私の親友が百合ハーレムを作ってるわけないじゃん! 作:木下てれん
「というわけで、力を貸してください」
「いやどういうわけ?」
私が昨今話題のフレネミーをかました次の日の放課後のこと。
王塚さんとカフェに行ってくると話を聞いていたのだが、何故かれなが帰宅するやいなや家に呼び出されていた。
「実は昨日の放課後、また真唯と一緒に家でゲームしたんだけどさ」
まず最初にその話から始めて欲しいものだ。
「なんかね、真唯が負けた方が言うことを聞くって対戦ゲー持ちかけてきたの」
よく知っている。なんなら結果も王塚さんから聞いている。
むしろ『それ言ったの、私だから』と、心の中でドヤ顔をしたいくらい…………いや、申し訳ないとは思ってるよ?うん。ほんとほんと。
しかしそれはそれとして知っている話を聞くのもちょっとめんどくさいので、察されない程度に軽く話を進めることにした。
「苦手な格闘ゲームでも持ちかけられて、こてんぱんにやられでもしたの?」
「なんで分かるの!? 5-0の大敗だったよ!!!数日前に始めてゲームしたとは思えない腕前だったんだけど!!!」
私はその話を事前に聞いて、正直鍛えすぎたかなーと他人事のように笑っていた。私に通用する攻めって、普通に上位のランク帯潜れるくらいだし。そもそもこのゲームをやり込んでいないれなが一矢報いれる方が無理な話だ。にしたって5-0って……笑 ゲーム初めて数日の王塚さんに5-0……笑 私が初心者との対戦ゲームで負けるわけないじゃん!(※負けちゃった!?)笑
「さっきから絶対心の中で馬鹿にしてるよなぁ!?」
「あ、バレた?」
「そりゃそんだけ笑顔で肩を震わせていればねぇ!?」
普段はこういうあからさまなことすら察せないくせに……。
私は心の中で悪態をついた。
「……なんか色々納得いかないけど、まぁいいよ。それで本題なんだけどね……」
れなはそういうと、頬を赤らめながら思い出を振り返るようにゆっくりと口を開いた。惚気かなぁ、帰ってもいいかなぁ。
「その……真唯が私とハグしたいって言ってきてね? 賭けのこともあったから仕方なく受け入れたんだけど、こう……やけに湿度が高かったというか……本当に私のことが好きなんだなぁって……改めて分からされちゃったといいますか……」
どこか落ち着かないように、両手の指を絡めてはもじもじしているれな。こいつ本当に付き合う気ないのか? もうこうなってる時点でダメじゃない?
「そ、それで!!このままじゃ居られないなーって思って!!」
「あ、本当にまだ親友目指してたんだ」
「諦めたことないけどなぁ!!!目下の悩みだよ!!!」
まぁこんな風に雑に対応してはいるが、王塚さんの件に関してはわりと私のせいな節があるので、今回は全面的に協力しようとは考えている。変に勘付かれても面倒なので、それらしいことを言うつもりはないが。
「というか、どうしてそんなに親友が欲しいの?」
私はふと気になったので、聞いてみることにした。確かに私とれなは親友だ。でも、れなが今目指している親友という関係は、今の私たちとは似て非なるものな感じがして。
その言葉を聞きれなは、少し触れられたくない場所を見られたような、悩むような素振りをしてからゆっくりと口を開いた。
「……ほら、私って零に頼りっぱなしじゃん?」
「ああうん、めっちゃ分かる」
「ぐっ……もう少し否定するとかないの……?」
あるわけないだろ。私は続きを聞く姿勢を保った。
「親友になれたのも、零がずっと私に話しかけてくれたからだし……だから高校でくらいは、あんまり頼らずに一人で友達も沢山作って……」
れなははにかみにながら、口を開く。
「零にとっての、自慢の親友でありたいから……その……そんな感じの理由です……」
れなは余程恥ずかしかったのか、俯きながらボソボソと締まらない言葉を発し続けていた。
にしても、そんなことを思っていたのか。一人で自分から親友を作ることが、その自信と自立が、私を安心させれると思っているみたいだ。中学まで人間関係が原因で不登校だった彼女が、私のためにそれに向き合い、考え悩んで、それでも尚努力しようとひたむきに突き進んでいる。
……参ったなぁ。思ったより、凄く嬉しい。
嬉しい……けど……。
れなが私を頼らないとか、そんなのムリだから。
「私はそのままのれなが好きだよ」
「ちょ、だ、だからぁ!? そういうのが私を自堕落にさせるの!!! やめて!!!」
頬を赤く染めながら、いつも通りギャーギャー喚かれる。
「だいたい今だって私に頼りっぱじゃん」
「ぐぬ……だって仕方ないじゃん! まさか恋愛的に好かれるなんて、分かるわけないじゃんか!」
「それで、結局私頼りになっちゃった……と」
「……その通りです」
れなは申し訳なさそうに正座で座り直し、床にばかり視線を向けていた。そんな彼女を見て、私は酷く満足そうに、とびきりの笑顔でこう言うのだ。
「本当、れなは私がいないとダメなんだから! 仕方ないから今回も頼ってくれていいよ!」
◇
「それで、今週末にデートしに行くと……」
「うん、ここで真唯の胸を一撃で串刺しにしてやるんだ……!」
物騒な言い方だが、有するにれなが言いたいことはこうだった。このまま親友と恋人をなあなあにしたまま関わり続けると、いつ王塚さんに喰われる(意味深)か分からないから、今週末のお出かけデートで親友の良さを分からせる……とのこと。
それで私にはそのデートプランの監修と、ついでに『私の知らぬ間に仲良くなってたんだから……』と王塚さんの好みをリサーチしてこいとか言われた。まだ根に持ってるじゃん……。
「明日から四日間もある……そこで練りに練ったプランで真唯を虜にしてやるぞ……」
「その日大雨らしいけど大丈夫そう?」
「……まだそうとは限らないじゃん?」
天気予報って何か知ってる? まぁ一概には否定できないけども。
「あ、そうだ! お台場とかどう?そこでVRゲームの体験とか!」
「お台場かぁ……いいと思うけど、VRに関してはれながやりたいだけじゃない?」
そう言われて、顔を逸らすれな。こいつ今日ずっと目合わないな!!!
