ウルトラマンゼロ/iDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 作:わたあめ丸
宇宙科学フェスティバルの一件から、数日後。
事務所の一角で、新田美波とアナスタシアは、並んでネットニュースの記事に目を通していた。
記事の内容は、先日のプラネタリウムで起きた事件と、その後の反響についてまとめたものだ。
LIVEはダダ星人の襲撃によって途中で中断となり、観客が突然小さくなるという前代未聞の事態に陥り、会場は一時、大混乱に見舞われた。
しかし、最終的に怪我人は一人も出なかった。
会場を襲った宇宙人は撃退され、縮小された観客たちも無事に元の大きさへ戻った。そして何より、あの事件は人類に一つの事実を突きつけた。
宇宙人は、テレビの中だけの存在ではない。実際に地球へやって来て、人間に危害を加えることもある。
そして、そんな宇宙人と戦う銀色の巨人もまたもや姿を現したのだった。
科学館やプラネタリウムには連日問い合わせが殺到し、事件を受けた特別番組も高い視聴率を記録した。そして途中で中止になったとはいえ、ラブライカのLIVEも大きな反響を呼んでいる。
星空を背景に歌う二人の姿は、事件の映像とともに何度も取り上げられた。
「……なんだか、すごいことになっちゃったね」
美波が資料を閉じ、苦笑した。
「ダー。私たちのLIVEが、宇宙人のお話と一緒にニュースになるなんて。少し不思議な気分です」
アーニャも頷く。
あの日の出来事は二人にとっても忘れられないものだった。
観客が次々と小さくなり、悲鳴が上がったときの恐怖。目の前に現れた異形の宇宙人。そして、プロデューサーさんやシンさんが自分たちを守るために戦ってくれたこと。
何よりも、あの銀色の巨人が現れた瞬間。
二人は、シンが変身するところを目撃してしまった。
あのとき、彼は一瞬も、こちらを振り返ることなく戦いへ向かった。
自分たちが見ていることにも気づかずに。
「……シンさん、すごかったですね」
「うん。普段は少し不器用なところもあるのに、あのときは……」
美波は、言葉を探すように視線を落とした。
いつもは慣れない事務仕事に苦戦している。難しい書類を前に頭を抱えたり、電話の相手が使う専門用語に困惑したり。そんな姿を見ていると、どこか親しみやすい青年に思えた。
けれど、あの日の彼は違った。
観客が縮小され、スタッフが混乱し、ステージが壊されていく中でも、彼は決して怯まなかった。
自分たちが積み重ねてきた努力を踏みにじられたことに、誰よりも怒っていた。
そして、最後には自分の身を顧みずに敵へ立ち向かった。
「……あの人が、ウルトラマンだったんですね」
美波が呟く。
アーニャも、静かに頷いた。
「私、最初は信じられませんでした。でも……シンさんが巨人になったとき、なんだか納得できた気がします」
「うん……。あんなふうに誰かを守ろうとする人だから、あの巨人になれるのかなって」
少しの間、二人は黙っていた。
それから、美波がふと思い出したように顔を上げる。
「そういえば、卯月ちゃんたちは……」
「ニュージェネレーションズの三人、ですか?」
「うん。あの三人、シンさんとずいぶん親しそうだったでしょう? それに、最初から彼のことを気にかけていたし……」
あの日、シンが事務所へ来たときのことを思い出す。
彼が記憶を失っていると聞いたとき、シンさん本人は何やら焦ってる様で未央ちゃんは妙に楽しそうだった。凛ちゃんや卯月ちゃん達も、シンさんのサポートに回る事が多かった。
今にして思えば、あれは単に親切なだけではなかったのかもしれない。
「もしかしたら、卯月ちゃんたちはシンさんの正体を知っているんじゃないでしょうか?」
「……ダー。私も、そう思います」
アーニャは窓の外へ目を向けた。
「でも、聞かないほうがいいのかもしれませんね。シンさんが話したくなったら、きっと話してくれます」
「そうですね」
美波は頷いた。
彼がどこの誰で、どうして地球に来たのか。
気になることは、たくさんある。
けれど、彼が自分たちを助けてくれたことだけは間違いない。
「話してくれた時は、改めてお礼を言いましょう」
「ダー。今度は、最後までLIVEを見てもらいたいです」
そう言って、二人は笑い合った。
ーーーーーーー
「――以上が、今回の音楽イベントに関する資料です」
武内Pから差し出された書類を、モロボシ・シンは両手で受け取った。
大規模な野外音楽イベント。数多くのアーティストが参加する催しで、346プロダクションからも複数のアイドルが出演する。そのうち、数曲の歌唱を任されたのが、前川みくと多田李衣菜の二人組ユニット――アスタリスクだった。
「アスタリスク……みくと李衣菜、だったな」
「はい。今回は会場入りからリハーサル、本番終了まで、二人のサポートをお願いします。私は別の仕事で離れますが、先方との連絡事項や移動時間については、こちらにまとめてあります」
「分かった。任せとけ!」
胸を張って答えたものの、シンの心中は穏やかではなかった。
