ポケットモンスター 金星の星跡   作:セナ@ハーメルン

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28話 ルシアVSデンジ 後編

デンジ「ライチュウ!かみなり!」

 

ルシアの瞳が大きくなった。

 

……来た。

 

デンジのライチュウが大きく吠える。

 

凄まじい電撃が放たれ、巨大な落雷となってバトルコートを駆け抜ける。

 

一直線に、ルシアのライチュウへ向かっていった。

 

ルシアは何も言わない。

 

ただ小さく笑うと、目の前のライチュウを見つめた。

 

ライチュウも避けなかった。

 

ルシア「……。」

 

……耐えて。

 

……お願い。

 

ルシアの狙いはひとつだった。

 

さっきのかみなりはカウンターシールドを狙われた。

 

回転していたライチュウは足が地面についていない。

 

だから吹き飛ばされた。

 

でも、今は違う。

 

しっかりと大地を踏み締め、耐える。

 

そしてデンジに思わせる。

 

……かみなりは効かない。

 

そこまでできれば、デンジが次に指示する技をばくれつパンチに絞り込める。

 

ルシアは拳を握り締めた。

 

次の瞬間、凄まじい落雷がライチュウを捉えた。

 

全身を電撃が駆け抜け、バトルコートに光が弾ける。

 

それでもライチュウの両足は地面から離れなかった。

 

歯を食いしばると、大地を踏み締めたまま耐え続ける。

 

やがて電撃が収まった。

 

ルシアのライチュウは当然のように立っていた。

 

ルシア「……ライチュウ。」

 

ライチュウは顔を上げると、デンジのライチュウを鋭く睨みつけた。

 

デンジ「……。」

 

……かみなりも効かない。

 

それなら狙うのは近距離。

 

ばくれつパンチ。

 

……それしかない。

 

♢♢♢

 

デンジ「ライチュウ!ばくれつパンチ!」

 

デンジのライチュウが拳を強く握り締めた。

 

そのまま地面を蹴り、ルシアのライチュウへ向かって一直線に駆け出す。

 

ルシア「ライチュウ!アイアンテールで受け止めて!」

 

ルシアのライチュウが尻尾を前へ突き出した。

 

鋼鉄のように硬くなった尻尾と、強く握られた拳が真正面から激突する。

 

凄まじい衝撃が2体の間に走った。

 

デンジ「押し込め!」

 

デンジの声が響いた。

 

……なぜ押し込めない?

 

かくとうタイプとはがねタイプの技だぞ。

 

オレのライチュウのパワーが足りない?

 

……そんなことがあってたまるか。

 

デンジのライチュウがさらに拳へ力を込めた。

 

両足で地面を踏み締め、体重を乗せて押し込んでいく。

 

鋼鉄の尻尾を押し返し、少しずつ拳が前へ進み始めた。

 

ルシア「でんじほう!」

 

ルシアの声も大きくなった。

 

ライチュウが腕を構える。

 

小さなエネルギーが集まり始めた。

 

しかし、その光はいつもの電撃とは違う。

 

ルシア「……え?」

 

……でんじほうじゃない。

 

デンジも目を見開いた。

 

あれはでんじほうじゃない。

 

……きあいだま。

 

ルシアのライチュウが歯を食いしばり、低く唸った。

 

腕に集まったエネルギーが、少しずつ大きくなっていく。

 

この土壇場で新しい技を覚えようとしていた。

 

デンジの顔から血の気が引いた。

 

……勘弁してくれ。

 

勝たせてくれ。

 

ここで落とされたら一気に勝負が決まってしまう。

 

デンジのライチュウは拳を押し込み続ける。

 

ルシアのライチュウも、尻尾でその一撃を受け止めながら、腕にエネルギーを集め続けた。

 

デンジ・ルシア「ライチュウ!」

 

2人の声が重なる。

 

次の瞬間、至近距離で振り抜かれたばくれつパンチと放たれたきあいだまが激突した。

 

2つの大技がゼロ距離で炸裂した。

 

♢♢♢

 

舞い上がった土煙が、ゆっくりと晴れていく。

 

