カウンセリング室から出た頃には太陽は随分と高い位置までのぼっていた。とはいえ時計を見れば正午までは時間があり、授業も中途半端な時間だ。
「昼休みまで、適当に時間潰しちゃおうかなあ」
ふらりふらりと外を歩いていると、ばったりアーサーと出くわした。
「ごきげんよう、アーサー。彼とは出会えた?」
そう言い、しゃがみこむ。アーサーはぷいと目をそらした。
〈会ったのやもしれず、会わなかったのやもしれん〉
「……もしかしなくとも、誰が彼か分からなかったんでしょう」
〈うぎぎ〉
予想的中、まあそんなことだろうと思ってはいた。
「艶のある黒髪で、アメジストみたいな色の目をしていて」
〈説明はいい、連れて行け〉
「流石に教室に猫を連れ込むのは…どうなんだろ」
猫を連れてきてはいけない、なんて校則はなかったとは思う。とはいえ、まず普通連れてこないのを前提に校則は書かれているだろうし…いや、そもそも学業に関わりのないものは基本持ってきてはいけないのだから、きっとアーサーは持ってきちゃいけないものだ。
…取り敢えず、アーサーがここにいるのは、彼が勝手についてきたから。私のせいじゃない。私はアーサーを持ってきてないし、連れてきてもない。そういうことにしておこう。
「ついてこられたら、まるで私が猫を連れてきたとかいうあらぬ誤解を生みそうだわー」
〈誤解も何も事実だぞ〉
「ゴカイダヨー、ワタシハワルクナイヨー」
ホントダヨーシンジテヨーと続けるも、アーサーは呆れたような顔をして、全く信じてはくれなかった。
彼のいそうな場所にいけばいいのではないかとそこで思い、どこにいそうかを考える。
「放課後の生徒会室には、結構いることがあるみたい」
生徒会室で生徒会メンバーを連想してはカレンさんを思い出し、また気分をずんと重くした。
ああ、もう平気なつもりだったのにな。キスか……キスかあ。
ぎゅうと胸を締め付けるような、その上捻られ搾り取られるくらいの苦しさに、息が上手くできない。
もやもやと、嫌だという気持ちは胸の内の黒い霧を濃くしていくけれど、同時に、そんな思いを抱く資格など自分にはないと宙に放り投げられたような気持ちがして、悲しくなる。
〈どうした、突然へらへら笑いだして〉
アーサーのその言葉に、その目は節穴かと叫びたくなった。殴ってやろうかと思った。
こんな心情で、どうしてと笑えるいうのか。からかっているのか。そうして怒る己を極力外に出さぬよう、諌め鎮めて問いかける。
「そんな顔にみえる?」
自分でも驚くくらい、その一言を発するのに難儀した。声が半分掠れてしまっていた。きっと言葉も震えていたことだろう、演劇部員として情けない。まるで入部してすぐの頃みたいだ。
〈ああ、そう見えた。その問いをきくに、違っていたのだな。すまん〉
「『アーサー』が他人の気持ちに鈍感なのは、よくわかっているよ」
アーサーはそれをきいて、バツが悪そうに唸った。私も唸る。鈍感なのは前世から、これはお互いさまなのだ。
顔色ひとつにとったって、言の葉ひとつにしたって、その心の内は分からない。人は、仮面をつけてしまえる。私には、その人が素顔か仮面かなんてわからない。仮面の下の素顔の想像なんて、尚更。
仮面をするということは、素顔を隠すほかに、仮面そのものを相手に見せたいということでもある。
ならば私は、仮面でもいい。そうして、精々、何の疑いもなく馬鹿正直に信じてきたつもり。裏切られるときは裏切られるのだもの、見えているものが素顔か仮面かなんて、どうせ私には分からないのだもの。仕方ないのだもの。そう、仕方がないのだ。
……正直なところ、諦めて泣き寝入りしているのだ、私は。その人が私の目に見えた通りではない『素顔』を持っているとしたら、それが私に牙を向けるものだとしたら。それがどうしようもなく怖くて、それでも見たままを信じずにはいられない。どうせ後で泣くんだわなんて思いながら、期待せずにはいられない。信じながらも、疑っていて、心から許せる誰かを探している。
〈酷い顔だな〉
「……貴方もね」
アーサーを抱き抱え、頬ずりして。結局、私には私しかいないのだなと自嘲した。
×
廊下で立ち止まり、私はなんとなく掲示板に貼られた例のテロリストさんの指名手配ポスターを眺めていた。出で立ちはどうにもおかしな趣味としか思えないのだが、このテロリストは自分を道化師か何かと勘違いしているのだろうか。それとも敢えて、なのか。
その仮面のつくりは一見してそれなりに手が込んでいると分かるくらいには器用なもので、演劇部で衣装から小道具一般まで作ることもある身としては、後頭部側がどういう仕組みになっているのか少し気になったりもした。
授業終了を告げる鐘が鳴るのをきいて、ポスターから視線を外し教室に向かった。お昼ご飯の時間だ。足はスキップを踏んでいた。
意気揚々と教室に入る。授業が終わってすぐだからか、まだ教室に人は多い。いつもとは違い、どこか静かで、張りつめた空気に首を傾げる。
そんな疑問も、窓際にアナの姿をみつけたことでどこかへ消えてしまう。アナの隣には、カレンさんがいて一言二言話し終わったというようなところだった。
「やっほー、アナ!」
「あら、来たのエレイン。今日は休みかと思ってたわ。もしかしてえびアボカドサンド持ってきてくれた?」
あんまりに食べ物本位なアナの言い方に苦笑する。それじゃあ私が、アナにえびアボカドサンドを渡すためだけに学校に来たみたいだろう。
