ポケットモンスター 金星の星跡   作:セナ@ハーメルン

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36話 ルシアVSツキアシ

観客席で、ルシアは2人の攻防から目を離せずにいた。

 

半年前とは違う。

 

今なら、2人が何を狙っているのか、どうしてその技を選んだのか、手に取るようにわかる。

 

リノのクチートは、おそらくこのままじゃれつくを続けるつもり。

 

メガバシャーモの背中に張り付いていれば、かそくでどれだけスピードが上がっても関係ない。

 

それに、じゃれつくには相手の攻撃力を下げる効果もある。

 

うまくいけばバシャーモの攻撃力まで下げられる。

 

一方、ツキさんのかみなりパンチは、おそらく麻痺狙い。

 

直接振りほどけなくても、クチートを麻痺させれば拘束を解けるかもしれない。

 

そうなれば、かそくでスピードが上がったバシャーモが有利になる。

 

……楽しい。

 

ルシアの頬が自然と緩む。

 

トップトレーナー同士のバトルってこんなにすごいんだ。

 

選ぶ技にはちゃんと理由があって、それをポケモンたちが形にしている。

 

相手もそれを考えて次の技を選ぶ。

 

そして今は自分もその攻防の中にいるような気がした。

 

何を考えているのかわかる。

 

どうしてそう動いたのかわかる。

 

……わかるって楽しい。

 

♢♢♢

 

リノ「クチート!耐えてじゃれつく!」

 

メガクチートが歯を食いしばった。

 

背中にしがみついたまま、メガバシャーモへの攻撃を続ける。

 

ツキ「2発目!かみなりパンチ!」

 

メガバシャーモが拳を強く握り締めた。

 

激しい電撃が拳を包み込み、体を捻りながら背後のメガクチートへ叩き込む。

 

実況「2発目!かみなりパンチがメガクチートを貫きます!」

 

メガクチートの体が大きく揺れた。

 

それでも脚を捕まえたツノは離れない。

 

ツキ「跳べ!」

 

メガバシャーモが片足で地面を蹴った。

 

一気に跳び上がると、背中に張り付いたメガクチートも引っ張られるように宙へ浮かんだ。

 

リノ「耐えて!」

 

2匹は絡み合ったまま、スタジアムの上空へと達する。

 

その高さから、メガバシャーモが落下を始めた。

 

ツキ「3発目!」

 

メガクチートはまだ離れていなかった。

 

メガバシャーモの脚を捕まえる。

 

背中にしがみついたまま、2匹の体が地面へ向かって急降下していく。

 

実況「2匹が絡み合ったまま落下!さらにメガバシャーモの拳に電撃が集まっています!」

 

リノは落下する2匹を見つめたまま、動かなかった。

 

ツキは楽しそうに笑っていた。

 

上空からの急降下。

 

そして、3発目のかみなりパンチ。

 

これなら確実に剥がせる。

 

メガバシャーモが体を捻り、電撃をまとった拳を振り抜いた。

 

実況「かみなりパンチがメガクチートを捉えた!そのまま地面に叩きつけられます!」

 

激しい衝撃とともに、メガクチートの体が地面に叩きつけられた。

 

スタジアムの中央から大量の土煙が舞い上がり、2匹の姿を覆い隠した。

 

ついに、メガクチートの拘束が解けた。

 

メガバシャーモの脚からツノが離れ、メガクチートの体が地面を何度も跳ねる。

 

2匹の距離が大きく開いた。

 

舞い上がった土煙の中、メガクチートがゆっくりと体を起こそうとする。

 

リノはその姿を見つめながら、思考を巡らせた。

 

……次の一手は。

 

そう考えた時には、もう遅かった。

 

ツキ「とびひざげり!」

 

ツキの声がスタジアムを駆け抜けた。

 

次の瞬間、土煙の中からメガバシャーモが飛び出した。

 

凄まじい速度で距離を詰め、その膝が起き上がろうとしていたメガクチートを捉える。

 

実況「とびひざげりが直撃!メガクチートが吹き飛ばされます!」

 

メガクチートの体が大きく弾き飛ばされ、地面を何度も跳ねた。

 

リノ「……嘘でしょ。」

 

リノは呆然とツキを見つめた。

 

拘束が解けたばかりだった。

 

2匹の間には距離もあった。

 

しかも、とびひざげりは外せば自分がダメージを受ける技。

 

土煙で相手の位置も正確には見えないはずだった。

 

それなのに、ツキは迷わなかった。

 