バトルコートの中央。

 

2体のライチュウが、絡み合うように倒れていた。

 

互いの体が重なったまま、ぴくりとも動かない。

 

審判「……ライチュウ、同時戦闘不能!」

 

審判の声がスタジアムに響いた。

 

観客席がざわめき始める。

 

デンジの残りのポケモンはあと1体。

 

切り札のエレキブルはすでに倒されている。

 

そして、ルシアにはまだムクホークが残っていた。

 

あの凄まじい破壊力で、エレキブルを壁ごと叩き潰したムクホーク。

 

さらに、Stellaを以前から知る観客たちは、ルシアのもう1体のポケモンにも心当たりがあった。

 

ずっと一緒にいたヒコザル。

 

あのヒコザルもまだ残っている。

 

ルシアは残り2体。

 

デンジは残り1体。

 

観客たちはバトルコートを見つめたまま、しばらく動けなかった。

 

こんな試合になるなんて思ってもいなかった。

 

自分たちが想像していた未来とは、あまりにも違っていた。

 

ルシアはライチュウを抱き上げると、自分の持ち場へ戻った。

 

腕の中に収まったライチュウの頭を、優しく撫でる。

 

ルシア「…ありがと。」

 

ライチュウは小さく頷くと、モンスターボールの中へ戻っていった。

 

ルシアはゆっくりと息を整えた。

 

十分すぎる。

 

ここまでは、100点だった。

 

ムクホークもライチュウも、間違いなく役目を果たしてくれた。

 

次は、この子。

 

エレキブルはムクホークが潰してくれた。

 

…勝てる。

 

いや、勝つ。

 

ルシアは次のモンスターボールを握り締め、正面へ向けた。

 

ルシア「いけ!モウカザル!」

 

ボールが開き、光が弾けた。

 

光の中からモウカザルが飛び出し、ルシアの前に降り立った。

 

その姿を見た観客席から歓声が上がった。

 

かつて、ルシアの隣にいたヒコザル。

 

そのヒコザルが今はモウカザルとなってバトルコートに立っている。

 

ルシアを応援する観客たちは、目の前の姿を見つめていた。

 

それだけで、瞳に涙が滲む人もいた。

 

デンジはルシアの前に立つモウカザルを見つめた。

 

そして、小さく息を吐いた。

 

……オレは今、決めた。

 

使わせてもらう。

 

本来なら使うべきではないのかもしれない。

 

ジムリーダーは挑戦者の実力を試す立場だ。

 

それなのに、今はオレ自身が挑戦したくなっている。

 

……おかしな話だ。

 

デンジは目の前のルシアとモウカザルを見据えた。

 

でも、ここで力を出し惜しんでつまらないバトルをするのだけは嫌だった。

 

デンジはモンスターボールを強く握り締めると、勢いよく放った。

 

デンジ「でてこい!エテボース!」

 

ボールが開き、光が弾ける。

 

光の中からエテボースが飛び出し、デンジの前に降り立つ。

 

モウカザルが姿勢を低く構えた。

 

正面に立つエテボースと、互いに睨み合う。

 

審判「それでは、バトル再開!」

 

その合図と同時に、デンジがポケットへ手を伸ばす。

 

そして、取り出したブレスレットを強く握り締める。

 

ユイ「……ッ!」

 

バトルコートの袖で見ていたユイの瞳が、大きく見開かれた。

 

……テラスタルオーブ。

 

デンジ「行くぞ!エテボース!」

 

エテボースが大きく鳴いた。

 

ルシアも思わず息を呑む。

 

デンジ「テラスタル!」

 

次の瞬間、エテボースの体が宝石のような光に包まれる。

 

テラスタル。

 

パルデア地方で使われている、ポケモンのタイプを変化させるバトルギミック。

 

無数の光がエテボースの体を覆い、その姿が輝きの中に隠れていく。

 

観客たちもデンジとエテボースを見つめていた。

 

見たことがなかった。

 

デンジがテラスタルを使うところも。

 

あんなに楽しそうに笑うデンジも。

 

何もかもが初めて見る光景だった。

 

