ウルトラマンゼロ/iDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 作:わたあめ丸
「――それでは、特別番組『銀色の巨人は何者なのか?』、第二回を始めましょう!」
スタジオに、女性アナウンサーの明るい声が響いた。
彼女の背後にある大型モニターには、銀色の巨人が街に立つ姿が映し出されている。
以前、この番組では突如として現れた巨大ロボット・クレージーゴンと、それを撃破した謎の巨人について特集した。
あの時点で、巨人は人類の味方である可能性が高いこと。そして、かつてテレビで放送されていた特撮番組『ウルトラマン』に登場する存在と、何らかの関係があるのではないかという考察が行われていた。
しかし、その後も謎の巨人は人々の前に姿を現した。
今度は、巨大な宇宙人から人々を守るために。
「今回も、特別ゲストとして南條光さんにお越しいただきました! そして、こちらも前回に引き続き、特撮作品に造詣が深い評論家のカネダさんです!」
「よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします。いやあ……前回の放送から、またとんでもないことが起きましたね」
カネダは苦笑しながら、机の上に置かれた資料を持ち上げた。
特撮への憧れから生物学と機械工学を学び、現在は特撮作品の科学的考察を専門とする評論家。彼にとって、今回の出来事は専門家としての興味を刺激されると同時に、幼い頃から憧れていた世界が現実になったような事件でもあった。
一方、南條光はすでに落ち着かない様子である。
「だって! だってですよ!? 今回はロボットだけじゃなくて、宇宙人まで出てきたんですよ!? しかも、あの姿! どう見てもダダじゃないですか!」
「光さん、開始早々に飛ばしますねえ」
「飛ばさずにいられますか! あのダダですよ!? ウルトラマンに登場した、あのダダ!」
「はいはい。気持ちは分かりますから、順番に整理していきましょう」
アナウンサーが微笑みながら話を進める。
「まずは、先日開催された宇宙科学フェスティバルの音楽イベントで起きた事件から振り返ります」
モニターに映像が流れ始めた。
映像に映し出されたのは、プラネタリウムを会場とした音楽イベントだった。
満天の星々を背景に、二人のアイドルが歌っている。
新田美波とアナスタシア。
二人の歌声に合わせて星空が移り変わり、会場は幻想的な光景に包まれていた。
ところが、その途中で異変が起きる。
客席を正体不明の光線が走り、人間の身体が、ほんの数十センチ程度にまで縮小してしまったのである。
「何度見ても信じられない映像ですね……」
アナウンサーが眉を寄せる。
「人間が小さくなるなんて、現代の科学では説明できません。しかも、その直後に現れたのが……」
画面が切り替わった。
筋骨隆々の男が、ステージへと歩み寄り、どこか芝居がかった仕草。自信満々の表情。そして、妙に女性的な口調。
そしてスタッフであろう二人の男性と何やら話したのち姿を変える
「こちらの宇宙人、彼は『ウルトラマン』に登場する『三面怪人ダダ』と外見的特徴は非常によく似ていますね。映像の人物が人間の姿から別の姿へ変化したことも確認できます。特殊メイクや着ぐるみで説明するには、少々無理がある」
カネダは画面を一時停止させた。
「注目したいのは、彼が人間を縮小させた技術です。劇中のダダも人間を標本にする目的で行動していました。今回の事件でも、縮小された人々を標本として扱おうとしている。つまり、単に外見が似ているだけではなく、行動や目的まで一致しているわけです」
「ということは……本当にダダなんでしょうか?」
「少なくとも、現在の映像からはその可能性を否定できません。むしろ、特撮番組に登場したダダと同じ存在だと考えた方が、説明しやすい部分もある」
光は両手を握りしめた。
