3人はバトルコートを後にすると、応接室へ戻った。
ソファに腰を下ろしたルシアへプラターヌ博士が笑いかける。
プラターヌ「適応は問題ないようだね。」
プラターヌ「あとは少しずつ慣れていくといい。」
ルシア「ありがとうございます!」
ルシアが嬉しそうに頭を下げると、プラターヌ博士は少し表情を引き締めた。
プラターヌ「メガシンカは強大な力を手にすることができる代わりにコントロールができなければポケモンを苦しめることになる。」
プラターヌ「力に溺れず、ポケモンと共に歩むことを忘れないように。」
ルシアは博士の顔を見つめ、しっかりと頷いた。
プラターヌ「まぁルシアさんは心配してないけど一応ね。」
そう言うと、プラターヌ博士は手元をゴソゴソと探り始めた。
取り出したのは、1冊のパンフレット。
そのままルシアの前に差し出した。
ルシア「……これは。」
表紙には『カロスオープン』の文字があった。
大会要項だった。
プラターヌ「来週、ミアレでカロスオープンがある。力試しに出てみるといいよ。」
ルシアの顔がぱっと明るくなった。
強い人と戦える。
それにもっと経験を積める。
ルシアは嬉しそうにパンフレットへ飛びつくと、子供のような笑顔を浮かべた。
その様子を見ていたプラターヌ博士も、隣のノエルも、つられるように笑みをこぼした。
♢♢♢
アローラ地方、ポニの大峡谷。
険しい岩山に囲まれた道を、1人の女性が歩いていた。
小柄な体に、整った顔立ち。
すれ違えば誰もが思わず振り返ってしまうような美人だった。
女性は歩きながらスマートフォンを取り出し、Poketterを開いた。
画面を眺めているうちに、ふと手が止まる。
……カロスオープン。
女性はそのまま自分の予定を確認した。
来週の予定は、ぽっかりと空いている。
しばらく画面を見つめてから、女性は口元を緩めた。
「……行こっか。カロスまで。」
その声に、肩に乗っていたエモンガが顔を上げた。
そして、露骨に嫌そうな表情を浮かべる。
「のんびりしたいん?」
エモンガはこくりと頷いた。
「ダメー!カロスオープン出まーす!」
女性は楽しそうに笑うと、エモンガの頭を優しく撫でた。
エモンガは小さくため息を吐き、やれやれといった様子で肩を落とす。
どうせ、何を言っても聞いてくれない。
ずっと一緒にいるからわかっていた。
女性はスマートフォンをしまうと、再び歩き出した。
その肩には、諦めたような顔のエモンガが乗っている。
2人が次に目指すのは、カロス地方、ミアレシティだった。
♢♢♢
ポケモンリーグ、チャンピオンルーム。
セナはソファからゆっくりと立ち上がった。
そろそろ防衛戦の時間だった。
心底だるそうに体を起こすと、ポケットからスマートフォンを取り出す。
……今日は何分で終わるかな。
ぼんやりと画面を眺め、時間を確認した。
セナは以前よりも強くなっていた。
ルカリオ、グライオン、バンギラス、グレンアルマ、チラチーノ、そしてヒスイゾロアーク。
217番道路で捕まえたゾロアークが加わり、黄色いリオルは手持ちから外れていた。
今のリオルは、チャンピオンルームで暮らしている。
公式戦に出ることはないものの、セナとの特訓は今も続けていた。
リオルは誰よりも強くなりたがっていた。
セナのためじゃない。
ただ、自分が強くなりたい。
その気持ちは手持ちから外れた今も変わっていなかった。
セナ自身もリオルのことは高く評価している。
不要だと思ったことは一度もない。
いらないのなら逃がせばいいしボックスに預けることだってできる。
でも、セナはそうしなかった。
セナにはルカリオがいる。
リオルがどれだけ強くなっても、セナのもとで鍛え続ける限り、どうしてもルカリオと同じ戦い方になってしまう。
そして、決定的な違いがあった。
リンクできるのはセナとルカリオだけ。
誰とでも繋がれるわけではない。
