マジカル★エクスプローラー ちょいゲス風味 作:名無しのエロゲユーザー
知らない人も多いと思うが、“家賃”というのは原則として前払いが基本だ。
実質的には毬乃さんが経営しているものの、名目上として俺はマンションオーナーであり、家賃収入は俺の口座に入ってくることになる。
ここで問題となるのは、家賃収入があるという事は、本来であれば支出も発生するという事である。「何を当たり前のことを」と思うかもしれないが、不労所得を目論んでアパート経営に乗り出すも、そういった支出が積もり積もって、結局は頓挫するという人が意外にも多いことはあまり知られていない。
そして俺は支出をしているか。
答えは否だ。なぜなら毬乃さんが払っているから。
言い訳はある。トレーフル皇国のせいだ。
トレーフル皇国の皇帝でクソがつくほど親バカの彼は、リュディの警護・保護のためとして1フロア全てトレーフルの関係者で埋めるという暴挙を行った。これについては俺としても納得しているが、同時に新規入居者の審査が地球上で一番厳しくなり、新規をほいほいと入居させられない状況、つまりただちに収入が見込めないという状況になってしまったのだ。
その補填として、1フロア分の家賃の他に国防機密費から一定の金額が毬乃さんに支払われている。
そしてあのマンションの維持管理費は毬乃さんに賄われている。
おわかりいただけただろうか。
つまり俺は1フロア分の家賃収入が手つかずで毎月入ってくることになったのだ。
そして冒頭に言った通り、家賃は前払いが基本。
今日は3月31日。4月分の家賃の入金日である。
もうわかったね?
「ということでさ、リュディ。どこか出かけないか?」
俺はソファーに腰かけて朝食後の一杯を楽しんでいたリュディに声をかけた。
わけのわからないくらいお金が手に入ったので心と財布の余裕が出来たのと、想定よりも早く心眼スキルを得ることが出来たので、純粋に時間が出来たのである。
「『ということで』の意味がよくわからないけど、今日のトレーニングはいいの? 私は良いけど」
「今日は休みにするよ。どこか行きたいところはある?」
「そうねぇ……観光という気分でも無いし、遠出をするのも気が引けるし……」
「俺もこの辺を案内出来るほど詳しくはないんだよなぁ……」
スマホをポチポチして候補を探すも、ぴんと来るようなところはない。
二人して「ああでもない、こうでもない」と言っていると、クラリスさんから「それでは百貨店にでもいかれてはどうでしょうか」と提案があった。
確かに、それが無難と言えば無難か。
「そうですね、そうしましょうか」
「幸助がいいならいいわよ」
「では、準備を致します。リュディヴィーヌ様」
「準備できたら声をかけるわ、幸助」
「了解、リュディ」
彼女たちは部屋へ引っ込んだ。
この数日、生活を共にしているが、今のところ家の内外で事件のようなものは起きていない。
邪神教徒が襲撃してくることも無かったし、着替えているところやトイレに突撃したりされたりすることも無かった。
実に平和だ。
そもそも今更、女の裸がどうだって話はある。前世ではもう飽きるほど見てきたのだ。女の家に転がり込んだこともあったし、転がり込まれたこともある。
何ならヒモのようなことをしていた時期だってある。
共同生活でされたら嬉しいこと、嫌なことなんてわかっているのだ。
はつみさんの件は、その、ちょっとした事故だったという事で……。
エルフという種族は美しさの平均値がめちゃくちゃ高いので、こちらが紳士的に対応している限り、彼女たちは美しい笑顔で愛敬を振りまいてくれる。この部分は前世に無かった楽しみだ。
リュディはゲームのパッケージにもデザインされるレベルで人気の高いキャラである。おそらく薄い本も一番描かれていたであろう。
人気の一つめと二つめは強さと可愛さだが、「加入が早く、離脱期間も少なかった」ことも人気の一つであろう。離脱期間が少ないという事は、手間暇かけて育成しても無駄にならないという事である。
これはRPGに登場するキャラクターとしては大きなアドバンテージだ。
最適な育成プランはわかっている。前世でこのゲームを俺に紹介した
そんなに詳しくなって何の役に立つのかと思ったこともあるが、まさか死後に役立つなんて思いもしなかった。
俺としては、リュディにはこれからずっと共にいて欲しい(ダンジョン的な意味で)と思っているので、ゲーム開始前に先んじて出会うことが出来たのは本当に僥倖と言わざるを得ない。
さて、そろそろ俺も出かける準備をするか。と言ってもストールを外してアイテムに入れ、ロンTの上からジャケットを羽織るだけだ。
気候が温暖なので非常に過ごしやすい。
