ウルトラマンゼロ/iDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 作:わたあめ丸
346プロダクション。
朝の事務所には、いつもと変わらない活気があった。
「おはようございます!」
「おはよーございまーす!」
「おっはよー! 今日も一日、頑張ろうね!」
アイドルたちの挨拶が飛び交い、スタッフが書類を抱えて廊下を行き交う。電話の着信音に、プリンターの動く音。誰かがスケジュールを確認していれば、別の誰かが打ち合わせの準備をしている。
そんな、普段どおりの事務所の一角。
ソファーに腰掛けたモロボシ・シンは、腕を組んでその光景を眺めていた。
「……へえ。朝っぱらからずいぶん忙しそうじゃねえか」
「はい! 今日は撮影のお仕事がある子もいますし、レッスンもありますから!」
隣に座る島村卯月が、にこやかに説明した。
「それに、午後には打ち合わせもあるんですよ」
「打ち合わせ?」
「はい! 次のお仕事について、スタッフさんや関係者の方と相談するんです!」
「ふーん……」
ゼロは頷いた。
なるほど。アイドルというのは、歌ったり踊ったりするだけではないらしい。
とはいえ、難しく考える必要はないだろう。
自分はこれまで、数え切れないほどの戦いを経験してきた。強敵との戦闘も、作戦の立案も、仲間との連携も、何とか乗り越えてきたのだ。
それに比べれば、アイドルの仕事を手伝うくらい――。
「シンさん」
武内プロデューサーが、書類の束を持って近づいてきた。
「本日から、サブプロデューサーとしてのお仕事をお願いしたいと考えています。まずは、私の業務を見ていただきながら、簡単な作業から始めていただければと思います」
「おう、任せとけ!」
ゼロは自信満々に立ち上がった。
「どんな仕事だろうと、やるからには全力でやってやるぜ!」
「ありがとうございます。それでは、こちらをお願いします」
差し出されたのは、一冊のファイルだった。
「本日のアイドルの皆さんの予定表です。まずは、予定の確認と、各担当者への連絡をお願いします」
「予定表? おう、分かった!」
ゼロはファイルを受け取り、勢いよく開いた。
そこには、細かな文字と数字がびっしりと並んでいた。
撮影、レッスン、移動、打ち合わせ、衣装合わせ、取材。
それぞれの時間と場所、担当者、注意事項。さらに別の紙には、移動にかかる時間や連絡先、当日の変更点まで記載されている。
「…………」
ゼロの指が止まった。
「……なあ、武内」
「はい」
「これ、全部覚えんのか?」
「いえ、すべてを暗記する必要はありません。必要な情報を確認し、変更があれば関係者に共有していただければ大丈夫です」
「お、おう。そういうことか」
ゼロは、何事もなかったかのようにファイルを閉じた。
なるほど。つまり、全部覚えなくてもいいのだ。
……いや、待て。
「変更があったら、関係者に共有って……誰に?」
「内容によります。例えば撮影時間が変更になった場合は、撮影スタッフ、アイドルの担当者、移動車両の手配担当などに連絡する必要があります」
「……車両?」
「はい。移動時間が変われば、車両の手配も調整しなければなりません。場合によっては、次の予定にも影響しますので」
「…………」
ゼロは、ゆっくりとファイルを見下ろした。
これは………思っていたよりも。
ずっと面倒くさい仕事なのではないか。
「それじゃ、まずは電話の応対からお願いします」
武内プロデューサーの説明を受け、ゼロは事務所の電話の前に立っていた。
その表情は、まるで強敵を前にした戦士のように真剣だった。
「電話ってのは、あれだろ? 相手と話すだけだろ?」
「基本的にはそうですが、相手のお名前や所属、ご用件を正確に確認してください。私が不在の場合は、内容を記録して伝言を残していただけると助かります」
「分かった。要するに、話を聞いて伝えりゃいいんだな!」
「はい。よろしくお願いします」
武内プロデューサーが別の業務に戻る。
ゼロは腕を組み、電話を睨みつけた。
「よし……来るなら来やがれ!」
その直後。
プルルルルル!