セナと一緒にいてもリオルはルカリオを超えられない。
それでもこのリオルは強くなる。
誰よりも強くなりたがっている。
そして、実際に強くなっている。
だからこそセナも答えを出せずにいた。
これからどうするのか。
リオルをどうするのか。
まだ何も決まっていない。
セナは、今日もリオルと一緒に特訓を続けていた。
♢♢♢
セナはチラチーノを頭の上に乗せ直す。
リオルをチャンピオンルームに残し、セナはスタジアムへ向かった。
頭の上では、チラチーノがいつも通りくつろいでいる。
セナも特に気にすることなく歩き続け、やがてスタジアムの入口へたどり着いた。
一度、小さなあくびをする。
そして、チラチーノを頭に乗せたまま、ポケモンリーグスタジアムへと足を踏み入れた。
♢♢♢
試合が終わった。
今日の記録は6分24秒。
セナは小さく息を吐くとそのまま踵を返した。
最近は、挑戦者に声をかけることもなくなっていた。
飽きたからだ。
別に見下しているわけではない。
ただ、興味がなかった。
目の前に誰が立っているのか。
どんな思いでここまで来たのか。
そんなものはもう何も見えていなかった。
セナが気にしているのは、撃破タイムと被弾回数。
それだけだった。
戦い方も、少しずつ変わっていた。
以前のように相手の意表を突くこともない。
ルカリオとのリンクすら使わなくなった。
相手を見る。
攻撃を避ける。
そしてこっちの攻撃を当てる。
ただ、それを繰り返すだけ。
そこに駆け引きも工夫も必要なかった。
セナにとってもはやバトルではない。
ただの作業だった。
セナはチャンピオンルームに戻ると、いつものようにモニターをつける。
最近は、生活の流れもすっかり決まっていた。
朝、目を覚ます。
Poketubeを眺めながら朝食を取り、防衛戦があればスタジアムへ向かう。
試合を終えれば、チャンピオンとしての事務仕事を片づける。
取材にも応じるし、テレビ番組に呼ばれることもあった。
昼になればチャンピオンロードへ出向き、ポケモンたちと特訓を重ねる。
修練場でのトレーニングも欠かさない。
食事は基本的に1人だった。
Poketubeを見たいから。
そんな毎日を繰り返す。
セナとルカリオは強くなっていた。
昨日よりも速く。
昨日よりも鋭く。
技の精度も、体の動きも、少しずつ磨かれていく。
でも、それがどれほどの強さなのかもうわからなかった。
防衛戦では誰もついてこない。
リンクを使う必要もない。
相手の攻撃を避け、こちらの攻撃を当てれば、それで終わる。
何度勝っても何も変わらない。
それでもセナは特訓をやめなかった。
今日もチャンピオンロードへ向かい、ルカリオと体を動かす。
明日も同じことをする。
強くなっているのかもわからない。
それでも、自分だけは自分の強さから目を離さなかった。
セナとルカリオは、ただ強くなり続けていた。
誰もいない場所で、誰にも届かない強さを積み重ねていく。
セナだけが強くなっていった。
@sinnoh_league_news
セナ、チャンピオン防衛戦40連勝達成
@pika_pika_25
セナおめでとう
@chino_love
セナ君強すぎるし可愛いし
@battle_watch
試合内容は全然可愛くないけどな
@league_viewer
もう試合見なくてもいいかなって思い始めてる
@sinnoh_fan08
今日の挑戦者の初手って誰だったっけ?
@forgetful_trainer
忘れたわ
全然思い出せん
@smile_again
そういえばセナが最後に笑ってるの見たのいつだっけ
@champion_fan
笑えば可愛いのにね
@battle_days
最近セナ自身がつまらなさそうなんだよな
@lucia_waiting
ルシア早く来ないかな
@sinnoh_challenger
いやまだ無理だろ
おいおい見たいとは思うけど