光が弾ける。

 

エテボースの頭上で、でんきテラスタルクラウンが眩い光を放つ。

 

宝石のような輝きを纏った、でんきテラスタルエテボース。

 

エテボースはデンジの前に立つと静かにモウカザルを見つめた。

 

モウカザルがルシアの方を振り向いた。

 

ルシア「大丈夫!いつも通りでいいから!」

 

ルシアの声がモウカザルに届く。

 

モウカザルは前を向くと力強く頷いた。

 

ルシアも拳を握り締める。

 

でんきタイプならモウカザルの技は全部通用する。

 

……大丈夫。

 

ルシア「グロウパンチ!」

 

モウカザルが拳を強く握った。

 

姿勢を低くすると、地面を蹴ってエテボースとの距離を一気に詰めていく。

 

デンジ「10まんボルト!」

 

エテボースが電撃を撃ち出した。

 

頭上のでんきテラスタルクラウンが眩い光を放つ。

 

凄まじい威力の電撃がモウカザルを捉える。

 

ルシアもモウカザルも止まらない。

 

全身を激しい電流が駆け抜け、体毛が逆立った。

 

それでもモウカザルは前に出る。

 

一歩も止まらない。

 

スピードも落ちない。

 

電撃を受けながらさらに深く踏み込む。

 

そしてエテボースの懐へ飛び込むと、握り締めた拳が真正面から撃ち抜いた。

 

モウカザルの体からエネルギーが迸る。

 

グロウパンチの副次効果。

 

攻撃力が上昇する。

 

ルシアは口元を緩めた。

 

デンジはエテボースから視線を外さない。

 

デンジ「エテボース!地面に10まんボルト!」

 

エテボースがグロウパンチを受けながら、地面へ向けて電撃を放った。

 

凄まじい電流がバトルコートを走り、大地をえぐっていく。

 

地面が砕け、モウカザルの周囲の足場が崩れ始めた。

 

ルシア「…。」

 

……今のは攻撃じゃない。

 

足場崩し。

 

でも大丈夫。

 

モウカザルはライチュウとは違う。

 

ルシア「グロウパンチ!」

 

モウカザルがさらに拳を握り締めた。

 

崩れた足場を前にしてもその動きに迷いはない。

 

地面を強く蹴り、もう一度エテボースへ向かって踏み込んだ。

 

デンジ「エテボース!受け止めろ!」

 

エテボースが片方の尻尾を前へ突き出す。

 

迫っていたモウカザルの拳を真正面から受け止める。

 

ルシア「押し切って!」

 

モウカザルがさらに拳へ力を込めた。

 

エテボースの尻尾を押し込み、少しずつ前へ進んでいく。

 

デンジ「もう片方の尻尾で捕まえろ!」

 

エテボースが歯を食いしばった。

 

片方の尻尾でグロウパンチを受け止めながら、もう片方の尻尾を動かす。

 

狙うのはモウカザルの腹部。

 

伸びた尻尾がモウカザルの体を捉えた。

 

そのまま腹部を押し込み、前へ出ようとしていたモウカザルを押し返す。

 

モウカザルの拳が、エテボースの尻尾に受け止められたまま後退した。

 

デンジはエテボースを見つめた。

 

片方の尻尾は、モウカザルの右拳と押し合っている。

 

もう片方の尻尾は、モウカザルの腹部を捕らえたままだった。

 

……チャンスだ。

 

デンジ「10まんボルト!」

 

エテボースの頭上で、でんきテラスタルクラウンが眩い光を放った。

 

ルシア「……ッ!」

 

ルシアの顔から血の気が引いた。

 

エテボースとモウカザルは、互いに掴み合ったままだった。

 

今なら直接電撃が通る。

 

モウカザルは右拳を押さえられている。

 

しかも腹部まで捕まっている。

 

……逃げられない。

 

ルシアは拳を握り締めた。

 

もう間に合わなかった。

 

エテボースから凄まじい電撃が放たれる。

 

そして、至近距離から放たれた電流がモウカザルの体を捉えた。

 

ルシア「モウカザル!」

 