一瞬の躊躇もなく、指示を飛ばしてきた。

 

……間に合わなかった。

 

リノの視線がゆっくりと落ちる。

 

倒れたメガクチートの体から光が溢れ、メガシンカが解除されていった。

 

審判「クチート戦闘不能!」

 

審判「よって勝者、ツキ選手!」

 

ツキはゆっくりと拳を握った。

 

そして笑顔のまま顔を上げた。

 

実況の声がスタジアムに響き渡った。

 

その直後、観客席から凄まじい歓声が沸き起こる。

 

準決勝第二試合が終わり、ついに決勝の顔ぶれが決まった。

 

謎の女性トレーナー、ツキ。

 

そして、シンオウの新星、ルシア。

 

ミアレスタジアムは決勝を前に大きな熱気に包まれていた。

 

決勝戦は15分後。

 

カロスオープンもいよいよ最後の一戦を残すのみとなった。

 

@kalos_open_2019

カロスオープン決勝ルシアVSツキに決定

 

@emolga_fan

ツキって人めっちゃ美人じゃない?

誰か知ってる人いる?

 

@kalos_viewer

いや全然わかんない

 

@moonlight_27

なんかどこかで見たことある気がするんだよな

 

@lucia_support

ルシア優勝しそう!

 

@battle_lovers

最近ルシアの試合見てるけど見てて楽しいいいバトルするよね

 

@waiting_final

決勝15分後か

待てないんだけど

 

♢♢♢

 

実況「カロスオープン、ついに決勝!ルシア選手対ツキ選手の対戦です!」

 

実況の声が響き渡ると、ミアレスタジアムに凄まじい歓声が沸き起こった。

 

コートの両側に立ったルシアとツキアシが、正面から向かい合う。

 

ルシア「……え。」

 

ルシアは思わず目を見開いた。

 

……この人、知ってる。

 

準決勝では長い髪が顔にかかっていて、よく見えなかった。

 

けれど、今は違う。

 

目の前に立つ女性の顔を見つめたまま、ルシアは固まってしまった。

 

ツキアシ「……来たな。ユイんとこの。」

 

ツキアシは楽しそうに口角を緩めた。

 

その言葉に、実況も思わず耳を澄ませる。

 

ツキアシ「ウチ、Lune最強の赤担当、ツキアシ。」

 

ルシアは何も言えなかった。

 

ただ、目の前のツキアシを見つめている。

 

実況「……え?」

 

ツキアシはゆっくりと実況席の方へ振り向いた。

 

ツキアシ「……本名だと注目集まってやりづらいのよ。未だにね。」

 

実況「……ツキ選手の正体はLuneの赤担当、ツキアシさんだそうです。」

 

実況は戸惑いながらも、どうにか言葉を紡いだ。

 

観客席にもざわめきが広がっていく。

 

先ほどまで決勝の開始を待ちわびていた観客たちは、突然明かされたツキの正体に驚きを隠せずにいた。

 

ルシアは目の前のツキアシを見つめていた。

 

息を呑むほどの美人だった。

 

小柄な体なのに、凄まじい存在感がある。

 

Luneで活動していた頃の映像は、何度も見てきた。

 

肩に乗っているエモンガだって知っている。

 

……なんで気づかなかったんだろう。

 

生で見るのは初めてだった。

 

この人が、Lune最強のトレーナー。

 

そして、Lune解散のきっかけになった人。

 

ルシアは手の中のモンスターボールを強く握り締めた。

 

……でも、関係ない。

 

相手が誰だって、やることは変わらない。

 

私は負けない。

 

勝てる。

 

ここまで強くなったんだから。

 

ルシアは顔を上げ、まっすぐツキアシを見据えた。

 

ツキアシ「いい顔やん。」

 

ツキアシが楽しそうに口元を緩める。

 

2人の視線が正面からぶつかった。

 

審判「使用ポケモンは1体!それでは両者、ポケモンを!」

 

ルシア「出てきて!ムクホーク!」

 

ツキアシ「来い!グソクムシャ!」

 

2人のモンスターボールから、同時に光が弾けた。

 

ルシアの前にはムクホーク。

 

そして、ツキアシの前にはグソクムシャが降り立った。

 

2匹がコートの中央を挟んで向かい合う。

 

『ムクホークきた!』

 

『ルシアのムクホークだ!』

 

観客席から凄まじい歓声が沸き起こった。

 

ルシアを知る観客にとって、ムクホークは別格だった。

 

デンジのライチュウと引き分けたライチュウ。

 

でんきテラスタルしたエテボースに食らいつき、最後には勝利したゴウカザル。

 

どちらも強烈な印象を残していた。

 

けれどムクホークは違った。

 

デンジの切り札、エレキブルを相手に、ほとんど何もさせず、正面から圧殺した。

 

あの凄まじい破壊力は、今も観客の記憶に残っていた。

 

ルシア「……。」

 

ルシアは向かい側のグソクムシャを見つめた。

 

……バシャーモじゃない。

 

てっきり、さっきのバシャーモがエースだと思っていた。

 

まさか、エースを温存してる?

