うちの高校の男子バレー部は、全国大会の常連校だ。
ブラスバンドも強豪として有名だけれど、それだってあくまで男子バレー部があってのブラスバンド部、という空気がどこかにある。そして華やかなチアリーダーたちも同じく、彼らの公式戦には必ずついて回る。
公式戦は全校を挙げて男子バレー部を応援する。それが、私たちの学校の当たり前だった。
そして――常に墨の香りに包まれて静かに筆を握っていた書道部の私は、なぜか今、派手なチアリーダーの恰好をして応援席に立たされている……!
「夏休みのインターハイで、ちょっとポンポン振るだけでいいから!」
そんな先生の軽い言葉に騙されて突然駆り出された私は、当然ステップなんて一つも知らない。ただ周囲のチアリーダー部の動きを必死にマネするだけ。
練習なしの、ぶっつけ本番だった。
とはいえ、男子バレー部は圧倒的に強かった。
こちらの心配を余所に試合を順当に勝ち進んでくれたおかげで、最初はガチガチだった私も、何度か回数を重ねるうちに、少しはマシに動けるようになっていた。
けれど、キラキラした夢のような舞台は、決勝戦で敗退した。私はやりきった充実感と、あと一歩届かなかった悔しさが入り混じる体育館。試合後、少し落ち着いてからトイレに行き、その戻り道でのことだった。
バレー部の部員たちはみんな背が高くて、こうして何人も集まっているとそれだけで威圧感がすごい。私がこそこそと通路を歩いていると、ちょうどミーティングを終えて解散した瞬間と重なってしまった。
「あれー? 見慣れないチアの子がおると思ったら、書道部の先輩じゃないですか?」
「ひぇっ…」(うっ……一番見つかりたくなかった人に、見つかってしまった……!)
声をかけてきたのは、学校中の人気者バレー部所属の2年生の宮ツインズの片割れだった。その隣には、瓜二つの顔をしたもう片方もいる。
「えっ! は、はい! 書道部の高梨あやと申します……!」
応援で掠れた声が裏返りそうになりながら頭を下げると、宮くんはニヤリと意地の悪そうな、でも人懐っこい笑みを浮かべた。
「うん、知っとるよ。先輩わりと有名人ですやん。なぁ、治」
「せやなー。書道部の文化祭のパフォーマンス、めっちゃカッコええもんな」
「えっ!ご存じでしたか…。光栄です…!」
有名ツインズからのまさかの認知にちょっとうれしくなる。でも同じ学校だから、顔を見かけるくらいなら普通かな。
けれど、感心している場合ではなかった。私はこのインターハイ期間中、ずっと彼らに対して数えきれないほどの罪悪感を抱えていた。