想造者のヒーローアカデミア 作:ヒーローっていいよね
中国で生まれた「発光する赤児」に端を発するとされる、人類が手にした新たな能力、"個性"。
発見当初は"異能"と呼ばれ恐れられた彼らも、世代を重ねるにつれ’個性’を持つ人類は増えていき、第五世代と呼ばれる現代人類はその八割が"個性"を持っているとされる超常社会。
そんな世界では、かつては空想の産物だったある2つの人々がいた。
一つ。個性を力とし、己の欲望のままに振るい人々を害する、
一つ。その
コミックの世界が現実となった現代。
───空想を実現する男が、また一人。この世界に生まれ落ちた。
◆◆◆◆
某年某日、某曜日。静岡県に位置する巨大な高等学校。
教育機関としてはありえないほどの敷地面積を誇るこの高校───国立雄英高等学校に、一年で最も多くの"中学生"が集まる日。
ここに集まった彼らの人生が決まると言っても過言ではない一大イベントの最中、彼もまた、同じ立場でここにいた。
雪よりも白い、銀にも似た色の髪。長身とも短身とも言えない、痩躯とも肥満とも取れない、髪以外‥もはやこの世界においては髪の色なんて微々たる差なことを思えば、普通すぎる見た目の、一人の少年。
静岡市立──中学校3年、
彼もまた、ここに人生の分岐点を置くと決めたものの一人だった。
◆◆◆◆
side 創斗
2月の寒いとも暖かいとも取れる中途半端な陽射しが降り注ぐ中。
俺───井真地 創斗は、雄英高校の門をくぐり、受付を済ませ、他の生徒が緊張に顔を思いっきりこわばらせる中。
「…一体、何してるの?」
"頭上"から降り注いだ声に目線を向ければ、そこに立っていたのは、どことなくカエルっぽさのある女子中学生だった。
「うーん…試験前の瞑想、んや昼寝…?」
「試験前って…大抵最後の復習とかするものじゃないかしら…?…というか、よくこんな場所で寝られるのね…」
彼女の疑問はもっとも…だろう。普通なら。俺は今早めに雄英についたということで教室に荷物だけ置いて外のベンチでお昼寝…改め瞑想中。とはいえ、俺はこれでいいのだ。なぜならとっくに───
「大丈夫。…俺の中じゃもう映ってるから。」
「映ってる‥何が?」
「入試に受かって、ココで授業受けて───ヒーローになってる俺が。」
「……想像してる、ってことかしら?」
「ああ。…ほら、俺にかまってないで早く行きなよ。君はまだ荷物とか置いてもないだろ?」
彼女は教室に向かう途中で俺に遭遇していたようで、その手にはまだ参考書等々が詰められたと思しきカバンが。準備するしないは兎も角、会場に入らず間に合わないというのは避けてほしい。
「え、ええ…貴方は?」
「もうちょい瞑想してから行くよ。また会場で会えたら会おうな。」
「そう…じゃあまた…会えたら、また"ここ"で。」
そう彼女は言って、自身の試験会場へと向かっていった。
「…流石に行くか。トイレ行きたいしなぁ…」
彼女が立ち去ってから十数分、俺も現実に意識を戻しつつ立ち上がり、記憶を辿って筆記試験の教室へと歩いていった。
◆◆◆◆
午前の筆記5科目を終えた俺は、入試の鉄則である食べすぎず重すぎずな昼食を終え、再び昼n…ではなく瞑想に。昼休みなんざ移動時間を考えると残り十分少々しかないが、変に焦って良くない方に思考を持っていかれるなんて以ての外だ。
「…さて。」
体内時計がそろそろ立てとアラームを鳴らしてきたので立ち上がり、最低限の荷物のみ持って、次なる会場───実技試験説明会場へと足を運んだ。
会場に入ると、そこはニュースなどでよく見る国連のあの会議室も霞んで見える大会場。まあ純粋な人数で言えば国連の出席人数を軽く超えるぐらいはいるのだ、無理はない。
自分の受験番号が示された席に座ると、そこには実技試験の説明が書かれた数ページのパンフレットがあり、ざっと目を通す。簡単な話が、AI搭載の戦闘用ロボットを倒してスコアを稼ごう、というゲームのスコアアタック的なルールだ。一時はロボット相手で実力が測れるのか?という声もあったようだが、そんな声は入試で人を傷つけさせるのかという声に消されてすぐに聞くことはなくなった。
パンフにはいくつかの禁止行為や採点方法等々が記され、まあこのあと正式な説明があるんだろうなぁと思いながら読み進めていると。