 

少し考えてから、ルシアはムクホークへ視線を戻した。

 

……でも、いいや。

 

それなら、勝たせてもらう。

 

向かい側で、ツキアシは楽しそうに笑っていた。

 

ルシアが強いことは知っている。

 

準決勝までのバトルも見てきた。

 

それでも、負ける気はしなかった。

 

自分が一番強い。

 

その自信は揺らがなかった。

 

実況「さあ、ついに決勝戦!ルシア選手は圧倒的な破壊力を誇るムクホーク!対するツキアシ選手はグソクムシャを繰り出しました!果たしてカロスオープンを制するのはどちらなのか!」

 

審判「それでは、バトルスタート!」

 

ツキアシ「メテオに乗れ、少女よ。」

 

ツキアシのキーストーンが眩い光を放った。

 

その光がグソクムシャへと伸び、巨大な体を包み込んでいく。

 

実況「メガシンカ!グソクムシャがメガシンカします!」

 

ルシアはぐっと拳を握った。

 

……バシャーモ以外にもメガシンカを使うんだ。

 

やっぱり、この人は他のトレーナーとは一味違う。

 

やがて光が弾け、メガグソクムシャが姿を現した。

 

メガグソクムシャが大きく咆哮する。

 

ルシア「ムクホーク!ブレイブバード!」

 

実況「ムクホークのブレイブバード!ルシア選手の代名詞となっている一撃です!」

 

ムクホークが大きく翼を広げ、空へと舞い上がった。

 

ルシアはその姿をまっすぐに見つめる。

 

……まだ、私とムクホークは新しい戦い方を知らない。

 

そして、ツキアシさんは強い。

 

出し惜しみして勝てる相手じゃない。

 

初手から、全力で。

 

ムクホークが上空で大きく旋回した。

 

その瞬間だった。

 

メガグソクムシャが地面を蹴る。

 

次の瞬間には、その姿が消えていた。

 

ツキアシ「であいがしら。」

 

メガグソクムシャが4本の脚で一気に踏み込み、凄まじい勢いで跳び上がる。

 

高く飛んだムクホークの、さらに上空へ。

 

実況「え、」

 

鋭い爪が振り下ろされた。

 

メガグソクムシャの一撃がムクホークを捉え、その体を真下へ叩き落とす。

 

ムクホークは凄まじい勢いで地面に激突した。

 

ツキアシ「……ふふ。」

 

ルシアは何も言えなかった。

 

実況も言葉を失い、観客席からも声が消えていた。

 

誰もが、地面に倒れたムクホークを見つめている。

 

メガグソクムシャは静かに着地すると、ツキアシの前へ戻った。

 

何事もなかったかのように、堂々と立っている。

 

あまりにも一瞬だった。

 

何が起きたのか、誰も整理できていなかった。

 

ただ、ツキアシだけが楽しそうに笑っていた。

 

その肩に乗るエモンガも、満足そうにしていた。

 

ツキアシ「『であいがしら』。」

 

ツキアシ「開幕だけ先制で動ける超大技。もう撃てんからそんなビビらんでいいよ。」

 

ツキアシはそれだけ言うと、ニヤニヤ笑った。

 

地面に倒れていたムクホークがゆっくりと体を起こす。

 

ルシアはそんなムクホークを確認すると、向かい側のツキアシへ視線を移した。

 

……なんなのこの人。

 

わざわざ技のことを教えてくれた。

 

しかもめっちゃ楽しそう。

 

なんだか余裕たっぷりだし。

 

でも、不思議と意地悪な感じはしなかった。

 

ただ、本当に楽しそうだった。

 

……私は勝ちたいのに。

 

実況「ムクホークが起き上がりました!まだバトルは始まったばかりです!」

 

ルシアはもう一度、ムクホークへ目を向けた。

 

ルシア「ムクホーク!ブレイブバード!」

 

