備忘録   作:粟生葉

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2026年2月27日

風呂に入る。

 

僕(オレ)は絶対に消えてはいけない。

怒られてしまう。

 

怒られるだけではない、人生の終了をも意味している。

ここで勝手に消えて、それでも僕(オレ)は許されるとでも思っているのだろうか。

 

それともこの感情も自己満足なのだろうか。

 

…………

 

水面に赤が溶けている。まずい怒られる、急いで浴槽から出ないと。

 

ジャボン。

 

……また血か。

 

本当に嫌になる。もう何ヶ月も経つが、ほぼ毎日のように鼻血が出る。

風呂に入ると血流が良くなるせいで、かなりの確率で決壊してしまう。

 

僕(オレ)は呆然として、鼻から地面のタイルに滴り落ちる赤を見る。

 

紅い。

 

朱い。

 

赫い。

 

赤にも色々な感じが存在するが、血を表す赤はなんなのだろうか。

自分の語彙に絶望する。

 

……特に理由はないが、片手で赤を受け止めてみた。

お、直接タイルに落ちるのと違って飛び散らないな。

窪んだ掌に、赤黒い液体が溜まっていく。

 

飲もう。

 

とりあえず、まずは舌で舐めてみる。

 

――何の味も感じない。

血に味覚に作用するような物質は入っていないのか?

 

まあいい、飲むか。

手のひらの1mLにも満たない赤黒いものに、口を、つけ、流し込む。

 

――やはり味は感じないか。

そう思い、飲み込んだ。

 

「うっ……あぇ……」

 

なにこれ……!?

血は鼻から出ているはずなのに、嗅覚が鉄の匂いに満たされて吐き気がする。

 

「うぇぁぁっ……」

 

息苦しいのに、気色悪いのに、冷静にこの状況を俯瞰してみている自分がいる。

 

怖い。

 

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

時間経過で少しは落ち着いてきた。

滴る頻度が下がっている。

そう思っていると、赤黒い塊が手にあった。

 

どうやら、血小板の努力の成果を無意識にもぎ取ったらしい。

 

なら食べるか。

 

わんぱく小僧がハナクソほじって食べるのとおなじテンションとなった僕(オレ)は、そのまま塊を口に入れた。

 

――なんだろう、形容しがたい味だ。

飲み込むと、不快感が食堂を通り、腹に落ちていった。

 

 

はあ、胃に意識を向けてしまった。

胃は、満腹も空腹も感じなくなっているのに“いい子”としてパクパクと夕食を食べきった(詰め込んだ)脳に、不満を示していた。

よく噛まれていないんだ、これではうまく消化もされないだろう。

 

……吐いてはいけない。怒られる。

 

 

◆◆◆

 

嗚呼、これは何が狂っているのだ?

 

衛生観念か?

 

好奇心か?

 

育成環境か?

 

厭、全てはこの自分の理解すら及ばない脳髄がおかしい。

 

死んだお兄ちゃん(お姉ちゃん)と逆ならよかったのかな。




再投稿です。
続けてたら半年も経たずにこんな味慣れちゃったね
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