VR ストライクウィッチーズ   作:エーリカ・ダイスキ

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ダブルエース

Berlin

November 18.1946

エーリカ ハルトマン

 

 

 

ハルもロミルダも、最初の戦いを生き残った。それは誇っていいと思う。

しかもネウロイを初出撃で初撃墜しているから相当なセンスの塊だったんだろうね。

あの時は酷い戦いが多くてね。補充兵から次々死んでいったんだ。

 

私も、初出撃は散々だったなあ……

 

あ、ここはオフレコでお願い。今考えても酷いものだったからさ。

 

 

結局三か月もしないうちに補充兵は2人を残していなくなっちゃった。

部隊じゃお荷物を背負って飛ばされるようなものだから即刻中止せよって。

 

トゥルーデも、優秀な人材を使い潰すような行為だって非難していたね。

でもその後も即席ウィッチは各部隊に導入されていったね。

理由?もちろん即席組なのにあっさりと生き残っては撃墜を掲げる2人のせいだよ。

別に2人は悪くないんだ。でも上層部は彼女達をみていけるって踏んだんだよね。

しかも部隊配置から最短でネウロイを5体撃墜してエースになっているからね。

 

 

でも最もな話だけど、そう簡単にエースがポンポン生まれるなんてことはない。扶桑の諺で『柳の下の二匹目のドジョウを狙う』って言うんだっけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

Bad Muskau Advanced airfield

 

January 22.1940

 

 

「まだ1月なのに暖かくない?」

 

「恋の季節だからじゃないかな?」

 

「そんなわけないでしょ」

一定のペースで走るこのエセ伯爵はどうしてこうも息を切らさないでいられるのだろうか。

そしてさらにその隣にいる新米のハルはどうして涼しい顔のままなのだろうか。

 

戦闘以外の時間はウィッチにとっては比較的自由な時間として与えられている。だけれど地上にいるからといってずっと部屋に引き篭もったりするわけじゃなく、こうして体力錬成のために体を動かすことが多い。

 

けれど野戦飛行場をかれこれ四周しているのに2人揃って全く息を切らしていないのはなんだか納得いかない。

私だけが体力が無いみたいに思われてしまう。

どうして私がこうして三人で走っているのかと言えば、結構簡単なことで、外を走っているハルを見かけたエセ伯爵に引っ張られる形での強制参加だった。

「そもそも、なんで2人揃って……そんな平然としていられるのさ」

 

「え?なんでって言われても……魔法で体力強化してるし?」

「私は別に……何も?」

 

「ちょっと伯爵?ずるくないそれ?」

 

 

「いやいや、ずるくないよ。これもストライカーを使うときに必要になる技術さ」

言わんとしていることはわかるけど……って言うかそんな伯爵に顔色ひとつ変えずについていくハルがやばいって事か。

そう思ってハルを見てると、私の視線の意図を察したのか。首を横に振った。

「ロミルダさんとは結構こんな感じで走ってますよ。少なくとも体力面では彼女の方が上ですし……」

毎回途中で私がバテちゃうんですよね。

ハルは苦笑しながらそういった。

「まじか……」

まあ、トゥルーデも素の筋肉すごいしなあ、細マッチョだし。

「でもせっかくの休みなのに走ってばっかりってのも良くないよ。たまには親元に帰るとかしない?」

他人の懐に自然と飛び込んでしまうクルピンスキーらしい。

プライベートに関することは私はなかなか簡単に聞くことはできないかな。

 

「実は、両親はもう……9月に家族旅行で黒海に行っていてそこで……」

 

「あ、ごめんね。聞いちゃいけなかったよね」

 

「いえ、もう気持ちの整理はできてます」

それが嘘だって言うのは流石の私でもわかった。

でも本人は大丈夫だと思い込みたかったんだろう。強がりで心を守ろうとしていたんだと思う。

それが良いのか悪いのかは分からない。

「それに……今時戦災孤児なんて珍しくもなんとも無いですから。私の訓練同期も戦災孤児は結構いましたよ」

 

「それはそうだけど……」

それでも、そんな簡単に全てを諦めていい歳でもないはずなのに。

ランニングを終えてクールダウンをしているハルを見ながら、戦争によって私も何かを失って、心の中の何かが壊れてしまうのかなって言う恐怖が込み上げてきた。

でも戦いは待ってはくれない。

 

 

次の日には冬季攻勢って言われる大規模攻勢が起こったから。

 

ネウロイが冬に活動を弱めるって言うのは経験則から言ってそうだったってだけで、実際には冬にも何度か攻勢を仕掛けてくることはあったらしい。ただ、その規模は小規模なものが多かったのも事実だった。

その事実と照らし合わせるのなら、あの戦いは小規模な攻勢とでも言うべきものだったのかな。

 

 

 

 

 

Bad Muskau Advanced airfield AM10.21

 

January 23.1940

 

 

最初にそれを知ったのは基地に鳴り響くサイレンでの事だった。

サイレンなら何度か聞いていたし珍しいものでもない。特にスクランブル待機要員でなければ、急いで空に上がる必要はない。というよりもストライカーユニットの準備に時間がかかるからすぐには飛び立てない。