モウカザルが必死に体を逸らした。

 

拘束から逃れようと全身をよじる。

 

しかし、エテボースの2本の尻尾がモウカザルをがっちりと捕らえていた。

 

右拳を押さえられている。

 

腹部も掴まれたまま。

 

どれだけ体を動かしても振りほどけない。

 

デンジ「撃ち続けろ!」

 

エテボースが歯を食いしばった。

 

尻尾に力を込め、モウカザルを捕らえたまま電撃を放ち続ける。

 

激しい電流がモウカザルの全身を駆け抜けた。

 

ルシア「モウカザル!逃げて!」

 

モウカザルが再び体をよじった。

 

それでも逃げられない。

 

至近距離から放たれる電撃をひたすら浴び続けるしかなかった。

 

観客たちも、ユイも、リンも、誰も口を開かなかった。

 

ただバトルコートの中央を見つめ続ける。

 

モウカザルの体を、電撃が容赦なく包み込んでいく。

 

デンジも拳を握り締めたままエテボースから視線を外さなかった。

 

……何が起きるかわからない。

 

さっきのムクホークもライチュウも普通じゃなかった。

 

こいつだって何を仕込んでいるかわからない。

 

だから倒れるまで目を逸らせない。

 

エテボースの尻尾は、モウカザルを捕らえ続ける。

 

やがてモウカザルの体から少しずつ力が抜け始めた。

 

動きが弱まっていく。

 

そしてゆっくりと膝をついた。

 

エテボースが電撃を止め、2本の尻尾を緩めた。

 

モウカザルの体が解放される。

 

そのまま前のめりに崩れ落ちた。

 

♢♢♢

 

モウカザルの顔が地面につこうとした、その時だった。

 

腕が先に地面についた。

 

ルシアの瞳が揺れる。

 

モウカザルは倒れなかった。

 

膝をつき、片腕で体を支えている。

 

全身は傷だらけだった。

 

長時間浴び続けた電撃によって、体はもうボロボロだった。

 

肩で息をしながら苦しそうに顔を上げる。

 

それでも闘志は死んでいなかった。

 

ルシア「……モウカザル。」

 

……倒れてない。

 

まだ勝ちたいんだ。

 

……うん。

 

私も勝ちたい。

 

ルシアはモウカザルから視線を外すとゆっくりと顔を上げる。

 

モウカザルは立つ。

 

それだけわかれば十分だった。

 

デンジ「……でんきテラスタルの10まんボルトだぞ。」

 

呆れたような声が漏れた。

 

デンジは目の前のルシアとモウカザルを見つめた。

 

……こいつらはなんなんだ。

 

この2人は異常だ。

 

心を折ったはずだった。

 

倒れるまで電撃を浴びせた。

 

それなのに当然のように立ち上がってくる。

 

エテボースも姿勢を低く構えた。

 

まだ終わっていない。

 

まだ終わらない。

 

モウカザルがゆっくりと体を起こした。

 

膝を伸ばすと、両足で地面を踏み締める。

 

そして大きく吠える。

 

ルシア「かえんぐるま!!」

 

モウカザルの全身に炎が燃え上がった。

 

巨大な炎だった。

 

傷だらけの体を包み込むように、激しく燃え盛っている。

 

観客たちの視線が、自然とモウカザルへ集める。

 

Stellaのステージで、何度も見た炎。

 

自分たちをステージで照らしていた炎。

 

その炎が今はルシアを前へ進めるために燃えている。

 

美しく燃え盛る炎が、バトルコートを明るく照らす。

 

モウカザルが地面を蹴った。

 

炎を纏った体が、一直線にエテボースへ向かっていく。

 

デンジ「エテボース!受け止めろ!」

 

エテボースの2本の尻尾が勢いよく伸びた。

 

両方の尻尾を前へ突き出すとモウカザルを正面から受け止める。

 

激しい炎がエテボースの体を照らした。

 

ルシア「もっと強く!」

 

モウカザルが全身に力を込めた。

 

尻尾に押さえられながら、それでも少しずつ前へ進んでいく。

 

ルシア「もっと!」

 

