備忘録 作:多形
「あ〜お腹すいた〜〜」
なんてことない帰り道。まだ家まで1キロほど歩く必要があるというのに、多形の胃はすでに限界を迎えていた。
「もう無理、マジで胃に穴開く」
「元から食道が空いてるから大丈夫やで……え、ふらついてない?」
「胃液くらいは出るかもね」
「大丈夫か???」
そんなことを言いながらもお互いスタスタと歩く。多形が早く食事にありつけるようにというのもあるのかもしれないが、多形は何度か喜多御の前で空腹で立ってられなくなったことがあった。
「にしてもこんなにお腹空くのは久しぶりだな。バスで立たされてたらとっくに倒れてたよ」
「まじかよ立たせとけばよかった」
喜多御の言葉に多形は苦笑いする。
しかし、それが本心ではないと確信しているからこその笑みだった。
「ここで俺が倒れたら、俺のことは構わず先に行け……!(テンプレ)」
「了解」
軽口を叩き合っていると、多形はふと道端の標識に目が止まった。直後、今度は車道の方を見た。
「ここってたぶん車道と歩道の段差が高すぎて自転車通行可能歩道なんだね、毎日通ってるのに初めて気づいたよ」
「へぇ」
反応はあまり芳しくない。多形は少し学んだ。
瞬間、とてつもなく強い良い匂いが彼らを襲った。
多形の反応は早かった。認識した直後には鼻を塞いでいた。
「なんだよっ……これ……」
「結構大丈夫か多形」
「なんとか……そろそろ手離してもいけるか?マダジャンッ(断末魔)」
そんなことを言っていると、もう最後の信号待ちになっていた。
「利敵していい?」
隣で喜多御は少しいたずらっぽく笑って言う。多形はそのお茶目な面は女子にもウケることを知っていた。
「何?」
「そこにマ○クのデリバリーのバイクいるよ」
見れば確かに今多形たちが待っている信号を共に待つバイクがいる。しかし、先ほど喰らった良い匂いのアサシンに比べれば何でもない。
「なんだ、ただの鉄屑じゃん」
そう言い捨てた時、多形はふとちょうど今日闇堕ちした将棋丸を思い出した。
「利敵したってことは利味方してくれるよね?」
「えーそんな矢魔昌みたいな……」
そう言いつつも喜多御は真面目に考えてくれている。
「じゃあ俺が帰ったあと料理作って多形んち持ってくってのは?」
「エッき た お の て り ょ う り?????」
混線し破壊される多形の脳。しかし0.00001秒後には、話題を逸らしてダメージを回避すると言う決断を無情にも出していた。
「そういえば今日の――――」
これはなんてことない、ただの高校生の日常である。
『やっぱりミステリアス神格系二面性美少女(♂)×激重信者諦念幼馴染はどんな会話しててもコンテンツ力が高くてやりがいがあるしごとだねぇ^ ^』