これまでの仕事は、武内Pがすぐ近くにいた。分からないことがあれば質問できたし、判断に迷ったときには助言をもらえた。
だが、今回は違う。
自分が中心となって、二人のアイドルを現場まで連れていき、仕事を滞りなく進めなければならない。
「モロボシさん」
「ん?」
「今回は、千川さんにも同行していただきます」
武内Pが視線を向けた先で、女性がにこやかに会釈した。
「千川ちひろです。よろしくお願いしますね、シンさん」
千川ちひろ。
346プロダクションの事務員であり、アイドルたちの活動を裏から支える存在だ。スケジュールの管理、事務手続き、現場との調整など、その仕事は多岐にわたる。いつも柔らかな笑顔を浮かべているが、事務所の運営に関わる細かな問題にも素早く対応できる、頼もしい人物だった。
アイドルたちにとっては、困ったときに頼れる相談相手でもある。
そして、シンにとっても今回は心強い同行者だった。
「俺の補佐をしてくれるってことか?」
「そういうことです。シンさんは今回、現場での進行管理を中心にお願いします。千川さんには、先方との調整や事務的なサポートをお願いしています」
「なるほどな。助かるぜ!」
「ふふっ。そんなに身構えなくても大丈夫ですよ。最初から何でも一人でできる人なんていませんから」
ちひろは穏やかに微笑んだ。
「それに、今回の仕事をシンさんに任せたのは、これまでの仕事ぶりを評価しているからです。少しずつですが、できることも増えてきましたよね」
「……ああ」
シンは一瞬、言葉に詰まった。
前回の宇宙科学フェスティバルでは、ダダ星人の襲撃によってLIVEが途中で中断されてしまった。
しかし、怪我人は出なかった。科学館やプラネタリウムには、本当に宇宙人が存在するという事実が突きつけられたものの、それは同時に、人々が宇宙に目を向けるきっかけにもなった。
そして何より、途中までの開催だったにもかかわらず、新田美波とアナスタシア――ラブライカのLIVEは、多くの人々から高い評価を受けた。
その準備を支えた経験が、今回の仕事につながっている。
自分が評価され、次の仕事を任された。それは、ウルトラマンとして褒められるのとは少し違う、妙にくすぐったい喜びだった。
「……へっ。俺だって、いつまでも新人ってわけにはいかねえからな」
「はい。期待していますね」
「おう!」
勢いよく返事をしたシンは、資料を抱え直した。
よし。今回は武内の指示を待つだけじゃない。自分で考え、自分で判断して、二人を無事に仕事へ送り届ける。
そう意気込んだ彼は、まだ知らなかった。
今回の最大の敵が、侵略宇宙人でも怪獣でもなく、アイドル二人の痴話喧嘩――もとい、ユニット解散騒動になることを。
ーーーーーーー
「――もう、みくは李衣菜ちゃんとはやっていけないにゃ!」
事務所の廊下に、甲高い声が響いた。
「こっちのセリフだよ! みくだって、いつもロックのことを分かってくれないじゃん!」
「ロックロックって、何でもロックって言えばいいと思ってるにゃ!」
「思ってないよ!」
「思ってるにゃ!」
「思ってないってば!そんなに言うみく方こそ、にゃんにゃん言えばいいと思ってるんじゃ無いの!」
「にゃにゃ!!そんな事言うだったら、アスタリスクは今日で解散にゃ!」
「望むところだよ!」
「なにぃーっ!?」
シンは資料を抱えたまま、廊下の真ん中で固まった。
「…………は?」
二人の間には、目に見えない火花が散っている。
いや、散っているように見えるだけではない。みくは頬を膨らませ、李衣菜は腕を組んでそっぽを向き、どちらも一歩も引く気がない。
シンは慌てて二人の間に割って入った。
「お、おい! 待て待て待て! 何があったんだ!?」
「シンチャン! 聞いてほしいにゃ! 李衣菜ちゃんが、みくのことを全然分かってくれないの!」
「シンさん! みくだって、私の話を聞いてくれないんですよ!」
「どっちも話は聞いてるぞ!」
「聞いてないよ!」
「聞いてるにゃ!」
「「だから――!!」」
「ちょ、ちょっと待て! 順番に話せ! 順番に!」
ゼロは幾多の宇宙人や怪獣と戦ってきた。
相手が強敵であろうと、複数の敵に囲まれようと、怯んだことはない。
しかし、左右から同時に言い分をぶつけられる状況には、さすがに対処法が分からなかった。
そこへ、ちひろが書類を手にやってきた。
「あらあら。また始まったんですか?」
「また!?」
シンは思わず聞き返した。
「はい。アスタリスクのお二人は、ときどきこうして喧嘩をするんです」
「ときどきってレベルじゃないにゃ!」
「みくが先に――」
「李衣菜ちゃんが――」
「はいはい。お二人とも、続きは移動中に聞きますからね」
ちひろは慣れた様子で二人をなだめた。
「今日は大事なお仕事があります。会場に着く前に仲直りしてくださいね」
「……別に、仲直りなんかしなくても仕事はできるし」
「そ、そうにゃ! これは仕事とは関係ないにゃ!」
二人は顔を背けたまま、そっくりなタイミングで言った。
シンは額を押さえた。
――こいつら、本当に大丈夫なのか?
