ポケットモンスター 金星の星跡   作:月ちゃん@ハーメルン

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10話 ルシアとリン

ユイは小さく息を吐いた。

 

ルシアの気持ちは尊重したい。

 

でも、Stellaの活動は止められない。

 

その両方を叶える方法。

 

考えた末に、ユイが出した答えはひとつだった。

 

ユイ「……半年。」

 

ルシアの瞳が大きくなった。

 

ユイ「半年で8個のバッジを取りなさい。」

 

ユイ「シンオウでもいい、他でもいい。とにかく8個。」

 

ユイ「無理だったら帰ってくる事。」

 

そこまで言うと、ユイは膝の上のイーブイに視線を落とし、その頭をそっと撫でた。

 

難しい条件だとは思う。

 

正直、かなり厳しい。

 

半年で8個のバッジなんて、無茶なことを言っている自覚はあった。

 

でも、それくらいできないなら、セナになんて絶対に勝てない。

 

半年なら、リンとユナの2人でもStellaの活動は続けられる。

 

続けられるように自分が支える。

 

ユイはイーブイを撫でながら、ルシアの答えを待った。

 

ルシア「やる!」

 

答えは決まっていた。

 

迷う時間なんてなかった。

 

ルシア「やらせて!」

 

その声に応えるように、ルシアのポケットに入っていたボールが開いた。

 

飛び出したヒコザルは、そのままルシアの頭の上に乗ると、楽しそうに吠える。

 

ルシアも嬉しそうに笑っている。

 

ユイはそんな2人をじっと見つめた。

 

この子たちはまだわかってない。

 

ポケモンバトルの厳しさも、難しさも。

 

そして、本当の意味でのセナの強さも。

 

きっと、まだ何も知らない。

 

でも、それなら知ればいい。

 

ルシアはまだ17歳。

 

これからいくらでも知ることができる。

 

戦って、負けて、悔しい思いをして。

 

そうやっていろんなことを知ったうえで、またステージに立てばいい。

 

挫折も、絶望も、いつか人としての美しさを映す光に変わる。

 

ユイはもう一度ルシアへ目を向けた。

 

もし、この子とヒコザルが、本当に8個のバッジを集めて帰ってきたら。

 

そこから先のことは、考えなかった。 

 

♢♢♢

 

ナギサシティ、cutie project事務所。

 

リン「……は?」

 

ドスの効いた声が事務所に響いた。

 

リン、ルシア、ユナの3人が集まっている。

 

ルシア「……旅に出るの。ヒコザルと。」

 

リン「いや、聞こえてるんだけど。」

 

リン「その上で『は?』って言ったのよ。」

 

リンは険しい表情でルシアを睨んでいた。

 

一方、ユナは何も言わず、2人の様子を見つめている。

 

リン「Stellaはどうすんのよ。」

 

リン「来月1周年よね?」

 

ルシアは黙ったままリンを見ていた。

 

リン「おい。聞いてんの?」

 

リンの表情がさらに険しくなった。

 

もう止まらなかった。

 

ユナは黙ったまま、リンの姿を見つめていた。

 

無理もなかった。

 

リンはルシアの幼馴染。

 

ずっと一緒に過ごしてきた。

 

Stellaだってそう。

 

最初はリンとルシアの2人だった。

 

私は最後に加入が決まった。

 

私は、リンがどれだけアイドルを愛しているのかよく知っている。

 

誰よりも真摯で、誰よりも努力してた。

 

リーフィアと一緒に、遅くまで残って練習していた姿だって何度も見てた。

 

本当にリンにとって、アイドルは天職だった。

 

ルシアが旅に出てしまったら、Stellaは終わってしまうかもしれない。

 

リンが怒るのもわかる。

 

感情的になるのだって理解できる。

 

リンは、私とは違う。

 

ルシアの肩が小さく震えた。

 

ゆっくりと顔を上げると、リンと目が合った。

 

その瞬間、リンは息を呑んだ。

 

ルシアの目が腫れていた。

 

ルシア「ごめん。」

 

リン「……は。」

 

ルシア「セナに挑戦したい。」

 

リン「……あれに勝つ? バカじゃないの? 無理に決まってるでしょ!」

 

ルシア「勝つ。」

 

リンは絶句した。

 

ルシアは目を逸らさない。

 

ルシア「考えたよ。私だって。」

 

