ミスズのエミュはガバガバスカスカ、点線はアホみたいに多い
あと不定期
連邦矯正局、そこには様々な生徒が収監されている。
自治区内で有名な不良から、大規模破壊を起こすテロリスト。果ては連邦生徒会の幹部まで……
「今回はお受けいただいて……本当にありがとうございます」
矯正局長、藍原ミスズが申し訳無さそうに話す。
『七囚人』、かつて矯正局史上初の集団脱獄を果たした、七人の凶悪犯。彼女らが捕まっていないのは、矯正局やヴァルキューレにそのための戦力が無い、と言う単純な理由だ。こういった事態のため建てられたSRTの力は落ち、今では3年生が矯正局に収監されている始末。
だからこそミスズは、彼を呼んだ。
"いやいや、私が力になれることなら"
『先生』。
アビドスやミレニアムの問題を解決し、エデン条約の締結に大きな影響を与え、SRTの不良生徒を更生させ、世界までも救った『大人』である。
ミスズの視線が、デスクの上へ置かれた書類へと移った。左端がホチキスで止められた数枚の紙、表紙には大きく『特別収監者の施設外活動における監督協力』と書かれている。
仰々しい表題ではあるが、つまりは一時釈放する囚人の付き添いをしてほしい。と言う旨であった。そのような事例は、彼も何度か相手にしていた。いわゆる更生支援、不良生徒の抱えている問題などを解決すると同時に、犯した罪の清算のためボランティア活動を共に行うものである。
だが、今回の件は少し違っていた。
目的は囚人の更生ではなく、監視と管理。
凶悪犯が暴走しない為の、ストッパーとしての役割だ。
***
矯正局の通路を、私たちは横並びで歩き続けた。一般房を通り抜け、奥の奥へと進んでいくと、一つの扉に辿り着く。それは部屋の扉と言うよりも、さながら巨大な金庫の様な、鉄塊と言うべき代物だった。
厳重そうな見た目とは反対に、看守の一人すら立っていない。
"ここには看守を配置していないの?"
「はい。何というか……必要がないんです」
確かに、これだけの扉があれば脱走することは容易じゃないだろう。それこそ戦車で突っ込みでもしない限り破ることはできなさそうだ。
「……私は、矯正局に居る方々の事を『生徒』として扱っています。決して罪人ではなく……悪いことをしたただの生徒」
扉の前に立ち、改まった言い方でミスズは話す。
ミスズの考えは、私のそれとよく似ていた。
生徒はあくまで生徒であり、必要以上の責任を負うべきではない。私の、先生の信念ともいえるもの考えだ。
「……ですが、この世には居るんです。はなから話の通じない……根本から何かが違うと思わされるような、『囚人』が」
"これから会う子は……その、囚人ってこと?"
「囚人……なのでしょうか。囚人は収監されているから、収監できるから囚人なのに……」
妙に歯切れの悪い回答に、私は首をかしげる。
"収監は出来ているんじゃ?"
「書類上は、そうなっていますけど……実際は違うんです。彼女がここにいるのはただの気まぐれで、彼女が脱獄しようとしても、私達にはそれを止める術がありません」
ミスズは扉横のキーパッドに一枚のカードをかざし、その後数桁の数字を打ち込んだ。その見た目からは想像できないほど小さな音が扉から鳴り、ゆっくりと横にスライドしていく。
その奥にあったのはもう一枚の、先ほどよりは薄い金属の扉。一人の囚人に対して二重扉を設けるなんて、その奥にいる相手が何者なのか、様々想像が掻き立てられる。
だが、その相手は余りにも予想から外れた姿をしていた。
「……だれぇ……?」
ベッドの上に寝転がっていた少女は、前が見えているのか怪しいほど細く開いた目で、こちらの方へ顔を向ける。
囚人どころか、高校生かも怪しい外見だ。手足は小鹿のように細く、血色も悪い。肩や手首などの間接は、肉がついていない為か少し角ばっている。
寝巻代わりに来ている囚人服はサイズがあっておらず、はだけてその下の肌着まで露出していた。
そしてその部屋も、異質と言わざるを得ない。
牢屋と言うよりもホテルの部屋を思わせる。寝心地が良さそうなベッドと、暖色系の間接照明。40インチのテレビまで備え付けられている。
「その……お客さんといいますか」
「おきゃくさん……じゃあ、およう服ちゃんとしないとぉ……」
少女はてこずりながらも囚人服のボタンを閉め、眠たげな笑顔で私の胸辺りを見つめる。
その後に顔、腕、足と視線を移し、しばらくの間なめ回すように私の全身を眺めていた。
「そ、その……こちらが先生にご同行していただく……『日向夏クサハ』さんです」
"……この子が?"