その疑問は、会場に向かう車の中でも解消されなかった。
むしろ、深まるばかりだった。
ーーーーーーー
大型音楽イベントの会場は、朝から大勢のスタッフで慌ただしく動いていた。
広大なステージ、何台もの照明機材、音響設備、そして出演者のための控室。多くの観客が訪れる予定の大規模イベントだけあって、準備には細かな確認が必要だった。
シンは資料を片手に、会場スタッフと打ち合わせを進めていた。
「アスタリスクのお二人のリハーサルは、予定どおり午後一時からでよろしいですね?」
「はい。持ち時間と曲順についても、事前にいただいた資料の内容で確認しています」
「ありがとうございます。こちらでも確認しておきます」
地球人の仕事にも、少しずつ慣れてきた。
書類の扱いも、連絡の取り方も、最初に比べればずっとましになっている。何より、武内Pがそばにいなくても、自分で話を進められている。
(よし。今のところ問題なしだ。)
そう思った直後だった。
「シンさーん!」
振り返ると、李衣菜が歩いてきた。
「どうした?」
「みくが、私のギターのことを全然分かってくれないんです!」
「……は?」
「だって、みくが『そのギター、もっと可愛い色にすればいいのに』って!」
「そ、それだけか!?」
「それだけって何ですか! ロックにとって楽器は大事なんですよ!」
「みくの言い分も聞いてやれよ。色変えるだけだろ?」
「シンさんまで!」
李衣菜はショックを受けたように胸を押さえた。
「もういいです! 私、アスタリスク辞めます!」
「おいおいおい!」
今度はみくが飛び込んできた。
「シンチャン! 李衣菜ちゃんが、また解散するって言い出したにゃ!」
「またって……お前ら、さっきも言ってただろ!」
「何回言ったって、本気にゃ!」
「そうだよ! 本気だよ!」
二人はシンを挟んで睨み合う。シンは思わずちひろを探したが、
彼女は別のスタッフと打ち合わせ中だった。こちらをちらりと見て、申し訳なさそうに微笑んでいる。
(おい、ちひろ! 助けてくれ!)
心の中で叫んだところで、ちひろには届かない。
「分かった! 分かったから、今は仕事に集中しろ! 解散するかどうかは、仕事が終わってから考えればいいだろ!」
「……シンさんがそう言うなら」
「……仕方ないにゃ」
二人はひとまず矛を収めた。
シンは深々と息を吐く。
よし。どうにかなった。
そう思ったのも束の間だった。
「でも、李衣菜ちゃんとは口を利かないにゃ」
「こっちだって、みくとは話さないよ」
「……お前らなぁ!」
その後も、二人は何かにつけて言い争った。
リハーサルの立ち位置。曲順の解釈。
衣装の細かな飾り。お互いの呼び方。
些細なことが、二人にかかれば大事件になる。
シンが間に入って仲裁し、ちひろが現場との調整を行い、何とかリハーサルを進めていく。
そして、ついにシンは我慢できずにちひろへ小声で尋ねた。
「なあ、ちひろ……あいつら、いつもあんな調子なのか?」
「そうですね。お二人とも自分の考えをしっかり持っていますから」
「しっかり持ってるっていうか、絶対に譲らねえじゃねえか!」
「ふふっ。でも、あの二人は本当に仲が悪いわけではないんですよ」
「どこがだよ!?」
ちひろは二人の方を見た。
みくは李衣菜に背を向けて腕を組み、李衣菜も反対側を向いている。
だが、みくの手には李衣菜のために用意した飲み物があった。李衣菜の方も、みくの衣装の飾りが取れかけていることに気づき、さりげなく直していた。
本人たちは、互いに見られていないと思っているらしい。
「喧嘩をすることで、深まる絆もあるんですよ」
「……喧嘩で?」
「はい。相手に遠慮せずに言い合えるということは、それだけ相手のことを気にしているということでもありますから」
シンは、二人を見つめた。
「けどよ……あれじゃ、いつか本当にバラバラになっちまうんじゃねえか?」
「そうならないように、私たちが見守ってあげればいいんです。もちろん、必要なときには仲裁もしますけれど」
ちひろはそう言って微笑んだ。
「お二人が自分たちで仲直りすることも、大切ですからね」
シンは、すぐには返事をしなかった。
喧嘩をして、ぶつかって、それでも一緒にいる。
そんな関係が、果たして本当にあるのだろうか。
そのとき、彼の脳裏に一人の少年の姿が浮かんだ。
タイガ・ノゾム。
かつて一体化した、ダイナが守った地球、ネオフロンティアスペースの青年だ。
最初から何もかもがうまくいったわけではない。考え方の違いに戸惑い、意見が合わず、互いに苛立ったこともあった。
ーーーこれを装着して、俺になれ! 俺と一緒に戦うんだ!