「うおっ!?」
突然の着信音に、ゼロの肩が跳ねた。
慌てて受話器を取る。
「お、おう! 346プロダクションだ!」
『……あの、恐れ入ります。こちら、先日お話しした撮影の件で――』
「ああ、撮影だな! 分かった、任せとけ!」
『えっ? あ、はい。それで、明日の集合時間について改めて確認したいのですが……』
「集合時間?」
ゼロは机の上に置かれた予定表を引き寄せた。
明日。
撮影。
集合時間。
似たような項目がいくつもある。
どれだ?
いや、待て。撮影なら、確か午前中に――。
「ええと……十時半、だったか?」
『……十時半、ですか?』
相手の声が、微妙に曇った。
ゼロは嫌な予感を覚えた。
その時、横から伸びてきた手が、予定表の一か所を指さした。
「シンさん、こちらです!」
卯月だった。
彼女は小声で、正しい時間を教える。
「この撮影は、集合が九時半です!」
「お、おう!」
ゼロはすぐに訂正した。
「あー、悪い! 九時半だ!」
『承知しました。では、その時間でお願いいたします』
「おう! じゃあな!」
ガチャリ。
受話器を置いたゼロは、深々と息を吐いた。
「……あっぶねえ」
「シンさん、予定表をちゃんと確認してから答えたほうがいいですよ」
「分かってるって! ちょっと油断しただけだ!」
そう言いながら、ゼロは予定表を見直した。
……しかし、何だ。
敵の攻撃を見切るのとは、まるで勝手が違う。
相手の動きを読めばいいわけでもない。力で押し切れば解決するわけでもない。
しかも、間違えたら自分だけの問題では済まないのだ。
アイドルの仕事にも、撮影スタッフの仕事にも、移動するための車両にも影響が出る。
これは、なかなか厄介だった。
「……なあ、卯月」
「はい?」
「お前ら、普段こんなことを毎日やってんのか?」
「えっ? あ、私たちは、プロデューサーさんたちが予定を調整してくださるので……」
「……そうか」
ゼロは、武内プロデューサーの背中を見た。
彼は電話をしながら、別の書類に目を通し、隣のスタッフと短く打ち合わせをしている。
その動きには無駄がない。
なるほど。
こいつは、ただの人間じゃねえな。
いや、もちろん人間なのだが。
少なくとも、ゼロにはそう思えた。
ーーーーーーー
「シンさん、これもお願いしていい?」
今度は渋谷凛が、書類を差し出してきた。
「おう、何だ?」
「今日のレッスンで使う資料。コピーを取って、人数分用意してほしいんだけど」
「コピー?」
「そこの機械を使えばできるよ」
凛が指さした先には、複合機があった。
「紙を入れて、ここを押せばいいんです」
卯月が丁寧に説明してくれる。
「なるほど。簡単じゃねえか!」
ゼロは自信を取り戻した。
戦闘でも、複雑な技を使う前に、まずは基本を押さえることが大切だ。
機械の使い方さえ分かれば、どうということはない。
ゼロは原稿を置き、ボタンを押した。
ウィーン。
ガガガガガ。
「……おっ?」
機械が動き出す。
紙が一枚、二枚と排出される。
順調だ、そう思った矢先だった。
ピピピピッ!