2人が見ている先は同じだった。

 

もっと先へ。

 

もっと前へ。

 

もっと強く。

 

ルシアも、モウカザルも、2人の心は同じ方向を向いていた。

 

その刹那だった。

 

モウカザルの体を白い光が包み込んだ。

 

ルシア「……進化。」

 

ルシアの瞳から、一滴だけ涙がこぼれ落ちた。

 

……あの時だってそうだった。

 

初めてのジム戦を思い出す。

 

モウカザルだけじゃない。

 

ムクホークだってライチュウだって、何度だって私を助けてくれる。

 

勝ちたい。

 

そう思った私のわがままをいつも土壇場で叶えてくれる。

 

……ありがとう。

 

ルシアは強く握っていた拳をゆっくりと開いた。

 

そして、白い光に包まれたモウカザルを見つめ続けていた。

 

デンジ「……。」

 

デンジの口から声にならない息が漏れた。

 

……なんなんだよ。

 

毎回毎回、追いついてきやがる。

 

その場その場で限界を超えてくる。

 

ムクホークのブレイブバード。

 

ライチュウのきあいだま。

 

……1試合で何段階強くなるんだこいつらは。

 

デンジは歯を食いしばった。

 

デンジ「……エテボース!10まんボルト!」

 

進化は止まらない。

 

なら進化させてもいい。

 

死ぬ気で落とせ。

 

エテボースが電撃を放った。

 

さっきと同じだった。

 

2本の尻尾はモウカザルの体に触れている。

 

至近距離から放たれた電撃がそのままモウカザルへ流れ込んだ。

 

白い光の中で、激しい電流が全身を駆け抜ける。

 

それでも進化は止まらなかった。

 

モウカザルは白い光に包まれながら電撃を浴び続けていた。

 

♢♢♢

 

エテボースの体が宙に浮いた。

 

次の瞬間、その巨体がバトルコートの壁へ叩きつけられる。

 

一瞬だった。

 

デンジは何が起きたのかもわからないまま、壁に叩きつけられたエテボースへゆっくりと視線を移す。

 

バトルコートの中心で白い光が弾けた。

 

幾度もの激しい攻防によってボロボロになったバトルコート。

 

その中心で、赤く、力強い炎が燃え上がる。

 

凄まじい火柱だった。

 

天井の高いナギサジムを燃え盛る炎が明るく照らしていく。

 

ルシアは息を呑んだ。

 

炎の中心に1体のポケモンが立っていた。

 

ゴウカザル。

 

モウカザルよりも大きく、逞しくなった体。

 

深い赤褐色の体を覆う白い毛並みが、燃え盛る炎に照らされて輝いている。

 

そして、頭上。

 

鋭く伸びた白い毛の奥から巨大な炎が噴き上がっていた。

 

赤く燃え盛る炎の中に、鮮やかな黄色が混じる。

 

炎が激しく揺らめきながら、天井へ向かって高く伸びていた。

 

ゴウカザルは両足を大地に踏み締める。

 

全身には浴び続けていた電撃の傷が残っていた。

 

それでもその立ち姿は揺るがない。

 

鋭い瞳がまっすぐ前を見据えている。

 

ルシアはその姿から目を離せなかった。

 

ゴウカザルがゆっくりと顔を上げた。

 

そしてルシアの方へ振り向く。

 

鋭かった瞳がわずかに細められた。

 

ゴウカザルはルシアを見つめると、静かに口元を緩めた。

 

ゴウカザルはゆっくりと拳を握り締める。

 

そして開く。

 

もう一度、指先に力を込めようとする。

 

全身が痺れていた。

 

エテボースの10まんボルト。

 

電撃による「まひ」が体に残っている。

 

進化しても受けたダメージが消えたわけではない。

 

エテボースもゴウカザルに傷をつけていた。

 

一方、壁に叩きつけられたエテボースが、ゆっくりと体を起こした。

 

デンジ「……まだいけるな。」

 

エテボースは苦しそうに顔を上げると、小さく頷いた。

 

全身は傷だらけだった。

 

エテボースも、すでに満身創痍だった。

 

