ドラゴンクエストそして伝説へ~始まりの物語~   作:北内清

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第8話 バコタの投獄

王宮の取調室では、昨晩捕らえられたバコタの尋問が行われていた。

 

「――して、バコタよ。なぜそのようなことをやった。小心者のお前ができることと言ったら、小銭を盗むのがせいぜいのはずだ」

 

「いや、顔はよく見えなかったんですがね。なんでも大金をくれるっつーんでさ。酒に酔った男を殺すぐらい、俺にだってできっかなぁと思ってよ」

 

「お前が襲ったのは、この城の指南役カムイ殿と、オルデガ様のご子息アルタ様だぞ!これは重罪だ。たかがコソ泥が考え付くことではない。国家を揺るがす大惨事ぞ!」

 

「ま、待ってくれ! そんな大物だとは知らなかったんだ。俺は、覆面の男に頼まれて……」

 

「泣き言を言うな! それが人を襲った罪だ。たとえ指南役様やご子息様じゃなくても、重罪に問われるのだぞ!今回は未遂に終わったので、しばらくの間は投獄ののち、罪は必ず償ってもらう。ところで、その男の背丈はどのようなものであった?」

 

近衛兵たちに囲まれた尋問室を見渡すバコタだったが、ふと視線を止めた。

屈強な肉体に鋭い眼光――昨夜の男と、背丈も容姿もそれに酷似した男が、近衛兵の中に混ざっていた。

 

「あ……」

 

バコタは答えようとしたが、その男の殺気立った眼差しに恐れおののき、ぐっと下をうつむいた。

 

「では、覚えがないということだな。思い出すまで牢屋に入っていれ!」

 

尋問官はそう吐き捨てると、席を立った。

 

近衛兵がバコタを連れて牢に向かう途中、近衛隊長とすれ違った。

「隊長! ご苦労様です!」

敬礼する兵の背後に、バコタは身を隠すように縮こまる。

 

「この者がバコタか……。少し話をしたい。私が牢まで連れて行こう」

 

牢とは別の方向へ、バコタを連れて歩き出す近衛隊長。人目につかない一角で、隊長は冷徹に言い放った。

 

「しくじったな……。この落とし前、どうつけるつもりだ。私がここでお前を斬ったら、私に疑いがかかってしまうからな。しかし、お前がいついつその軽い口をしゃべるのかもわからぬ。いっそのこと、ここでその舌を抜いてやろうか……」

 

迫りくる殺気に、バコタはおびえて地に足を震わせた。

「旦那、つぎは必ず仕留めます! だから俺を投獄してくだせぇ。そして、俺は脱獄して奴の息の根をとめてきます。そうすれば旦那は疑われないし、俺もしゃべらない。どうか、命だけはお助けを……!」

 

「ふん。ネズミ風情が私に指示をするとはな。だが、いいだろう。脱獄に必要なものがあったら、お前の食事に混ぜて送り届けてやろう。とりあえず、お前は牢屋に入っていろ」

 

隊長はバコタを暗い牢に押し込み、看守へと低く言い残した。

「――あやつの食事の時間は、私自らが運ぶ。時間が来たら必ず私に知らせるように」

 

一方その頃、アリアハンの訓練場では――。

 

「カムイさん! 昨日は大変だったんですよ! 僕のマヌーサがなければ、カムイさん死んじゃってますからね!」

 

二日酔いの頭を押さえながら、カムイは重い木刀をしっかりと握り直した。

 

「これだけお前に剣術を授けているというのに、なぜ呪文に頼るのだ……。まだまだ鍛錬が足りん証拠だな」

「えーっ!」

「……ところで、アルタ。そろそろお前にも、本物の剣の使い方を教えねばな」

 

ふと手を止めて、カムイは真剣な眼差しでアルタを見た。

 

「訓練が終わったらポポスの店に行こう。多少だが給金が出たのだ。お前に、ちゃんとした剣を買ってやろう」

 

「ほんと!? ありがとう、カムイさん!」

 

アルタの顔にパァッと満面の笑みが広がった。

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