機械が甲高い音を立てた。
画面に表示される、エラーメッセージ。
「……何だこりゃ?」
「紙詰まりみたいだね」
凛が画面を覗き込んだ。
「ええと……ここを開ければいいのかな」
「そうか!」
ゼロは勢いよく扉を開いた。
中には、途中で引っかかった紙が見える。
「こんなもん、引っ張りゃ――」
「シンさん、ゆっくりです! 破れちゃいます!」
「お、おう!」
ゼロは力加減を調整し、慎重に紙を引き抜いた。
「よし! 直ったぜ!」
「まだ、画面の表示が消えてないよ」
「何っ!?」
凛が説明書を確認し、別のカバーを開く。
もう一枚、紙が引っかかっていた。
「……何で二か所も詰まってんだよ」
「たぶん、最初に引っかかった時に、奥にも残っちゃったんだと思う」
「機械なら、もっと分かりやすくしとけってんだ……」
「ふふっ」
卯月が思わず笑った。
「何がおかしいんだよ?」
「い、いえ! シンさん、何だか一生懸命で……」
「当たり前だろ! 仕事なんだからな!」
ゼロは胸を張った。
「やるからには、最後まできっちりやるぜ!」
「うん。その意気だと思う」
凛は微笑み、もう一度複合機の操作を確認した。
その後、三人で協力して、ようやく必要な資料を人数分そろえることができた。
ゼロは出来上がった書類の束を見つめる。
「……よし。これで一つ片づいたな」
「はい! お疲れさまです!」
「次は何だ?」
ゼロが尋ねると、凛は少しだけ申し訳なさそうな顔をした。
「次は、今日のスケジュールの変更を確認して、関係者に連絡。それから、午後の打ち合わせの資料をまとめて……」
「待て待て待て!」
ゼロが慌てて手を上げた。
「まだあんのか!?」
「うん」
「……マジかよ」
ゼロは天井を仰いだ。
地球を守る戦いなら、敵を倒せばひとまず一段落する。
しかし、こちらの仕事には終わりが見えない。
しかも、一つ終わったと思えば、次の仕事が待っている。
これは一体、どういう仕組みなのだ。
ーーーーーーー
昼休み。
ゼロは事務所の片隅で、机に突っ伏していた。
「…………」
「シンさん、大丈夫?」
未央が、心配そうに顔を覗き込む。
「……おう」
「何か、声に元気がないね?」
「気のせいだ」
「いやいや、絶対に気のせいじゃないって!」
未央は、隣に座った卯月と凛に目配せした。
三人は、ゼロが本物のウルトラマンであることを知っている。
だからこそ、今日の彼の様子は少し新鮮だった。
昨日私達を助けるために巨大ロボットに立ち向かうゼロ。
そのゼロが、今は書類の束を前にして完全に沈黙している。
「……なあ」
ゼロが顔を上げた。
「お前ら、プロデューサーってのは、みんなこんなに忙しいのか?」
「うーん……人によると思うけど、うちのプロデューサーは特に忙しいんじゃないかな?」
未央が答える。
「アイドルのみんなのお仕事を調整したり、事務所の人たちと相談したり、いろんな会社の人と連絡したり……」
「それだけじゃないよ。何か問題が起きた時は、その対応もしなきゃいけないし」
凛が続けた。
「撮影が押したり、予定が変わったり、体調を崩す人が出たり。そういう時に、できるだけみんなに迷惑がかからないように調整するんだよ」
「…………」
ゼロは黙り込んだ。
自分は、これまでいろいろな星を巡ってきた。
侵略者と戦い、怪獣を倒し、宇宙の危機を救ってきた。
時には、誰かの命を救うために無茶もした。
しかし、目の前の人間はどうだ。
戦っているわけでもないのに、朝からずっと動き続けている。
誰かに褒められるわけでもなく、目立つわけでもなく、ただ淡々と、誰かのために仕事をしている。
「……あいつ、すげえんだな」
ゼロは、武内プロデューサーの姿を見た。
「えっ?」
卯月が聞き返す。
「いや、武内のことだよ」
ゼロは腕を組んだ。
「俺はてっきり、プロデューサーってのはアイドルに指示を出したり、現場で応援したりする仕事だと思ってたんだが……実際は、それだけじゃねえんだな」
「うん。プロデューサーさんがいなかったら、私たちは安心してお仕事ができないと思います」
卯月が、穏やかに微笑んだ。