だから私も格納庫に急ぎつつ、内心飛び立つことはないだろうなって思っていた。

その考えが打ち砕かれたのは格納庫に響き渡る怒号を聞いてからだった。

 

「だから、緊急事態だって言っているだろう!!基地全体に戦闘配備を準備させろ!」

 

「上がれるウィッチはすぐに上がれ!」

 

有無も言わさない整備兵達の声。それに負けないくらいの音量でスピーカーが敵の大規模な襲来を告げていた。

そこにきて私はようやく事態を悟った。

 

すぐに自分のストライカーユニットのところに向かうと、航空ウィッチ上がりの整備主任が私のストライカーを準備していた。

「ほらブービー!ポヤポヤしてるとまた隊長に怒られるぞ」

 

「そのあだ名いい加減やめてよね!」

 

「もうコールサインになってるじゃないか」

 

ともかく空に上がらないといけない。軽口もそこそに、私はストライカーを起動して滑走路に躍り出た。

 

滑走路も急な事態に対応ができていないようだった。

通常の戦闘機の他に輸送機や爆撃機までもが空中退避をしようと一本しかない滑走路に押し寄せていた。

 

特にウィッチを優先してあげようとしているからか、その混乱は収束からは程遠かった。

私は優先して滑走路に出させてもらったからそうでもなかったけど。

でもバラバラで空に上がったせいで自分の隊がどこにいるか。それすら分からない状態になっちゃってた。

「あれ、ブービーじゃん。1人なの?」

右後ろから声がかけられたのは、戦場となってる空まであと五分くらいの時だった。振り返ると、そこにはフーベルク少尉とクルピンスキーがいた。

「その愛称やめてよねグレーフィン・プンスキー」

 

「なんだ、エーリカも迷子か。なら三番ポジに入れ」

フーベルク少尉は私の現状を素早く理解して、臨時編成の隊に加えてくれた。

そんな即席のチームで私達は戦場に飛び込んだ。

すでにスクランブルで先行していた隊との戦いが繰り広げられていたからか、戦場にはいくつもの飛行機雲が絡み合うように伸びていて、時々その中を黒煙が地面に向かって伸びていた。

 

 

 

状況は良くなかった。

 

私達は中型ネウロイを集中的に落とすことにした。

中型ネウロイは動きが鈍い代わりに装甲が分厚くて、なかなか落とすのが難しい相手だった。

それでも三人で集中的に攻撃を浴びせればなんとかなった。

動きが鈍いから狙いもつけやすい。

「よし、後ろにいるあの中型を狙う。2人ともついてこい!」

 

フーベルク少尉が定めたのは戦域を突破しようとしている中型ネウロイの集団だった。

その中の一体に向かって急上昇で下から突き上げていく。

歩兵銃の照準と変わらない照門の中に、ネウロイの姿がいっぱいに映る。

 

「まだ、まだ……」

フーベルク少尉の声。

 

「今!」

引き金を、優しく、力を込めすぎずに優しく引いた。

発砲の衝撃が肩に軽く響く。

 

目で追えない速度で放たれた弾丸が、ネウロイの黒いハニカム模様の胴体に当たって火花を散らした。

 

間髪入れずに二射目、三射目と弾丸を送り込んでいく。ネウロイからの反撃を警戒したけれど、ネウロイが反撃に移る前に、コアが破壊されたらしい。中型ネウロイは白い破片となって粉砕してしまった。

そうして、中型ネウロイを撃破したところで小型ネウロイが中型ネウロイを守るような動きをし始めていることに気がついた。

 

「奴ら、学習しているみたいね」

とは言っても十分な効果があるようには見えなかった。確かに小型ネウロイが中型ネウロイを守ろうとしているようには見えるけれどそれでも小型ネウロイは戦闘機やウィッチを見つけるとそっちに引き寄せられていってしまう。

 

ともかく今はネウロイの侵攻を阻止しないといけない。中型ネウロイを今度は見下ろす形になっている。

狙いはやっぱり最後尾にいる個体だった。

 

流石にネウロイも私達を脅威と認識したのか、いくつものビームを放って応戦してきた。だけれどそんなビームに絡め取られるほど私たちはワヤではなかった。

 

一度、二度、と反復攻撃を加えたところで、護衛役の小型ネウロイが迫ってきた。

一度ブレイクして小型ネウロイを相手とっていると、クルピンスキーが何かに気づいた。

「…あれ、ハルじゃない?」

 

彼女が指差す方に視線を向けると、私たちよりも下方、低空を突破しようとするネウロイの集団をたった2人で相手取っている姿他見えた。

 

鋭い飛行機雲が低空なのにいくつも伸びていき、ネウロイが破壊される時の白い破片がいくつも空中に舞っていた。

 

まるで天使のように舞っているみたいだった。

鋭い軌跡は途切れることなく次の目標に向かって進んでいく、かと思えばすぐにネウロイの姿が破砕されていく。それを見届けることもせずすぐに次の獲物へ。鬼気迫るというのはこういうときに使う言葉なんだなって思っていた。

 

 

 

 

 

 

この戦いで、私は共同撃墜込みでダブルエース、ハルとロミルダは単独撃墜数でエースになった。

だけれど、それ相応に犠牲も大きくて帰還できたのは三分のニに満たない数だった。

 

 

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