SideM×ニジガクのクロスオーバーです。
まずは天ヶ瀬冬馬×高咲侑です!
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会と、315プロダクションによる奇跡の合同ライブイベント。
その開催が決定してからというもの、スクールアイドル同好会の音楽プロデューサー的立ち位置である高咲侑の日常は、まさに怒涛の日々を迎えていた。
侑「う〜ん……ここはもっと、Jupiterの持つ圧倒的な力強さと、虹ヶ咲のそれぞれの個性が重なり合うような……ううん、違うな。もっとこう、胸をギュッと掴むような熱い展開にしたいんだよね……!」
放課後、315プロダクションから特別に提供されたレッスンスタジオの一角にある控え室。
鍵盤キーボードとノートパソコン、そして書き込みだらけの五線譜に囲まれた侑は、頭を抱えながらひとりごちていた。
両社の合同ステージ用メインテーマ曲。
その作曲という大役を任された侑は、ここ数日満足に睡眠も取らず、ただひたすらにメロディと向き合い続けていたのだ。
侑「あー!駄目だ、一回頭を冷やさないと……!」
バサッと髪を掻き揚げ、大きく背伸びをしたその時だった。
カチャ、と控え室のドアが開く。
冬馬「おい、まだやってんのか……って、何だその顔。隈がすげーことになってぞ」
缶のホットココアとブラックコーヒーを手に現れたのは、315プロダクションが誇るトップユニット『Jupiter』のリーダー、天ヶ瀬冬馬だった。
彼がここにいるのは、校舎で理事長の許可の元、スクールアイドル同好会と315プロダクションが練習していたからだ。
侑「あ、冬馬くん!お疲れ様……!あはは、そんなに酷い顔してるかな?」
侑が苦笑いしながら頬を触ると、冬馬はあきれたように息を吐き、手にしていたホットココアを侑の机の上にトン、と置いた。
冬馬「あきたも何も、顔色真っ白じゃねーか。ほら、飲めよ。糖分補給だ。……休むのも仕事のうちだろ、プロデュース担当」
侑「わぁっ、ありがとう!冬馬くん、優しい……!」
冬馬「なっ、べ、別に優しくなんかねーよ!偶々、自動販売機で見かけたからついでに買ってきただけだっ!」
冬馬はパッと顔を背けると、ブラック珈琲の缶を開けて一口煽った。
豪快に飲み干すその横顔を、侑はココアの温もりを両手で感じながら見つめる。
侑(冬馬くん……ステージの上ではあんなにギラギラしてて格好いいのに、こういうところはすごく温かいんだよね……)
Jupiterのライブ映像を初めて見たとき、侑の胸は「トキメキ」で張り裂けそうだった。
圧倒的なパフォーマンス、客席を支配する熱量、そして何より、音楽を心から愛している冬馬の瞳。
その輝きに魅了されて以来、侑の中で冬馬は特別で、どこか眩しすぎる存在だったのだ。
冬馬「……で? どこで行き詰まってんだよ」
冬馬がサイドチェアを引き寄せ、侑の隣に腰掛けた。
ふわりと香る、汗と爽やかな柑橘系のコロンの匂いに、侑の胸がどきっと跳ねる。
侑「え、あ……えっとね、サビの展開なんだ。Jupiterの疾走感と、虹ヶ咲の『みんなの夢を叶える』優しさを混ぜ合わせたいんだけど、どうしてもまとまらなくて……」
侑が広げた五線譜を、冬馬は真剣な眼差しでのぞき込んだ。
その距離があまりにも近くて、侑は急激に顔が熱くなるのを感じる。
冬馬「……成程な。お前、俺たちのこと、めちゃくちゃ研究してくれたんだな。このコード進行、Jupiterの激しさがちゃんと活きてる」
侑「うん!だって、冬馬くんたちの音楽、本当に凄いから!私、初めてJupiterの曲を聴いた時、胸が熱くなって、体中の血が沸き立つみたいな感動を覚えたんだ。だから……絶対、最高の曲にしたい!」
身を乗り出して熱っぽく語る侑。
その瞳は、まっすぐで、偽りがなくて、眩しいほどの情熱に満ちあふれていた。
冬馬は一瞬ハッとしたように目を丸くしたあと、照れくさそうに片手で顔を覆った。
冬馬「……たく、お前は本当に……真っ直ぐすぎるんだよ」
侑「え?」
冬馬「いや……嬉しいんだよ。そこまで俺たちの音楽を理解して、本気でぶつかってきてくれてさ……なあ、侑」
侑「……! う、うんっ!」
突然、名前を呼び捨てにされたことに、侑の心臓がバックバクと暴れ出す。
冬馬はゆっくりと顔を上げると、力強い、けれどとても優しさに満ちた瞳で侑をじっと見つめた。
冬馬「お前が作ろうとしてるこの曲、俺はめちゃくちゃ好きだぜ。だからさ……一人で抱え込むなよ。俺も一緒に考える」
侑「冬馬くんが……一緒に?」
冬馬「当たり前だろ!俺たち Jupiter と、お前たち虹ヶ咲の曲なんだ。俺にも作らせろ……お前が紡ぐ
そう言って、冬馬は鍵盤キーボードの上に自分の手を重ねるようにして置いた。
冬馬の大きくて温かい手が、侑の手の甲に触れる。
侑「っ……!」
電気のような衝撃が侑の全身を駆け抜けた。
普段なら『音楽のアイデア』に没頭するはずの頭が、いまは冬馬の手の温もりと、至近距離で見つめ合う冬馬の瞳の強さだけでいっぱいになっていく。
侑(どうしよう……冬馬くんの顔が近くにあるだけで、胸が痛いくらいキュンとする……!これって……トキメキ……? ううん、違う……私、冬馬くんのことが――)
冬馬「ほら、鍵盤弾くぞ。ここ、マイナーから上がっていく展開にしたらどうだ?」
侑「あ、うん……!こう、かな……?」
侑が指を動かす。
冬馬がそれに合わせて、低音のコードを弾き重ねる。
二人の音が重なった瞬間、まるで奇跡のように美しいフレーズがスタジオ内に響き渡った。
侑「す、凄い……! 冬馬くん、それ凄くいい!」
冬馬「だろ? お前のメロディが根っこにあるからだよ……すごいの作ろうな、侑」
冬馬が最高の笑顔を侑に向けた。
その瞬間、侑の胸の奥で、カチリと何かが音を立てて嵌まった。
侑(ああ、ダメだ……。私、完全に冬馬くんに恋してる……!)
音を重ねるたびに深まっていく、二人だけの特別な絆と熱量。
合同ライブの幕が上がる頃には、この旋律はきっと、二人の恋の鼓動そのものになっている――