あれだけ厳重な扉を用いているのに「収容出来ない」と言わしめるほどの囚人とは、どう頑張っても思えなかった。
いや、もしかすればアスナやコユキの様に、特殊な能力を持った生徒なのかもしれない。それか、弱々しいのは見た目だけで、実はものすごく力が強いとか。
「ミスズおこしてぇ……つかれたのぉ……」
「疲れたって、寝てただけでは……」
「横になってただけだからぁ……つかれたぁ……」
どうやら中身も弱々しいらしかった。
クサハの体を持ち上げているミスズの肩を、少し不安になりながらとんとんと叩く。
"本当にこの子が、七囚人に勝てる切り札なの?"
私が事前に受けていた説明と、彼女本人は大きく乖離していた。
シャーレを巻き込んでまで彼女を外に出す理由、それは脱獄した七囚人達を武力制圧し矯正局へ再収容する事である。その『武力』が彼女、日向夏クサハのはず……であったのだが。
「戦力的には十分過ぎる程ですから、そこは心配しなくても大丈夫ですよ」
ミスズはベッドにちょこんと座らせた後、改めて私の方を振り向く。
「それでぇ、この人だれなのぉ……?」
「この方は以前お話しした件の手伝いに来てくれた、連邦捜査部シャーレの先生ですよ」
「……まえの件、まえのぉ……なんだっけぇ?……うーん…………………あ、おそとにいくやつぅ?」
「そう、お外に行く件です」
クサハが話すテンポは、私やミスズよりも遥かに遅い。言葉がゆっくりなのもあるが、何より言葉と言葉の間が大きいのだ。
彼女はベッドに座ったまま、喋るのと同じくらいにゆっくり、私に向かって手を差し出す。
「それじゃぁ……よろしくねぇ、せんせ……」
細枝の様なその手を、私は優しく握り返した。
***
「おいお前、あれ聞いたか?」
「あれってなんすか……ったくパイセンはいつもいつも主語が足んないんすよまじでいっつもいっつも」
矯正局の監視室、二人の看守が壁一面の監視カメラ映像を眺めながら、そんな会話を交わしていた。
片方は頬杖をつきながら缶ジュースを飲み、片方はポテチをつまみながらの職務である。
「あれだよあれ、一時釈放の話。囚人番号888番の」
「‥…888番って、特別収容房のアイツっすよね?」
「そうそう、なんかシャーレの先生としばらく施設外活動らしいぞ」
「はあマジでバッカじゃないんすか!?あんなの外に出したら何が起こるのやら……!」
看守の一人が椅子をずり落ちて頭を抱えた。換気扇の低音がうるさく響く中、彼女はポテチをまとめて口に入れ、口の中をぼりぼりと鳴らす。
「はっ、お前が外の連中の心配をするなんて珍しいじゃないか」
「…………仕事増やされるじゃんかぁ……くそぉ……」
「カス看守が。大人しく残業してろお前は」
彼女は飲み終わった缶を潰し、そのまま後ろでゴネている看守へと投げつける。「痛っ!」と声をあげて、彼女はそのまま床へ落ちていった。
「ま、実際やばいよなぁ……局長は何を考えてるのやら……」
「何があっても先生がなんとかしてくれる!みたいに思ってんじゃないっすかね。ほらあの人、結構楽観的なとこあるじゃないっすか」
「んな程度でストッパーになるなら特別扱いしてねえっての」
「アタシに言われても困りますよぉ」
「お前に言ってねえよ」
半笑いで返しながら、缶を潰した方の手で看守は一つの書類を取り出す。それはかつて、日向夏クサハと言う少女が犯した罪の記録であった。
表紙の紙をめくりながら、看守は少しの間の後話を続ける。
「……知ってるか?あいつの異名」
「知らねーっすけど……」
「特別やばい囚人にはな、周りが勝手に異名を付け始めんだ。厄災の狐とか……慈愛の怪盗とか」
「それが、888番にもついてんすか?」
「ああ。誰が言ったか、『矯正局のラストエリクサー』」
「つまりはうちの最終兵器……そんで、一度使ったらもう戻れない。嫌になるくらいピッタシだ」
モブ紹介
看守(先輩)
中々のエリートでくたびれシゴデキ。髪は短く適当に切っている。カフェインの過剰摂取で動悸が出てきてからが仕事だと思っている節がある。看守(後輩)は仲の良い友達程度に思っている。
看守(後輩)
不真面目だが仕事はできる口。ストレートでミディアムなヘアーをしている。ジャンクフードを主食、家庭的な食事をご褒美としている不健康児。看守(先輩)とは中等部からの仲で、家族のノリで接している。