Fate/shelter rain   作:茶碗

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雨上がりの街

朝の騒がしい嵐が去り、衛宮邸には再びしんとした静寂が戻っていた。

大河と桜を休日の学校へ送り出し、玄関の引き戸を閉めた士郎は、大きく息を吐き出して居間へと戻った。

ちゃぶ台の脇では、キャスターが腕を組み、不機嫌そうに柱へ寄りかかっている。身に纏っているのは士郎の貸したグレーのスウェットとフリースだが、その立ち姿から漂う冷徹な神秘の気配は、少しも薄れていなかった。

「……さて。騒がしい部外者も消えたことだし、約束通り土蔵を検分させてもらうわよ、マスター」

「ああ。案内するよ」

 

居間を出て渡り廊下を抜け、庭の奥に佇む土蔵へと向かう。

前夜の冷たい雨はすっかり上がり、冬の澄み切った青空が広がっていた。濡れた敷石を踏みしめながら、士郎は重い土蔵の引き戸に手をかけ、横へと滑らせた。

キィ、と錆びた蝶番が鈍い音を立てる。

冬の朝の冷気が澱む土蔵の中に、埃っぽさと錆びた鉄、そして機械油の匂いが立ち込めていた。壁際に積み上げられた壊れた家電や木箱、床に散らばる工具類、そして中央に敷かれた古びた茣蓙。

キャスターは土間に一歩足を踏み入れるなり、その端正な眉をこれ以上ないほど露骨にひそめた。

「……何よ、この豚小屋は。魔術工房を名乗るのもおこがましいわ。これならアトラムの悪趣味な神殿の方がまだ数倍マシだったわね」

「工房じゃない、ただの物置だって言ったろ。親父がここは自由に使っていいって言ってたから、俺が日課の鍛錬に使ってるだけだ」

「日課の鍛錬、ね」

キャスターは軽蔑を隠そうともせず、爪先で床に転がる鉄屑を小突いた。

「いい、坊や。魔術師にとって工房とは己の小宇宙、外界からの干渉を断ち、神秘を純化するための城よ。こんな隙だらけの掘っ立て小屋、陣地作成の基点にすらなりはしないわ。……仕方ないわ。本格的な陣地作成とあなたの回路の調律は、もう少し準備を整えてからにするわ」

キャスターはくるりと身を翻し、土蔵の外へと歩き出した。

「ところで坊や。昼餉と夕餉の備蓄はあるのでしょうね? まさかまた、あの泥臭い根菜の煮込みを啜らせる気ではないでしょうね」

「いや、昨夜ので野菜も肉もほとんど使い切った。買い出しに行かないと、今夜の飯は何もない」

その言葉を聞いた瞬間、キャスターの紫の瞳に、獲物を値踏みするような光が宿った。

「……なら、ちょうどいいわ。案内なさい、坊や。この極東の街の市場を検分してあげるわ」

「え? あんたも来るのか? でも、その格好じゃ……」

「馬鹿ね。誰がこのまま出歩くと言ったのよ」

キャスターが指先を鳴らすと、ふわりと大気が歪んだ。

士郎が貸しただぼだぼのフリースのフードが深く頭部を覆い、青紫の豊かな長髪はすっぽりと内側へと収められた。神代の隠蔽術式がごく薄く纏われ、遠目には「少し小柄で、寒がりな外国人の女性」にしか見えないよう偽装が施される。

「これなら文句はないでしょう? さあ、行くわよ。今の状態なら食事も重要な補給よ。サーヴァントである私の腹を満たす義務が、マスターであるあなたにはあるのだから」

尊大に言い放つ彼女の背中を見送りながら、士郎は苦笑して上着を羽織った。

 

