ウルトラマンゼロ/iDOLM@STER CINDERELLA GIRLS   作:わたあめ丸

13 / 13
愛された街

 円谷プロダクション。

 

 ウルトラマンをはじめ、数々の特撮作品を世に送り出してきた会社は、謎の巨人が現れてからというもの、連日ニュースやインターネットで話題になっていた。

 

 その会社の受付に、モロボシ・シンと三人のアイドルが訪れていた。

 

「346プロダクションの皆様ですね。お待ちしておりました」

 

 受付の女性は、四人に丁寧に頭を下げた。

 

「本日はお越しいただきありがとうございます。社長室へご案内いたします」

 

「よろしくお願いします!」

 

 卯月が元気よく返事をする。

 

「いやあ、ついに来ちゃったね、円谷プロ!」

 

 未央はきょろきょろと周囲を見回し、興味津々といった様子だった。

 

「未央、あんまりはしゃがないの」

 

「だって、しぶりん! ここ、ウルトラマンを作ってる会社だよ!? あのウルトラマンだよ!?」

 

「分かってるって。声が大きいよ」

 

「ふふっ。未央ちゃんらしいですね」

 

 卯月が微笑む。

 

 三人のやり取りを横目に、シンはどこか落ち着かない様子で廊下を歩いていた。

そんなゼロを見て凛が小声で喋り掛ける。

 

「もう少し肩の力抜きなよ、侵略するつもりなら、もっと別のやり方だってあるはずでしょ」

 

「だからこそ、何が目的なのか分からねえんだよ」

 

 シンは腕を組んだ。

 

「ま、会えば分かるだろ。話を聞く前から敵だと決めつけるつもりはねえさ」

 

「うん。それはゼロらしいね」

 

「おい、凛。今はシンだ」

 

「分かってるよ」

 

 凛は小さく笑った。

その時、案内していた受付の女性が足を止めた。

 

「こちらが社長室です。社長はすぐにいらっしゃるとのことですので、どうぞ中でお待ちください」

 

「ありがとうございます」

 

 卯月が礼を言い、四人は社長室へと入った。

 

 広々とした室内には、立派な机と書棚が並んでいる。壁には歴代の特撮作品のポスターが飾られ、棚には怪獣やヒーローの模型が整然と並べられていた。

 

「わあ……!」

 

 未央の目が輝く。

 

「見て見て! あれ、怪獣の模型じゃない!? こっちにはウルトラマンもいるよ!」

 

「未央、勝手に触っちゃ駄目だよ」

 

「分かってるって!」

 

 未央は手を伸ばしかけて、慌てて引っ込めた。

卯月も興味深そうに棚を眺めている。

 

「こういうものが、実際の番組を作るときにも使われるんですね……」

 

「まあ、模型だけじゃねえだろうけどな。実物大の着ぐるみだってあるだろうし、撮影用のセットだって必要だ」

 

「シンさん、詳しいんですね」

 

「まあ、こっちに来てから色々調べたからな」

 

 やがて四人は、応接用のソファへ腰を下ろした。

社長が来るまで、少し時間がかかるらしい。

 

「……それにしても」

 

 凛が室内を見回す。

 

「本当に、ここにメトロン星人がいるのかな」

 

「いたら、どうする?」

 

 未央が楽しそうに尋ねた。

 

「どうするって……まずは話を聞くよ」

 

「えー? 私は握手してもらいたいなあ!」

 

「未央ちゃん、相手は宇宙人ですよ?」

 

「卯月だって、気にならない? 本物の宇宙人だよ?」

 

「それは……確かに、気になりますけど」

 

「でしょ!」

 

 未央が得意げに胸を張る。

その横で、シンはため息をついた。

 

「お前らなあ……。相手が何を考えてるか分からねえんだぞ。もう少し警戒しろよ」

 

「はーい」

 

「分かりました」

 

「うん。気をつけるよ」

 

 三人が素直に返事をする。

 

 しかし、未央の顔には好奇心が隠しきれずに残っていた。

シンは、そんな三人を見て苦笑した。

 

 本当に、こいつらは……。

 

 その時だった。

部屋の窓から差し込んでいた昼の光が、ふっと赤みを帯びた。

 

「……ん?」

 

 シンが顔を上げる。

窓の外が、急速に夕焼け色へと染まっていく。

いや、窓の外だけではない。壁が、床が、天井が。

社長室そのものが、夕日の色に包まれていった。

 

「えっ……?」

 

 卯月が息を呑む。

壁に飾られていたポスターが消え、書棚が消え、立派な机も姿を消していく。

代わりに現れたのは、どこか懐かしさを感じさせる古びた日本家屋の一室だった。

畳敷きの床。低い天井。障子越しに差し込む、燃えるような夕日。

そして、部屋の中央にはちゃぶ台が置かれており、その向こう側に、一人の宇宙人が座っている。

 

 赤茶色の肌。

 細長い顔。

 特徴的な頭部。

 そして、中央に走る大きな縫い目。

 

「……ようこそ、諸君」

 

 メトロン星人は、まるで元からそこにいたかのように、のんびりと手を振った。

 

「えええええええっ!?」

 

 未央の叫びが、夕焼けの部屋に響き渡った。

 

「メ、メトロン星人!? 本物!? いきなり出て来たんだけど!?」

 

