ナザリック地下大墳墓第九階層スイートルームの執務室でモモンガはあるNPCと対面していた。
ナインズ・オウン・ゴール時代たっち・みー達と一緒に取りに行った拠点NPC作成用のワールドアイテム<創世の書>で作成したNPCだ。
このワールドアイテムを入手した当初はただ拠点lv を使用せずにNPCを作成出来るアイテムだと認識していたがそれに加えて特別な効果を有していた。
このアイテムの説明にはこう記されている。
「世界に存在するあらゆる生命の理を記述し、新たな存在として世界に登録する権能を持つワールドアイテム。」
使用者は白紙の頁に創造するNPCの姿、種族、能力、人格、来歴、忠誠の対象を記述することで、その存在を生み出すことができる。
その効力は通常のNPC作成システムを逸脱しており、設定次第では既存の種族に分類されない独自種族さえ創造可能ただし、強大な存在ほど膨大な創造ポイントを使用する。
ひとたび創造されたNPCは単なる召喚獣ではなく、拠点に所属する固有の存在として扱われる。」
ここでいう創造ポイントはこのアイテムが持つ独自のシステムでポイントは何を使用するのかというと金である。
ナザリック内にあるユグドラシル通貨を使用するのではなくリアルの金を使用することとなる。
使用レートは1ポイント=1円
まあこれは良いのだが全ての設定項目に金が掛かるのでノーマルな100lvのNPCでも10万以上掛かる。
これに独自の種族や強大な存在などの設定を付け加えると最新のゲーミングPCぐらいの値は張るわけだ。
おかげで一緒にいたナインズ・オウン・ゴール時代のメンバーのほとんどがこのアイテムを譲ってきた。
俺としては初めて取ったワールドアイテムが他のギルドメンバーから用無しになって嬉しいやら悲しいやら複雑な気持ちになったのを覚えている。
「随分金は掛けたがこうしてみると無駄ではなかったと感じるな。」
目を見遣るとそこに居たのは黒衣をまとった長身の女だった。
すらりと伸びた手足、無駄のない細い腰、まっすぐに通った背筋。仕立てのいいロングコートは燕尾のように裾を引き、白いシャツの襟元が、白磁のような首筋をいっそう際立たせている。
男装めいた装いでありながら、いや、だからこそ、その美しさは隠しようもなく匂い立っていた。
髪は雪のように白い。短く整えられたその白に墨を一筋流したような黒が混じり、顔の両脇へ落ちる毛束が、彫刻のように整った頬の線を縁取っている。
高く通った鼻梁、薄く形のよい唇、陶器めいてなめらかな肌。どの線をなぞっても、そこに一切の迷いがない。神が気まぐれではなく、確かな意図をもって造り上げた顔――そう思わせるほどの、冷ややかな完璧さだった。
そして、目長い睫毛に縁取られた切れ長の瞳の奥には、赤い十字が刻まれていた。バツ印のような瞳孔は禁忌の烙印のようでありながら、なぜか見る者を強く惹きつけてやまない。恐ろしい、と思う。それでも目が離せない。美と畏怖とが、その双眸の中でひとつに溶け合っていた。
名は「クロワ」
フランス語で「十字」。X字の瞳にちなんでつけた名前だ。
種族はアンデッドと吸血鬼のハーフでlvは当然100である。
彼女の設定にはこう書かれている。
「身寄りのない者を拾い上げ、己の「家族」として育て上げる統率者。
部下からは「お父様」と呼ばれる
情報を何よりも重んじ、相手の嘘・欲・恐れを見抜いて利用する
至高の御方々への忠誠は絶対であり、その意に背く者には一切の慈悲を与えない
規律を破った「子ども」には厳しく罰を与えるが、決して見捨てない。甘いものが苦手。」
(最後の一文はお茶目な要素として付け加えたがタブラさんの「アルベドはビッチである」よりは余程ましだな。)