リン「…ならそうはなんないだろうが。」

 

リンの声が低くなった。

 

ルシア「このままアイドルやっても、私は今までみたいに笑えない。」

 

ルシア「挑戦したい。」

 

ルシアはそれだけ言うと、リンから視線を外さなかった。

 

リン「……私たちの夢はどうなるのよ。」

 

ルシアは黙ったままだった。

 

リン「もうすぐ1周年なのに。」

 

リン「このままいけば、シンオウ1のアイドルにだってなれる!世界にだって!」

 

そこまで言って、リンは言葉につまる。

 

ルシアの顔を見てしまった。

 

まっすぐに自分を見つめる、その顔を。

 

……ああ、もう何を言っても変わらないんだ。

 

シンオウ1のアイドルになることも。

 

世界で活躍することも。

 

今のルシアにとっては、セナに勝ちたいという願い以上の価値を持っていない。

 

少なくとも、今は。

 

リンの瞳から、涙が一粒こぼれ落ちた。

 

慌てて手を上げ、その涙を拭う。

 

そして、くるりと踵を返した。

 

リン「……もういい。」

 

リン「じゃあね。ポケモントレーナー。」

 

わざとらしく笑ってみせる。

 

そして、リンは部屋を出ていった。

 

扉が閉まり、ルシアとユナだけが残された。

 

ルシアと、リン。

 

ずっと一緒に過ごしてきた2人の道は、ここで分かたれた。

 

【シンオウニュース】

 

【衝撃】Stella・ルシア、突然の活動休止! 人気絶頂の17歳アイドルがポケモントレーナーへ転身、目標は新王者セナへの勝利

 

2018年5月

 

シンオウ地方を代表する人気アイドルグループ「Stella」のメンバー、ルシアさん(17)が、芸能活動を一時休止することが明らかになった。

 

突然の発表は大きな衝撃を呼んでいる。

 

Stellaは、かつてシンオウ地方で爆発的な人気を誇った伝説のアイドルグループ「Lune」の意思を受け継ぎ、元メンバーのユイさんがプロデュースする3人組アイドルグループ。

 

ルシアさん、リンさん、ユナさんの3人で活動しており、来月には結成1周年を迎える。

 

順調に人気を伸ばしていたグループだけに、今回の発表はあまりにも突然だった。

 

さらに驚くべきは、その活動休止の理由だ。

 

ルシアさんはポケモントレーナーとして旅に出ることを決意。

 

その目標は、シンオウ地方の新チャンピオン、セナ選手に勝利することだという。

 

セナ選手は5月1日、10年間無敗を誇ったシロナ前チャンピオンを破り、新たなシンオウチャンピオンとなったばかり。

 

ルカリオ1匹でシロナ前チャンピオンのポケモン6匹をすべて倒すという、衝撃的な勝利を収めている。

 

そんな新王者への挑戦を目指し、ルシアさんはアイドル活動を休止するというのだ。

 

ルシアさんはこれまで、Stellaのメンバーカラーである赤を象徴する華やかな存在感と、眩しい笑顔で多くのファンを魅了してきた。

 

ポケモンバトルを愛好していることは知られているものの、本格的なトレーナーとしての実績はなく、パートナーはヒコザル。

 

そのルシアさんが、シンオウ最強の座に立ったばかりのセナ選手を目標に掲げたことは、驚きをもって受け止められるだろう。

 

また、Stellaの今後にも注目が集まる。

 

結成1周年を目前に控えたこの時期に、中心メンバーの1人が活動を休止する影響は小さくない。

 

残るリンさんとユナさんの2人が、今後どのように活動を続けていくのかも注目される。

 

人気アイドルとしての道を離れ、ポケモントレーナーとして新たな一歩を踏み出すルシアさん。

 

その目標は、シンオウ地方の頂点に立つセナ選手への勝利。

 

突然の活動休止という異例の決断が、シンオウ地方に大きな衝撃を与えている。

 

@sinnoh_watch

フェイクニュース?

 

@stella_luv17

なにこれ、信じられないんだけど

 

@poke_battle_08

セナに勝つ?バトル初心者が?

 

@idol_news24

これなんかの企画じゃないの?

 

@redstar_fan

本気で言ってるなら馬鹿だと思うし、信じられない

 

@lune_memories

ユイさんはこれ許してるの?

 

@stella_1st

ファンのこと舐めてるでしょ

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