坂を下り、新都へと続く大橋の手前、深山町の商店街へと足を踏み入れる。

雨上がりのアスファルトに冬の陽光が反射し、昼前の商店街は買い物客で賑わっていた。

八百屋、魚屋、精肉店、乾物屋。軒先に並ぶ色とりどりの商品と、威勢のいい店主たちの呼び声。

その雑踏の中を、キャスターは警戒を露わにした猫のように、士郎の半歩後ろを歩いていた。深く被ったフードの奥から、鋭い紫の瞳が左右を忙しなく観察している。

「……騒がしい街ね。防護の結界もなしに、これほどの人間が無防備に密集しているなんて。これなら、一握りの竜牙兵を放つだけで半刻も経たずに全滅させられるわ」

「物騒なこと言うなよ。平和な街なんだから」

「平和、ね。いつ敵の魔術師やサーヴァントに急襲されるかも分からない状況で、よくそんな間抜け面を晒していられるものだわ」

キャスターが毒づいた、その時だった。

「よっ、士郎! 今日も買い出しかい?」

威勢のいい声が響いた。八百屋の店主が、店先から笑顔で手を振っている。

「こんにちは、大将。今日は何がいい?」

「大根と白菜が安くて美味いよ! あと、泥付きの蓮根もいいのが入ってる。……おや? 後ろのお嬢さんは、誰だい? えらい別嬪さんに見えるが」

店主の好奇の視線がキャスターに向けられた瞬間、キャスターの身体が微かに強張った。

士郎は咄嗟に笑って間に入る。

「親父の知り合いで、外国から来てるんだ。寒さに弱くてさ」

「へえ! 切嗣さんの知人かい! ならサービスしとかねぇとな。ほら士郎、大根一本と柚子、おまけで持ってきな!」

「いいのか大将? いつも悪いな、ありがとう!」

「気にすんなって! その代わり、また店の裏の荷物運び手伝ってくれよな!」

「ああ、いつでも呼んでくれ!」

親しげに笑い交わし、紙幣を渡して大根と野菜の入った袋を受け取る士郎。

その一連のやり取りを、キャスターはまるで未知の古代儀式でも見るかのような、信じがたい目で見つめていた。

店を離れた後、キャスターが呆れたように小声で呟く。

「……信じられないわね。あなた、あんな見ず知らずの平民に媚びを売って、一体何のリターンを得るつもりなの? あの程度の野菜、暗示の魔術一つで店ごと奪い取れるでしょうに」

「奪うわけないだろ。大将とは昔からの付き合いだし、困った時はお互い様だ。お金を払って、美味い野菜を分けてもらう。それが普通だよ」

「お互い様、ね……。打算のない施しなど、この世に存在するはずがないのに。阿呆な子供ね、本当に」

キャスターは吐き捨てるように言ったが、その声には先ほどのような刺々しさはなかった。

商店街を抜ける道中、キャスターの視線がふと、和菓子屋の店先に並ぶ色鮮やかな金平糖や、少女服の展示へと吸い寄せられたのを、士郎は見逃さなかった。

(……意外と、可愛いものが好きなのか?)

神代の大魔女という肩書きとは裏腹に、その横顔には、年相応の女性らしい素朴な好奇心が宿っていた。

 

衛宮邸に戻ると、士郎は買い込んできた食材を台所の調理台に並べた。

今夜の献立は、魚屋で手に入れた新鮮な鯖を使った「鯖の塩焼き」、大根と蓮根と鶏肉の「筑前煮」、そして豆腐と若布の「澄まし汁」だ。

手を洗い、エプロンを締め直した士郎がまな板に向かおうとした時——

「……どきなさい、坊や」

背後から、ツンとした声が割り込んできた。

振り返ると、キャスターが腕まくりをして調理台の前に立っていた。朝と同じ、花柄のエプロンを身に着け、紫の長い髪を後ろで無造作に束ねている。

「キャスター? 手伝ってくれるのか?」

「勘違いしないでちょうだい。朝の借りを返すだけよ。神代の魔術師たるこの私が、たかだか極東の素人料理如きに敗北したままなど、耐え難い屈辱だわ。今夜の夕餉は、この私が主導してあげる」

