マジカル★エクスプローラー ちょいゲス風味 作:名無しのエロゲユーザー
なんで今日アクセス増えたんかなって思ったらアニメ配信日だったわ
「リュディ、そろそろいいかな」
「ええ、今晩は花邑学園長の家でしょ?」
入学式を明日に控え、俺たち――俺、リュディ、雪音先輩――は毬乃さんから夕食を共にすべく家に呼び出されていた。
どうやら俺がリュディやクラリスさん、それから雪音先輩と仲良くして頂いているのを聞き、彼女らに手料理を振る舞いたくなったらしい。
はつみ姉さんは学園に出勤した後に直接家に向かうようなので、俺とリュディはマンションから徒歩で向かうことにし、途中、例の和風カフェの近くで雪音先輩と合流することにした。
ふと歩道を見上げれば、桜も見ごろを迎え、ゲームの始まりをまさに告げようとしている。
「リュディは皇后さま……お母様の手料理を食べることはあるのか?」
「普段はしないけど、偶に思い出したかのようにすることがあるのよね。リル―――妹向けのお菓子なんかが多いかしら。幸助は花邑学園長の料理を食べたことはあるの?」
「1回だけだけどな。めちゃくちゃ美味しかったよ。ハンバーグと唐揚げだったけど、アレは多分、姉さんの舌の好みだな」
「へぇ! それは楽しみね!」
「姉さんはきっと、お子様舌なんだな」
「もう、そんなことを言っちゃ失礼よ」
そんなことを言いながら並んで歩いていた時である。
突如、目の前を歩いていた男女が俺たちの方に振り返り、懐から取り出したナイフで自らの首を掻き切った。
まるで壊れた水道管から出る水の様に血をまき散らし、俺とリュディは頭からそれを被る。
俺たちも周囲の人も、あまりの突然な光景に驚くことすらできず、ただ立ち尽くしたままだったが、数拍の間をおいて絹を引き裂いたかのような悲鳴があちこちから叫ばれた。
これはまさか、邪神教の襲撃……なのか……?
「呪われろ……トレーフル……」
首を掻き切った男はそう言い遺し、白目をむいて死んでいった。
すると大きな地響きと共に、もう片方の女の死体を中心に青白く光る、太く大きな線が足元に展開されていき、リュディを包むように魔力が展開されている。
ダンジョンを呼び出す魔方陣だ……!
「リュディ!」
彼女の名を呼び手を伸ばしたが、リュディは目を見開き青白い顔をしたまま俺と視線を合わせ、何もできず魔力の渦に引き込まれていってしまった。
クソがっ……! あの男が取り逃がした一人だったか……!
いけるか……いや、俺だけではリュディを救出できない。
ゲーム通りだと、これは中級ダンジョンだ。何の準備もしていない現状では死にに行くだけのようなもんだ。
毬乃さんとはつみ姉さんは……まだ学園だろう。応援を呼ぶにも時間がかかる。
雪音先輩は……
「瀧音!」
雪音先輩が俺を呼ぶ声が聞こえたので、パッと顔をあげる。騒ぎを聞きどうやら近くまで来ていたようで、俺の顔を見つけると駆け寄ってきてくれた。
ちらりと横目で邪神教信者とみられる男女の死体を見て引き攣った顔をし、彼女は文字通り血相を変えて俺に訊ねた。
「何があった!?」
「先輩、リュディが邪神教と思われる男女に襲われました。おそらく、あの魔力の中心……ダンジョンに飛ばされています」
「なんだと!?」
「俺の予想が確かなら、リュディはいま非常に危険な状態にあります。俺は助けに行きたい。俺なら助けられる。だけど、おそらく、一人だと難しいと思います。なので先輩、お願いします。どうか俺を―――俺たちを、助けてください」
俺は雪音先輩に顔を寄せ、彼女の手を取り、助けを請う。
「……わかった、だが少し待て。現状を会長たちに報告しておく。ダンジョンからモンスターがあふれ出したりすると周囲にまで危険が及ぶからな。三会に協力を要請して封鎖してもらった方が良いだろう」
「ありがとうございます!」
邪神教がリュディを街中で襲撃するというのは、本来なら入学後にしばらくしてから発生するイベントだ。それも、何度か背後に邪神教を感じさせるイベントを発生させた後に、である。
だが俺は“ただちに襲撃される可能性”を無意識のうちに外して、のんびりとお散歩気分でお出かけしていたのだ。
そもそもこういうイレギュラーの原因の一つは、俺にあるのかもしれないのに、何という無能か。
許せねえ。
あの子にあんな顔をさせた邪神教を。
あの子にあんな顔をさせた俺を。
「……よし。瀧音、準備が出来たぞ」
「行きましょう、先輩!」
俺と雪音先輩は魔方陣の中心に向かって飛び込んだ。
▼
俺が予想した通り、魔方陣の飛び込んだ先は古びた洋館の目の前であった。
外観はガラスの割れた照明や窓、壁の
確かこのダンジョンは『諸行無常の
俺はアイテムボックスから“残月”を取り出すと、チャキチャキと鯉口を切りいつでも抜ける準備をしたのち、先輩に声をかけた。
「先輩、中に入りましょう」
重みのある扉を両手で押し開け侵入し、エントランス部分を見まわすと、足下は砂埃にまみれ、飾られている絵画や壺なども朽ちて落ちかけていた。
「まるで魔物に襲われた後のようなダンジョンだな……。ここにリュディがいるのか?」
「先輩、こっちです」
俺は先輩の不審な目を背に受けながら先導する。
ダンジョンと言えば、徘徊する雑魚モンスターを倒したり、アイテムを拾ったりしながら
しかし、このダンジョンは、全く逆。
ここのコンセプトは
俺が焦るのもこれが原因だ。
(もしリュディが無暗矢鱈に進んで、あるいは通路に立ち