そして、進化の代償に麻痺を背負ったゴウカザル。

 

2体は傷ついた体を支えながら再び向かい合う。

 

その後ろで、ルシアとデンジの視線がぶつかる。

 

どちらも相手から目を逸らさなかった。

 

決着がつこうとしていた。

 

♢♢♢

 

ルシア「かえんぐるま!」

 

その時だった。

 

ゴウカザルが大きく咆哮した。

 

頭上の炎が激しく揺らめき、全身から凄まじい熱が噴き上がる。

 

先ほどまでとは明らかに違っていた。

 

炎がさらに大きく、力強く燃え上がる。

 

天井へ向かって伸びた火柱が、ついにはその高さを超えて突き抜ける。

 

異様な火力だった。

 

燃え盛る炎がバトルコートを覆う。

 

そして、傷だらけの地面を焼いていく。

 

観客席からどよめきが起きた。

 

『……え。』

 

『……なにこれ。』

 

『見たことないんだけど。』

 

炎は収まらなかった。

 

さらに強く膨れ上がっていく。

 

限界まで膨れ上がった炎がゴウカザルの全身を包み込んだ。

 

…かえんぐるまじゃない。

 

その炎が、さらに強大な技へと姿を変えていく。

 

より強く。

 

より激しく。

 

そしてより美しく。

 

……ブラストバーン。

 

ルシアは拳を握り締めた。

 

大きく息を吸い、正面のエテボースを見据える。

 

ルシア「ブラストバーン!」

 

ルシアの声が、燃え盛るバトルコートに響き渡った。

 

デンジ「…。」

 

全力のブラストバーン。

 

あの火力を受け止めるなんて甘いことはできない。

 

まともに受ければ燃やし尽くされる。

 

ならこっちも最大火力で撃ち返す。

 

デンジ「ギガインパクト!」

 

デンジも声を張り上げた。

 

エテボースが全身に力を込める。

 

傷だらけの体を低く構えると、2本の尻尾を後方へ伸ばす。

 

そして残された力を振り絞るように地面を蹴った。

 

一直線にゴウカザルへ向かって突進する。

 

ゴウカザルも燃え盛る炎を纏ったまま、正面のエテボースを捉えた。

 

ブラストバーン。

 

ギガインパクト。

 

凄まじい炎と、全力を込めた突進。

 

2体の力がバトルコートの中心で真正面から激突した。

 

2体が真正面から激突した。

 

破裂するような衝撃音がバトルコートを駆け抜ける。

 

ゴウカザルの炎がエテボースの体へ燃え移る。

 

激しい炎に包まれながらもエテボースは崩れない。

 

歯を食いしばり、全身に力を込める。

 

ゴウカザルを押し返す。

 

次の瞬間、2体の体が弾き飛ばされた。

 

ゴウカザルが地面を滑る。

 

エテボースも後方へ押し戻された。

 

それでもお互いに倒れない。

 

大地を強く踏み締め、体勢を立て直す。

 

そして、再び正面を向いた。

 

お互いに限界だった。

 

そのはずだった。

 

それでもどちらも倒れない。

 

ルシアも、デンジも、それぞれのパートナーを見つめていた。

 

ブラストバーン。

 

そしてギガインパクト。

 

2つの技はよく似ている。

 

凄まじい威力を持つ大技。

 

でも、攻撃後の反動によってしばらく動けない。

 

ゴウカザルもエテボースも、すでに限界まで傷ついた体を必死に支えていた。

 

しかし、次の一歩を踏み出すことはできない。

 

攻撃もできない。

 

相手との距離を詰めることもできない。

 

それでも倒れない。

 

ゴウカザルは鋭い瞳でエテボースを見据える。

 

エテボースも、苦しそうに歯を食いしばりながら視線を返す。

 

2体はその場から動けないまま互いを睨み続けていた。

 

観客たちも息を呑み、バトルコートの中央に立つ2体を見つめる。

 

バトル中とは思えないほど静かだった。

 

ゴウカザルもエテボースも動かない。

 

誰もが、均衡が崩れるその瞬間を見逃すまいと、視線を注いでいた。

 

その時だった。

 

ルシア「ゴウカザル!ブラストバーン!」

 

ルシアの声が、静まり返ったバトルコートに響き渡った。

 

デンジ「……は?」

 

……何を言ってる?