(能力はどんな風に設定してたっけな…ステータスをもう一度確認してみるか。)
クロワ
― 紅月の召使 ―役職:ナザリック地下大墳墓 諜報・統制部門統括住居:第九階層の一角「暖炉の家」属性:邪悪〔カルマ値:-350〕種族レベル:紅月の血族(ブラッドムーン・リネージ)など 計30レベル職業レベル:ハイ・コマンダー、スパイマスター、インクイジター、ブラッド・リーパー など 計70レベル創造主:モモンガ(ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」のギルド長。ギルド戦の作戦立案を担当していた軍師タイプ)
【能力】組織運営:配下NPCや傭兵モンスターを独自の諜報網として運用。ナザリック外の情報収集を一手に担う。
尋問:相手の精神状態を読み取るスキルを持ち、拷問に頼らず情報を引き出すことを好む(ニューロニストとは方針の違いからやや距離がある)
戦闘:紅い炎をまとった鎌状の長柄武器で戦う近接型。自身のHPを代償に火力を跳ね上げる、危険と隣り合わせの戦闘スタイル。
(原作のモモンガだと諜報や隠密などをこなせるNPCがハンゾウ次回居なかったからな…
80lvだと転移後世界じゃ比肩する存在がほぼいないとはいえ80と100の違いはユグドラシルだととんでもなく大きい。
それに諜報は国を運営する上で欠かせない要素だ
それを問題なく任せられて戦闘もこなせる存在がいるのはかなり助かりそうだからな。
まあ国を運営するってなっても頭が良いアルベドやデミウルゴス、クロワに全面的に任せるけどな!)
クロワと対面しながら今後について考えていると不意にユグドラシル内のメッセージアプリにメッセージが届く。
「ん?なんだ?ペロロンチーノさんからか。そういえば今日は久しぶりにギルドメンバー全員でワールドエネミーを討伐しに行く日だったか。
よし、装備を整えて合流するか。そうと決まれば宝物殿に行く必要があるな。何はともあれ待たせているようだし急ぐか。」
・
アインズが宝物殿に転移した瞬間、、視界を埋め尽くしたのは金色だった。山だ。比喩ではなく、文字通りの山。無数の金貨が幾重にも積み重なり、天井に届かんばかりの丘陵となって広がっている。その斜面のあちこちに宝石が無造作に埋もれ、紅玉が、蒼玉が、翠玉が、薄闇の中で静かに瞬いていた。王冠が転がっている。黄金の杯が半ば沈んでいる。人の世であれば国ひとつを購えるであろう品々が、ここではまるで砂利のように扱われていた。空気は重く、冷たい。
この宝物殿には、侵入者を拒む毒の大気が満ちている。正しき資格と備えを持たぬ者は、富に手を伸ばす前に息絶えるだろう。美しさと死が、ここでは同じ顔をしていた。
モモンガが顔を見渡すと少し離れたところに軍服と帽子を被ったのっぺらぼうがいた。
(パンドラズ・アクターは創造するかしないか、原作通りの設定にするかしないか迷ったんだが結局原作通りの設定のまま作成することに決めたんだよな…
原作との乖離が怖くて作成したんだがクロワがいる時点でって言われたらそこまでなんだよな。
まあ、パンドラズ・アクターも原作では有能だったし大丈夫だろ。
ドイツ語を無くすかは今でも悩むけど。)
「で、何しに来たんだっけ?ああ、そうだ。装備を整えに来たんだった。」
アイテムボックスがあるのにわざわざ宝物殿に来て装備を整える必要があるのか?と思うかもしれないがそれには理由がある。
それは、ここにある一部のアイテムが強力な効果を発揮する代わりに呪いがあるアイテムだからだ。
「このアイテム、アイテムボックスに入れられたら悪いとこ無しなんだけどな。まあ贅沢は言ってられないか。」
