ハイスクールD×D ~自由気ままなセルゼン兄妹~ 作:sho_greenhouse
俺の魂を素材にした新生フリードの物語をともに楽しみましょう!
『まもなく、駒王~。駒王~』
車内に流れるアナウンスで、俺はゆっくりと目を覚ました。
窓の外には、見慣れない街並みが広がっている。
どうやら、目的地に到着するらしい。
軽く伸びをしてから隣へ目を向けると、案の定、妹は爆睡を続けていた。
まったく、よく寝る奴だ。
このまま寝かせてやりたい気持ちもあるが、そういうわけにもいかない。
俺は妹の肩を軽く揺すった。
「おーい、リント。着くぞ」
「ん~、あと五分……」
「五分もないっての。起きろ、リント。置いてくぞ?」
「むっ!? 待って待って、置いてかないで! おにい!」
パチッ、という擬音が聞こえてきそうな勢いで、妹――リント・セルゼンが飛び起きた。
その反応速度、寝起きとは思えない。
普段からそれくらい素早く起きてくれれば、俺も苦労しないんだが。
「……おにい、ひどい」
「何がだよ」
「可愛い妹を置いていこうとした」
「起きなかったらな」
「起きたもん!」
「なら問題ないだろ」
「むぅ……」
頬を膨らませるリントを横目に、俺は荷物を手に取った。
相変わらずのリアクションに呆れるばかりだ。
もっとも、そんなやり取りを微笑ましく思っている俺がいることは、本人には内緒である。
「ほら、行くぞ」
「はーい!」
こうして俺たち兄妹は、また一つ、新しい街へと足を踏み入れた。
***
「うーん、慣れると快適ですなあ。こういうの、なんて言うんだろ」
駅を出てしばらく歩いたところで、リントがそんなことを言い出した。
両腕を頭の後ろで組み、のんびりと辺りを見回している。
「住めば都、だな」
「定住してないけどね」
「そうだな」
実にもっともな指摘だった。
俺たち兄妹は、各地を転々とする生活をしている。
理由は広い世界を見て、学ぶため、といったところか。
まあ、要するに旅だ。
かつては教会に所属し、祓魔師として働いていた俺たちだが、今はその看板も下ろしている。
別に、教会そのものが憎くなったわけじゃない。
ただ、決められた場所で、決められた仕事をこなし、決められた日々を送る。
そんな生活に、少々飽きてしまったのだ。
それに、シグルド機関での訓練も、楽しい思い出ばかりとは言い難い。
むしろ、あんな生活はもう御免である。
だったら、いっそ外の世界を見て回ろう。
そう考えて教会を離れる際、リントにも声をかけた。
結果が、今のこの生活だ。
「ねえ、おにい。そういえば、なんで駒王に来たんだっけ?」
「ん? ああ、イリナの故郷がこの辺だったろ」
「あー、そういえば!」
「せっかく近くまで来たんだし、どんな街か見ておこうと思ってな」
「なるほどねー。じゃあ、イリナちゃんに会いに行くの?」
「いや、別に約束してるわけじゃないぞ。そもそも、今ここにいるかも分からんし」
「そっか」
紫藤イリナ。
教会にいた頃、何度か任務を共にしたことのある少女だ。
ゼノヴィアともども、なかなか印象に残る奴だった。
今頃、何をしていることやら。
「ま、せっかくだ。観光でもしていこうぜ」
「さんせーい!」
リントが元気よく片手を上げる。
こういうとき、こいつは実に素直だ。
「で、どこ行く?」
「それを今から決めるんだよ」
「えー、ノープラン?」
「自由な旅ってのは、そういうもんだ」
「おにい、たまに適当だよね」
「褒め言葉として受け取っておこう」
「褒めてないよ!?」
そんなくだらない会話を交わしながら、俺たちは街を歩き始めた。
***
駒王町は、思っていたよりも落ち着いた街だった。
住宅街があり、商店があり、学校がある。
少なくとも、表向きはごく普通の地方都市といったところだ。
もっとも、裏事情を知っている身としては、少々見え方が違う。
ここはグレモリー家の令嬢が管理する悪魔の縄張りだ。
その辺りの事情は、教会にいた頃に耳にしている。
だからといって、こちらから何かするつもりはない。
俺たちは観光客だ。
わざわざ面倒事に首を突っ込む理由もない。
……向こうから飛び込んでこない限りは、だが。
「おにい、おにい!」
「今度は何だ?」
「見て見て、あの二人!」
リントが通りの向こうを指さした。
視線を向けると、そこには若い男女が歩いていた。
男の方は、いかにも普通の男子高校生といった風貌。
対する女の方は、なかなかの美少女だ。
どうやらデートの最中らしい。
「……で?」
「いやー、青春ですなあ」
「お前も十分若いだろうが」
「そういう意味じゃないって!」
リントが呆れたように肩をすくめる。
まったく、何がそんなに面白いんだか。
そう思って視線を戻しかけた、そのときだった。
「……ん?」
妙な感覚が引っかかった。
俺は足を止め、もう一度二人を見る。
正確には、女の方だ。
外見は普通の人間。
振る舞いも、傍目には恋人とのデートを楽しむ少女そのもの。
だが――。
「……おにい?」
リントが俺の顔を覗き込んできた。
「どうしたの?」
「いや、ちょっとな」
「ちょっと?」
「気になることができた」
俺は改めて、遠ざかっていく男女の背中を見つめた。
気のせいなら、それでいい。
だが、もし俺の勘が当たっているなら。
「リント」
「ん?」
「予定変更だ。ちょっと散歩の続きをしようぜ」
「……あの二人を追いかけるの?」
「人聞きが悪いな。たまたま行く方向が同じだけだ」
「うわー、すっごい言い訳」
「何とでも言え」
リントは少し考えるように首を傾げたあと、ひょいと俺の隣に並んだ。
「ま、いっか。おにいがそう言うなら」
「よし、決まり」
さて。
ただのデートなら、何も問題はない。
俺たちはそのまま観光に戻ればいいだけだ。
だが、あの女が俺の思っている通りの存在なら、話は別である。
願わくば、俺の勘違いであってほしいところだ。
せっかく自由気ままな旅を楽しんでいるんだからな。
……もっとも。
こういうときに限って、嫌な予感というものは当たるらしい。
バカな! 妹だと!? あいつ、妹いたのか!?
く、原作の第1巻の途中までしか読んでなかった俺には手厳しいな
ところで、紫藤イリナとゼノヴィア? 原作キャラ? わからんな!