マジカル★エクスプローラー ちょいゲス風味 作:名無しのエロゲユーザー
「つまり、『事故』ですって―――?」
「はい、そうです。姉さんが来ているなんて知りませんでした」
俺はリビングの床に正座し、ソファーに座るリュディ、クラリスさん、はつみ姉さんに向かって謝罪する。
……え? 姉さんは
鍛えていなかったら死んでいた。
特にクラリスさんの攻撃はヤバかった。現時点の強さではリュディを上回っているんじゃないだろうか。
MP総量の何割かを持っていかれたが、身体強化スキルでギリギリ耐えられた。
「つまり、はつみさんは夜、この家を訪れた。私と幸助は既に寝ていたけれど、たまたま持っていた合鍵で中に入った。はつみさんは幸助の寝顔を見ていたらそのままうっかり寝てしまった、と」
「こうすけの寝顔が可愛くてうっかりしていた。ちなみにクラリスはぐっすり寝ていた」
「……くっ!」
クラリスは捕縛された姫騎士のような顔と声を出している。
このポンコツ護衛がぐうすか寝やがって!
「そして悲鳴に驚いた私たちに……その……アレを見せつけて……」
「いや、だから生理現象だって! いつもは落ち着いてから顔を出してるの!」
「落ち着かせるって……不潔っ!!」
「ちげぇよ! むしろそっちの方が下ネタだろ!」
「貴様! リュディヴィーヌ様に向かって!」
「元はと言えばアンタの警備体制にも問題はあるだろ! 護衛がぐうすか寝てるんじゃねぇ!」
「なっ……! 貴様、表に出ろ!」
お互いが言いたいことを言って場が混沌としかけたとき、姉さんがぼそりと「こうすけは私のを揉んだわ」と言ったことで、混沌を通り越して場の空気は死を迎えた。
「き、記憶違いじゃないっスかね……」
「そんなことはない。何なら鑑定魔法を使ってもいい」
「ぐぅ……」
もはやぐうの音ぐらいしか出ない。鑑定魔法で何を調べて何と出るのか気になるところではあるが。
「こうすけ」
「はい」
「条件次第では許してあげてもいい」
「……と言うと?」
「私もこの家に住むわ」
「出た」
「……何が?」
エロゲー展開が、ですよ。姉さん!
俺はね、出来る限りそういうのは排除して生きていこうと思ってたの! だから一人暮らししようとしたの!
でも世界の方がそれを許してくれないの!
何回も言うけど、この世界はオスよりもメスの方が強いの!
だから毎回こんなことがあったら、いくら命があっても足りないの!
俺は長く生きたいの! 今回は!
俺は心の中で言いたいことを全部言って心を落ち着けてから、姉さんに言った。
「……ふぅ。っていうか、元からそのつもりで来たでしょ、姉さん」
「バレたか。こうすけは賢い」
「どういうことよ、幸助」
リュディは三角にしていた目を元に戻しながら訊ねた。
「大方、お
「似ていないけどニュアンスはだいたいその通り」
「週に1度は家に顔を出すからとは言ってあったはずだけど?」
「お姉ちゃんとしては、それだけだと不満。こうすけ成分が足りない」
「“こうすけ成分”とは……?」
「ということで、私もここに住む。部屋はまだ空いているはず」
「それはそうだけど……毬乃さんはいいの?」
「母様はむしろ私を送り出したがっていた。こうすけがウチに来たから家に帰ってくる頻度は高くなったけど、もともとあまり家には帰ってこないタイプだったから」
想定していたか、していなかったかと訊かれたら、この状況は想定していた。
「リュディ、クラリスさん、相談があるんだけど」
「なにかしら?」
返事にいくらかの冷たさが含まれている。完全に疑いが晴れたという訳ではないけど、話くらいは聞いてくれそうだ。
瀧音幸助の背景も併せて説明すれば、何とか乗り切れそうかな。
「隣の家を花邑家の別邸にしたいんだ」
「まぁ、それくらいなら……」
「こうすけはお姉ちゃんを追い出す気……?」
「最後まで聞いてよ、姉さん。俺はさ、家族の距離感というのがいまいちよくわからないんだ。両親が魔族に殺されてから一人で生きてきたから」
「魔族に殺され……ッ!?」
そう言えばリュディやクラリスさんはこのことを知らなかったのか。
「毬乃さんから聞いてなかった?」
「私たちは、ご両親がお亡くなりになった幸助様を毬乃様がお引き取りになったとしか伺っておらず……」
皆は下を向き、無言になった。
卑怯だよな、俺って。
「こういう言い方が良いのかはわからないけど、
「そんなこと……」
俺の推測にはなるが、瀧音幸助の両親はそれなりに苦労したはずだ。母親が家を出奔して縁が切れているというのがそれを物語っているだろう。
そんな女性を妻に迎える男性……はっきり言って
瀧音幸助の両親は結婚するにあたり妻の実家と揉めて、駆け落ち同然で暮らしてきた―――そんなストーリーが浮かび上がってくる。
仮にそうだとしたら、花邑家を敵に回した男を雇ったり、恩を売ったりする人間がいるだろうか。
いや、いない。