ーーーほい!
ーーーうそーん
それでも、過去を知り、考えを知り、二人は少しずつ相手を理解していった。
ーーー助けて! ウルトラマン! 早く来て!
ーーー落ち着け、タイガ! 今はお前がウルトラマンだろう!
やがて、互いの命を預け、共に戦う一心同体の存在になったのだ。
ーーー本当の戦いは……
ーーー本当の戦いはここからだ!
…そういや、俺もタイガと最初からうまくいってたわけじゃなかったな。
シンは小さく笑った。
「……なるほどな。言い合うこと自体が悪いわけじゃねえってことか」
「そういうことです」
「ま、だからって、仕事の邪魔をされるのは困るけどな!」
「それは同感です」
二人がそろって苦笑した
ーーーーーーー
その頃、会場から少し離れた人気のない倉庫では、二人の宇宙人がひそひそと話し合っていた。
「お、お姉ちゃん……本当にここでいいの?」
「だ、大丈夫よ、ロロ! ここが地球で、あそこが人間たちの集まる場所なんだから!」
姉のララは胸を張った。
ララとロロ、彼女達はピット星人の姉妹である。
姉のララは、勢いだけは一人前だが、肝心なところで失敗するドジっ子。妹のロロは、姉より真面目で慎重に見えるものの、どこか抜けている。二人が地球に来たのには、切実な事情があった。
かつて、祖母がウルトラセブンに挑もうとした際、家の持ち金をすべて使い果たしてしまったのだ。
その結果、ピット星人の一家は多額の借金を抱えることになった。
そして今、借金を取り立てる宇宙人たちから、二人はとんでもない命令を受けていた。
地球で成果を上げろ。さもなければ、命はない。
「で、でも……このエレキングを使って地球人を脅せば、借金を返せるだけのお金が手に入るって……」
ロロは、足元に置かれたケースを見つめた。
ケースの中には、黄色と黒の模様を持つ小さな生き物が入っていた。
エレキングである。…ただし、一般的に知られる巨大怪獣の姿とは、まるで違っていた。
全長はおよそ五十センチ。
丸い胴体に短い手足、頭の左右から伸びる角も小さく、全体的にころころとしている。
どう見ても、手乗りサイズの可愛らしい生き物だった。
「……これ、本当にエレキングなの?」
ロロは首を傾げた。
「えぇ、私が赤ん坊の時からたくさん餌を上げて育てたんだから!」
「で、でも、もっとこう……大きくて、怖くて、ビリビリって電撃を出すんじゃないの?」
「そ、それはそうだけど……」
ララはケースの中のエレキングを見た。
エレキングは、二人の声が聞こえているのか、ケースの壁に頭をすり寄せている。
「きゅるるるっ」
「か、可愛い……」
ララの顔が緩んだ。
「違う違う! 今は可愛がってる場合じゃないよ、お姉ちゃん!」
「そ、そうだったわ!」
ララは慌てて咳払いをした。
「ええと……コレからエレキングを育てるには、何をすればいいのかしら?」
「えっ?」
「だって、この子は可愛いけど怪獣なんだから、強く立派に育てないといけないでしょう?」
「そ、そうだね……」
二人は顔を見合わせた。
「……どうやって?」
「……分かんない」
沈黙。
しばらくして、ロロが恐る恐る手を挙げた。
「と、とりあえず、今以上に良いご飯をあげてみる?」
「いい考えね!」
ララは勢いよく頷いた。
二人は持ってきた食料を次々とケースの前に置いた。
エレキングは匂いを嗅ぎ、少しだけ口をつけたあと、二人の方へよちよちと歩いてきた。
「きゅるるっ!」
そして、ララの靴に頭をこすりつけた。
「……なにこれ、可愛い!」
「お姉ちゃん! 今は作戦中!」
「分かってるわよ、ロロ!」
二人は慌てて姿勢を正した。
しかし、エレキングはすっかり二人に懐いているようだった。
それから数分後。
ララは大事なことを思い出した。
「……ねえ、ロロ。もう一つ気になる事があるんだけど……」
「なあに?」
「エレキングって、どれぐらいで大きくなるの?」
「……え?」
「だって、このままじゃ地球人を怖がらせられないじゃない!」
ロロは固まった。
「そ、そういえば……」
二人は図鑑をめくり、資料を読み、あれこれと試した。
だが、エレキングは一向に大きくならない。
水を飲ませても、餌を増やしても、ケースを広くしても、変化はなかった。
それもそのはず。
このエレキングは、すでに成体だったのである。
ただし、ララが間違った方法で育ててしまったので、これ以上大きくなることはない。
そして、二人はそのことを知らなかった。
「ど、どうしよう……」
ロロの声が震えた。
「このままじゃ、借金取りに怒られちゃうよ……!」
「だ、大丈夫よ! 私たちにはまだ、秘密兵器があるじゃない!」