「今日は俺のライヴにようこそ!エヴィバディ Say HEY!」
おおでっか。…うわ急に無音。いや当然だろうけど。
意識をもとの会場に戻すと、全参加者が見えるであろう位置に設置された巨大モニターのもとには、見た目よりももはや声のほうが覚えのある人も多いであろう"プロヒーロー"……ボイスヒーロー プレゼント・マイクの姿が。彼の煽りがこの試験会場で見事に霧散したしたことは触れないでおいてあげたほうがいいだろう、きっと。
「こいつはシヴィーッ!じゃあ受験生のリスナーに、実技試験の内容をサクッとレクチャーするぜ!Are You Ready!? YEAH!」
すげえなさっきの今でテンション維持していくのか。さすがプロヒーローと言うかなんというか。
「ボイスヒーロープレゼントマイクだぁ…!すごい…いつもラジオ聞いてるよ、雄英の教師はみんなプロのヒーローなんだ、感激だなぁ…!」「うるせぇ」
どこからか彼のファンであろう受験生…とその声を一蹴する声が聞こえてくる中、プレゼント・マイクは説明を開始。
「入試要項通り、リスナーにはこのあと10分間の市街地演習をしてもらうぜ!」
まあ想定通り、というか資料通り。ふとモニターを見れば、日本の何処かであろう市街地、そしてその下にはデフォルメされたAI搭載ロボ…この試験における仮想敵が3体。
説明によればそれぞれが1pt,2pt,3ptのポイントを持っており、要は倒したロボットが持っているポイントがそのまま得点になるわけだ。当然のように、ポイントが高いほど強くなるというシステム。
だが一つ疑問があるとすれば、モニターに写っているのは1~3ptの三種類の仮想敵。しかし一方、手元のパンフには仮想敵は全4種!と書いているのだが。一体どっちが正しいんだろか。
「質問よろしいでしょうか!」
「OK!」
俺が疑問にうーんうーん?とかしげる中、メガネを掛けたいかにもカタブツといった感じの生徒が、ちゃんと挙手した上で質問開始。偉い。
「プリントには、四種のヴィランが記載されております!誤載であれば、日本最高峰の雄英において恥ずべき痴態!我々受験者は、規範となるヒーローのご指導を求め、この場に座しているのです!」
言いすぎじゃない?いやまあ確かに入試でミスあったら困るけどね?
「ついでにそこの縮れ毛の君!」
「えっ?」
縮れ毛…と言われた反応した生徒の声には覚えがあった、というか、さっき聞いたと言うべきか。プレゼント・マイクの煽りに唯一感銘を受けてた生徒だ。
「先ほどからボソボソと…気が散る!物見遊山のつもりなら即刻!ここから去りたまえ!」
言いすぎじゃない???いや一応相手プロヒーローだからそういう反応しちゃう子もいるでしょうよ…
「オーケーオーケー!受験番号7111君!ナイスなおたよりサンキューな!」
プレゼント・マイクはなだめるような口調になりながらも、彼の質問への返答を。
「四種類目のヴィランは0pt!そいつはいわばおじゃま虫。」
モニターには、ほかのロボットよりも一回り、二回り大きなデフォルメロボがいつの間にか増えていた。
「各会場に一体、所狭しと大暴れしているギミックよ。倒せないことはないが、倒しても意味はない。リスナーにはうまく避けることをお勧めするぜ!」
「ありがとうございます!失礼しました!」
カタブツ君(仮称)は謝罪と礼を同時にこなしながら着席した。ちゃんと謝れるの偉い。
まあつまり、実技試験はそういった危機管理的な能力もそれを通してポイントに現れますよ、みたいなものだろう。倒せないことはない、ってあたり倒すことを想定してないというわけではなさそうだけど。
「俺からは以上だ!最後にリスナーに、我が校校訓をプレゼントしよう!───かの英雄、ナポレオン・ボナパルトは言った!「真の英雄は人生の不幸を乗り越えていくもの」と!更に向こうへ、Plus Ultra!それでは皆、良い受難を!」
◆◆◆◆
プレゼント・マイクの激励の余韻冷めぬ中、俺達受験生は受験番号でグループ分けされた後、雄英所有と思しき大型バスで実技試験会場へと向かった。遠目からでも見えるビル群が立ち並ぶ辺り一帯が試験会場で、しかもそれが雄英の敷地内、更にはここは試験会場Fだというのだから、この規模の街を再現した敷地が最低6つはあるという事実に少しばかり頭がくらくらする。想像は得意だが、雄英の規模は一人の中学生が考える領域を何段階も超えているらしい。