「うわぁ……。テレビの中にいた宇宙人が、本当に地球に来てるんだ……!」
「そして、ダダに立ち向かったのが、あの謎の巨人です」
アナウンサーの言葉とともに、映像が切り替わった。
銀色の巨人が、ダダの前に立ちはだかる。
ダダの攻撃を軽々とかわし、反撃する姿は力強い。
やがてダダが両手で構える奇妙な銃を取り出し、街へ向けて光線を放とうとした、その時だった。
巨人の姿が変わった。
青と赤を基調とした姿から、全身が青い色を強く帯びた姿へ。
「来たぁっ! 青い姿!」
光が身を乗り出した。
「光さん、やはり此処に注目しますね」
「もちろんです! 前に見た時は銀色の姿でしたけど、今回は青くなったんですよ! ウルトラマンって、作品によっては姿を変えて戦うことがありますよね。姿が変わると能力まで変化することもあるんです!」
「そうですね。特撮作品では、変身や形態変化によって状況に応じた能力を発揮する描写がよく見られます。今回の巨人も、単に色が変わっただけではなさそうです」
カネダが映像を再生する。
青い巨人は、ダダの放った光線に対して手をかざした。
すると、光線の軌道が不自然に曲がり、発射したダダ自身へと跳ね返っていく。
ダダの身体はみるみる小さくなり、ついには数センチ程度になってしまった。
「光線を反射させたわけではなく、軌道そのものを変えたように見えますね。あの動きは、単純な防御能力とは考えにくい」
「超能力みたいなものかな?」
「その可能性はあります。ウルトラマンの番組にも、怪獣や宇宙人の動きを封じたり、物体を動かしたりする『ウルトラ念力』と言う能力が登場しますからね。あの巨人が使った力も、そうした描写と結びつけて考えられます」
「それにしても……」
光は、ダダを捕獲容器に入れる巨人の姿を見つめた。
「人間を小さくした宇宙人を、今度は小さくして捕まえるなんて……。ちゃんと助けてくれたんですね」
その声には、興奮だけでなく安堵も混じっていた。
「実は、今回の事件では私の事務所の同僚も巻き込まれたんです」
光の表情が、少しだけ真剣になる。
「新田美波さんとアナスタシアさん。二人が出演していたイベントだったんです。あたし、事件の後に二人から話を聞いたんですけど……」
彼女は胸元で手を握った。
「二人とも、すごく怖かったと思います。イベントを成功させようって頑張ってたのに、あんなことになって……。でも、二人とも大きな怪我はなくて、今は平気そうだったんです。本当に、よかった……」
光は一度、目を伏せた。
そして、再びモニターを見上げる。
「だからこそ、あの巨人には感謝してます。人々を助けてくれたことも、二人を守ってくれたことも!」
「光さんにとっては、他人事ではなかったんですね」
「はい! でも、それとは別に……やっぱり、ウルトラマンみたいな巨人が本当に誰かを守ってくれたっていうのが、すごく嬉しいんです!」
カネダは静かに頷いた。
「その気持ちは、今回の映像を見た多くの方が共有していると思います。もちろん、正体も目的もまだ分からない。ですが、少なくとも今回の行動を見る限り、彼は人間を守るために戦っていた。そこは重要な点でしょう」
「ええ。前回の放送でも話題になりましたが、今回の事件でも、その姿勢は変わっていませんね」
アナウンサーが資料をめくった。
「そして、先ほど視聴者の方から番組に送られた映像にはもう一つ、気になる存在が映っていたんです」
画面には、音楽イベントの会場付近で撮影された動画が映し出された。
撮影者は、会場の外で騒ぎが起きる直前、二人組の女性を見かけたという。
映像では顔は隠されているが一人は、どこか頼りなさそうな雰囲気の女性。
もう一人は、しっかり者に見える女性だった。
二人の間にいたのは――。
「……えっ?」
光が目を丸くした。
「エレキング!?」
動画の中では、二人の女性が、丸っこい黄色と黒の生き物を抱えていた。
小さな角。長い尻尾。特徴的な模様。