ララは腰のビームガンを取り出した。
「これで人間たちを脅して、エレキングを暴れさせればいいのよ!」
「で、でも、エレキングはどうやって暴れさせるの?」
「そ、それは……」
ララは考え込んだ。
「……現場で何とかするわ!」
「お姉ちゃん、それ絶対に失敗するやつだよぉ!」
こうして、二人の無謀な作戦が始まった。
ーーーーーーー
午後。
イベントのリハーサルは、何とか予定どおりに進んでいた。
みくと李衣菜は相変わらず口を利いていなかったが、歌やダンスの息はぴったりだった。
曲の入りも、立ち位置の移動も、互いの動きを見て自然に調整している。
シンは舞台袖からその様子を眺め、思わず感心した。
「……喧嘩してる割には、すげえ息が合ってるじゃねえか」
「それがお二人の面白いところなんですよ」
隣にいたちひろが答えた。
「本人たちは不満があるみたいですけれど、お互いのことをよく見ていますから」
「ふうん……」
シンが頷いた、その瞬間。
会場の外から、奇妙な音が聞こえてきた。
「きゅるるるるっ!」
「……ん?」
続いて、スタッフの悲鳴。
「な、何だあれ!?」
「怪獣だ! 怪獣がいるぞ!」
シンとちひろは顔を見合わせた。
舞台袖から外を覗くと、黄色と黒の丸い生き物が、会場の敷地内をよちよちと歩いていた。
その後ろには、二人の女性が続いている。
「ええっ!? な、何ですか、あの可愛いの!?」
ちひろが驚きの声を上げた。
「いや、見た目に騙されるな……あれは、怪獣だ!」
シンはすぐに気づいた。
あの模様。あの角。あの体つき。
間違いない。
「エレキング……!」
もっとも、目の前のエレキングは、どう見ても脅威には見えなかった。
「お姉ちゃん! 人間たちが集まってきちゃったよ!」
「だ、大丈夫よ! ロロ、ビームガンを構えて!」
「ええっ!? ここで!?」
「今やらなきゃ、借金が返せないでしょう!」
ララはビームガンを取り出すと、近くにいたスタッフたちへ向けた。
「動かないで! このエレキングを使って、地球を侵略するんだから!」
「きゅるるっ!」
エレキングは、まるで意味が分かっていない様子で鳴いた。
「……いや、全然怖くねえな」
思わず口にしたシンだったが、すぐに気を引き締めた。
相手が小さくても、宇宙怪獣であることに変わりはない。電撃を放つ可能性もあるし、何よりビームガンを持った宇宙人がいる。
「ちひろ、スタッフを避難させてくれ! 俺はあいつらを止める!」
「分かりました。でも、シンさんも無理はしないでくださいね!」
シンは頷き、騒ぎの中心へ走った。
しかし、そこに思わぬ人物が飛び込んできた。
「ちょっと! 何してるにゃ!」
「そうだよ! イベントをめちゃくちゃにしないで!」
みくと李衣菜だった。
二人は騒ぎを聞きつけ、舞台から駆けつけたのだ。
「お姉ちゃん、アイドルだよ! あの人たち!」
「ええっ!? ほんとだわ!有名人じゃない!」
ララは一瞬、目を輝かせた。
だが、すぐにビームガンを構え直した。
「ちょうどいいわ! あなたたちも人質になりなさい!」
「人質!?」
「そうよ! 大人しくしないと、このエレキングを暴れさせるんだから!」
ララはエレキングを指差した。
「さあ、エレキング! 暴れなさい!」
「きゅるる?」
エレキングは首を傾げた。
「……暴れなさいってば!」
「きゅるるるっ!」
エレキングはララの足元へ歩いていき、彼女の靴に頭をこすりつけた。
「違うのよぉぉぉっ! そうじゃないのぉぉぉっ!」
ララの悲鳴が響いた。
ロロは頭を抱えた。
「お姉ちゃん……だから育て方を調べておこうって言ったのに……」
「ロロだって分からなかったでしょう!?」
「そ、それはそうだけど!」
その隙を見逃さず、みくが二人の前に立った。
「よくわからないけど、その可愛い小動物を無理やり暴れさせようとするなんて、許せないにゃ!」
「そ、そうだよ! こんなに可愛いのに!」
李衣菜も続いた。
「って、李衣菜ちゃん、可愛いって言ってる場合じゃないにゃ!」
「みくだって言ってるじゃん!」
「今はそういう話じゃないにゃ!」
「またそうやって!」
「またって何にゃ!」
「お前ら、今その喧嘩を再開するなぁぁぁっ!」
シンの叫びが空に響いた。
「「ピィァ!!」」
シンの大声にビックリした二人は光線銃を落とし
それを見た、アスタリスクの二人は、すぐに互いを見た。
「……みく、左に回って!」
「分かったにゃ!」
李衣菜が注意を引き、みくがエレキングと二人の宇宙人の間へ回り込む。
みくはエレキングを刺激しないよう、ゆっくりとしゃがみ込んだ。
「大丈夫だよ、怪獣ちゃん。怖いことしなくていいにゃ」