さて。そんなわけでたどり着いたのは試験場F。どうやら先程モニターに写っていたのも、どこかの街ではなくこの試験場のどれかだったようだ。あれが雄英の敷地だと思える生徒はいるんだろうか。
俺がそんなことを考えるうちにも、気がつけばここに集められた受験生全員が会場内に入り、一斉にスタートライン手前へ。個性発動に必要なアイテムはある程度持ち込みOKなので、アクセサリ程度に装備品のあるもの、手持ち武器を持っているもの等々様々だ。
一方俺は、装備品といったものは特にない。流石にもう中学の制服ではなく今まで実技入試対策の際に来ていた練習着と同じものだが、常識に照らし合わせて装飾や武器と呼べるものは一つもない。───だが、それで十分だ。
俺が自分の身辺を見直し、再びスタートラインの向こう側を見た、その所で。
「ハイスタートー!」
唐突な開始宣言。ありがとう前を見たタイミングで。
俺の他にも同時に走り出したのが数名、少しばかり遅れて走り出したのが全体の約半数、残りが唐突な開始宣言に戸惑って固まっている。
「どうした!実践にカウントなんざないんだよ!走れ走れ!もう他の奴らは行っちまってんぞ!」
おお、今更ながらここのアナウンスもプレゼント・マイクなのか。忙しいねあの人。
とはいえそんなことを考えている場合ではない。俺の眼の前にはもうすでに1の数字が刻印された仮想敵ロボットが迫ってきているのだ。
…だが。それがどうした。ロボットの攻撃ぐらい、"俺は避ける。”
『ブッ殺ス!』
奴の振るった攻撃が俺を打ち据える…と思ったときには、俺の体は急に加速しやつの背後へ。
「街なんだし…やっぱりあった。」
俺はあたりを見回すと、とあるビルのそばにバケツタイプの傘立てがあり、もちろんその中にはビニール傘が何本か。
俺はそのうち一本を掴み取ると上段に構え、そのままロボットへ振り下ろす。
「セアァッ!」
透き通った"刀身"がロボットの角から滑らかに入り、そのボディを両断。これで1ポイント。
小爆発を背に走り出し、今度は眼の前にいた2の数字が刻まれたロボットの下へ。
俺は剣を左腰に据え、上体をかがませる。体制としては居合切り。そして居合切りなら、"数メートルなど一瞬で超える。”
「ハァッ!」
先刻のように、俺の体は見えない手に押されたかのように加速。そして、振り抜いた刃で2ptロボットを上下真っ二つに切り裂く。
「うおっどっから来たあんた!?…って傘ぁ!?!?」
「んまあそうなるか!ごめんねいきなり!」
ちょうどそこにいた金髪の受験生が素っ頓狂な声を上げる中、俺は次のターゲットを探した。
次に目についたのは、目算で十メートル以上は離れているであろう3ptのロボット。流石に居合切りでも厳しい、と思う。
「よっ…」
俺は傘のグリップの曲がった場所を持ち、傘本体の透明な部分を左手で支え、顔の直ぐ側まで持っていく。
片目を瞑り、"照準"を合わせ───
「ッ!」
グリップの、"トリガー"を引いた。
瞬間、傘の先端から一筋の光が放たれ、それはまっすぐ狙った先に。
3ptロボットの中心部に光が当たると、そのまま貫き…爆散。これで更にポイントが入った。
「傘からレーザー!?!?!?」
「あー…うん、そうなるよね。」
久しぶりにこんな反応されたな、と思いながらも、俺は傘を開いて空にかざし、風に乗って狙撃が命中したエリアまで飛ぶ。後ろからまた声が聞こえたような気もするが、風のせいか内容までは聞こえなかった。
「さて…うおっぶねっ!?」
着地した瞬間、そこにいた2ptロボットがぶん殴って来たので、開いたままだった傘を盾にしてガード。
『死ネェ!』
「なんでさっきからコイツラこんな物騒なわ……けっ!?」
謎に物騒なロボたちに疑問を抱きながらも、傘を畳んでの右水平斬りでロボットを両断。更に俺めがけて突撃してきた三体のロボ目掛け、先端から光弾を一発ずつ発射。見事に一発ずつ命中し、爆散。
「しゃっ!んじゃ次は…っとあれやばくね!?」
次のロボットを探そうと振り向いた俺の目には、少し先でぱっと見でも5体以上のロボットに囲まれている受験生の姿が。手から何やら液体らしき物を出して応戦しているが、いかんせん数が多いせいか処理が追いついていない。