どう見ても、特撮番組『ウルトラセブン』に登場した怪獣エレキングを連想させる姿だった。
ただし、その大きさは通常の怪獣とはまったく違う。
女性の腕に収まるほど小さく、丸々とした身体をしている。
「ちっちゃい……!」
光は思わず画面に近づいた。
「メビウスに出てきたリムエレキングよりは大きいですけどもっとまんまるだ! こんなエレキングがいるなんて!」
「動画の撮影者によれば、体長はおよそ五十センチほど。しかも、模型やロボットではなく、生き物のように動いていたとのことです」
アナウンサーが別の映像を表示する。
小さなエレキングは、抱きかかえていた女性の腕の中でもぞもぞと動き、彼女の頬に顔を寄せていた。
女性は困ったように笑いながら、その身体を抱え直している。
「見てください。尻尾の動きや身体の揺れ方が自然です。表面の質感も、一般的な着ぐるみや模型とは異なります」
カネダが映像を拡大する。
「生物学的な観点から見ても興味深いですね。エレキングのような生物が実在すると仮定した場合、あの大きさで成長が止まっているのか、幼体なのか、あるいは特殊な環境によって小型化しているのか。現時点では判断できません」
「でも、あの子……すごく懐いてますね」
光が指さした。
動画の中のエレキングは、女性の腕から離れようとせず、甘えるように身体をすり寄せている。
「怖がらせようとしている感じはないし、抱っこされてるのも嫌がってない。なんだか、ペットみたいです」
「ええ。ただ、ここで注意したいのは、エレキングが小さいからといって、危険性まで低いとは限らないことです」
カネダは真面目な表情で続けた。
「『ウルトラセブン』に登場したエレキングは、電気を利用する能力を持った怪獣として描かれていました。今回の個体が同じ能力を持っているなら、あのサイズであっても注意は必要でしょう」
「でも、あの子は悪いことをしたわけじゃないですよね?」
「その通りですね。重要なのは、生物そのものと、それをどう扱うかという問題を分けて考えることです」
光はほっとしたように頷いた。
「うん! あの子も、二人のお姉さんたちも、ただそこにいただけかもしれないもんね!」
「そうですね。では、次に考えるべきは――」
カネダは画面に映る二人の女性を指した。
「この二人は、いったい何者なのか。そして、なぜエレキングと一緒に行動していたのか、という点です」
スタジオのモニターに、二人の女性の姿が並べて表示された。
「まず、エレキングと共に行動していたという情報です。『ウルトラセブン』において、エレキングと深い関係を持っていた二人組の女性宇宙人といえば……」
「ピット星人!」
光が即答した。
「そう! ピット星人です! エレキングを操ってウルトラセブンと戦わせた、あの宇宙人!」
「さすがですね、光さん」
「いやいや、ここは外せないところですよ!」
光は興奮しながらも、すぐに少し考え込む。
「でも、今回の二人が本当にピット星人だとしたら、どうしてあんなに普通にエレキングを抱っこしてたんだろう?」
「そこが面白いところです」
カネダは資料をめくった。
「『ウルトラセブン』に登場したピット星人は、エレキングを利用して地球を侵略しようとしました。しかし、今回の映像だけでは、二人に侵略の意思があったかどうかは分かりません」
「つまり、姿や行動が似ているからといって、同じ目的とは限らないんですね」
「その通りです。もし彼女たちがピット星人だったとしても、過去の特撮番組と同じ行動を取るとは限りません。今回のエレキングが小型であることも、二人がそれを抱えていたことも、まだ説明がついていない」
「でも、二人とも、ちょっと困ってるように見えませんでした?」
光が動画の一場面を指した。
二人の女性は、エレキングが腕の中で動くたびに慌てていた。片方はどう扱えばいいか分からないように身体を揺らし、もう片方は呆れたような表情でその様子を見ている。