「きゅるるっ」
エレキングは、みくの差し出した手に鼻先を寄せた。
その間に、李衣菜がギターを武器の様に構えながらララとロロへ声をかける。
「あなたたち、どうしてこんなことをするの?」
「う、うるさいわね! 私たちには事情があるのよ!」
「そうだよ! 失敗したら、借金取りに殺されちゃうんだから!」
「ロロ! 言っちゃ駄目でしょう!?」
「あっ!」
二人は同時に口を押さえた。
みくと李衣菜は顔を見合わせた。
「……借金?」
「それで地球を侵略しようとしてるの?」
ララは目を泳がせた。
「そ、それは……」
「だからって、関係ない人たちを巻き込んでいい理由にはならないにゃ!」
みくは真剣な顔で言った。
「それに、この子だって、二人のことが好きなんでしょ? こんなことをさせるために一緒にいるわけじゃないにゃ!」
エレキングは、みくの腕に頭を寄せながら鳴いた。
「きゅるるるっ!」
ララはその様子を見つめた。
李衣菜が静かに続けた。
「大事なんでしょ? その子のこと」
ララの手が震えた。
「はぁ!?そそそ、そんなわけ無いでしょ!それは唯の侵略兵器として育てたんだから愛着なんてーー」
「お姉ちゃん…」
ロロが悲しそうな顔でララを見る
「うっ……えぇ認めるわ、…大事な子よ」
「だったら、もうやめようよ」
李衣菜は、まっすぐに二人を見つめた。
「借金が怖いのは分かった。でも、誰かを傷つけたら、もっと大変なことになるよ」
「…………」
「みくたちだって、いつも意見が合うわけじゃないにゃ。喧嘩だってするし、解散するって言うこともあるにゃ、でもいつもみくの隣に居て欲しいのは李衣菜ちゃんにゃ」
「ちょっと、みく! その説明は誤解されるって!」
「今はそういう話じゃないにゃ!」
「みくが言い出したんでしょ!」
二人は言い合いを始めた。
ララとロロは、ぽかんと口を開けた。
「……侵略者の前で、喧嘩してる?」
「……しかも、さっきまで怒ってたのに、息がぴったり……?」
「だから、喧嘩することが全部悪いわけじゃないにゃ!」
みくはララを見た。
「大事な相手だから、言いたいことがあるんだにゃ。ちゃんと向き合えば、何とかなることだってあるにゃん!」
李衣菜は少しだけ照れくさそうに視線を逸らした。
「……まあ、みくの言うことが全部正しいわけじゃないけどね」
「李衣菜ちゃん!」
緊張した空気の中、ロロが思わず小さく吹き出した。
ララも、つられて笑い二人は、侵略を諦めた様にその場にへたり込んだ。
シンは二人を見下ろし、深々とため息をついた。
「まったく……怪獣を使って侵略するっていうから、どんな奴らかと思えば」
「……だって、仕方なかったのよ」
ララはうつむいた。
「私たち、借金があって……地球で成果を出さないと、殺されちゃうって……」
「叔母さんがウルトラセブンに挑んだとき、家のお金を全部使っちゃったんです……」
ロロも、小さな声で説明した。
「それで、借金を返せなくなって……」
「だからって、地球の人間を巻き込んでいいわけねえだろ」
シンの言葉は厳しかった。
二人は何も言い返せなかった。
「それにしても借金取りが殺しとは物騒な奴らもいたもんだな…なら宇宙警備隊に守って貰えば良いだろ」
「えっ、借金の問題解決してくれるの、アイツら」
ララを驚きの声を漏らす
「内容による。相手側が悪虐な組織でも無かったら、大した面倒は見れねぇが殺されない様に仲介役ぐらいなら出来るだろ。ただし、その場合は金はしっかりと返せよ」
シンは彼女らにアドバイスを言い。その後、エレキングに目を向けると、少しだけ表情を和らげた。
「……それにしても、こいつはどういう飼い方をしてるんだ?」
「えっ?」
「エレキングは巨大な水場と餌さえあればそれなりに大きくなるだろ。何をどう育てればこんな小さく育つんだ」
「……え?」
ララとロロは、ぽかんとしたままシンを見た。
「な、なんでそんなに詳しいの?」
「そりゃ、危険怪獣だからな、知識は入れるだろ」
「いや、そういう答えじゃなくて……」
ロロは首を傾げた。
シンは、しまったという顔をした。
(まずい。つい普通に答えちまった)
彼は咳払いをして、話を誤魔化す。
「と、とにかく! 怪獣を育てるって言うならなら、ちゃんと生態を調べてからにしろってことだ!………いや!危ねぇ怪獣なんて育てるんじゃねぇ!!」
「は、はい……」
二人は素直に頷いた。
二人の悲しそうな顔を見るとエレキングはすぐにララとロロのもとへ歩いていった。
「きゅるるるっ!」
二人の足元に寄り添い、嬉しそうに鳴く。
「……エレキング」
ララはそっとしゃがみ込んだ。
「ごめんね。怖い思いをさせちゃって……」