「……お前が俺を呼んだメトロン星人か」

 

 シンはソファから立ち上がった。

警戒を解かず、相手の姿をじっと見据える。

 

「ああ。私が呼んだ、ウルトラマンゼロ」

 

「……っ!」

 

 卯月と凛が息を呑んだ。

未央はシンとメトロン星人を交互に見て、口をぱくぱくさせている。

 

「君たちも、どうぞ座りたまえ。せっかく来てくれたんだ。立ち話では落ち着かないだろう?」

 

 メトロン星人は、ちゃぶ台の向こうから穏やかに促した。

 

「……この部屋は、お前が作ったのか?」

 

 シンが尋ねる。

 

「作ったというより、少々手を加えさせてもらったと言うべきかな。君たちが来るのを待つ間、せっかくだから私の好きな場所を用意したんだ」

 

「好きな場所、ねえ……」

 

 シンは周囲を見回した。

ただの古い部屋ではない。

この夕焼けも、障子の向こうに広がる街並みも、どこか現実離れしている。

だが、そこには不思議な温かさがあった。

未央たちは、まだ戸惑いながらもちゃぶ台の周りへ腰を下ろした。

 

「……あの、メトロン星人さん」

 

 卯月が、おずおずと口を開く。

 

「私たち、本当にここにいて大丈夫なんでしょうか?」

 

「もちろん。今日は君たちに危害を加えるつもりはないよ。少なくとも、話し合いの最中に君たちを襲うような無粋な真似はしないさ」

 

「少なくとも、ってところが気になるんだけど……」

 

 凛が冷静に指摘した。

 

「ははは。警戒心が強いのは良いことだ。君はなかなか賢いね」

 

「褒められても、安心はできないんだけど」

 

「それでいいとも」

 

 メトロン星人は、満足そうに頷いた。

シンは改めて、目の前の宇宙人を見つめた。

 

「……お前の事はマックスから聞いてるぜ」

 

 シンは静かに口を開いた。

 

「親父に敗れたメトロンが、別の地球で生き延びていた。そいつは顔に大きな縫い目があるってな」

 

 メトロン星人の動きが、わずかに止まった。

 

「ほう。マックス君と知り合いなのか…まぁ不思議では無いか、二人とも光の国出身なのだから」

 

「あいつから聞いた話じゃ、お前は人間を見限ったんだろ?」

 

 シンの声には、少しだけ厳しさが混じった。

 

「機械に頼りすぎる地球人は、何もしなくてもいずれ自滅する。だから、自分が手を下すまでもない――そう結論を出して、地球を離れたってな」

 

 夕焼けの部屋に、静かな沈黙が落ちた。

メトロン星人はしばらくシンを見つめていたが、やがて小さく笑った。

 

「……なるほど。彼はそこまで話してくれたのか」

 

「お前が何を考えて地球を離れたのか、俺は全部知ってるわけじゃねえ。でも、少なくとも、そういう結論を出したことは聞いてる」

 

「そうか……」

 

 メトロン星人は、ちゃぶ台に置かれた自分の手を見つめた。

 

「確かに、私はあの世界の人類に未来はないと考えた。便利な機械に頼り、自ら考えることをやめ、他者とのつながりさえ失っていく。そんな姿を見ているうちに、私は人類の行く末を見限ったのだよ」

 

 その声は、先ほどまでの軽妙な調子とは少し違っていた。

 

「だが……この世界に来てから、考えが変わった」

 

「どうして?」

 

 凛が尋ねた。

 

「君たち地球人と触れ合う機会が増えたからさ」

 

 メトロン星人は、ゆっくりと顔を上げた。

 

「私は、この世界に来てから、随分と長い時間を過ごしている。最初は、ただの興味だった。自分が知っている地球とは異なる歴史を歩んだ世界が、どんな場所なのかを見てみたかったのだ」

 

「それで、円谷プロに来たんですか?」

 

 卯月が尋ねる。

 

「そういうことだ。私は、ウルトラQの時代に、この世界の円谷の人間と知り合った。最初は、ほんの些細な交流だったよ。彼らは私が宇宙人であることを知っても、すぐに敵と決めつけたりはしなかった」

 

 メトロン星人は懐かしむように目を細めた。

 

「人間というものは、実に面白い。好奇心が強く、時には愚かで、時には驚くほど勇敢だ。自分の理解できない存在を恐れる一方で、その存在を理解しようとする者もいる」

 

「……それで、仲良くなったんだな」

 

 シンが言った。

 

「ああ。彼らと話をするうちに、私はこの世界の人類に情が湧いてしまったのだよ」

 

 メトロン星人は、少し照れくさそうに笑った。

 

「そして、彼らが作る番組にも興味を持ち、交流を得てやがて、この世界でウルトラマンシリーズが放送されることになった。その時から私のことを知っている円谷プロの人間も、今なお一部にはいるよ」

 

「ええっ!? じゃあ、円谷プロの人たちは、本当に宇宙人がいるって知ってるの!?」

 

 未央が身を乗り出した。

 

「一部の人間はね。もちろん、全員が知っているわけではない。知っている者たちも、私の存在を公にするつもりはなかった。世間を騒がせる必要はないからね」

 

「でも、ウルトラマンの番組を作ることになったんですよね?」

 