「それでも一人ではやっぱり限界があるから、シンさんが手伝ってくれるのは、プロデューサーさんも嬉しいと思いますよ!」
「……へっ。そうかよ」
ゼロは少しだけ照れくさそうに顔を背けた。
「なら、なおさら途中で投げ出すわけにはいかねえな」
その言葉を聞いて、凛と未央も微笑んだ。
やはり、ゼロはウルトラマンなのだ。
どんな仕事であろうと、引き受けたからには最後までやり遂げようとする。
ただし。
「……ところでよ」
ゼロは、机に置かれた書類を見た。
「これ、何て意味だ?」
「えっ?」
「これだよ! さっきから何回も出てくるんだが、意味が分かんねえ!」
未央が書類を覗き込んだ。
「あー、それは業界でよく使う略語だね!業界用語!」
「業界用語?」
「うん! あとで説明するよ!」
「……先に言っとけよ!」
ゼロの声が、事務所に響いた。
ーーーーーーー
午後。
ゼロは、武内プロデューサーと一緒に打ち合わせに参加していた。
相手は、次の撮影を担当する制作会社のスタッフたちだ。
「それでは、当日の進行についてご説明いたします」
スタッフが資料を広げる。
撮影の順番。
出演者の集合時間。
衣装の準備。
撮影場所の使用時間。
さらに、天候が悪化した場合の対応や、予定が遅れた際の調整方法まで、細かく説明されていく。
ゼロは真剣に聞いていた、聞いてはいたのだが。
「……つまり、最初の撮影が遅れたら、次の予定も全部ずれる可能性があるってことか?」
「はい。ただし、撮影順を変更することで、後の予定への影響を抑えられる場合もあります」
「なるほどなぁ……」
ゼロは頷き、資料に目を落とした。
……駄目だ。
情報が多すぎる。
「シンさん、こちらの資料をご確認いただけますか?」
「お、おう!」
ゼロは慌てて資料を受け取った。
そこには、先ほどの説明に出てきた項目が並んでいる。
だが、別のページには、また別の略語が記載されていた。
「……なあ、武内」
「はい」
「これ、さっきの説明とどうつながってんだ?」
「こちらは、撮影全体の進行表です。先ほどの資料は出演者ごとの予定をまとめたもので、こちらは現場全体の動きをまとめています」
「……なるほど」
ゼロは、ゆっくりと頷いた。
そして、心の中で叫んだ。
――レイトと一体化してた頃に、もっと仕事内容を見とけば良かったぜ……!
あの時は、地球人の身体を借りて生活することになったものの、地球での仕事について深く考えたことはなかった。
レイトは会社員だ、毎朝、会社へ行き、仕事をして、帰宅する。
ゼロは、そんなレイトの生活を間近で見ていたはずだった。
だが、当時は日常生活の細かな仕組みなど、あまり気にしていなかった。
書類を作る。
上司に報告する。
電話で連絡する。
予定を調整する。
それらがどれほど複雑で、どれほど多くの人間とつながっているのか。
今になって、その意味が身に染みて分かった。
サラリーマンとは満員電車で修業を行うだけでは無かったのだ。
あの時は、レイトが仕事に行ってる間、俺は何してたっけな……。
ゼロは、遠い記憶を思い返した。
いや、そもそも俺がレイトと一体化してた時は、ベリアルから地球を守ることが最優先だったんだ。仕事の細かいことまで気にしてる余裕なんてなかった……はずだ。
そこまで考えて、ゼロはふと顔を上げた。
武内プロデューサーは、相手の説明を聞きながら、必要な点を確認していた。
「確認させてください。こちらの変更が発生した場合、出演者の皆さんへの連絡は、御社からも行っていただけるという理解でよろしいでしょうか」
「はい。ただし、事務所側でも変更内容をご確認いただき、出演者の皆さんへの共有をお願いいたします」
「承知しました。では、連絡の行き違いがないよう、変更点を文書でも共有していただけますでしょうか」
「分かりました」
丁寧な言葉遣い。
相手の話を遮らず、必要なことだけを確認する。
無理な要求はせず、しかし曖昧なままにもしておかない。
ゼロは、思わず武内を見つめた。
……こいつ、本当にすげえな。
派手な技も、超人的な力も持っていない。
それでも、相手の話を聞き、必要な情報を整理し、関係者全員が困らないように調整している。
これもまた、一種の戦いなのかもしれない。