自信満々に胸を張るキャスターに、士郎は思わず苦笑した。

「手伝ってくれるのは助かるけど……和食の味付けは大丈夫か?」

「侮るんじゃないわよ。朝の失敗は、調味料の配合比率を把握していなかっただけよ。手順さえ理解すれば、神の技を誇る私にとって造作もないことだわ」

「よし、じゃあ頼むよ。まずは筑前煮の野菜の下ごしらえからいこうか」

 

士郎はまな板の上に大根と人参、蓮根を置いた。

「乱切りにして、大根と人参は角を少し削るんだ。『面取り』って言って、煮崩れを防いで味を染み込みやすくする」

「面取り……要するに、外周の多面体を均等に切削すればいいのね」

キャスターは包丁を手に取った。

次の瞬間、士郎は言葉を失った。

トトトトトトトッ!

閃光のような包丁の軌跡。目にも留まらぬ速度で刃が走り、まな板の上の大根が一瞬にして寸分の狂いもない正多面体へと切り分けられていく。人参の角はミクロン単位の正確さで削ぎ落とされ、蓮根は花びらの形へと美しく飾り切りされていた。

「……っ、すげえな。相変わらず手の器用さはプロ以上だ」

士郎が感嘆の声を漏らすと、キャスターは得意げに鼻を鳴らした。

「ふん、当然よ。工房でどれほどの魔術礼装を加工してきたと思っているの? 物質の幾何学的な成形など、児戯に等しいわ」

「じゃあ次は、出汁を取ろう。鍋に水を張って、昆布を入れてあるから……沸騰する直前に昆布を引き上げて、鰹節を一気に入れるんだ」

「沸騰する直前……? それは何度のことなの? なぜ完全に沸騰させてはいけないのよ」

キャスターが怪訝そうに眉をひそめる。

「沸騰させすぎると、昆布のぬめりとえぐ味が出ちゃうんだよ。お湯の底から小さな泡がフツフツと浮いてきたら引き上げるのが目安だ」

「フツフツ……? 定量的な基準を示しなさい、定量的な基準を!」

「いや、料理の出汁にそこまで厳密な数値は求めないって。目で見て、泡の立ち方で判断するんだよ」

「な、何なのよその曖昧な感覚は……!む、難しい……」

普段は高速神言で天変地異の魔術を操る大魔女が、現代のステンレス鍋の底を凝視し、「泡が……泡が浮いてきたわ! これがフツフツなの!? 引き上げるべきなの!?」と大真面目にパニックを起こしている。聖杯が与える一般常識に料理がなんで入っていないのよ!

その必死な姿が可笑しくて、士郎は思わず吹き出しそうになった。

「笑うんじゃないわよ! 私をからかっているの!?」

「ごめんごめん。ほら、ちょうどいいタイミングだ。昆布を上げて、鰹節を入れよう」

 