「い、いやでもさ? 最近ゲームに触れて楽しそうな真唯にはピッタリな刺激だと思うんだよ!」
「んー、確かに。王塚さんって凄い楽しそうに遊ぶもんね」
「え? 真唯と一緒に遊んだことあるの?」
やっべ。
「……少し値が貼っても王塚さん相手には気にしなくていいもんね。そういう視点でもVR体験はいい選択なんじゃないかな」
「明らかに話逸らしてるよね? ねぇ、零? さっきから目合わないんだけど」
「もし合わなくても楽しそうなれなを見てるだけで、あの人ならそれで満足だろうし。うんうん、考えるほどお台場デートは二人にお似合いだよ。その方向で話を進めても良さそうだね、うんうん」
「真唯の戦い方さ、今思うと零の立ち回りによく似てた気がするんだよね……昨日もやけに仲良さそうだったし……」
れなは首が左に90度曲がっている私の肩をつかみ、無理やり目を合わせては怖いくらいの笑顔で口を開いた。
「もしかしなくてもさ……一枚噛んでるよね?」
「…………てへ♡」
「心山ァ!!!!!!!!」
私の会心のとてもないくらい可愛げのあるてへぺろ顔に、れなは本気で怒ってきた。こいつ、本当に感情があるのか!?
「絶対真唯にあのゲーム勧めたのも教えたのも零でしょ!!!どうりで上手いなと思ったんだよ!!!」
「上達の仕方が常人のそれとは外れててさ、それに加えて面白そうにやるものだから興が乗っちゃって……えへへ」
「えへへじゃないんだよなぁ!!! こっちは抱かれてるんだぞ!!!」
勘違いされるからその言い方は是非やめて欲しい。
「まぁまぁ、落ち着いてよ。私に接触してきたのは王塚さんからなんだって」
「え、そうなの? れな子に賭けありの勝負を持ち掛けたいからゲーム教えてーみたいな?」
「ああいや、その勝負をれなに仕掛けようって提案したのは私だね」
「心山ァ!!!!!!!!!!!!!!」
酷く冷静な私の対応に、れなは癇癪を起こすかのように怒りを撒き散らしてくる。ふぇぇ、こわいよぉ。れなちんこわぁい。こわわぁ。
「敵なの!?昨今話題のフレネミーなの!?」
「ち、違うって!わざとじゃないというか、たまたまそうなっちゃっただけだからっ、だからちょっとっ、揺らすのやめっ、やめろぉ!」
肩を掴まれてからずっと頭をシェイクされていてぐわぐわする。私はなんとかれなを引き剥がし、一定の距離を保つことに成功した。
「その分今回の作戦にはすっごく協力するからさぁ! 許して!お願い!」
「……まぁいいよ。零にはいつもお世話になってるし……なってるけど、真唯と遊ぶ時は私にちゃんと言ってよね!」
「彼女面?」
「そういうんじゃないから!!! 本当に反省してる!?」
してますしてます。してるけど王塚さんと遊ぶ女を逐一確認してくるの、ちょっと重い女の片鱗を感じるよ……れな……。
そんな風に会話をしていると、ポケットに入れていたスマホの振動が触れていた身体に伝わる。なんの通知だろうか、すぐに確認してみればそこには"王塚真唯"の文字が。
『今度れな子とデートするのだが、良ければれな子の好みを教えてくれないか? 』
『恥ずかしながら、少し緊張していてね。事前に彼女のことを少しでも多く知っておきたいんだ』
……今回はそう来る感じかぁ〜〜〜。
「今回の分、ちゃんと真唯の好み調べてきてよ? それでチャラにしてあげるから」
ふふん、と得意がるれな。
どうしてこうもまた挟まれなければならないのだろうか、もう勝手に二人で出かけててくれないかな。
私はまた、心の中で悪態をついた。