もちろん、宇宙の命運を懸けた戦いとは違う。
だが、誰かの仕事を支え、誰かの夢を守るために、自分にできることを積み重ねる。
その姿勢には、確かに通じるものがあった。
「……よし」
ゼロは小さく呟いた。
そして、手元の資料をもう一度確認する。
分からないことは、聞けばいい。知らないことは、覚えればいい。
自分は、そうやって強くなってきたのだから。
「武内」
「はい」
「さっきの資料なんだが、もう一度説明してくれねえか? 今度は、ちゃんと理解しておきたい」
武内プロデューサーは、一瞬だけ目を見開いた。
それから、いつもと変わらない丁寧な口調で答えた。
「もちろんです。分からない点があれば、遠慮なくお尋ねください」
「おう! 頼むぜ!」
ゼロは、力強く頷いた。
その様子を見ていた未央は、事務所に戻った後、卯月と凛に小声で話しかけた。
「ねえねえ。ゼロって、あんなに真面目に仕事を覚えようとするんだね」
「はい。ゼロさんは、引き受けたことには一生懸命ですから!」
「でも、さっきまた複合機の前で『機械なら分かりやすくしろ!』って怒ってたよ」
「ふふっ……」
凛が小さく笑う。
「まあ、慣れるまでは大変だろうね」
「だね。でもさ、ゼロがプロデューサーの仕事を覚えたら、どんな感じになるんだろう?」
未央は、少し楽しそうに笑った。
「アイドルのピンチに颯爽と駆けつける、熱血ウルトラプロデューサー! うん、なんか格好いいかも!」
「未央ちゃん、それっていつものゼロさんじゃないですか?」
「……あっ、確かに!」
三人は顔を見合わせ、くすくすと笑った。
ーーーーーーー
夕方。
ようやく一日の業務が一段落した頃、ゼロは事務所の椅子に深く腰掛けていた。
「……終わったぁ……」
その声には、朝の勢いがほとんど残っていなかった。
机の上には、確認済みの資料がきちんとまとめられている。
予定の確認も、関係者への連絡も、打ち合わせの準備も、すべてではないにせよ、何とかこなすことができた。
ただし、覚えることは山ほどある。
「シンさん、お疲れさまでした!」
卯月が飲み物を差し出した。
「おう、ありがとな……」
ゼロは受け取り、一口飲んだ。
「いやあ……まさか、地球の仕事がここまで複雑だとは思わなかったぜ」
「最初は、みんなそうだと思いますよ」
「そうなのか?」
「はい! 私たちも、初めてのお仕事は緊張しましたから!」
卯月は笑顔で答えた。
「分からないことがあったら、私たちにも聞いてくださいね!」
「……おう」
ゼロは、少しだけ表情を和らげた。
すると、未央が横から顔を出した。
「ところでシンプロデューサー!明日もお仕事を手伝ってくれるんだよね?」
「……明日も?」
ゼロの動きが止まった。
「うん! じゃあ、明日はレッスンの見学と、撮影の打ち合わせと、あと書類の整理もお願いね!」
「…………」
ゼロは、ゆっくりと天井を見上げた。
そして、心の中で叫んだ。
(レイト! お前、毎日こんなことやってたのかよ!?)
もちろん、返事はない。当たり前だ。
ここにレイトはいないのだから。
「……よし」
ゼロは立ち上がった。
「明日も、やってやるぜ!」
その声に、卯月たちが笑顔になる。
「はい! よろしくお願いします、シンさん!」
「うん。期待してるよ」
「明日も頑張ろうね、シンちゃん!」
「おう!」
ゼロは拳を握りしめた。
アイドルたちの夢を支える仕事。それは、宇宙を守る戦いとは違う。
だが、誰かのために力を尽くすという意味では、決して無関係ではない。
だからこそ、ゼロは決めた。
この世界で自分にできることがあるのなら、全力で取り組む。
たとえ、書類の山に頭を抱えることになろうとも。
「……ただし、明日はもう少し分かりやすく説明してくれよな、武内!」
遠くから、武内プロデューサーの声が返ってきた。
「承知しました。明日もよろしくお願いいたします、シンさん」
「おう!」
こうして、ウルトラマンゼロのサブプロデューサー生活は幕を開けた。
果たして彼は、アイドルたちの夢を支える立派なプロデューサーになれるのか。
それとも、地球の書類仕事に敗北するのか。
その答えは、まだ誰にも分からない。