「片方の女性は、エレキングの扱いに慣れていないようにも見えます。もし侵略作戦のために連れてきたのなら、少々不自然ですね」
「うーん……。じゃあ、ピット星人だけど、侵略者じゃない可能性もある?」
「現時点では、どちらとも断定できません。」
カネダは慎重に言葉を選んだ。
「私たちは、特撮番組で描かれた設定を手がかりにして、現実に起きた現象を理解しようとしています。しかし、テレビ番組の知識だけですべてを決めつけるのは危険です。彼女たちの正体も、エレキングの目的も、今後の調査が必要です」
「そうですね……」
光は頷いたあと、ぱっと顔を明るくした。
「でも、もし本当にピット星人だったら、すごいですよね! ウルトラセブンに出てきた宇宙人が、今度は地球で小さなエレキングと一緒に暮らしてるかもしれないんですよ!」
「光さん、少し楽しそうですね」
「だって、宇宙人にもいろんな人がいるかもしれないじゃないですか! もちろん、悪いことをするなら止めなきゃいけない。でも、人間だって悪い人はいますから、最初から敵だって決めつけるんじゃなくて、どうしてここにいるのかを知るのも大事だと思うんです」
カネダは、感心したように笑った。
「なるほど。特撮作品の中でも、異なる存在を理解しようとする物語は数多く描かれてきました。未知の相手だからこそ、観察し、話を聞き、行動を見極める。そういう姿勢は大切ですね」
「はい! もしあの二人に会えるなら、あたし、エレキングのことをいっぱい聞いてみたいです!」
「その時は、ぜひ安全を確保してからお願いしますね」
「も、もちろんです!」
光は慌てて背筋を伸ばした。
スタジオに笑いが起こる。アナウンサーはその様子を見届けてから、正面のカメラに向き直った。
「謎の巨人、ダダ、そして小さなエレキングと二人の女性。今回の事件を通して、私たちの世界には、これまで知られていなかった存在が確かにいるのかもしれない――そんな可能性が見えてきました」
「ええ。だからこそ、これからも情報を集め、冷静に考えていく必要があります」
カネダが頷く。
「そして、もう一つ。あの巨人が何者なのかという問題も、依然として残されています」
「人々を守り、宇宙人を撃退した銀色の巨人……。彼は一体、どこから来たのでしょうか」
アナウンサーが問いかけた、その時だった。
スタジオの照明が、一瞬だけ明滅した。
「……あれ?」
光が天井を見上げる。
大型モニターの映像が乱れ、画面いっぱいに砂嵐が走った。
『――ザザッ……ザザザッ……』
「えっ、映像トラブルですか?」
アナウンサーがスタッフ席を振り返る。
スタッフたちも困惑していた。
「おかしいですね。こちらから映像を切り替えたわけでは……」
カネダはモニターを見つめ、眉をひそめる。
「待ってください。これは単なる放送機器の不具合ではないかもしれません」
画面の砂嵐が、ぴたりと止まった。
そこに映し出されたのは、赤茶色の肌をした宇宙人だった。
細長い顔。特徴的な頭部。そして、胴体の中央を縦に走る、大きな縫い目。
その姿を見た瞬間、光の目が大きく見開かれた。
「……メ、メトロン星人!?」
画面の中のメトロン星人は、まるで自宅の居間でくつろいでいるかのように、のんびりと片手を上げた。
『やぁやぁ、地球人の皆様ご機嫌様。あるいは、こんばんわ、かな』
その口調は、妙に親しげだった。
『この番組を観ている人間なら知っていると思うが、ワタシはメトロン星人だ』
光は椅子から立ち上がりかけた。
「うわあああっ! 本当にメトロン星人だ! あ」
「光さん、落ち着いて!」
「む、無理ですよ! だって、メトロン星人ですよ!? ウルトラセブンにも、ウルトラマンマックスにも出てきた、あの!」
『おやおや、元気なお嬢さんだね。私のことをよく知っているようだ』
メトロン星人が画面越しに光を見た。
光は思わず硬直する。
「は!話しかけて来た!?」
『いやいや、返事をするのは会話において当然だろう?』
