『ありふれた職業で世界最強 ―空間を越える黄金の精神―』   作:武藤 桜

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第八話 樹海の守備隊ーー成長と旅立ち

ライセン峡谷を抜けたハジメたちは、シアとその家族を伴い、樹海へと向かっていた。

 

鬱蒼と茂る木々の間を進んでいると、突然、周囲の茂みから武装した亜人族たちが姿を現した。

 

「止まれ! 何者だ!」

 

弓や槍を構えた守備隊が、ハジメたちを取り囲む。

 

シアの耳がぴくりと動いた。

 

「樹海の守備隊……!」

 

「シア・ハウリアか。追放されたお前が、何故ここへ戻ってきた?」

 

守備隊の男が険しい視線を向ける。

 

ハジメは一歩前に出た。

 

「俺たちは樹海の迷宮を探している。ここにいる兎人族は、帝国の亜人族狩りから逃れてきた連中だ。事情を説明させてくれ」

 

守備隊は警戒を解かなかったが、やがて一行は長老のもとへ案内された。

 

長老はハジメたちの話を聞き、しばらく考え込んだ後、静かに口を開く。

 

「迷宮の入り口へ続く霧の道が開くまで、十日ほどかかる。その間、滞在を許そう」

 

「ありがとうございます」

 

ハジメは短く頭を下げた。

 

だが、話がまとまった直後だった。

 

「待て! 何故、追放された兎人どもを受け入れなければならん!」

 

熊人族の男が声を荒らげた。

 

「こいつらは一族の恥だ! ましてや、外の人間まで連れてきて……!」

 

男はハジメへ詰め寄り、拳を振り上げた。

 

「おい、やめろ!」

 

シアが叫ぶ。

 

しかし、男の拳が届くより早く――

 

ゴツン!

 

ハジメのスタンドが、男の頭に容赦なく拳骨を落とした。

 

「ぐおっ!?」

 

男はその場から吹き飛び、地面を転がった。

 

周囲が一瞬、静まり返る。

 

ハジメは拳を下ろし、淡々と言った。

 

「話し合いの場でいきなり殴りかかる奴に、遠慮する理由はねえだろ」

 

「な、何をする!」

 

熊人族の男が立ち上がろうとするが、ハジメは冷たい視線を向ける。

 

「もう一発欲しいか?」

 

男は言葉を詰まらせた。

 

長老は深く息を吐き、騒ぎを収めるよう守備隊へ指示を出した。

 

十日間の特訓

滞在が許可された後、シアとその家族はハジメに頭を下げた。

 

「ハジメさん。お願いがあります」

 

シアが真剣な眼差しで言う。

 

「私たちに、戦い方を教えてください!」

 

カムやパルたちも続いた。

 

「もう誰かに守られるだけではいたくない」

「自分たちの家族を、自分たちで守れるようになりたいんです」

 

ハジメは彼らの顔を見回した。

 

必死だった。恐怖に怯えるだけではなく、自分たちの力で未来を変えようとしている。

 

「……分かった」

 

ハジメは頷いた。

 

「ただし、甘い訓練にはしねえぞ。十日間、死ぬ気でついてこい」

 

「はい!」

 

ハジメはユエへ視線を向けた。

 

「ユエ。シアのスタンドの使い方を教えてやってくれ」

 

「分かった」

 

ユエはシアを連れ、スタンド能力の基礎から教え始めた。

 

一方、ハジメは兎人族たちを鍛えるため、原作同様の容赦ない訓練を開始した。

 

まずは体力作り。樹海を走り込み、重い荷物を背負って移動する。次に、魔物を相手にした実戦訓練。逃げるだけではなく、仲間と連携し、相手の動きを見極めて戦うことを徹底させた。

 

「足を止めるな! 相手の動きを見ろ!」

 

「うおおおっ!」

 

「一人で突っ込むな! 仲間の位置を確認しろ!」

 

「はいっ!」

 

ハジメの指導は厳しかった。

 

だが、無意味な苦痛を与えるためのものではない。自分たちの命を守り、仲間を守るために必要な技術を叩き込んでいく。

 

シアもユエの指導のもと、スタンド能力の扱いを磨いていった。

 

「力を出すだけじゃ駄目。必要な時に、必要な動きだけをさせる」

 

「はい!」

 

シアは何度も失敗しながら、スタンドの動きを少しずつ制御できるようになっていった。

 

十日間。

 

兎人族たちは、疲れ果てても立ち上がり、何度も訓練を繰り返した。

 

そして、霧の道が開く頃には――彼らの戦い方は、以前とは別物になっていた。

 

兎人族の反撃

霧の道が開く直前、シアたちを追放した熊人族の一団が、報復のために現れた。

 

「追放された兎どもが、まだこの樹海にいるとはな!」

 

熊人族たちは武器を構え、兎人族へ襲いかかる。

 

だが、今度のシアたちは違った。

 

「みんな、訓練通りに!」

 

シアの声に、兎人族たちは一斉に動く。

 

パルたちは連携して敵の進路を塞ぎ、カムたちは相手の攻撃を誘って反撃する。シアもスタンドを発現させ、熊人族の攻撃を受け止めた。

 

「これ以上、家族を傷つけさせない!」

 

シアのスタンドが拳を振るう。

 

熊人族の男たちは、鍛え上げられた兎人族の連携に押されていった。

 

一方的な展開だった。

 

熊人族の一団は壊滅状態に追い込まれ、戦意を失って撤退する。

 

ハジメはその様子を見届け、静かに頷いた。

 

「……よくやったな」

 

シアたちは息を切らしながらも、確かな手応えを感じていた。

 

「ハジメさん、ユエさん……ありがとうございます!」

 

「礼はいい。これからも、その力を誰かを守るために使え」

 

ハジメはそう言って、彼らを見渡した。

 

樹海の迷宮へ

霧の道が開き、ハジメたちは巨大な大樹の入り口へと辿り着いた。

 

大樹の根元には、古びた石碑が置かれていた。

 

ハジメが刻まれた文字を読み取る。

 

「……この迷宮は、最低でも四つの迷宮攻略の証と、再生に関する神代魔法を必要とする、か」

 

ユエが頷く。

 

「つまり、今すぐ攻略することはできない」

 

「そういうことだな」

 

ハジメは手記を確認した。

 

「まずは、ライセン峡谷の迷宮を攻略する。必要な証を集めてから、ここへ戻ってくる」

 

シアは大樹を見上げた。

 

自分たちの故郷。けれど、そこに入るためには、まだ越えなければならない試練がある。

 

その時、カムがシアの肩に手を置いた。

 

「シア。お前はハジメさんたちについていきなさい」

 

「え……?」

 

「お前には、未来を切り開く力がある。ここで立ち止まるより、外の世界を見てこい」

 

パルたちも頷く。

 

「俺たちは、もう自分たちで家族を守れる」

「シアはシアの道を進め」

 

シアは目を潤ませ、家族を見つめた。

 

「……分かった。あたし、ハジメさんたちと一緒に行く!」

 

ハジメは肩をすくめる。

 

「決まりだな。だが、旅は楽じゃねえぞ」

 

「望むところです!」

 

ユエがシアの隣に立つ。

 

「一緒に行こう」

 

「はい!」

 

こうしてシアは、家族に背中を押され、ハジメとユエの旅に同行することになった。

 

樹海の迷宮を攻略するため、そして神の支配に抗うため――

 

一行は、次なる迷宮であるライセン峡谷へと向かうのだった。

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