ムクホークが地面を蹴り、大きく翼を広げた。

 

一気に高度を上げ、再びスタジアムの上空へと舞い上がる。

 

ルシアはその姿をじっと見つめた。

 

……今度こそぶち抜く。

 

ムクホークのブレイブバードが、メガグソクムシャへ一直線に迫った。

 

『ブレイブバード!』

 

『撃ち抜け!』

 

観客席から歓声が爆発する。

 

ツキアシ「受け止めろ。」

 

メガグソクムシャが両腕を前へ突き出した。

 

次の瞬間、凄まじい勢いで突っ込んできたムクホークを正面から受け止めた。

 

4本の足が地面を踏み締める。

 

強烈な衝撃に押され、メガグソクムシャの体が少しずつ後退していく。

 

それでも両腕は離さなかった。

 

足元を滑らせながら、少しずつムクホークの勢いを殺していく。

 

実況「あのブレイブバードが……!」

 

ムクホークの突進が鈍っていく。

 

そして、ついに止まった。

 

実況「完全に勢いを失いました……!」

 

ルシア「……え。」

 

ルシアは呆然と目の前の光景を眺めた。

 

威力が落ちたわけじゃない。

 

調子が悪いわけでもない。

 

いつも通りの全力のブレイブバードだった。

 

それなのに。

 

あのブレイブバードが正面から受け止められた。

 

実況「……ブレイブバードを受け止めました。」

 

ツキアシ「……いいねぇ。」

 

ツキアシの口元が歪んだ。

 

もちろん、ダメージは入っている。

 

それでも、倒れるまでには至らなかった。

 

メガグソクムシャは4本の足でしっかりと地面を踏み締め、当然のように立っていた。

 

ルシア「……。」

 

……まさか、バシャーモがエースじゃない?

 

しかもブレイブバードまで通用しない。

 

さっきみたいに何か特別な戦術で止められたわけじゃない。

 

ただ、普通に。

 

当たり前のように正面から止められた。

 

ルシアにとってブレイブバードは切り札だった。

 

ムクホークと磨き続けてきた最強の一手。

 

それを真正面から受け止められた。

 

しかも相手は笑っている。

 

ルシアは一度、ゆっくりと呼吸を整えた。

 

……落ち着いて。

 

ブレイブバードは通用しない。

 

いや、通用しないわけじゃない。

 

ダメージは入っている。

 

でも、このままじゃダメ。

 

何か変えないと。

 

ルシア「ブレイズキック!」

 

ムクホークの蹄に激しい炎が灯った。

 

実況「ブレイズキック!むし・はがねタイプのメガグソクムシャには効果抜群です!」

 

ムクホークが地面を蹴り、一気に距離を詰めた。

 

燃え盛る蹄を振り上げ、メガグソクムシャへ叩き込む。

 

ツキアシ「きゅうけつ!」

 

ツキアシが拳を握った。

 

メガグソクムシャは左腕を突き出し、炎をまとった蹄を受け止めた。

 

激しい炎が左腕へ燃え移る。

 

実況「メガグソクムシャ、ブレイズキックを受け止めた!」

 

そのままメガグソクムシャが右腕を動かした。

 

鋭い爪がムクホークの背中へ突き刺さる。

 

ムクホークが苦しそうに声を漏らした。

 

むしタイプの技とはいえ、メガグソクムシャほどの攻撃力を持つポケモンが使えば、致命傷にもなりかねない。

 

ムクホークは歯を食いしばりながら蹄を引き抜いた。

 

そして、メガグソクムシャから距離を取った。

 

背中に受けた一撃の痛みをこらえながら、再び正面へ向き直った。

 

実況「メガグソクムシャが……。」

 

実況の声が途切れた。

 

メガグソクムシャの体に刻まれていた傷が、少しずつ癒えていく。

 

きゅうけつ。

 

相手に与えたダメージに応じて、自らの体力を回復する技だった。

 

ムクホークが叩き込んだブレイブバード。

 

そして、効果抜群のブレイズキック。

 

確かにダメージは与えていた。

 

けれど、その傷がきゅうけつによって回復していく。

 

ルシア「……。」

 

……これ、どうすればいいの?

