オーロラに転生ですか?幕間の物語 作:オーロラ・ル・フェイ
召喚される気はなかったが、まぁ召喚されるんだと思っていた。
こっちの自分とは縁もゆかりもない筈だが、どうせイベントとか何とかで強引に結ばれて喚ばれてしまうのだろう。妙な確信があった。
まさか、奏章なんて言う知らないメインストーリー。俺を英霊にした張本人が原因になるとは思わなかったが、マスター達とはそれなりの旅をして、メリュジーヌと天使をボコしたり、アンリマユと一緒にガンメタしてメタトロンにフ○ックを突きつけてやったり、建国したり、カドック君の代わりに証人になって私に(一時的だが)戻ったりと、力を貸してもいいかなぁなんて絆されたあとだったので、いざ召喚されても戸惑いはなかった。
「ふぅ……ふぅ……ふぅ!頼む頼む頼む頼む!!!!」
「もう緊張し過ぎだよ~。大丈夫だって、いざとなれば霊基は戻せるんだし」
「大丈夫だよオーロラ。君が最高の男なら私は最高の女に、最高の女なら最高の男になって君の為に尽くすから!」
それは俺こと、男版オーロラがカルデアで初の霊基再臨を迎える時であった。
かつてない緊張が己を襲う。
俺にとってこれは単なるパワーアップイベントではなかった。
下手をすればまたオーロラに……女に戻りかねないのだ。
(それだけは絶対に嫌だ!!!)
自認は男。そしてパートナーは女であるが、その気になれば竿も生やせる。
俺の性癖はノーマルだ。(メリュジーヌのことを差してロリコンだと宣ったやつは殺す)
性転換の興味はないし、ウケに回る気は更々ない。なのに多分……というかこの世界の都合上、ほぼ確で俺はオーロラになる。
だってそうだ。ぽっと出のよく分からん男が実は過去に縁を結んでいた超常の存在だった。
それで召喚されて、再臨までしたのに冴えない男のままですとは運営が許さない。
絶対にオーロラになる。第二再臨を乗り越えたとしても最終再臨で。いくらレベルを上げたとてアルビオンの霊基には遠く及ばないとは思うが、こういうゲームでは見た目こそ第一だ。
「……お、お母……様」
「お母さん」
「キャッハ!良かったなぁ。もうすぐ私たちのお姉様が戻ってくるぜ!」
「……オーロラ」
それに加えてこのカルデア。どうやら俺の知るブリテンとは微妙に違う末路を辿った世界線のようなのだ。
どういうことかと言うと『私』の作ったブリテンは主な住人が妖精であるにしてはマシな国だった。俺は途中で離脱してしまった為、結末まで見届けることは出来なかったが、目覚めた私が何やかんや強引に物事をまとめ上げて無理やりハッピーエンドにしたに違いない。
物語の当人としてはそれで良かったのかもしれないが、これを菌糸類やファン達が許すかどうかという話である。
───答えは否。こんな三流のハッピーエンドを彼らは望まない。
ただでさえ2部六章と言えば気合いの入れようが違うとされている超人気シナリオである。
いくら世界観の作り込みが良くてもカルデアが終始蚊帳の外では誰も満足しない。
メタ的な話。興行用に若干修正が入ったようであり、大筋こそ変わらないものの、ブリテン勢はろくでもない目に遭わされたらしい。
一番酷かったのはバーゲストのようで、口に出すのも憚られる大罪を侵してしまったのだと、召喚されて直ぐの俺に介錯を願う始末。
アルトリアはいつも通りと見せかけて、私がモルガンやマーリンなどとすれ違うだけで、対粛生防御を発動しようとするし、何だかか気が置けなくなっている。
そのモルガンは声をかけようとすると、逃げ。マーリンは応じてくれるがガチモードと言うか全く笑わなくなるので超怖い。
逆にバーヴァン・シーは一番マシで、見覚えのない人形を抱えていることを除けば本編通りかつ、男のお姉様と良く懐いてくれる。
そしてオベロンは召喚済らしいが、会えていない。
まるでオーロラになることで、新しいシナリオが開幕しそうな勢いである。もしくは幕間の物語がとんでもない量になりそうだ。
「メリュジーヌ……ほんと、お前だけが救いだよ。お前だけが変わらないでいてくれる」
「この私は君と同じタイミングで英霊になったからね。あっちの私とは似て非なるものだし、君がどんな姿でどんなところに召喚されても必ず追い付いて見せるよ」
頼もしすぎる彼女の言葉にホッと息をつく。
やはり性転換するのが嫌なこともあるが、別人に切り替わるというのはそれだけで恐ろしいのだ。
もしかしたら、彼女達がこうなった世界線の私と同期してとんでもないトラウマが流れてくるかもしれないし、そんな時に精神崩壊せずに自己を確立出きるか分からない。
「そんなに嫌ならやめとく?」
「そうだよ!マ、お兄ちゃん!私たちは別にお母さんじゃなくても気にしないし!戦闘はこれまで通り私たちが頑張るからさ!ね!」
「そうですわね……お母様はもうご無理はなさらずに」
「……いや、やってくれ」
だが、そうだ。
俺は俺だが、その前にこの子達の親なのだ。
自分の子供がこんなに傷ついていると言うのに知らぬ存ぜぬは俺の魂が許さない。
「メリュジーヌ、もし俺が耐えられなかったり、娘達を傷つけるようなことがあったら……」
「大丈夫。私が必ず止めるよ」
実はルーラーではなくバーサーカーとして召喚された俺。狂化B+のスキルがあるので、最悪の自体は想定しておくべきだろう。
娘達を傷つけるぐらいなら殺してあげると言って欲しかったが、俺の惚れた女は誰よりも強欲だ。
そんな彼女だからこそ信じられる。
「じゃあ始めるね」
装置が起動し、全身に駆け巡るこれまでとは異なる魔力。
自分という境界が曖昧になり、別の誰かと混ざり合って、新しい何かへと新生する。
(あぁ。やっぱりだ……)
俺ではなく私へ。
これまで記録としては覚えていても、どうにも実感出来なかったバーゲスト達への親としての想いに火が灯るような感覚。
そしてモルガンへの言葉では言い表せない複雑な感情や「そうか……あの人形はロリカの……」研ぎ澄まされた感覚により判明するバーヴァン・シーの抱えた闇。
「ふふっ」
何だ、この程度かと私は笑う。
なんてことはない。どうやら『俺』だった頃とは別人レベルで戦闘タイプに強化されたようだが、これであの子達を守ることが出来る。
「「「「……」」」」
霊基再臨が終わり、姿を現した私を見て一同は息を飲んだ。
スラリとした背筋。細い腕に透き通るような白い肌。そしてアルトリアの霊基情報から持ってきたのか遠い昔に失ってしまった大輪のように咲き誇る羽。
風の氏族 大妖精オーロラ
「色々と言いたいことはあるけれど、先ずは食事でもしましょうか。家族四人で」
そうニコリと笑う。霊基再臨に伴い追加されたスキルのせいか皆の顔がほんのり赤い。
あぁこの無条件に魅了を振り撒く感覚、懐かしいなぁ、とふと横を見れば見慣れないイケメンが立っていた。
「え?誰?」
「ん、男バージョンの僕だけど?」
霊基再臨とか関係なく気合いで成っているそうだ。
「……貴方、何でもありね」
「君の夫だからね!」
ちなみに既に魅了されているのでスキルは効果ない。
本編の続きとして投稿しても良かったですが、どう考えても蛇足なので、こっちでこっそりやります。