アイテム名
終焉の砂時計
持ち主の周囲で時間をわずかに狂わせる砂時計。アイテムボックスは時間が止まった空間なので、入れた瞬間に内部の時間停止と干渉し合い、中身ごと消滅する危険がある。
(これを相手に投げつければ時間を狂わせ動きを遅くすることが出来る強力なアイテム…
まあ、わずかに遅くする程度で完全停止には至らないんだが。
それでも強力であることは間違いない。ワールドエネミー戦は猫の手を借りたいほどなんだ。使えるアイテムはなんでも持っていくべきだよな。他の呪いアイテムは現状では持っていけないけど。)
「良し、そろそろペロロンチーノさん達の元に合流するかな。」
・
空が、割れていた。
ヘルヘイムの曇天に走った亀裂から、紅い光が滲み出している。
それは夜明けでも夕焼けでもない。世界そのものが傷口を開き、血を流しているような色だった。
「来るぞ」
ぷにっと萌えの声が、ボイスチャットに低く響いた。
亀裂の奥から、それは姿を現した。
月だ。紅く巨大な月が、ゆっくりと地上へ降りてくる。その表面には無数の眼が開き、地上の四十一人を一斉に見下ろした。
ワールドエネミー〈紅蝕の月 ブラッディ・セレネ〉。
出現から三日、挑んだギルドはすでに七つ。そのすべてが全滅していた。
「うっわ、キモっ。眼、何個あんのアレ」
「ペロロンチーノ、無駄口叩いてないで配置につきなさい」
「はいはい、姉ちゃん」
いつものやり取りに、何人かが小さく笑った。
緊張が、ほんの少しだけほどける。
モモンガは杖を握り直した。ギルド武器ではない、自分の神器級装備の重みが手に馴染む。
「作戦通りにいきましょう。第一段階、たっち・みーさんと武人建御雷さんで前線を。ウルベルトさん、詠唱は合図まで待ってください」
「わかってますよ、ギルド長」
ウルベルトが肩をすくめた。山羊の頭をした悪魔の姿が、紅い光を浴びて禍々しく揺れる。
紅い月が、吼えた。 音ではない。空間そのものが軋む振動が、全員のHPバーを一斉に削り取る。即死耐性を積んでいなければ、この咆哮だけで半数が消し飛んでいたはずだ。
「――行く」
純白の鎧が駆けた。たっち・みーの剣が月の表面を裂き、紅い飛沫が雨のように降り注ぐ。その背を守るように、武人建御雷の大太刀が迫りくる触手を薙ぎ払った。
「回復回します!」「バフ更新、あと十秒!」「左から眷属、数三十!」
声が飛び交う。四十一人が、ひとつの生き物のように動いていた。 モモンガは戦場全体を見渡しながら、次々と魔法を放つ。即座に味方の位置を確認し、穴が空きそうな場所へ死霊を召喚し、ちらりとHPバーを見ては指示を出す。
――楽しい。 ふいに、そう思った。
現実の自分は、明日も早朝から出社しなければならない、ただの会社員だ。けれど今この瞬間、ここには仲間がいる。背中を預けられる、四十人の友がいる。
「第二段階、来るぞ! 月が分裂する!」
ペロロンチーノの鋭い声。彼が事前に組んだ予測の通り、紅い月は七つに割れ、それぞれが異なる属性の光を帯びた。
「各班、担当の月へ! ウルベルトさん、今です!」「待ってましたよ――!」 ウルベルトの両腕に、黒い炎が渦を巻く。超位魔法の魔法陣が空を覆い、詠唱の文字が光の帯となって回転した。
「〈大災厄〉!」
世界が白く染まった。 轟音。衝撃。七つの月のうち三つが、光の中で砕け散る。
「
残り四つ!」「HP三割切った! 押し切れる!」「待って、全体攻撃の予兆! 防御態勢!」 残った月たちが、一斉に紅く脈打った。 まずい、とモモンガは直感する。この威力では、後衛の何人かが耐えきれない。 迷う時間はなかった。
「――〈あらゆる生ある者の目指すところは死である〉」