出汁の香りが台所いっぱいに広がる中、続いてメインの「鯖の塩焼き」へと移った。

魚焼きグリルに火をつけ、塩を振った鯖の切り身を網に乗せる。

「鯖は皮目から焼くんだ。中火でじっくり火を通して、皮に焦げ目がついてきたら裏返す」

キャスターは不満げに腕を組み、魚焼きグリルの小窓をじっと覗き込んだ。

青白いガスコンロの炎に照らされる、彼女の横顔。

その瞳には、先ほどまでの苛立ちはなく、パチパチと音を立てて脂の落ちる魚を、どこか珍しい宝物でも見るように見つめる光が宿っていた。

だが——。

「……ちょっと、坊や。煙が出てきたけれど、これで合っているの?」

「えっ!?」

士郎が慌ててグリルを引き出すと、中からモクモクと香ばしい煙が立ち上った。

「あちゃー……ちょっと目を離した隙に、皮が焦げちゃったか」

グリルの網の上には、皮の一部が真っ黒に焦げ、パチパチと音を立てている鯖の姿。

キャスターの顔から、一瞬にして血の気が引いた。

「……っ、し、失敗よ」

キャスターはがっくりと肩を落とし、エプロンの裾をぎゅっと握りしめた。紫の瞳に、深い羞恥と悔しさが滲んでいる。

「……たかだか小魚一匹すら満足に焼き上げられないなんて。……ふん、笑えばいいわ。こんな炭屑、生ゴミ箱に放り込んで捨てなさい。最初から私が台所に立つべきではなかったのよ」

自嘲するように吐き捨て、顔を背けるキャスター。

拗ねてしまった彼女を見て、士郎は優しげにため息をつく。

士郎は無言のまま、菜箸で焦げた鯖を皿へと盛り付けた。

そして、自分の茶碗に白米をよそい、居間のちゃぶ台へと運んだ。

「ほら、キャスター。ご飯できたぞ」

「……捨てなさいと言ったでしょう。そんな焦げた生ゴミ、食べられるはずがないわ」

「ゴミなもんか。魚の焦げた皮ってのは、一番香ばしくて美味いんだよ」

士郎はちゃぶ台の前に座り、手を合わせた。

「いただきます」

迷いなく箸を伸ばし、真っ黒に焦げた皮ごと、鯖の身を大きく一口ちぎって口へと運んだ。

咀嚼する。

パリッとした苦味の奥から、脂の乗った鯖の旨味と、塩の塩梅が口いっぱいに広がった。

「ん……美味い!」

士郎は満面の笑みを浮かべ、炊きたての白米を口いっぱいに掻き込んだ。

「見てみろよキャスター。身はふっくらしてて、皮のパリパリした苦味がちょうどいいアクセントになってる。筑前煮の味付けも、出汁が効いてて最高だ」

「……な」

キャスターは居間の入り口に立ち尽くしたまま、信じられないものを見る目で士郎を凝視していた。

「う、嘘をつかないで。そんな焦げた魚が美味しいはずが……」

「嘘だと思うなら、食べてみろよ。ほら」

士郎が小皿に鯖の身を分けて差し出すと、キャスターは恐る恐る歩み寄り、ちゃぶ台の前に正座した。

躊躇いがちに箸を取り、小さくちぎった身をそっと口に含む。

——パリッ。

微かな香ばしい苦味。それに続く、ジューシーな魚の脂と、染み渡るような塩気。

そして、自分が出汁のタイミングにパニックになりながら取った鰹と昆布の旨味が、筑前煮の大根の奥底までじんわりと染み渡っていた。

「…………」

言葉が出なかった。

美味しい。極東の泥臭い家庭料理。宮廷の豪奢な宴席とも、神々の供物とも違う、ただ人間が生きるために身体を温めるための、素朴で優しい味。

「どうだ? 焦げてても、美味いだろ」

士郎が屈託なく笑いかける。

その笑顔を見つめながら、キャスターの胸の奥に、トクンと温かい熱が広がっていった。

(……何なのよ、この小僧は)

失敗しても、責められない。 役に立たなくても、切り捨てられない。 焦げた魚すら「美味い」と笑って綺麗に平らげてくれる。

何千年も昔。コルキスの宮殿の片隅で、まだ神々の呪いに狂わされる前。母や妹たちと共に笑い合いながらパンを焼いていた、遠い遠い幼き日の記憶が、胸の奥で淡く蘇る。

「……ふん」

キャスターは視線を逸らし、小さく呟いた。

「……少し焦がしたくらいの方が、極東の粗野な魚にはお似合いよ。感謝なさい、私の絶妙な火加減の賜物なのだから」

悪態をつきながらも、彼女の箸は止まらなかった。

二人が囲むちゃぶ台には、温かい湯気と、柔らかな沈黙が満ちていた。

 

