は違う。

 

誰かの為に。

 

大切なものの為に。

 

その権能を振るう。

 

あの時とはもう違う。

 

彼女は力を得た。

 

全ての生命が自由に生きられる土台を創ろう。

 

さあ、最後の彼の世界で産声を上げた《神格級観測者》よ。

 

その真名に於いて、其方だけの神話を紡げ。

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