超位魔法。モモンガの背後に巨大な時計が浮かび上がり、その針が静かに時を刻みはじめる。
「モモンガさん、それ発動まで十二秒かかるって!」
「わかってます。だから――」
モモンガは、仲間たちを見た。
「十二秒、守ってください」
一瞬の沈黙。
そして、四十人分の笑い声が返ってきた。
「りょーかい、ギルド長」
「任せて」
「誰に言ってんですか」
たっち・みーが前に出る。ぶくぶく茶釜が盾を構える。ヘロヘロが粘体の身体を広げ、後衛を包み込むように覆った。
紅い光の奔流が、彼らを呑み込む。HPが削れる。一人、また一人とバーが赤く点滅する。それでも、誰ひとりとして退かなかった。 ――十、十一。
時計の針が、頂点を指した。
「――終わりだ」
すべての音が、消えた。
四つの月の無数の眼が、同時に閉じてゆく。紅い光が色を失い、灰となって崩れ落ちる。まるで最初から、そこには何もなかったかのように。
静寂のあと、画面いっぱいに討伐完了の文字が浮かんだ。
「……やった」「やったああああ!」
「ワールドエネミー討伐、うちが初ですよこれ!」
歓声が弾けた。誰かがエモートで踊り出し、誰かが意味もなく花火の魔法を打ち上げる。
モモンガは、骸骨の顔のまま、ただ静かにその光景を見つめていた。 表情など、このアバターには存在しない。 けれど、もしあったなら――きっと自分は今、泣きそうな顔で笑っているのだろう。
「みなさん、お疲れ様でした」
この夜のことを、モモンガは決して忘れない。
それが2度と味わえない輝きであっても。
・
討伐から十分後。ナザリック地下大墳墓、第九階層の円卓の間は、いつになく騒がしかった。
「じゃ、ドロップ品並べまーす」
ヘロヘロが粘体の腕を伸ばし、円卓の中央に戦利品を次々と置いていく。
紅い宝玉。脈打つように光る鉱石。月の眼を模した指輪。どれもが見たことのないアイテムばかりで、
そのたびに小さなどよめきが上がった。
「うわ、これデータクリスタル何個分?」
「素材だけで神器級三つは作れるな」
「指輪の効果見せて。……え、これ強すぎない? 運営バランス考えてる?」
「考えてたら、あんなボス出してこないでしょ」
笑い声が円卓を回る。 モモンガは、四十一の席がすべて埋まっている光景を、少しだけ長く眺めていた。全員が揃うのは、いつ以来だろう。
「……で、最後に、これ」
ヘロヘロの声が、わずかに低くなった。 円卓の中央に置かれたのは、一枚の布だった。 紅い。血を染み込ませたような、深く、濡れた紅。 ただの布に見えるのに、なぜか目を逸らしたくなる。表面が、かすかに呼吸するように波打っていた。
「〈紅月の聖骸布〉。ワールドアイテムじゃないけど、それに近い。……ただ、問題がひとつ」
「問題?」
「アイテムボックスに入らないんですよ、これ」
ざわめきが起きた。
「は? 入らないってどういうこと」
「説明文によると、装備した瞬間に着用者と同化して、所持品じゃなく身体の一部扱いになるらしい。で、装備してない状態だと、ボックスに入れようとしても弾かれる。持ち歩くなら、手に持つか誰かが着るしかない」
「呪いの装備じゃん、完全に」
「効果は?」
「全ステータス大幅上昇。ただし毎秒HPが減り続ける。外すには一回死亡するしかない」
沈黙が落ちた。
強い。間違いなく強い。けれど、まともに運用できる者はいない。そういう類の装備だった。
「……売る?」
「いや、ワールドエネミー初討伐の記念品だぞ。売るのはもったいない」
「宝物殿に飾っとく?」
「ボックスに入らないなら、宝物殿まで誰かが手で運ぶことになるけどね」
議論が転がりはじめたそのとき、モモンガは、自分でも驚くほど自然に口を開いていた。
