短編置き場   作:みゃおたろう

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学校であったこと

 「今日学校で何があったの?」小学生の息子、勇気に聞いてみた。

「今日は授業参観だったよ。パパは何で来なかったの?」

「ああ、ごめんな。パパもママもお仕事が入っていてね。」

「授業参観では何かおもしろいことはあった?」

「えーっとね!えーっとね!テロリストが学校に入ってきたの!」息子は元気に答えた。

「おぉパパもよく授業中にそういうことをよく考えてたよ」

「ちがうもん。本当に入ってきたんだよ」息子はムキになっている。

「そっか。テロリストは何が目的だったんだい」息子の話に乗ってみる。

「ウチの組の寺原くんて子がいるんだけど」ああ。高級住宅地に住んでいる子だったか。

「寺原くんをさらって、お金にしようとしたんだって」ほう。思ったよりも設定が練られている。

「寺原くんちって、そんなにお金持ちだったっけ?」設定を深堀りしてみる。

「知らないの?寺原くんち、2000坪のでっかい平屋だよ?」大豪邸だ。あそこの土地は一坪1500万なので、土地だけで300億の価値がある。

 というか寺原の大豪邸って言ったら…

「え、もしかして寺原くんて、あの寺原グループの社長のお子さんてこと?」

 「うん。そうだよ知らなかったの?」きょとんとする息子。

 全く知らなかった。息子と話せているとおもったが、いろんなことが聞けていなかった。

 寺原グループは現在日本の主要産業の大部分を占めている巨大グループだ。お金持ちというレベルじゃなかった。

 「普通そこまでの資産家の子って私立に通うと思うんだけど…」

「僕も気になったから聞いたんだ。そしたら寺原くんちの方針って言ってたよ。今後一生交わらない下々の人間を見る良い機会だからって」それ他の人に言っちゃ駄目だろ寺原くん。

「ああごめん、話がそれちゃったね。寺原くんが誘拐されそうになったってこと?」驚きつつも話の続きが気になった。

「うん。参観の親に偽装したテロリストがいきなり寺原くんを捕まえて外に出ようとしたんだ」

「寺原さんちのボディーガードとかはいなかったの?」

「2人いたんだ。でも動いた瞬間に隠れてたもう一人のテロリストに撃たれて死んじゃったんだ。」

「ボディーガードの配置も含め、情報が全部漏れていたんだろうね」息子は作家になったほうが良いかも知れない。

「え、じゃあ寺原くんは誘拐されちゃったってこと?」

「いや?僕と西尾くんパパと北沢ちゃんパパで奪還した」内容がよく分からなかった。

「えーっと北沢ちゃんパパはなんか聞いたことあるかな。SAT?SIT?だっけ」

「SATだよ。警視庁特殊急襲部隊。強かったよ」

「西尾くんパパは、自衛隊?だったっけ」

「そうそう。第1空挺団」

 「で、勇気が戦ったって?」流石にフィクションだろう。いやまあ最初からそうだろうが。息子の戦うイメージができない。

 

『次のニュースです。今日N市A小学校でテロリストグループによる誘拐未遂、殺人事件がありました』

うちの小学校だ。スラスラとアナウンサーが息子から聞いた出来事を読み上げていく。

「ああこれこれ」息子がテレビに指を向ける。その様子は、余りにも平然としていた。

『まず、男性が犯人Aを羽交い締めにし制圧しました』

「犯人Aってのがボディーガードを撃った奴。北沢ちゃんパパが制圧した」

「Aが撃った弾数をちゃんとみてるんだよ。いや聞いているのか。死角からリロードの一瞬の隙をついて制圧したんだ。北沢ちゃんパパ」アナウンサーが喋った内容を息子が補足してくれている。

『それに気づいた犯人Bが男性を撃とうとしますが』アナウンサーが続ける。

『その一瞬の隙に、何と小学生が、犯人Bに金的攻撃を加えます。』

「これぼく!これぼく!」少し興奮し、かなり自慢げだ。試合でシュートを決めたような感じか。 

『金的で怯んだ犯人をもう一人の男性が制圧します』

『これが西尾くんパパね』金的で怯んだ犯人を自衛隊のパパが制圧したようだ。 

 手が震えすぎて、コップの水をこぼしてしまった。

「パパ震えすぎ、おもしろいんだけど」息子が笑っている。

 頭の整理が追いついていなかった。

 

「ピンポーン」突然インターホンが鳴った。こんな夜に何だろうか。宅配便だろうか。

「どちら様でしょうか」暗いからかあまりインターホンのカメラがよく見えない。

「寺原と申します。本日の件でお礼に参りました。」なんと寺原グループの社長が来たようだ。家に招き入れる。

「本日は息子の礼司を助けて頂き、本当にありがとうございました。」有名人をここまで間近にみたことがない。

「いえいえ。わざわざありがとうございます。」

「さて本題ですが、先程本田様の口座に10億を振り込ませていただきました。ささやかなお礼です」

「え…10億?」

「勇気くんは命を賭して礼司を助けました。10億でも正直安いぐらいですよ」

「もしなにか困ったことがありましたら。相談して下さい。是非力にならせていただきます。それでは」寺原社長は帰っていった。帰る直前、社長から電話番号のメモをもらった。

 直近の30分の内容が濃すぎて、ただただ呆然とする。

 

「もしかして100億欲しいって言ったら、くれたのかな」少し落ち着き、冗談を独り言のようにつぶやいた。

「パパが働かなくなるから丁度よかったんじゃない?」

「舐めるなよ。パパは10億でも働かないぞ」息子はため息をついた。

 

 その後、妻を含めた家族の話し合いで10億は全額息子のものとなった。非常に残念だ。

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