 卯月が尋ねる。

 

「そうだとも。私は彼らに協力した。自分が知っている宇宙の話を伝えたり、怪獣や宇宙人についての知識を提供したりね。もちろん、実際の番組作りは彼らの仕事だ。私はあくまで、少しばかりの助言をしたにすぎない」

 

「……なるほどな」

 

 シンは頷いた。

 

 この世界でウルトラマンがテレビ番組として存在している理由。

それが、メトロン星人と円谷プロの人々との交流にあったというのは、なかなか興味深い話だった。

だが、シンにはもう一つ気になることがあった。

 

「じゃあ、どうしてメビウスより後の…俺や他のウルトラマンの番組は放送されてなかったんだ?」

 

 メトロン星人は、待ってましたと言わんばかりに肩をすくめた。

 

「それは、少々現実的な事情でね」

 

「現実的な事情?」

 

「制作費だよ」

 

「……は?」

 

 シンが間の抜けた声を出す。

 

「ウルトラマンシリーズというのは、実にお金がかかる。特に、ミニチュアを使った特撮にはね。街並みを作り、建物を並べ、怪獣を動かし、壊れる様子まで撮影する。そうした映像には、途方もない手間と費用が必要になる」

 

 メトロン星人は、指を一本立てた。

 

「この世界の円谷プロは、メビウス以前から、特撮にずいぶんと力を入れてきた。その結果、ミニチュアやセットに予算をかけすぎてしまい、次のシリーズを撮影する余裕がなくなってしまったのさ」

 

「ええええっ!? お金の問題!?」

 

 未央が叫ぶ。

 

「もっとこう、宇宙の危機とか、何かすごい理由があると思ったのに!」

 

「未央、現実の番組制作には現実のお金が必要なんだよ」

 

 凛が呆れたように言った。

 

「分かってるけどさぁ!」

 

「ふふっ。どれだけ壮大な物語を描くとしても、撮影するための予算がなければ始まらない。そういうことだね」

 

 メトロン星人は楽しそうに笑った。

 

「結果として、メビウス以降の作品、君やその後輩達は、この世界ではテレビシリーズとして放送されなかった。もちろん、君達ニュージェネレーションという名前も、戦士たちの名前としては知られていない」

 

「……ニュージェネレーション?」

 

 卯月が首を傾げた。

 

「私達と同じ名前なんですね」

 

「そうとも。偶然にも、君たちアイドルユニットと同じ名を冠する戦士達がいるのだよ。実に面白い偶然だと思わないかね?」

 

「へえー! なんだか、親近感が湧きますね!」

 

 卯月が笑顔になる。

 

「じゃあ、私たちもウルトラマンの仲間ってこと?」

 

 未央が冗談めかして胸を張った。

 

「いや、そこまでは言ってねえだろ!」

 

「えー? でも、私達ニュージェネレーションズだよ?」

 

「名前が同じだからって、何でも一緒にするな!」

 

「ゼロ、ツッコミが厳しいね」

 

 凛が小さく笑った。

メトロン星人も、くつくつと笑っている。

 

「いやあ、実に賑やかだ。君たちのような若者がいるなら、この世界の人類もまだまだ面白いことをしてくれそうだね」

 

 シンは少しだけ眉をひそめた。

 

「……それで、結局、俺を呼んだ理由は何なんだ?」

 

 メトロン星人の笑みが、少しだけ穏やかなものに変わった。

 

「そうだった。肝心な話を忘れるところだったよ」

 

 彼は、ちゃぶ台の上に両手を置いた。

 

「ゼロ。君がこの世界に来てくれたことは、私にとって非常に大きな意味がある」

 

「……どういう意味だ?」

 

「君が現れたことで、人々は再びウルトラマンに注目するようになった。謎の巨人が現れ、宇宙人と戦い、人々を守った。その出来事は、かつてテレビの中だけに存在していた物語を、現実のものとして人々に認識させたのだ」

 

 メトロン星人は、少し誇らしげに言った。

 

「円谷プロでも、テレビシリーズを再開させようという動きが出てきている。君が現れて以来、関連グッズの売り上げも順調だそうだよ。世間の関心が高まっている今なら、新しいウルトラマンの物語を作ることができるかもしれない」

 

「……俺が来たから、番組を再開する?」

 

「もちろん、君一人の功績というわけではない。だが、君が人々に希望を与えたことは確かだ。彼らは、テレビの中のヒーローが現実に現れたことに驚き、そして喜んだ。もう一度、ウルトラマンの物語を見たいと思う者も増えている」

 

「なるほどね……」

 

 凛が考え込むように呟いた。

 

「現実にウルトラマンがいると分かったことで、番組を見る目も変わるかもしれない。今までフィクションだと思っていたものが、実際に存在する世界の話になるんだから」

 

「そういうことだ。だからこそ、私はこの機会を大切にしたいと思っている」

 

 メトロン星人はシンを見つめた。

 

「今後、ウルトラマンシリーズが再開されることになったら、君の所属する346プロダクションのアイドルたちにも、撮影に協力してもらいたい。もちろん、出演するかどうかは彼女たちの意思と、事務所の判断を尊重するつもりだ」

 

「……私たちが、ウルトラマンの番組に?」

 