このツクヨミ学園がある国――和国――は、設定が日本を元にしているだけあって、四季豊かな国である。そろそろ桜も咲き始めているとニュースでやっていた。
そう言えば入学式イベントだと背景の桜が満開だったはずなので、そろそろ気温も大きく上がってくるのだろう。
氷のエンチャントが捗るな。
「幸助、準備は出来た?」
声をかけてくる彼女はニット帽を深くかぶり、目立つ金髪と耳を上手く隠している。
これなら一応の変装になるだろう。
「リュディか。おう、いつでもいいぞ」
「あっ、ちょっと。ジャケットの襟が折れてる」
「ん? どこ?」
「もう、ちょっと後ろ向いて」
自分で見えないところが折れていたようで、リュディに直してもらう。
リュディは手を伸ばして襟をちょいちょいと整える。
「これでいいわ。ストール無しだと何か違和感があるわね」
「部屋の中だとあんまり付けてないじゃないか」
「今日はつけないの?」
「付けると目立つし、彼女より目立つ彼氏とか変じゃない?」
「か、かかかか、彼氏って! そんな関係じゃないわ!」
顔を真っ赤にして否定するリュディだが、俺は「そもそも同棲しているのはそれ以上の関係なのでは?」という言葉を飲み込んで、バシバシと背中を叩くリュディを受けいれた。
「痛てぇ」
「バカバカ! バカなこと言ってないで、早くいくわよ! クラリス! 車! 早く!」
「は、はい、リュディヴィーヌ様!」
ワンチャンこのままいけたりしないかなぁと思ったりしていたが、この反応を見ている限りまだ早かったようだ。
俺は2人の形の良い尻を眺めながら駐車場までの道程を着いていった。
大人しくクラリスさんの運転する車に乗ったはいいものの、リュディはまだ顔を赤くしてあまり口をきいてくれなくない。
よしよし、そのまま異性として意識してくれ。
▼
窓の外をビル群が駆け抜けていく。
道行く人は様々な髪や肌の色をした人だけではなく、耳の長い種族、獣の耳を頭の上に付けた種族など、ファンタジーにまみれた光景が広がっている。
俺が瀧音幸助として第二の生を授かって約10日が経過した。
何の因果かわからないが、それを当たり前に受け入れつつある自分に驚き、そして悩む。
差し当たっては生きる指針を立てなければならない。
1つは、俺が前世で達成しえなかった『100%クリア』を、この生で達成することだ。
ここで少し『マジカル★エクスプローラー』というゲームの話をしよう。
このゲームには様々なエンディングがあり、【
加えてどのヒロインをメインに据えるかでストーリーが変わる。もちろんエンディングもさらに多様になる。
例えばだがリュディルートのハッピーエンドの一つは、復活した邪神から世界の危機を救い、トレーフル皇国で女王となったリュディの王配として余生を過ごすことである。
俺は先日のリュディ襲撃に遭遇した時、真っ先にそのことが頭によぎった。
リュディは基本的にメインヒロインであり、バッドエンドに持っていく方が難しいレベルの女の子である。
だが、マジエクを制作した会社は意地が悪いらしく、中には【基本的にはバッドエンド】になる女の子が数人いるのだ。
俺の目標である【100%クリア】は、それらすべての女の子を揃えた状態で、裏ボスに挑むことである。
残念ながらゲームでは挑む前に現実の方の俺が力尽きてしまったが、やり方は覚えている。難しいが何とかするしかあるまい。
ところで、ゲームには様々な楽しみ方がある。縛りプレイなどはその一つだろう。
マジエクでは『最速クリア』が競われることが多かった……らしい。らしい、と言うのは、
で、問題は何かと言うと、【100%クリア】は【100ターン以内クリア】でもあるということなのだ。
どういうことかと言うと、先般も述べた通りこのゲームでの1年は約100ターンだ。1年経つとどうなるか。
なんと
それはそうだ。考えてみたら当たり前の話だ。
しかし入学時点での3年生で、かつ基本的にはバッドエンドが準備されているヒロインというのがなんと2人もいる。3年生ではないが、1年以内に爆発する予定のヒロインもいる。
つまり1学期に1人というペースでそういった高難易度のヒロインを攻略しなければならないのだ。
なんという縛りプレイか。
もちろん彼女らを無視してこの瀧音幸助という人生を謳歌したって良い。むしろその方が良い。
死んだら終わりなのだ、普通は。
この
「なにニヤニヤしているの」
「ニコニコと言ってくれ」
そして生きる指針の2つ目。
“○○君はね、人を好きになったことが無いんだよ。根本的に他人に興味がない。だから―――人生で一人くらい、人を好きになってみてもいいんじゃない?”
匿名で投稿してるけど、たぶん何人かの人には中身バレてると思う