短編置き場   作:みゃおたろう

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カバンの中身

 夜中の2時。静まり返った薄暗いコンビニのバックヤードで笹野英二はモニターを見つめていた。モニターが3つほど並んでおり、2つはコンビニ店内の複数箇所を映す監視カメラ、一つがテレビを映していた。

 最近、物騒な事件が増えている。昨日は大規模な銀行強盗、今日は国会議事堂が爆破された。テレビは通常の番組を中止し、ずっと国会議事堂の爆破の様子を取り上げている。

 身近なところだと、近所に変態がでたらしい。少なくとも百枚程度の女子高生のパンツが盗まれたようだ。犯人が捕まったら綺麗に女子高生のパンツが陳列される様子がテレビに映るのだろうな。まぁ、爆破事件と比べればかわいいものなのかも知れない。

 

 「キンコーン!」チャイムが鳴った。どうやら客が来たらしい。見たことがない客だ。黒いフードにマスクをしている。見るからに怪しい。笹野はテレビを見るのをやめ、モニターを見張る。

「おい・・、おい」モニターの前で笹野はつぶやいた。男がカバンに缶詰を入れたのを見たからだ。経験上、そのまま素直に会計をするとは思えなかった。

 男はそのままレジを素通りし、自動ドアから退店しようとしていた。店内に誰もいないとでも思っているのだろうか。笹野はバックヤードから出て男を追いかける。

 「おい!止まれ!」笹野は男に声をかけ肩を掴む。

「ん?何?」男の反応は薄い。

 「何じゃないだろ!お前、今、万引きしただろ!」

「ああ」

「ああ。とは何だ!調べるからついてこい!」笹野は男を引き連れバックヤードに向かう。男は抵抗もせず従った。

 

 笹野はバックヤードの照明を明るくした。普段はやや暗くしていたからだ。

 「取ったものをみせてもらうぞ」

 「ああ」

 カバンを漁ると、先程取ったと思われる缶詰が出てきた。

「これが取ったものの全部か?まだあるんじゃないだろうな。」

「知らねえよ」

「何だその態度は!」笹野は机を手のひらで叩く。

更にカバンを漁ると、カップ麺がでてきた。知らないうちに取っていたのだろうか。

「おい!これも取ってないだろうな」 

「知らねえって」あくまでシラをきるようだ。調べれば取ったかどうかはすぐにわかる。

他に何もないかカバンを漁ると、なにか柔らかいものが手に当たった。女性もののパンツだ。

「こ、これは・・・?」

「あーそれ近所の女子高生のパンツ」男はさらりと答えた。

「お前、まさか近所で犯行を繰り返してる奴か?」

「あー俺って有名人?」なんだこいつは。悪びれる素振りすら見せない。

もう十分だろう。警察だ。笹野はスマホを取り出そうとした。

「まだあるよ」男はつぶやいた。

「どういう意味だ?」

「いやいや、まだカバンのなか全部見ていないでしょ」

まだ何かあるということなのだろうか。警察に引き渡すにあたり、情報を多少は整理しておいたほうがよいと考え、バッグを更に漁る。

 固いものが手に当たる。やたら重い。机に置くとゴトリと重厚な音がした。金塊だ。

「なんだこれは・・」笹野の血の気が引いていく。

「見たらわかるだろ。純金。金の延べ棒」

「どこでこれを・・・」

「銀行」

まさか・・と思い、更にバッグを漁る。梱包材だと思っていた紙切れは札束だった。

「お前・・銀行強盗なのか」

「あー俺って有名人?」当たり前だ。全国指名手配犯だ。

 警察に連絡だ。笹野はスマホに手を伸ばそうとした。が途中で止めた。男が銃を構えていたからだ。

「スマホを机の上に置こうか」笹野は男の命令に素直に従った。

「じゃあ続けよう、カバンの中にあと何が入っている?」

 笹野は従うしかなかった。カバンの中を漁ると、柔らかい物があった。掴んで机に出す。

「これは・・・」一見するとただの工作で使う合成樹脂(パテ)に見える。笹野はこの物体を知っていた。先程テレビで解説していたからだ。

「C-4爆弾か」

「正解!」

「お前が国会議事堂を爆破したのか」

「うん。あー俺って有名人?」BBCでもCNNでもお前の話で持ち切りだ。大谷翔平よりも有名だぞ。

「じゃあ次で最後だからバッグを漁ってみて」

 もう何も無いだろう。というか何も出てこないでくれ。バッグはほぼ空だが漁ってみた。

 何か筒状のものが出てきた。軽いペンみたいなものか。

「これは何だ?」

「ニューラライザー」

「にゅ・・何て?」聞いたことのない単語だった。

「え、マジ!?知らないの?メン・イン・ブラックを見たことないの?」

メン・イン・ブラック。何か昔の映画で聞いたことがあるような。

「使い方を教えてやるよ。」そう言うと筒状のものを取った。いつの間にか奴はサングラスをかけている。

「はい、この光ってる部分を見て」カメラか何かなのだろうか。

 バシュン!コンビニはまばゆい光に包まれた。

「ま、いわゆる記憶の書き換え装置って奴だよ」男はコンビニから去った。

 

 何だ?何か・・ああ、そうだ。 私は女子高生の家に忍び寄りパンツを盗み、銀行強盗を働き、金と貸金庫の中身の金塊をありったけ盗み、最後に国会議事堂の爆破テロを実行したのだった。

 何をやっていたのだ、私は・・?自分が自分でないみたいだ。今まで洗脳でもされていたのだろうか。だが、私まぎれもなく実行した。それは間違いない。

 笹野はスマホを取り出し、震える手で110番を押した。

 

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