ロロもエレキングを撫でた。
「もう、こんなことはさせないからね」
エレキングは、二人の手に頭をすり寄せた。
その光景を見ていたみくが、ほっと息をつく。
「よかったにゃ……」
李衣菜も頷いた。
「うん。これなら、もう大丈夫そうだね」
しかし、シンはまだ二人を見つめていた。
「……問題は、お前ら自身だ」
ララとロロの顔が強張る。
「今回のことは見逃せねえ。だが……」
シンは少しだけ考え、はっきりと言った。
「これから地球で大人しく、真面目に暮らすってんなら、命までは取らねえ。借金の問題だって、すぐに解決できるとは限らねえが……話ぐらいなら俺も聞いてやる。だから、犯罪なんてやめろ」
ララとロロは、何度も頷いた。
「ほ、本当!?」
「私たち、生きててもいいの……?」
「ああ。だが、次に悪さをしたら容赦しねえぞ」
「は、はいっ!」
二人は勢いよく頭を下げた。
「ありがとうございます!」
シンは小さく息を吐いた。
まったく、とんでもねえ仕事になっちまったぜ。
そう思ったとき、みくが不意に声を上げた。
「ねえ、シンちゃん!」
「ん?」
「エレキングちゃんにみくたちのLIVEを観てもらいたいにゃ!」
「……は?」
「せっかくだし! せっかく地球に来たんだから、楽しいことも知ってほしいにゃ!」
李衣菜も頷いた。
「そうだね。地球には侵略以外にも、面白いことがいっぱいあるんだから」
ララとロロは顔を見合わせた。
「……私たちも、見ていいの?」
「もちろんにゃ!」
みくは胸を張った。
「ただし、ちゃんと大人しくしてること!」
「は、はい!」
二人は、今度こそ心から頷いた。
事件がひっそりと収束したあと、会場では急いで安全確認が行われた。
怪我人は出ていない。設備の一部にはエレキングの電気による影響があったものの、ちひろとスタッフたちが協力して確認し、必要な箇所を調整した。
予定していたプログラムをすべて実施するのは難しくなったが、アスタリスクの出演は、会場側の判断で続行されることになった。
そして、夕方。
ステージの袖で、みくと李衣菜は並んで立っていた。
「……みく」
「……何にゃ、李衣菜ちゃん」
「さっきは、その……ごめん」
「……みくも、ちょっと言いすぎたにゃ」
二人はしばらく黙った。
やがて、李衣菜が小さく笑う。
「でも、やっぱりギターの色は、ロックな方がいいと思うんだよね」
「まだ言うにゃ!?」
「だって!」
「もう! 李衣菜ちゃんなんて知らないにゃ!」
「私だって!」
「「アスタリスクは解散!」」
舞台袖で聞いていたシンは、頭を抱えた。
「お前ら、今仲直りしたばっかりだろうがぁぁぁっ!」
しかし、二人は顔を見合わせると、同時に吹き出した。
「……ふふっ」
「……あははっ!」
「な、何笑ってんだよ!?」
みくは笑いながら、李衣菜の手を取った。
「ほら、行くにゃ。アスタリスクの出番だよ!」
「うん!」
二人は手をつないでステージへ飛び出していった。
シンはその背中を見送り、思わず笑みを浮かべた。
「……まったく。仲がいいんだか悪いんだか」
「ふふっ。どちらも、ですね」
ちひろが隣に立った。
「でも、あのお二人らしいでしょう?」
「ああ。……少しだけ、分かった気がするぜ」
シンはステージへ目を向けた。
互いに不満を言い合いながらも、二人は一緒に歌うことを選んだ。
それは、どこか懐かしい光景だった。
(タイガ。お前も、今頃どうしてるんだろうな。)
かつて一体化し、ぶつかり合いながらも、最後には共に戦うことを選んだ青年。
シンは、二人の姿に彼との日々を重ねた。
「……ま、あいつらなら大丈夫か」
ステージの照明が灯った。
みくと李衣菜の歌声が、会場いっぱいに響き渡る。
そして、二人の歌に合わせるように、舞台の端に置かれたエレキングが小さく鳴いた。
「きゅるるるっ!」
「おっ? エレキング、どうした?」
シンが振り返ると、エレキングの角から小さな電光が走った。
バチッ、バチッ、と電気が弾ける。
その電気は、会場のスタッフが安全を確認したうえで用意した装置へと送られ、ステージの照明演出に利用されていた。
黄色と青白い光が交互に輝き、まるで星空の中を稲妻が走るような幻想的な演出を生み出す。
観客席から、大きな歓声が上がった。
「すごい! あの光、電気なの!?」
「こんなLIVE、初めて見た!」
「アスタリスク、最高ーっ!」
みくは歌いながら、李衣菜へ視線を送った。
李衣菜も笑顔で応える。
二人の歌声と、エレキングの電気を使った光の演出が重なり、会場は大きな熱気に包まれた。
そして最後の曲が終わると、割れんばかりの拍手が二人を迎えた。