 卯月が目を丸くする。

 

「すごい……! 本当に、そんなことができるんですか?」

 

 メトロン星人は、穏やかに笑った。

 

「私は円谷プロの人々と長い付き合いがあるからね。君たちが希望するなら、出演の機会を作ることもできるだろう」

 

「うわぁ……!」

 

 未央は両手を握りしめた。

 

「もし本当に出られるなら、怪獣から逃げる役とか、ウルトラマンを応援する役とか……あっ、でも、できればウルトラマンと一緒に戦う役がいいな!」

 

「未央、まだ出演するって決まってないから」

 

「分かってるって、しぶりん! 夢を語るのは自由でしょ!」

 

「それはそうだけど……」

 

 卯月も目を輝かせていた。

 

「私も、もし出演できるなら、誰かを勇気づけられる役がいいです。ウルトラマンを見ている人たちが、元気になれるような……」

 

「いい考えだね」

 

 メトロン星人は満足そうに頷いた。

 

「君たちなら、きっと面白い物語を作る手助けができるだろう」

 

 ゼロは楽しそうに話し合う3人に横目で見て笑みを浮かべその後メトロン星人へ視線を戻した。

 

「お前は、どうしてそこまで人間に協力するんだ?」

 

 メトロン星人は、すぐには答えなかった。

 

 夕日の光が、彼の身体の縫い目を赤く照らしている。

 

「…さっきも言ったが…私は、この星が好きなんだよ」

 

 やがて、彼は静かに口を開いた。

 

「かつて別の世界で、私は人類に未来はないと悟った。機械に頼り、便利さを求め、やがて自分たちで未来を切り開く力さえ失っていく。私は、そう考えていた」

 

 彼は、ゆっくりと窓の外へ目を向けた。

 

「だが、この世界の人々と触れ合ううちに、私は少しずつ考えを変えていった。人間は愚かなこともする。争いもする。間違いも犯す。だが、それでも誰かを助けようとし、誰かのために努力し、失敗してもまた立ち上がる者たちがいる」

 

 メトロン星人は、ちゃぶ台に視線を戻した。

 

「そうした人々を見ているうちに、私はこの星に情が湧いた。いつしか、彼らがこれからどんな未来を築くのかを、見届けたいと思うようになったのだよ」

 

「……だから、地球を守りたいのか?」

 

「私自身が戦って守る、という意味ではない。もちろん、私にだってできることはある。宇宙人としての知識も、技術も、多少の戦闘能力も持っているからね」

 

 メトロン星人は、そこで少しだけ声を強めた。

 

「私も君達ウルトラマンほどの力はなくても、戦うことはできる。しかし、人類の心に光を灯せるのは、君たちウルトラマンしかいないんだ」

 

 シンは黙って聞いていた。

 

「そこには、単純な力の差以上に明確な違いがある。君たちは、ただ敵を倒すだけではない。誰かを守るために立ち上がり、絶望の中にいる人々へ、まだ未来があるのだと示すことができる」

 

 メトロン星人は、まっすぐにシンを見た。

 

「私は、この世界を守ってほしい。人々が自分たちの力で未来を選び、歩んでいけるように。そのために、私にできることはすべて協力しよう」

 

 彼は一度、言葉を切った。

 

「……君が、この世界を守ってくれるのならね」

 

 シンは、しばらく何も言わなかった。

目の前の宇宙人が、どこまで本心を話しているのか。それを完全に見極めることはできない。

だが、その言葉に嘘があるようにも思えなかった。

少なくとも、メトロン星人はこの世界の人類を、かつてのように見限ってはいない。

それだけは伝わってきた。

 

「……そうか」

 

 シンは、ゆっくりと頷いた。

 

「なら、俺もやることは変わらねえ。困ってる奴がいたら助ける。悪い奴がいたらぶっ飛ばす。それだけだ」

 

 彼は、いつもの不敵な笑みを浮かべた。

 

「この世界の人間が自分たちの力で未来をつかもうとしてるなら、俺はそれを守る。それがウルトラマンってもんだろ?」

 

 メトロン星人は、満足そうに目を細めた。

 

「……やはり、君を呼んでよかった、ではコレは私からの協力の手始めとして受け取ってくれ」

 

「…うん?何だコレ」

 

「君がこの世界で生活するための身分証や、必要な書類。住所。それから、いくつかの手続きも済ませておいた。これで、君も少しは安心して生活できるだろう」

 

 メトロン星人は、ちゃぶ台の脇に置いてあった書類の束を差し出した。

シンは、それを受け取って中身を確認する。そこには、モロボシ・シンという名前が記された書類や、身分を証明するためのカードなどが揃っていた。

 

「……お前、いつの間にこんなもんを」

 

「私は、君が来る前から長らくこの世界にいるのだよ。これくらいの準備は造作もないさ」

 

「いや、そういう問題じゃねえだろ!」

 

 シンは思わず声を上げた。

 

「身分証って、そんな簡単に作れるもんなのか!?」

 

「おや。違法だ、と文句を言うつもりかね?」

 

「当たり前だろ!」

 

 メトロン星人は、楽しそうに笑った。

 

「それを言うなら、身元不明の人間を雇ってくれている君の会社の同僚たちだって、この世界の法律からすれば、なかなか大胆なことをしているんじゃないかね?」

 