そんな最悪の状況が頭をよぎり、最短で最奥へ歩みを進めようとする俺を雪音先輩が呼び止める。
「瀧音、焦りすぎだ。落ち着け」
「……すみません」
ゲームだとこのダンジョンでリュディを見つけられるポイントは全部で4つあり、手前から順番にボスと遭遇する危険は上昇していく。
ハズレの部屋にはもちろんモンスターがいるので、一番奥のポイントになった場合は最低3回の戦闘が発生してしまう。
しかも戦闘になる分、時間も消費するので、ここからは本当にタイムアタックの気持ちになってしまうのだ。
「次は左に」
俺は最初のポイントである小部屋に向かって最短のコースで向かったが、残念ながらそこにはリュディはおらず、代わりに『バフォムズ』というヤギのような頭をした悪魔型のモンスターがそこには居た。
見ての通り、序盤に出てくるような強さの敵じゃない。
だがこのダンジョンでは弱い部類であり、クリアするためには最低限の敵でさえあるのだ。
そしてそれは俺の実戦―――初陣の相手でもある。
「先輩、ここは俺にやらせてください」
「うむ、フォローはするから、思い切ってやれ」
「はい!」
俺が鞘から抜いた残月に魔力を込め始めると、バフォムズは俺を敵と認識したのか俺に向かって中級の火炎魔法を放ってきた。
すかさず水のエンチャントを施したストールの右側、第三の手を展開し、熱風から身を守る。一方で左側、第四の手は力を溜めバフォムズを殴りつけ体勢を崩させたものの、あまりダメージとして効いている様子は無い。
だが、ストールに相手の注意を引き付けられればそれで良かった。
魔力を込め終えた残月で、俺は胴薙ぎにバフォムズを切りつけた。
「
俺は訓練として常態的に身体強化を自身に施している。ゆえに日常の動作は、うっかり物を壊したりしないよう、実は非常に気を付けているのだ。
さしずめ大昔のアニメであった
さらにスキル『心眼』の効果であるクリティカル率増加の影響か、切るべきラインと言うべきものが俺には見えている。
その全力を解き放った結果は―――。
「瀧音、お前……」
「ま、特訓の成果ってところですかね」
刀をチャキンという心地良い音と共に鞘に納めると、バフォムズの身体はズレ落ち、魔素に代わった。
圧勝ではあるが、喜んだり気を抜いたりしている暇はない。
祈るように歩みを進めるしかないのだ。
「次の部屋には居てくれよ、リュディ……」
▼
2つ目の部屋も空振りに終わり、俺たちはそこで一戸建て住宅くらい大きなカエルの化け物と戦った。カエルは苦戦というほどではないが、体表の粘液が鬱陶しかった。
そして次の3つ目の部屋では5体のキラーエイプという棍棒を持った猿型モンスターが集団で襲い掛かってきた。
「ガァァァァァッ!」
「ちぃっ!」
「先輩!」
先輩はそのうちの2匹をうけおい、左右から猛烈な勢いで迫り来る棍棒を薙刀で受け流すが、俺が抑えきれなかった3体目が彼女に襲い掛かる。
「案ずるな! この程度の敵にやられるものか!」
「クソがぁっ!」
俺は目の前のキラーエイプを唐竹割にすると、その後ろにいた残りの1体をフルパワーの第三の手、第四の手で挟み込むように殴りつける。かち合わせたこぶしの間で、キラーエイプは体液をまき散らし魔素に変わっていった。
先輩の方を見てみると、3体の魔物をまるで寄せ付けず、あたかも舞でも踊るかのように切りつけ、受け流し、両断していく。
現状でも学園ダンジョンの中層を軽々と突破できるヒロインである。
相手が複数体だと苦戦するかと思った俺が愚かだった。今までの稽古では俺のレベルに合わせてくれていただけなのだ。
さすが、水守雪音だ。
「すみません、先輩。押さえつけておくつもりだったのですが……さすがですね」
「かまわん、むしろこのレベルの敵を相手に立ち回れるお前の方が驚きだ。学園ダンジョンでも50層あたりの強さはあるだろうに」
「先輩と、クラリスさんのおかげですね」
前世とかだと『剣道なんて
相手との間合いを測り、打ち込む隙、打ち込んだ後の隙を最小限にし、相手より少しだけ早く剣を届かせればいい。
アニメでよくあるような、10m手前からダッシュして、刃物だというのに叩きつけて、また10m離れて、みたいな戦いは、俺からしたらバカのやることだと思う。
少なくとも、雪音先輩やクラリスさんとの模擬戦から俺はそう学んだ。
「いや、それでも実践を重ねるごとに剣筋の勢いが増している。きっとお前は私などすぐに超えていくだろう」
「水守雪音を? 俺が? バカ言っちゃいけませんよ。それより次へ行きましょう」
「……そうだな」
俺たちは猿の部屋を出て、洋館の階段を上がり二階へと足を踏み入れた。
水守雪音はところどころで自分を卑下するような発言をする。
彼女の姉―――水守鈴音はゲーム開始前、つまり俺と出会う以前に亡くなっているということはフレーバーテキストか何かで読んだ。
この、今の俺でも及ばない雪音先輩が、鈴音さんに勝てず、コンプレックスになっていることも知識として持っている。
ゲームだと、あるダンジョンを水守雪音と共にクリアすると、彼女の覚醒イベントが発生し、主人公と行動を共にすることが出来るようになる。
あるいは、俺も早くそうするべきなのかもしれない。
だけど人には、簡単に立ち入っちゃいけない領域というものがあるのだ。
聖女が自らの使命に触れられたくないように、式部卿が自らの国の業を苦々しく思っているように。
―――俺が、