 

ルシアはムクホークを見つめながら、必死に考えた。

 

ブレイブバード、インファイト、はがねのつばさ、そしてブレイズキック。

 

今のムクホークが使える技は、相手に近づかなければ当てられない。

 

でも、近づけば受け止められる。

 

そしてきゅうけつで回復される。

 

……勝ち方がわからない。

 

ルシアは唇を噛んだ。

 

強くなったつもりでいた。

 

いや、多分、本当に強くなったんだと思う。

 

それなのに。

 

やっと壁を乗り越えたと思ったらその先にはもっと高い壁が待っていた。

 

ルシアはそれでも思考を止めない。

 

どうすれば攻撃を通せるのか。

 

どうすればあの回復を上回れるのか。

 

でも、答えは出なかった。

 

ゆっくりと顔を上げると、メガグソクムシャを見つめる。

 

メガグソクムシャは当然のように立っていた。

 

息を切らしている様子もない。

 

ツキアシ「……どしたん?体調でも悪い?」

 

ツキアシが楽しそうに笑いながら声をかけてきた。

 

ルシア「……。」

 

ルシアは何も答えなかった。

 

ただ、手の中の拳を強く握り締めた。

 

♢♢♢

 

ツキアシは、苦しそうな表情を浮かべるルシアを見つめていた。

 

凄まじいブレイブバードだった。

 

そして受け止められた時の動揺ぶり。

 

……今まではあれで勝ってきたんだろう。

 

実際、メガグソクムシャじゃなければ倒れていた。

 

それくらいあのムクホークは強い。

 

でも、それだけじゃトップのレベルでは通用しない。

 

……もう、ウチの勝ちかな。

 

ツキアシ「グソクムシャ、つるぎのまい!」

 

メガグソクムシャが両手を強く握り締めた。

 

全身に力がみなぎり、闘志が一気に高まっていく。

 

実況「…つるぎのまい。メガグソクムシャの攻撃力が跳ね上がります。」

 

実況の声がスタジアムに響き渡った。

 

その声には絶望すら混じっていた。

 

ただでさえムクホークの攻撃を受け止めるメガグソクムシャがさらに攻撃力を引き上げた。

 

ルシア「ムクホーク!」

 

ルシアは拳を強く握り締めた。

 

……今できることだけ考えろ。

 

ルシアは正面のメガグソクムシャを見据えた。

 

ルシア「地面に向かってブレイズキック!」

 

ムクホークの蹄に激しい炎が灯った。

 

そのまま脚を振り上げると、地面へ向かって勢いよく叩きつけた。

 

炎が足元から広がり、熱気が周囲へと押し寄せる。

 

実況「地面にブレイズキック!?いったい何をしているんでしょうか!」

 

困惑した実況の声がスタジアムに響いた。

 

ルシアは拳を握り締めた。

 

……本命を通すために、別の技を使う。

 

今の私にできることは、それだけ。

 

ブレイズキックの熱気がスタジアムを包み込んでいく。

 

ツキアシ「構えろ。」

 

メガグソクムシャが姿勢を低く落とした。

 

4本の足を地面に踏ん張らせ、正面のムクホークを見据える。

 

ツキアシにも次に何が来るのか読めていなかった。

 

ルシアが何を考えているのかわからない。

 

だったら攻撃が来た瞬間に対応する。

 

ツキアシは表情を崩さずに、地面に蹄を突き立てたムクホークから視線を逸らさなかった。

 

ルシア「ムクホーク!そのまま突っ込んで!」

 

ムクホークが大きく咆哮した。

 

実況「はい!?」

 

実況から驚いたような声が飛び出す。

 

ムクホークは炎をまとった蹄を前に突き出したまま、メガグソクムシャへ向かって一直線に飛び出した。

 

蹄から溢れる炎が進行方向へ広がり、凄まじい熱気がスタジアムを駆け抜けていく。

 

実況「ムクホークが蹄を突き出したまま突進!炎をまとってメガグソクムシャへ向かっていきます!」

 

ツキアシ「なんそれ……あっつ!」

 

熱気がツキアシの足元にまで押し寄せた。

 

メガグソクムシャの周囲にも炎が広がり、4本の足を踏ん張らせていた地面が熱に包まれていく。

 

ルシアは拳を握り締めた。

 

……これなら。

 

メガグソクムシャは炎に弱い。

 

ブレイブバードを受け止められたのは、4本の足で大地を踏み締めていたから。

 

だったら、その踏ん張りを奪えばいい。

 

炎の熱気で足元を攻めれば、もうさっきみたいには受け止められない。

 

ムクホークは蹄を突き出したまま、メガグソクムシャの横を一気に通り過ぎた。

 

そして、その背後へ回り込む。

 

ルシア「ブレイブバード!!!!!!」

 