「ぐっ……!」

 

 シンは言葉に詰まった。

確かに、モロボシ・シンという人間は、この世界に正式な身元を持たない存在だった。

346プロダクションが彼を受け入れてくれたのは、卯月たちの善意と、武内やちひろの配慮があったからこそだ。

 

「……それを言われると、反論しにくいな」

 

「だろう?」

 

 メトロン星人は、悪びれもせずに笑った。

未央もメトロンの笑いに釣られる様に笑い始めた。

 

「あはははっ! ゼロ、完全に言い負かされてるじゃん!」

 

「未央! 笑うな!」

 

「だって、身分証まで用意してくれる宇宙人なんて、初めて聞いたよ!」

 

「俺だって初めてだよ!」

 

「ふふっ……」

 

 卯月も笑いをこらえきれない様子だった。

 

「でも、よかったですね、シンさん。これで、少し安心して生活できますね」

 

「……まあ、そうだな」

 

 シンは書類を見下ろし、少しだけ表情を和らげた。

 

「正直、助かるのは確かだ。……ありがとな、メトロン星人」

 

「礼には及ばないよ。私が好きでやっていることだからね」

 

 メトロン星人は、満足そうに頷いた。

そして、シンはふと思い出したように口を開く。

 

「……そういや、お前が見限ったマックスの宇宙だがな」

 

 メトロン星人が顔を上げた。

 

「人類は、自分たちの力で宇宙を開拓し未来をつかみ取ったとよ」

 

 シンは、少しだけ得意げに笑った。

 

「お前の思い通りにはならなかったな」

 

 その言葉に、メトロン星人は目を見開いた。

しばらく沈黙した後、彼はゆっくりと顔を伏せた。

 

「……それは」

 

 声が、少しだけ震えた。

 

「ああ……それは、予想できなかった……」

 

 彼は、ちゃぶ台の上に置いた手を見つめていた。

かつて、自分は人類に未来などないと考えた。

しかし、その人類は、自分の想像を超えて未来をつかみ取ったのだ。

その事実を聞いたメトロン星人は、しばらく言葉を失っていた。

 

 やがて、彼は顔を上げた。

 

「……でも、それを聞けてよかったよ」

 

 その表情には、どこか安堵したような笑みが浮かんでいた。

 

「そうか……。人類は、未来をつかむことができるのか」

 

「ああ。だから、この世界の人間だってそうだ。俺は、そう信じてるぜ」

 

 シンの言葉に、メトロン星人は静かに頷いた。

 

「……ありがとう、ゼロ」

 

 その声には、先ほどまでの軽妙さはなかった。

ただ、一人の宇宙人として、心からの感謝が込められていた。

 

 

 ーーーーーーー

 

 

 話が一段落したところで、メトロン星人は不意に立ち上がった。

 

「さて、そろそろお茶にしようか」

 

「……お茶?」

 

 シンが首を傾げる。

 

「ああ。せっかくちゃぶ台を囲んでいるのだからね。手ぶらで帰すわけにはいかないだろう?」

 

 メトロン星人は、部屋の隅から急須と湯呑みを持ってきた。

そして、どこからともなく取り出した茶葉を急須へ入れ、お湯を注ぐ。

湯気が立ち上り、香ばしい匂いが部屋に広がった。

 

「……それ、何のお茶ですか?」

 

 卯月が尋ねた。

 

「 眼兎龍茶(メトロン茶)だよ」

 

「メトロン茶!?」

 

 未央が目を輝かせる。

 

「宇宙のお茶ってこと!? どんな味がするの!?」

 

「地球のお茶と大差ないよ。少なくとも、宇宙ケシの実は入っていないから安心したまえ」

 

「入ってないのは当然じゃないかな!?」

 

 未央が突っ込む。

メトロン星人は楽しそうに笑いながら、四人の前に湯呑みを並べた。

 

「さあ、どうぞ」

 

「……じゃあ、いただきます」

 

 卯月が湯呑みを手に取り、そっと口をつけた。

 

「……あっ、おいしい!」

 

「本当?」

 

 凛も一口飲む。

 

「……うん。普通においしいね」

 

「でしょ?」

 

 メトロン星人は満足そうに頷いた。

 

「私も、この世界に来てから、こうしてお茶を飲む時間が好きになったのだよ。忙しい日々の中で、少しだけ立ち止まって話をする。そういう時間も、人間と付き合ううえでは大切なのだろうね」

 

 シンは湯呑みを手に取った。

 

「……へえ。メトロン星人にも、そういう趣味があるんだな」

 

「もちろん。私たちだって、ただ戦うために生きているわけではないからね」

 

 メトロン星人は、どこか誇らしげに言った。

 

「それに、君の父上とも、こうしてちゃぶ台を囲んで話をしたんだよ」

 

「……親父と?」

 

「ああ。とても昔の事だけどね」

 

 メトロン星人は少しだけ遠い目をした。

 

「だからこそ、息子である君とは、こうして話をしてみたかった。君がどんな戦士なのか。どんな考えを持っているのか。君の目に、この世界の人類がどう映っているのか」

 

 シンは、湯呑みを置いた。

 

「……そういうことか」

 

「うむ。戦いの最中では、なかなか落ち着いて話をすることもできないからね」

 