 

ブラストバーンを知らないのか?

 

動けないぞ。

 

デンジはそこまで考えると、ふと固まった。

 

……動けるのか?

 

……いや、動けるわけがない。

 

……動けてたまるかよ。

 

ゴウカザルが、ゆっくりと一歩目を踏み出した。

 

苦しそうに歯を食いしばる。

 

全身に激痛が走った。

 

それでも関係ない。

 

体の痺れも取れていない。

 

動けないはずの足を無理やり前へ踏み出した。

 

ルシアはゴウカザルを見つめ続ける。

 

ゴウカザルが大きく咆哮する。

 

頭上の炎がさらに激しく燃え上がった。

 

そしてもう一歩。

 

ゴウカザルが足を踏み出す。

 

筋肉が引きちぎれるような音がした。

 

それでも止まらなかった。

 

頭上から噴き上がる炎がジムの天井を焼き尽くしていく。

 

さらに一歩。

 

また、一歩。

 

ゴウカザルは歯を食いしばりながらエテボースへ向かって進み続けた。

 

デンジ「……。」

 

……もうやめろ。

 

これ以上成長するな。

 

理を壊すな。

 

ルールの中でバトルしてくれ。

 

デンジは動けないエテボースを見つめる。

 

……お前は悪くない。

 

ギガインパクトは反動で動けなくなる。

 

それが当たり前なんだ。

 

相手がおかしいんだ。

 

相手がルールを壊してきやがった。

 

限界を壊してきやがった。

 

デンジの口から乾いた笑いが漏れた。

 

……どうやって勝つんだよ。

 

ゴウカザルの炎が再び膨れ上がる。

 

本来なら存在するはずのない一撃。

 

2発目のブラストバーン。

 

燃え盛る炎が、動けないエテボースを真正面から捉えた。

 

美しく、激しい炎がエテボースの体を貫いた。

 

エテボースの体がバトルコートの壁へ叩きつけられる。

 

凄まじい衝撃に壁が悲鳴を上げた。

 

デンジは小さく息を吐いた。

 

そして、ゆっくりと視線を落とした。

 

エテボースが顔を上げた。

 

壁に叩きつけられたまま正面に立つゴウカザルを睨みつける。

 

まだ諦めていなかった。

 

それでも体は動いてくれない。

 

ゴウカザルもエテボースを見据えていた。

 

2体の視線がぶつかる。

 

ゴウカザルが強く唸った。

 

エテボースも鋭い視線を返す。

 

次第にエテボースの体から力が抜けていく。

 

壁に背中を預けたままゆっくりと崩れ落ちる。

 

それでも最後の最後まで、その視線がゴウカザルから外れることはなかった。

 

審判がゆっくりとエテボースへ歩み寄った。

 

そして、倒れた体を見下ろす。

 

闘志はまだ死んでいない。

 

それでも体は限界だった。

 

エテボースはぴくりとも動かない。

 

審判「……エテボース戦闘不能!」

 

審判の声がバトルコートに響いた。

 

審判「よって勝者、挑戦者ルシア!」

 

その声を聞いた瞬間だった。

 

ゴウカザルの体が前へ傾いた。

 

踏ん張っていた両足から力が抜ける。

 

そしてそのまま前のめりに倒れ込む。

 

ゴウカザルも限界だった。

 

全身に残る傷。

 

電撃による麻痺。

 

そして、2発のブラストバーン。

 

それでも、勝利が決まるまでは倒れなかった。

 

最後の最後まで気力だけで立ち続けていた。

 




お疲れ様です!

デンジ戦の3体目はオリジナルでレジエレキにするか、ダイパ時代からエテボースにするかサンダースにするか迷いましたがエテボースにしました!

テラスタルがパルデア以外の場所でも使えるようになったオリ設定を使用しています!

今後ともよろしくお願いします!!
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