ムクホークが大きく翼を広げた。

 

ツキアシ「……ッ!」

 

今度は受け止められない。

 

実況「ムクホークが背後を取った!メガグソクムシャ、足元の熱気で踏ん張れません!」

 

ムクホークが一気に加速した。

 

背後から迫る凄まじい突進。

 

メガグソクムシャが体を向け直すよりも早く、その一撃が背中を捉える。

 

メガグソクムシャの巨体が地面から浮き上がり、前方へ大きく吹き飛ばされた。

 

ブレイブバードの衝撃で何度も地面に叩きつけられる。

 

そして、そのまま大きく吹き飛ばされる。

 

実況「メガグソクムシャの巨体が吹き飛ばされた!ルシア選手、ここで初めてムクホークの攻撃力を発揮しました!」

 

観客席から凄まじい歓声が沸き起こった。

 

メガグソクムシャは地面に両腕をつくと、ゆっくりと体を起こした。

 

ツキアシ「……こいつ。」

 

ツキアシが目を細める。

 

……ちんたらやってたら引きずり込まれる。

 

さっさと終わらせる。

 

実況「……メガグソクムシャ、当然のように立ち上がった!まだバトルは終わりません!」

 

ルシアはムクホークを見つめた。

 

全身は傷だらけで、肩を大きく上下させながら息をしている。

 

もう限界だった。

 

ツキアシ「つるぎのまい!」

 

メガグソクムシャが全身に力を込めた。

 

両腕を握り締めると、体から激しい闘志が迸る。

 

実況「ここでメガグソクムシャ、つるぎのまい!対するムクホークは満身創痍です!」

 

ルシア「ムクホーク!ブレイズキ」

 

ツキアシ「アクアジェット。」

 

ルシアが言い終わるよりも早く、メガグソクムシャは踏み込んでいた。

 

巨体を包むように水流が巻き起こり、一気にムクホークへと迫る。

 

実況「……え、メガグソクムシャがムクホークの」

 

実況の声がスタジアムに届くよりも早かった。

 

水流をまとったメガグソクムシャがムクホークを捉え、そのまま地面へ叩き落とした。

 

激しい衝撃がスタジアムに広がる。

 

ムクホークは地面に倒れたまま、ゆっくりと体を起こそうとした。

 

翼に力を込め、何とか立ち上がろうとする。

 

でも、体は持ち上がらない。

 

力が抜け、そのまま静かに目を閉じた。

 

審判「ムクホーク戦闘不能、グソクムシャの勝ち。」

 

審判「よって勝者、ツキアシ選手!」

 

ツキアシがゆっくりと拳を握った。

 

その瞬間、観客席から大きな歓声が巻き起こる。

 

実況「……決着です!ルシア選手も食らいついたものの、最後はツキアシ選手がアクアジェットで攻め切りました!カロスオープン優勝はツキアシ選手!」

 

ルシアの体から、ふっと力が抜けた。

 

そのまま膝から崩れ落ちる。

 

……悔しい。

 

もちろん負けたことは悔しかった。

 

でも、今一番心に響いているのはそこじゃなかった。

 

最初に、圧倒的な力の差を見せつけられた。

 

それでも考えて、何とか新しい戦い方を見つけた。

 

確かに食らいつけたと思った。

 

なのに、その先にまだ上があった。

 

……これがLune最強。

 

これがさらに上のステージ。

 

強くなったつもりだった。

 

でも、まだ足りなかった。

 

……私はまだ弱い。

 

ルシアは膝をついたまま、ゆっくりと顔を上げた。

 

向かい側から、ツキアシが歩いてくる。

 

ツキアシはルシアの前で足を止めると、そっと手を差し伸べた。

 

ツキアシ「……おつ。」

 

それだけ言うと、楽しそうに笑った。

 

@kalos_open_news

カロスオープン決着

決勝はツキアシ選手がルシア選手を破り優勝

 

@battle_fan2019

ツキアシ強すぎない……?

 

@lune_memories

Luneの時から強かったよ

 

@kalos_trainer

知らねえよ

 

@sinnoh_lune_fan

カロスじゃあんまり有名じゃないんか

シンオウではめっちゃ有名だったんだけど

 

@emolga_love

強くて美人ってすごいわ

 

@champion_watch

ツキアシってチャンピオン級じゃない?

 

@lucia_supporter

ルシアもよくあそこまで食らいついたよ

 

@stadium_viewer

めっちゃ満足感ある試合だった

ルシアお疲れ様

 

 

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