 メトロン星人は、穏やかに笑った。

 

「今日は、君と話ができてよかったよ」

 

 シンもまた、少しだけ笑みを浮かべた。

 

「……俺もだ。お前が何を考えてるのか、少しは分かった気がするぜ」

 

「それは何よりだ」

 

 3人のアイドルたちも、湯呑みを手にしたまま、二人の会話を聞いていた。

最初は、メトロン星人が何を考えているのか分からず、警戒していた。

しかし、話を聞くうちに、彼がこの世界の人々を大切に思っていることが伝わってきた。

 

「……メトロン星人さん」

 

 卯月が、そっと口を開いた。

 

「この世界のことが本当に大好きなんですね」

 

「ああ。そうだとも」

 

 メトロン星人は、迷いなく答えた。

 

「私は、この世界の人々がどんな未来を選ぶのかを見届けたい。だからこそ、彼らが未来をつかむために、できることをしたいと思っているのだよ」

 

「……素敵だと思います」

 

 卯月は微笑んだ。

 

「私たちも、アイドルとして、みんなに笑顔を届けたいと思っています。できることは違うかもしれませんけど、誰かの未来を明るくしたいっていう気持ちは、同じなのかもしれませんね」

 

「うむ。君たちのような人間がいるからこそ、私はこの世界を信じてみようと思えるのだよ」

 

「えへへ……」

 

 卯月は照れくさそうに笑った。

 

「……あ、そうだ!」

 

 未央が、ぱっと顔を上げた。

 

「せっかくだし、みんなで写真を撮らない?」

 

「写真?」

 

 凛が首を傾げる。

 

「そう! だって、メトロン星人とちゃぶ台を囲んでお茶を飲むなんて、普通じゃ絶対にできないよ! 記念に一枚くらい撮っておこうよ!」

 

「……まあ、それは確かに」

 

 凛も、少しだけ興味を示した。

 

「あとで見返したら、すごい思い出になりそうだね」

 

「私も賛成です!」

 

 卯月が手を挙げた。

 

「メトロン星人さんも、一緒にどうですか?」

 

「もちろん。私も写真というものは嫌いではないよ」

 

 メトロン星人は快く頷いた。

その時、彼はふとゼロへ視線を向けた。

 

「……そうだ、ゼロ」

 

「ん?」

 

「せっかくなら、もう少し面白い写真を撮らないかね?」

 

「面白い写真?」

 

 メトロン星人は、障子の向こうを指さした。

 

そこには、昭和の時代を思わせる、どこか懐かしい街並み。

電柱が並び、古い建物が立ち並ぶ通り。そして、その街の中央には、巨大な怪獣やヒーローの撮影に使われるような広い空間が用意されていた。

 

「君、変身してみないか?」

 

「……は?」

 

「君の父上と同じように、この夕焼けの街に立ってみるんだ。せっかくの機会だろう?」

 

 メトロン星人は、楽しそうに笑った。

 

「君の父上も、こうした街で戦い最後は自分の命より地球人の為に戦った。ならば、君も一度、同じ景色を見てみるといい」

 

 ゼロは、しばらく黙っていた。

親父が戦った相手と親父が立っていた街並み。

自分がそこに立つというのは、少し不思議な気分だった。

 

「……お前、そういうことまで考えてたのかよ」

 

「もちろん。せっかく君を招待したのだからね。お茶を飲んで終わりでは、少々物足りないだろう?」

 

「いや、十分だと思うけどな……」

 

 ゼロは苦笑した。

 

「…時間切れ狙って襲い掛かって来んなよ」

 

「何を言っているんだね。君に時間切れは無いだろう?」

 

 ゼロの冗談にメトロン星人は、当然のように言った。

 

「君はそのウルティメイトイージスを装着している。それは、エネルギーを補給できる以上、他のウルトラマンのように三分間に活動が限られるわけではない。写真を撮るくらい、どうということもないだろう?」

 

「……まあ、そうだけどよ…よく知ってんな」

 

 ゼロは腕のウルティメイトブレスレットへ目を落とした。

ウルティメイトイージスがある限り、エネルギーを補給しながら活動できる。時間制限を気にして、慌てて変身を解く必要はない。

 

 だが――。

 

「……えっ?」

 

 未央が、ぴたりと固まった。

 

「ちょっと待って。今、何て言ったの?」

 

「何がだね?」

 

「三分間に活動が限られるわけじゃない、って……」

 

 未央は、ゆっくりとシンの方を向いた。

 

「えっ……ウルトラマンって、三分じゃないの!?」

 

 未央の驚きの顔を見てゼロは、そう言えば言ってなかったなという顔をした。

卯月も凛も、目を丸くしている。

 

「……じゃあ、ゼロさんは、もっと長く戦えるんですね?」

 

 卯月が尋ねる。

 

「ウルティメイトイージスがあればな。もちろん、何をしても無限に動けるってわけじゃねえけどな、エネルギーを補給できるから、活動時間にはかなり余裕がある」

 

「なるほど……」

 

 凛は納得したように頷いた。

 

「それなら、確かに写真を撮るくらいは大丈夫そうだね」

 

「……お前ら、乗り気だな?」

 

「だって、せっかくなんだもん!」

 

 未央が、にっこりと笑った。

 