「みんなーっ! 今日は本当にありがとーっ!」
「アスタリスクでしたーっ!」
二人は並んで頭を下げた。
舞台袖に戻ってきた二人を、シンは迎えた。
「お疲れさん。……すげえLIVEだったぜ」
「でしょー?」
みくは得意げに胸を張った。
「みくたちの実力にゃ!」
「いやいや、ロックの力も大きかったよね!」
「またそうやって!」
「なにさ!」
「なによ!」
二人は睨み合った。
シンの笑顔が固まる。
「……おい。まさか」
「みくは、やっぱり李衣菜ちゃんとはやっていけないにゃ!」
「私だって、みくとは解散だよ!」
「「アスタリスクは解散!」」
「だから何でだぁぁぁぁっ!」
シンの絶叫と、ちひろの楽しそうな笑い声が、夜の会場に響き渡った。
少し離れた場所では、ララとロロが並んでステージを見つめていた。
「……すごかったね、お姉ちゃん」
「ええ。地球のアイドルって、こんなに素敵なのね」
二人の足元では、エレキングが嬉しそうに鳴いている。
「きゅるるっ!」
「……私たちも、これからはちゃんと働こうね」
「うん。借金も、少しずつ返していこう」
ララとロロは、エレキングをそっと抱き上げた。
かつては地球を侵略するために連れてきた怪獣。
けれど今は、二人にとって大切な家族のような存在になっていた。
そして、二人はステージの上で輝くアスタリスクを見つめた。
「……私たち、ファンになっちゃったね」
「……うん!」
その夜。
地球侵略に失敗した二人のピット星人は、初めて地球のアイドルを好きになった。
一方、シンはというと――。
「……次の仕事は、もうちょっと平和なやつがいいぜ」
疲れ切った顔で呟きながら、夜空を見上げていた。
宇宙には、まだまだ知らない星がある。
そこには、思いもよらない出会いがあり、思いもよらない騒動が待っている。
そして地球にもまた、怪獣や宇宙人とは違う、頭の痛くなるような騒動がいくらでもあるらしい。
「……ま、悪くはねえけどな」
シンは苦笑した。
こうして、アスタリスクと小さなエレキングの一日は、大盛況のうちに幕を閉じたのだった。
『ウルトラマンゼロのウルトラ徹底解説⭐︎』
「にゃあ〜! なんかすっごくキラキラした場所にきちゃったにゃ!」
「えっ、ここどこ!? スタジオの裏口から出たはずなのに、なんか宇宙空間っぽいんだけど……!」
目を丸くしながら登場したのは、アイドルの二人組――アスタリスクの前川みくと多田李衣菜だ。
「よう! アスファルトの上から突然の空間転移、お疲れさん! ここは俺たちが好き勝手に怪獣や宇宙人を語り合う『ウルトラマンゼロのウルトラ徹底解説⭐︎』のスタジオだ!」
腕を組んで不敵に笑うウルトラマンゼロの姿に、みくは「ウルトラマンさんだ!」と目を輝かせ、李衣菜は「これって、もしかして……すっごくロックな展開じゃん!」と興奮気味に声を上げた。
「さて、今日のゲストはアスタリスクの二人だな! そして解説するターゲットは、さっきお前たちのイベント会場に現れた、あの可愛いんだか危なっかしいんだか分からないコンビだ!」
ゼロが指を鳴らすと、ホログラムに二人の女性宇宙人と、黄色と黒の丸い怪獣の姿が映し出された。
「あっ、あのドジっ子だった宇宙人のお姉さたちと、手乗りサイズの可愛い怪獣ちゃんだ!」
みくが指をさすと、ゼロはふっと笑ってうなずいた。
「そうだ。まず一人目は『ピット星人』! 宇宙の侵略者として知られる二人の女性宇宙人だ。本来はセブンの時代から地球を狙ってきた狡猾で手強い連中なんだが……今回は借金返済のために必死な姉妹だったな」
「宇宙人にも借金とかあるんだね……」李衣菜が少し引いたような顔をする。「なんか、一気に親近感湧いちゃうなぁ……」
「そして二人目……いや、一匹だな! ターゲットは宇宙怪獣『エレキング』だ!」
ゼロがホログラムのエレキングを指し示す。本来は頭に大きな角を持ち、強力な電撃や白銀の光線を放つ全長40メートルの巨大怪獣である。
「本来のエレキングは、月の輪状の角を回転させながら強烈な放電攻撃を繰り出す凶暴な大怪獣だ。だが、今回の奴らは育て方を間違えたのか、すっかり手乗りサイズになってやがったな!」
「でも、ピット星人の二人にとっては大切な家族みたいになってたにゃ」どこかほっこりした事件を思い返しながら、みくが優しく微笑む。
「まあ、最後は仲良く暮らすことになったし、お前たちのLIVEの演出にも一役買ったわけだから結果オーライってやつか!」
ゼロはニッと笑い、フッと表情を引き締めてカメラの前に進み出た。
「さて、今回はここまで! 次回はどんなヤバい奴が飛び出してくるのか、お楽しみに!」