俺があの家で目覚めたとき、あくまで一般家庭レベルの生活水準は感じた。
いや、一戸建ての持ち家に住んでいるとなれば、それを少し上回るレベルだろうか。
つまり実家や社会の一部からつまはじきにされても、それだけの生活水準を維持できる程度の才覚が瀧音幸助の両親にはあったのだ。
今となっては痴呆を患ってしまった父方の祖母の記憶しか頼れるものは無いのだから、これが本当かどうかはわからない。
だからそんな
(……我ながら度し難いな)
どう返答するか迷っていると、はつみ姉さんが口を開いた。
「こうすけは、寂しくないの?」
「どうだろうな……少なくとも寂しいと感じたことは無いよ、今も昔も。むしろ俺のわがままでこんなマンションまでもらってさ、本当に申し訳ない気持ちはある」
「母様はこうすけが不自由なく、家族の愛情に飢えることなく、幸せに生きてくれていればそれでいいと思っている。私もそう。だから来た」
「ありがとう、嬉しいよ。
「……! いま、こうすけの好感度が限界突破した」
安いな、おい。
「だからわがままついでに言わせてもらうとさ、このマンションにも毬乃さんの居場所―――家族三人の場所を作っておきたいなって。隣の
「わかった」
「でも、今日みたいなことは勘弁してほしいな」
「後ろ向きに善処する」
前向きですらないし。
全く……姉ってのはみんなこうなのかね。
俺の家庭環境を話して以来、暗い顔をしていたリュディがおずおずと口を開いた。
「幸助、その、私たちと暮らすのが嫌だったら毬乃さんとはつみさんの家に戻っても良いのよ……?」
「嫌なんてことないよ、リュディ。心配かけてごめん、でも今は今でこの暮らしは気に入っているから。リュディやクラリスさんとも、家族の様に仲良くなれれば良いなと思う」
こんなに顔と性格の良い子を騙すなんて……
いや、俺は何を善人ぶっているんだ。こんなこと、前世からやっていただろう。
「姉さん、リュディ、クラリスさん。俺、強くなるから。みんなが心配しなくてもいいくらい、強くなるから」
こんな
▼
そんなこんなで入学式の前日となった。
はつみ姉さんが同じマンションの住人になったことで2つの変化があった。
1つはリュディが姉さんに師事し、魔法の訓練を行ってもらえることになったことだ。
ゲーム的に言えば【絆ゲージ】が溜まって訓練に固定で出現するようなもので、リュディの魔法の腕はメキメキと上達した。
2つめは、姉さんが来たことで「マンションの屋上」が解放され、俺はクラリスさんと実戦形式の訓練を行うことが出来るようになったことだ。リュディとはつみ姉さんは主にそこで訓練をしている。
落ちないように気を付けさえすれば、屋上でドタドタやったとしても文句を言う奴はいないし、広さもそれなりにある。なんて言ってもあの部屋4つ分だからな。ちょっとした公園くらいの大きさはあるだろう。
俺は、朝と昼は滝で雪音先輩と修行、帰ってからはクラリスさんと修行、といった日々を送った。ゲーム的に言えばだいたい2ターン程度だ。
クラリスさんは原作ゲームには登場しない人物である。
おそらく、先日のリュディ襲撃において本来なら命を落としていたのだろう。
だから俺は彼女がどんな能力を持っているかも知らないし、どのような交友関係を持っていたのかも知らなかった。
会話の端々から判断するに、彼女ははつみ姉さんと同時期にツクヨミ魔法学園に在籍していたようで、それなりに仲も良かったようだ
腕前の方も、魔法剣士型で、現状の雪音先輩に勝るとも劣らないものである。むしろ対人を想定している戦い方という意味では先輩を上回っていたかもしれない。
俺に不足しているのは実戦経験だ。トップクラスの剣士である彼女らから指導を受けることが出来るのは何物にも代えがたい経験である。
本来なら“可能性の種”というアイテムを手に入れてからこういった高効率のトレーニングをしたいところだ。
無いものねだりをしても仕方ないが、最短でも手に入れることが出来るのは1カ月以上先で、非常な危険を伴う。十分に準備しなければ死もあり得るだろう。
“可能性の種”というのは、簡単に言えば上限突破アイテムだ。
仮にLv.99/HP 9999/MP 999が上限だったとして、それがLv.999/HP 99999/MP 9999になるようなもので、“可能性の種”は上限突破に加えてトレーニング効率の大幅上昇も備わっているチートアイテムだ。
そんなチートアイテムが許されているのも、基本的には2周目以降のクリアでしか手に入れることが出来ず、それが無ければ100%クリアが難しいという背景があるからで、人生2周目とは
だから、まぁ、準備しますか。
補足》
この幸助くんは「義理とは言え、母親とか姉に興奮するのはおかしい」という真っ当な性癖を持っているので、どうにか別居は維持したい……という気持ち。
でもその内アイツが来たら壁とかぶち抜かれると思う。
無理があるとか言ったらエタるからね!