「私も、ウルトラマンゼロと一緒に写真を撮りたい!」

 

「私もです!」

 

 卯月が手を挙げる。

 

「私も、せっかくだから撮ってみたいかな」

 

 凛も、少し照れくさそうに笑った。

 

 シンは、三人の顔を見てため息をついた。

 

「……ったく。分かったよ。そこまで言うなら、付き合ってやる」

 

「やったーっ!」

 

 未央が飛び上がった。

 

 メトロン星人は、満足そうに頷いた。

 

「では、準備をしようか」

 

 彼が指を鳴らすと、夕焼けの街並みがさらに鮮やかに浮かび上がった。

ちゃぶ台のある部屋から続く障子の向こうには、広い撮影用の街が広がっている。

赤く染まった空。長い影を落とす建物。どこか懐かしい、昭和の街並み。

シンは、その光景を見つめた。

親父が立っていた街。親父が守ってきた地球。

そして今、自分が守ろうとしている地球。

同じようでいて、どこか違う世界。

 

「……親父も、こんな景色を見てたんだな」

 

 シンは、ぽつりと呟いた。

メトロン星人は、隣に立って静かに頷いた。

 

「そうとも。君の父上も、この夕焼けの中で戦っていた。だが、君は君だ。君自身の目で、この世界を見ていけばいい」

 

「……ああ」

 

 シンは、ゆっくりと顔を上げた。

 

「そうだな」

 

そして、ウルティメイトブレスレットへ手をかざした。

光が溢れる。銀色の輝きが、夕焼けの街を照らした。

次の瞬間、そこに立っていたのは――。

 

 ウルトラマンゼロだった。

 

「……うわぁ……!」

 

 卯月が、思わず息を呑んだ。

凛も、未央も、言葉を失っていた。

あの日助けてくれた銀色の巨人。あの日とは違い、人間程の大きさだが、それでも

鋭い眼差し。胸元に輝くカラータイマー。

そして、額にある二つのゼロスラッガー。

 

 その姿は、圧倒的な存在感を放っていた。

 

「……すごい」

 

 卯月が、静かに呟いた。

 

「本当に、ウルトラマンなんですね……」

 

「いや、だから前からそう言ってんだろ」

 

 ゼロが呆れたように言った。

 

「うわっ! 喋った!」

 

「おい未央! お前、今まで何だと思ってたんだよ!」

 

「いや、分かってるけど! でも、目の前で変身して、目の前に本物がいると、やっぱり違うっていうか!」

 

 凛は、呆れながらも笑っていた。

 

「未央、落ち着いて。せっかく写真を撮るんだから」

 

「そうだった!」

 

 未央は慌ててスマートフォンを取り出した。

 

「よーし! じゃあ、みんな並んで!」

 

 夕日の街並み佇むウルトラマンゼロと、メトロン星人。

 

 その前に、卯月、未央、凛の三人が並ぶ。

 

 夕焼けの街を背景に、奇妙な組み合わせの記念撮影が始まった。

 

「じゃあ、撮るよー!」

 

 未央がスマートフォンを構える。

 

「みんな、笑って!」

 

「……いや、俺はどうすりゃいいんだよ」

 

「ゼロはそのままでいいよ!」

 

「そのままって……」

 

「はい、チーズ!」

 

 シャッター音が鳴った。

 

 画面には、夕焼けの街を背景に、ウルトラマンゼロとメトロン星人、そして三人のアイドルが並ぶ姿が収まっていた。

 

 撮影が終わると、ゼロはゆっくりと変身を解いた。

 

 光が収まり、再びモロボシ・シンの姿へ戻る。

 

「……ふう。これでいいか?」

 

「うん! ばっちり!」

 

 未央は満面の笑みでスマートフォンを掲げた。

 

「これ、絶対に大切にする! みんなにも見せたいけど……あっ、でも、ゼロの正体は秘密なんだよね?」

 

「当たり前だろ!」

 

 シンは頭をかいた。

 

「俺がウルトラマンだってことは、内緒だからな」

 

「分かってます!」

 

 卯月が頷いた。

 

「大切に保管しておきますね」

 

「私も、誰にも言わないよ」

 

 凛も、真剣な顔で答えた。

シンは、三人の顔を見て、少しだけ表情を和らげた。

 

「……頼むぜ」

 

 メトロン星人は、そんな彼らを眺めながら、満足そうに笑っていた。

こうして、円谷プロダクションから届いた奇妙な招待状は、思いもよらない形で幕を閉じた。

メトロン星人は、地球を侵略するためにゼロを呼んだわけではなかった。

彼は、この世界を守るために、自分にできることをしようとしていたのだ。

そして、ゼロは改めて、この世界を守ることを誓った。

夕焼けの街に、穏やかな風が吹く。

ちゃぶ台を囲んで飲んだ眼兎龍茶(メトロン茶)の味と、彼女たちと撮った写真。

 

 それは、ゼロにとっても、忘れられない一日になるだろう。

 

 ――ただし。

 

「……なあ、未央。本当にその写真、変なところに投稿するなよ?」

 

「えー? しないよー!」

 

「本当か?」

 

「……たぶん!」

 

「たぶんじゃねえっ!!」

 

 ゼロの叫びが、再び夕焼けの街に響き渡った。

メトロン星人は、その光景を見てで楽しそうに笑っていた。

 