「そ、それはそうですけど……!」
『ふふふ。さて、皆さん。そんなに強張る必要は無い』
メトロン星人は、軽く手を振った。
『コレの電波で凶暴化する事も、今市場に流れてるタバコを吸っても何もならない。私はこの世界を侵略するつもりは無いからね』
アナウンサーが慎重に尋ねた。
「あなたは、私たちの放送に何らかの方法で介入しているのですか?」
『その通り。君たちの番組は実に興味深かった。地球人が、ワタシたちの存在について一生懸命に考察している。いやあ、なかなか面白いものだね』
メトロン星人は、画面の向こうで楽しそうに肩を揺らした。
『特にカネダ氏。生物学と機械工学を学んだそうじゃないか。特撮作品への憧れから、そこまで勉強するとは……いやはや、感心するよ』
「……私の経歴までご存じなのですか?」
カネダの顔から笑みが消えた。
『もちろん。地球の情報を調べるくらい、宇宙人にとっては難しいことではないさ』
「では、今回のハッキングも……?」
『おっと、ハッキングという言い方は少々物騒だな。ワタシはただ、君たちと話をするために、少しだけ放送設備を借りているだけだよ』
「少しだけ、という規模ではない気がしますが……」
アナウンサーが思わず呟く。
『ははは、これは失礼』
メトロン星人は悪びれもせずに笑った。
『さて、ワタシがこの番組の場を借りて語りたい事はただ一つ』
彼はそこで一度、言葉を切った。
そして、画面の向こうから、まっすぐにこちらを見つめる。
『君と話がしたい、ウルトラマンゼロ』
スタジオの空気が凍りついた。
「…………え?」
光が、ぽかんと口を開けた。
アナウンサーもカネダも、すぐには反応できなかった。
今まで謎の巨人と呼んでいた存在。
その正体に関する考察は進んでいたが、確かな名前は分かっていなかった。
その巨人を、メトロン星人ははっきりと名指ししたのだ。
『君の親父さん、ウルトラセブンとは色々あったが、恨みがあるわけじゃ無い』
「……親父さん?」
光の声が裏返った。
『ただ君とちゃぶ台を囲み話したいだけだ。今回はただのメッセージだが……しばらくしないうちに君に招待状を送ろう』
メトロン星人は、何でもないことのように言った。
『それでは今日の所はコレで終わるよ』
そして、画面の端へ視線を向ける。
『最後に、この場を貸してもらった番組への感謝。それと、これからも番組を楽しみに見させてもらうよ、カネダ氏、光くん』
「えっ、あ、はい! ありがとうございます……じゃなくて!」
光は思わず声を上げた。
「ちょっと待ってください! ウルトラマンゼロって、今、言いましたよね!? それに、セブンの息子って……!」
『おや、もう時間か。地球の放送番組というのは、なかなか忙しいものだね』
「いや、待って! 待ってください! もう少し詳しく――!」
『では、また会おう』
メトロン星人は、満足そうに片手を上げた後
画面が再び砂嵐に覆われる。
数秒後、モニターには番組のロゴが戻った。
スタジオには、何事もなかったかのような静寂が落ちた。
やがて、アナウンサーが震える声で口を開く。
「……えー……。ただいま、私たちの番組に、宇宙人から直接メッセージが届きました」
カネダは呆然とモニターを見つめていた。
「……いやはや。これは、考察番組の範疇を超えてしまいましたね」
「ウルトラマンゼロ……!」
光は、両手を胸の前で強く握りしめていた。
「セブンの息子……! ウルトラマンゼロ……!」
彼女の目は、今にも星が飛び出しそうなほど輝いていた。
「ウルトラセブンが、本当にいるんだ……! しかも、あの謎の巨人が、その息子だったなんて!」
「光さん、少し呼吸を整えましょう」
「無理です! だって、メトロン星人ですよ!? あのメトロン星人が! しかも、ゼロに話がしたいって! ちゃぶ台を囲みたいって! 何それ、すっごく気になるんだけど!?」
「確かに、あの発言は気になりますね……」
