Vortex 作:冬の珈琲
高台から遠目に見える景色には、『ウェイワード・ロブスター亭』の方面から煙が湧き立っているのが見えた。
そしてその先には、太陽がわずかに赤みを帯び始めたストームリーチの海が広がっている。
グリムから言い渡された日没まではあと2時間ちょいってとこかね。
焦りは微塵も存在せず、悪戯好きな子供が親から言われていた門限をふと思い出したかのように考えた。
握りしめていたままだった革袋からは、依然として心臓のようにドクン、ドクンと静かに脈動する『
まだ時間はあるからいいだろうと、地下で流し読みだけしていた男の日誌を取り出して、
腰を据えて読むことにした。
今なら違った感想を持てそうだと思ったから。
★ ★ ★
流し読みした時に思った悲惨な末路から想像していたが、思っていたよりも散々な目にあっていたようだ。
10年前の事件はどうやら男の単独犯ではなく、グリムの関係を持っていた「冒険者崩れの傭兵団」の一員だったようだ。
ゼンドリックの古代遺跡から石を持ち帰った両親を団員が目撃し、男が襲撃。
しかし、その直後には石の存在を嗅ぎつけたカニス氏族によって、その傭兵団も一晩で壊滅したらしかった。
唯一、石を持って逃げ延びた男はさっさと売ろうとシャーンの闇市場を駆けずり回っていたようだが、どう見ても訳ありな品な上に、更にはカニス氏族に追われているという情報も流れていたようで、報復を恐れて買い取りを拒否。
その過程で男もこの石がただの魔力が籠った金になる石程度ではなく、「莫大な魔力を無限に生み出すゼンドリックの古代兵器の心臓」であることを知った。
また、所持していると精神にも何かしらの影響が出てくるようで、手記の後半へ進むにつれて意味不明な言葉の羅列も多くの箇所に見られた。
カニス氏族からの逃亡生活で精神が摩耗していたこともあるだろう、
幻聴、幻覚、夢にまで作用していたようで、「石が脈打つ。巨人の声が聞こえる……」など、ほとんど精神患者の有様だった。
むしろ、よくちゃんと文章になっていたなと感心するほどだ。
結局、なぜわざわざ今になってストームリーチに再訪し、シルヴィアへ石を渡したのかを記載している部分はもう読めるようなものではなく、読み解くことを諦めた。
日誌から男の人生を垣間見て、けらけらと今は自分の手の中にある石を見て笑った。
「世知辛いねぇ。 誰も彼も、結局石ころ一つ以外はなーんも手に入れられなかったってわけだ。
……っと、そろそろ向かわないと間に合わないか」
物は手に入れたが、そもそもカニスの暗殺者が酒場に来ている時点でグリム・カーターモンが無事かどうかはかなり怪しい。
それでも、とりあえず様子は見に行こうかと、南の倉庫へと軽い足取りで歩き出した。
★ ★ ★
警戒しながら向い、幸いなことに続きの追手とは遭遇せずに倉庫まで着くことが出来た。
念のためそのまま扉を開けて中には入らず、そのままそろりと屋根へと登り、換気用の天窓から中の様子を伺った。
倉庫の内部は、血の海と化してる。
初めに会った入り口の見張りをしていた男を含めて、グリムの部下と思われる5〜6人の男たちが、文字通り「解体」された状態で転がっていた。
首を刎ねられた者、四肢を切り飛ばされた者、ストームリーチでのちょっとした荒くれ者という程度では、圧倒的な戦闘力の差があったのだろう。
戦闘というよりは蹂躙されたような状態だった。
そして、倉庫の中央にある解体台の脇には、グリムの死体が横たわっている。
彼が度々こちらを威圧するのに使っていた巨大なナタは真っ二つに折れて、その分厚い胸板のド真ん中には、刃か何かが背中まで貫通したような、ぽっかりとした穴が開いていた。
床の至る所に、鋭利な刃物による真一文字の切断痕と、ウォーフォージド特有の重い金属の足跡が血塗れで刻まれている様子を見るに、やはり荷受人から情報を得た後、カニス氏族の完全な戦闘部隊がここを訪れたのだろう。
可能性としては想像できていたので、大した驚きは無かった。
「なぁんだ、グリムの旦那、死んじまったのか」
他の気配が感じられないことを確認した後、屋根の窓から床へと飛び降りる。
既に部隊はここにお目当てのものを見付けられずに去っていったのなら、少しは安全だろう。
倉庫内の比較的マシな血の濡れ方をしている場所を見繕って、背嚢を枕に目を瞑った。
「さぁて、ここからどうするかな~」
死体の群れの中で眠りにつく彼は、幸せそうに笑っていた。
ここでもう完全にまともな主人公ロール諦めた。
今はセッション6を遊んでるので、セッション2もそのうち投稿します。