夕食を終え、食器の後片付けを済ませた後。

士郎は熱いほうじ茶を淹れた二つの湯呑みを盆に乗せ、居間から繋がる縁側へと向かった。

夜の帳が下り、庭には静まり返った冬の冷気が満ちている。

縁側の端に腰を下ろし、夜空を見上げていたキャスターの隣に、士郎は湯呑みを置いた。

「はい、お茶。冷えるから温まってくれ」

「……気が利くことね」

キャスターは湯呑みを受け取り、両手で包み込むようにして指先を温めた。立ち上る湯気が、彼女の青紫の髪を微かに揺らす。

見上げる冬の夜空には、凍てつくような星々が瞬いていた。

しばらくの間、二人は無言のまま、湯呑みから伝わる温もりを味わっていた。

静寂を破ったのは、士郎の方だった。

「……なあ、キャスター」

「何かしら」

「あんたって、昔から料理は苦手だったのか?」

「……無礼なことを聞くわね」

キャスターはジロリと士郎を睨んだが、怒る気力もないのか、深く息を吐き出して夜空へと視線を戻した。

「苦手というわけではないわ。……ただ、私のいた神話の時代では、料理とは奴隷や料理番が整えるものであって、王女たる私が自ら火を熾すことなど稀だったのよ。私が学ばされたのは、薬草の調合や毒の抽出、神々への生贄の儀礼……生きるための料理ではなく、生かすか殺すかの魔術だけだったわ」

自嘲の滲む響き。士郎は静かにその横顔を見つめた。

「そうか。……俺はさ、親父と二人暮らしだったから、自然と料理を作るようになったんだ」

「切嗣、とかいうあなたの養父ね」

「ああ。親父は魔術師だったけど、私生活は驚くほど不器用な人でさ。料理を作らせると全部焦がすか、味のしない茹で野菜しか出てこなかった。だから、俺が作るしかなかったんだよ」

士郎は懐かしそうに目を細め、お茶を一口啜った。

「でも、親父は俺が作った飯を、いつも美味そうに食ってくれた。『士郎の飯は世界一だな』って、笑いながらさ。……俺、十年前の火災で全部失って、自分が何のために生きてるのか分からなかったけど。親父が笑ってくれる顔を見て、誰かの役に立てるのが、嬉しかったんだと思う」

士郎の淡々とした告白に、キャスターは微かに目を見張った。

誰かの役に立ちたい。誰かを笑顔にしたい。

その愚直すぎる動機は、魔術協会の魔術師たちが見れば「狂気」と一蹴される類のものだ。自己犠牲の果てに破滅する、呪われた歪み。

だが、その歪んだ善性が、今夜、自分という行き場を失った裏切りの魔女に、温かい雨宿りの場所を与えてくれたのも事実だった。

「……本当に、救いようのないお人好しね、あなたは」

キャスターは静かに湯呑みを置き、横に座る士郎を見つめた。

その眼差しには、出会った時の冷酷な警戒はもはや欠片も残っていなかった。

「いいこと、坊や。自分を勘定に入れない魔術師なんて、戦場では真っ先に使い捨てられて死ぬのがオチよ。……聖杯戦争は、そんな綺麗事だけで生き残れるほど甘くはないわ」

「……わかってるよ。命を懸けて戦うんだろ」

「分かっているなら結構よ。……明朝、朝食が終わったら、今度こそあの土蔵であなたの回路を叩き直してあげるわ。その錆びついた魔術回路、私の手で調律してあげる。……覚悟しておきなさい、坊や」

どこか挑戦的で、だが確かな庇護の温もりを帯びた魔女の言葉。

士郎は驚いたように目を瞬かせ、やがて、心からの笑みを浮かべて頷いた。

「ああ。よろしく頼むよ、キャスター」

冬の冷たい夜風が庭の木々を揺らしていたが、縁側に並ぶ二人の間には、穏やかな竈の灯火のような温もりが、確かに灯っていた。

 

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