 

 

 

 




 突として視界が切り替わり、あたり一面が星屑漂う神秘的な光の空間へと変わった。
足元には幾何学的な模様が広がり、本編の地球や円谷プロのオフィスとは全く異なる、次元の狭間の特設スタジオである。

「よう! 本編の余韻冷めやらぬ中、やってまいりました『ウルトラマンゼロのウルトラ徹底解説⭐︎』の時間だぜ!」

カメラに向かって爽やかにポーズを決めるウルトラマンゼロ。その隣には、先ほどまでの感動をそのままに目を輝かせる島村卯月、渋谷凛、本田未央のニュージェネレーションズの3人が並んでいる。

「わあ、さっきの空間から一瞬でここに……! 本当に不思議な場所ですね!」

卯月がパチパチと手を叩き、未央は「しかも、なんかすごいのがある!」と指を差した。

その指の先にはなんと、先ほどまで夕焼けの部屋で囲んでいたあのちゃぶ台が、そのままポツンと置かれていた。そして、そのちゃぶ台の向こう側には、赤茶色の肌をしたお馴染みの宇宙人が、何食わぬ顔で座って湯呑みをお代わりしている。

「いやぁ、先ほどは私のお茶会に付き合ってくれてありがとう、諸君。まさかこの解説コーナーとやらにまで拉致……いや、招待されるとはね」

のんびりとお茶をすするメトロン星人の姿に、ゼロは思わず額に手を当てて苦笑した。

「お前な、さらっとゲスト席に座ってんじゃねえよ! ここは俺が怪獣や宇宙人をバシッと解説する番組だぞ!」

「いいじゃないか、せっかくの縁だ。私のことも、ぜひ詳しく紹介したまえよ」

メトロン星人は微塵も動じず、優雅に微笑み返す。

「まったく……まあいいか。というわけで、今回のゲストはニュージェネレーションズの3人に加え、なんとご本人であるメトロン星人だ!」

ゼロが手を叩くと、空間のホログラムに恐ろしい夕景の街と、かつて地球を震撼させたメトロン星人の姿が映し出された。

「さて、今回解説するのはもちろんこの男、幻覚宇宙人、或いは対話宇宙人 メトロン星人だ!」

ホログラムを見つめながら、凛が呟く。

「さっきはお茶を一緒に飲んでくれたけど……昔はかなりヤバい侵略者だったんだよね?」

「その通りだ、凛!」

ゼロがうなずく。

「メトロン星人はな、真っ向から力づくで地球を侵略するんじゃねえ。人間同士の信頼関係を狂わせ、疑心暗鬼にさせて、互いに潰し合わせるという、めちゃくちゃエグい心理作戦を使う頭脳派の侵略者なのさ! あの有名な夕陽の街での戦いとちゃぶ台での対話は、特撮史に残る名シーンだぜ!」

「人間同士を信じられなくさせるなんて……すごく怖くて、悲しい作戦ですね……」

卯月が少し切なそうに眉をひそめると、メトロン星人は静かに湯呑みを置き、穏やかにうなずいた。

「そうだね。かつての私は、人間の最も強く最も脆い、信頼の絆を断ち切ろうとしたのさ……まあ、結果的にウルトラセブンに計画を阻止され、私の野望は泡と消えたわけだがね」

「でも、今はこうして地球の人たちや、私たちとも仲良くお茶を飲んでくれてますもんね!」

未央が明るく笑うと、メトロン星人はふっと目を細めて笑った。

「ああ。長い時を過ごすうちに、人間の愚かさだけでなく、懸命に未来を掴もうとする強さや温かさも知ることができた。今では、この星の未来を見届けることが私の楽しみの一つというわけさ」

「すっかり、ちゃぶ台の紳士って感じで、すっかり丸くなったよねぇ」

と凛がからかうと、メトロン星人は

「ふっ、宇宙人なりの処世術さね」

と不敵に笑った。
そんな和やかな空気を引き締めるように、ゼロはビシッとホログラムを指差し、力強く言い放った。

「過去がどうであれ、俺がいるこの世界で、人間同士の絆を引き裂こうとなんてする奴がいれば――たとえどんな知的で紳士的な侵略者だろうが、俺が絶対に許さねえ! 人間を疑心暗鬼にさせようなんて、2万年早いぜっ!!」

その気迫に満ちた頼もしい宣言に、ニュージェネの3人はパッと顔を輝かせ、大きな拍手を送る。

「さすがゼロさん……! カッコよすぎます!」

「うん、どんな狡猾な作戦も、ゼロがいれば安心だね!」

「よし、私も地球の絆を守るために応援するぞー!」

「おう、任しとけ! この地球の平和も、アイドルたちの笑顔も、この俺が完璧に守り抜いてやるからな!」

ゼロが満面の笑みで親指を立てる。
メトロン星人も、そんな頼もしい光景を温かい目で見つめながら、ふっとお茶を一口飲んだ。

「……さて、そろそろお茶もお代わりが欲しい頃だな」

「お前、すっかり居心地良くなってるな!」

星屑のスパークが賑やかに弾け飛び、笑い声に包まれながら、今回の『ウルトラ徹底解説』も大盛況のうちに幕を閉じた――。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。