「よっ…と!」
俺は彼女が気づいていない後ろからの攻撃に滑り込んで、展開した盾でガード。
「うえっ!?ありが…って傘!?」
「想像通りの反応ありがとっ…伏せて!」
「えっ───わぁっ!?」
俺は傘を畳んで中段に構えて右腰に据え、そのまま左に振り抜く。この傘は剣であり銃である。つまり切っ先からレーザーの刃だって出せる。
「なっ…なんか見たことあるやつでた!?!?」
「なんかロボット取っちゃったみたいになってごめんね!んじゃ!」
俺は再び傘を開き空へFly Away。ポカーンとした彼女を置いて次のロボット待つ場所へ。
「さーて…まだまだやりますか!」
◆◆◆◆
そんなこんなで数分後。ロボットを斬って撃ってヤバそうな受験生がいたらキルパク…ではなくちょっと助けて。
そんなことを繰り返し、まあそろそろ試験終了時間かなー、なんて思っていたとき。
「おいおいなんだあのでけぇの!?」
「さっき言ってたろおじゃま虫だって!アレのどこが倒せないことないんだよ!」
「ん〜なんだ…ってまあ大方想像できてるけど…ってデッカ!?」
俺がそちらを覗いて見れば、そこにはビルと同等のサイズを持った巨大ロボットが。
「いやいやどういう想定だよこれ!?……ん?…ちょっ待て待てあそこ!?」
俺が焦りだしたのは至極暖順、ロボットから十数メートル先の瓦礫、その付近に一人の受験生が倒れていたからだ。しかもそれが───今日朝、俺の昼寝中に話しかけてきた彼女となれば、なおさら。
「っ…!」
傘を開き、地面を蹴り。数十メートルぐらい、"風に乗れば俺はすぐに行ける”。
「大丈夫!?…じゃあなさそうだな返事ねえ!」
着地してすぐに声をかけて見るものの返事はない。何かしらで気絶したのか。
「しょうがないか…っと。」
俺はあたりにある瓦礫を彼女のそばに立てバリケードに。大丈夫、"これが壊れるところなんて想像できない"。
「さて…とはいえ50m級のロボットなんて何してくるかわかんないからな…一刀両断だ!」
俺は傘を大上段に再び構えると、ありったけの力を込める。
剣ならば。レーザーが打てるのなら。
───これはどこまでも伸びる刃なのだ。
「──ッ!即席必殺!
天まで伸びた光が、一直線に振り下ろされ。
0ptロボットの頭に触れ、入り込み。
その体を、真っ二つに切り裂いた。
「よっ…」
すぐさま傘を開いて屈み、全身を傘で隠すように。透明な膜に阻まれ、ロボットが起こした大爆発は俺に届くことはなかった。
もちろん、背後のバリケードも壊れることなく。
「ふぃ〜…」
「終了〜!」
「おっ丁度か‥ってやべあの子起こさないと…!」
傘は放り投げておいて、彼女がいるバリケード下へダッシュ。さて容態はいかに。
「おーい!試験終わったよ!大丈夫!?」
「ケロ……貴方…たしか朝の…」
「おー起きたよかった…今試験終わったとこ。…あれにやられた感じ?」
「アレ‥って…ケロォ!?」
…俺が指さしたのは、例の0ptロボ…の、残骸。うん。そう来ると思った。
「あー…まあ現状は気にしないでいただいて。とりあえず…歩ける?」
「ええ…言いたいところだけど…さっき足くじいちゃって、ちょっと歩けそうにないわ…」
「あー、まあそうだよな、気絶から回復したばっかだし…よっしゃ。ちょっと運ぶから捕まって。」
俺は傘を再度取りに行き、彼女の方へ肩を傾ける。
「つ、捕まる?…え、ええ…」
「よーし、んじゃ飛ぶよ〜。」
「ええ、飛ぶ…え?」
俺は彼女とともに風に乗り空に浮き、そのまま最初のスタート地点までフライアウェイ。
「よっしゃ到着…っと。あ救助ロボへールプ。こっちこっち。」
「…あなた…一体何の個性なの…?傘で空を飛ぶなんて…」
「ん〜…なんというか説明難しいんだよなぁ俺の…まあ、想像してみて。どんな個性か。答え合わせはまたここで。」
「ケロ…?」
疑問符浮かべっぱなしの彼女を救助ロボに託しておいて、俺も遅れて門をくぐる。
合否発表まで、どんな高校生活になるか想像しましょうかね。
今回は入試だけでした。まだ個性名とかは教えてくれません。きっと次回かその次かに話してくれるんじゃないかな、きっと。
というわけで次回の投稿日時は未定です。気長にお待ちください。