カネダは、ようやく冷静さを取り戻し始めた。
「メトロン星人は、ウルトラセブンやウルトラマンマックスの物語に登場した宇宙人です。そして今、彼自身がこの世界に現れ、謎の巨人をウルトラマンゼロと呼んだ。さらに、ウルトラセブンを父親だと公表した」
カネダは、カメラに向き直った。
「つまり、私たちがこれまで考察してきた『謎の巨人』は、ウルトラマンゼロという名を持ち、ウルトラセブンの息子である可能性が極めて高い。少なくとも、今回のメッセージは、そのことを強く示しています」
「そして、メトロン星人は侵略の意思がないと話していましたが……」
アナウンサーが続ける。
「その言葉を、私たちはどこまで信じてよいのでしょうか?」
「そこは慎重に考えるべきでしょう。本人は侵略するつもりはないと言いましたが、放送設備に介入できる技術を持ち、こちらの情報も把握している。彼の目的は、まだ分かっていません」
カネダは少しだけ表情を和らげた。
「ただ、彼は自分の目的を隠すことなく、ゼロと話がしたいと明言した。これが単なる挑発なのか、それとも本当に対話を求めているのか。今後の動きに注目する必要があります」
アナウンサーはカメラを見つめた。
「本日の特別番組では、謎の巨人の新たな姿と、ダダによる事件、そして小さなエレキングと二人の女性について考察してきました。しかし最後に、私たちはさらに大きな謎を突きつけられました」
カネダが静かに頷く。
「ウルトラマンゼロ。ウルトラセブンの息子。そして、彼との対話を望むメトロン星人。これから何が起きるのか、現時点では誰にも分かりません」
「でも、きっと……」
光は、モニターに映る銀色の巨人の姿を見上げた。
「ウルトラマンゼロなら、どんな相手でも、ちゃんと向き合ってくれると思います!」
その言葉を最後に、番組は締めくくられた。
ーーーーーーー
放送終了から、わずか数分後。
つぶやきアプリ「Z」は、かつてないほどの騒ぎになっていた。
画面を埋め尽くす投稿。
驚き。興奮。困惑。考察。
そして、誰もが同じ言葉を繰り返していた。
『ウルトラマンゼロ』
『セブンの息子』
『メトロン星人』
『ちゃぶ台』
番組を見ていた人々が、次々と感想を書き込んでいく。
『え、あの銀色の巨人ってセブンの息子だったの!?』
『セブンの息子って何!? ウルトラマンって本当に実在するの!?』
『メトロン星人が普通に番組に割り込んできたんだけど……』
『父親がセブンなら母親誰だよ』
『侵略する気はないって言ってたけど、あれを信じていいのか?』
『ちゃぶ台を囲みたいって、どういうことなんだよ!』
『ゼロ様❤️私と結婚してぇ〜!!!』
『光ちゃんの反応、こっちまで嬉しくなった。あの子、本当にウルトラマンが好きなんだな』
『小さなエレキングも気になる。私もちっちゃなエレちゃん飼いたい❤️』
そして、番組終了後のトレンドランキングが更新される。
一位。
ウルトラマンゼロ
二位。
メトロン星人
三位。
セブンの息子
謎の巨人と呼ばれていた存在は、ついに世界中に名前を知られることとなった。
ウルトラマンゼロ。
ウルトラセブンの息子。
その事実は、地球に住む人々にとって、あまりにも大きなニュースだった。
そして、その本人はというと――。
「……なあ。なんか、さっきから妙に騒がしくねえか?」
芸能事務所の一室で、モロボシ・シンは仕事用に貰ったスマートフォンの画面を覗き込んでいた。
そこには、見覚えしかない銀色の巨人の写真と、聞き覚えしかない名前が並んでいる。
「ウルトラマンゼロ……? セブンの息子……?」
シンは嫌な予感を覚えた。
「…どういう…事だ!?……」
トレンドには先程放送されたメトロン星人がウルトラマンゼロへ向けたメッセージが動画として貼られてた
「ふざけんなぁぁぁっ! 何勝手に人の名前を広めてんだ、このメトロン星人――っ!!」
事務所の外まで響き渡る叫び声が静かな街に響き渡る。