「――あの。それ、俺がもらってもいいですか」
円卓の視線が、一斉にギルド長へ集まった。
「え、モモンガさんが? 珍しい」
「ギルド長、いつも分配で遠慮してばっかりなのに」
「自分で装備するんですか? アンデッドでHP減り続けるの、相性最悪じゃ……」
「いえ、装備するのは俺じゃなくて」
モモンガは少しだけ言い淀んでから、続けた。
「クロワに、持たせたいんです」
一瞬の静寂。
そして、ペロロンチーノが勢いよく身を乗り出した。
「あー、出た! モモンガさんの『お父様』!」
「その呼び方やめてください」
「だってあの子、設定文で配下から『お父様』って呼ばれてるんでしょ? 作った本人がそう呼ばれてるみたいなもんじゃん」
「違います。あれは、あの子が孤児たちの――」
「はいはい、親バカ親バカ」
どっと笑いが起きた。第九階層の一角、「暖炉の家」に佇む黒衣のNPCの姿を思い浮かべたメンバーが、何人か肩を震わせている。ギルド長が暇を見つけてはあの部屋に立ち寄り、装備を見直したり設定文を書き足したりしているのは、もはや公然の秘密だった。
モモンガは骸骨の顔のまま、こめかみのあたりを指で押さえた。表情がなくてよかった、と心から思う。
「……真面目な話、なんですよ。今日の戦い、みんなが俺を守ってくれたじゃないですか。十二秒」
笑い声が、少しずつ静まっていく。
「あの子の設定、『家族のためなら自分の身を削ることも厭わない』って書いたんです。でも、それを形にできる装備が、ずっと見つからなくて。……この布を見た瞬間、これだって思いました」
しばらく、誰も何も言わなかった。
やがて、たっち・みーが静かに頷いた。
「いいと思います。モモンガさんらしい」
「設定と装備が噛み合ってますね。そういうの、好きですよ」
タブラ・スマラグディナが、興味深そうに付け加えた。
「あの子の設定文、まだ余白ありましたよね。一文、足しましょうか?」
「……タブラさんに頼むと、とんでもない一文を足されそうなので遠慮しときます」
「失礼な」
また笑いが広がる。
ぶくぶく茶釜が、ぽよんと身体を揺らした。
「異議なーし。ギルド長、たまにはわがまま言っていいんだよ」
「異議なし」
「異議なし! 娘さんによろしく」「
だから、そういうのじゃないですって!」
モモンガは小さく咳払いをして、円卓を見渡した。
「では、〈紅月の聖骸布〉は、俺がいただきます」 紅い布を、両手で受け取る。骨だけの指の間で、布がかすかに脈打った。
・
その夜、メンバーが一人、また一人とログアウトしていったあと。
モモンガは布を手に、第九階層の廊下を歩いていた。
「暖炉の家」の扉を開ける。
薄明かりの中、暖炉の前に、彼女は立っていた。 白い髪に、黒い一筋。黒衣のロングコート。そして、赤い十字の瞳。
自分が何週間もかけて、ひとつひとつ形にしてきた姿だった。
「……お待たせ、クロワ」
返事はない。NPCは、話しかけられても何も答えない。わかっている。
それでもモモンガは、その肩に、そっと紅い布をかけた。
装備欄が更新される。〈紅月の聖骸布〉――装備中。 紅い布が、彼女の黒衣に溶け込むように馴染んでいく。
ふと、モモンガは手を止めた。
今、彼女の瞳が、わずかにこちらを向いた気がした。
装備変更に伴う、モーションの再読み込み。頭ではそう分かっている。けれど、自分は知っているのだ。この瞳がいつか本当に自分を見つめ、言葉を返してくる日が来ることを。「……まだだよ、クロワ」紅い布の端を整えながら、モモンガは小さく呟いた。「君が目を覚ますのは、もう少し先だ」暖炉の火が、赤い十字の瞳の奥で、静かに揺れていた。