私はアナに学校側の指示でカウンセリングを受けていたがために授業に出ていなかったことを告げた。
「あと、サンドイッチは具材が足りなかったから、また今度ね」
それから隣のカレンさんに、ぺこりと頭を下げた。昨日の件、アナとは電話で話したからいいとして、彼女には昼食タイムを慌ただしくさせてしまったことを、ここで謝っておきたかった。
「カレンさんも、こんにちは。昨日はお騒がせしちゃって、ごめんね」
「いえ、気にしないで。…大丈夫?」
こちらを心配する声に、考えることなく「大丈夫」と返す。その優しい言葉が嬉しいやら、苦しいやらで困る。
その場のアナの提案で、今日も三人で一緒にお昼を食べることとなった。昨日の件で警戒しているのか、窓から遠い席にと手を引かれ思わず苦笑する。周りのクラスメイト達も、私が窓際から離れると目に見えてほっとした顔をしていた。心配されているんだろう、的外れな気が否めないけれど。
ランチボックスを広げる。今日はキッシュのタルトだ。パイ生地でもよかったが、パイシートは丁度切らしていたし、一からパイ生地を作るには時間が足りなかったのだった。
ベーコンしめじにほうれん草、ここにチーズとクリームソースを加えた組み合わせの美味しさは異様だと思う。ああ、幸せだ。惜しむらくは、学校では温めなおせないことか。
同じ味ばかりでは飽きるだろうとミートソース味も作っておいたのは正解だった。玉ねぎとトマトとひき肉って、どうしてこんなに合うんだろう。下味の塩胡椒がいい仕事をしていた。
一心に食べていた私は、ふと目線の先――昨日私が昼食時座っていたあたりにスザク君がいるのに気付いた。観察がてら暫く見ていると、スザク君はまるで私の視線に気付いたように此方に目を向ける。お互い、ばちりと目があった。
私がにっこり笑顔を浮かべて手を振ると、スザク君は少し困ったような笑顔で、周りからは見えないくらいに小さく手を振り返してくれた。まるで目立ちたくないみたいだ、恥ずかしがり屋さんだったのだろうか。今朝は急に話しかけてきて有無を言わさず手伝ってくれた程の積極性をみせてくれたのに。
彼なら私と違って転校初日から友人の10人や20人くらい作りそうだ、なんてことも思うのだけれど。彼の周りには、彼に話しかけようとする人すらいないようだった。
私が手を振っていたのに気付いたらしいアナは、私の視線の先を確認して顔を顰めた。
「エレイン、迂闊な真似はやめたほうがいいわ」
「え?」
「今日きた転校生よ、あれ。気になることでもあった?」
私が今朝、彼に本の荷運びを手伝ってもらったことを告げると、アナは呆れと憂いの混ざった溜息を吐いた。
「彼、殿下殺害の容疑者にあがっていた名誉ブリタニア人よ」
「そんな事件あったっけ」
アナに残念なものを見るような目を向けられた。いやはや、世間知らずで申し訳ありませんね。
しかし、名誉ブリタニア人ときたか。彼が日本に詳しいのに、常にどこか複雑そうだったのはこの辺りの事情が関わっていたのだろう。
思考が脱線して、あさっての銀河へ向かう私を、アナが引き留め事件について説明しはじめる。「ゼロ」という単語が出てきて、そこでようやく例のテロリストの起こした事件の一つかと合点がいった。「ゼロ」がその事件の犯人だと名乗り出たことも思い出す。
「別に、誤認逮捕だったんでしょ。犯人はそのテロリストなんだから」
何が問題なの、と首を傾げて訊くと、アナは眉間に深い皺を寄せ、口をぐっと結び閉ざしてしまった。
アナが口にするのを葛藤している言葉がどんなものなのか、私が察することなんてできるわけもなく。さっさと諦めて、優しいカレンさんが何か教えてくれないかとそちらを見るが、彼女は彼女で何か考え事をしているらしく反応すらしてもらえなかった。つらい。
と、アナがようやく話してくれた。話づらそうに、それでもきっぱりと。
何でも、彼は風当たりが強い立場だから、あまり関わると巻き込まれて痛い目に合うかもしれないし、相手にも迷惑がかかるかもしれない、とかなんとか。
「ふうん。面倒くさいね」
「あんたって子は、何というか、もう、…まあいいわ。とにかく、世の中はエレインみたいな奴ばっかじゃないの。面倒臭いのはたくさんいるの。そういう人とのトラブルにあいたくなかったら、関わらないのが一番ね」
「……」
「正直私も怖いのよ。彼、何をするか分からないのだもの」
あんまりな言い分に、私は誰に向かってでもなく肩を竦めた。
“何をするか分からない”。確かにその感覚は、私も似通ったものを覚えたことがある。ただその感覚の対象は、他でもない『自分以外のすべての人間』だったけれど。
×
放課後、アーサーは生徒会室に行ってみるらしかった。
私はこれから部活。その後、兄に送りつける紅茶葉を買いに街に繰り出すつもりだ。
部室に行くと、次の公演作品は『スカーレット・ピンパーネル』に決まったことが 連絡用のホワイトボードに書かれていた。
スカーレット・ピンパーネル。フランス革命中、革命軍の手により無実の貴族がギロチンにかけられるのを、「スカーレット・ピンパーネル」なる正体不明の集団が手引きしてブリテン島に亡命させている、というところから始まる、愛に闘いになかなかお熱い物語だったか。最終的に下町に落ち延びていた皇太子を保護して国外逃亡を手引きする、とかなんとかだった気がする。部長が目を輝かせ魅力を語りながら、私に小説版を押し付けてきたのは記憶に新しい。
この作品、実は初出の小説版は禁書扱いされている。今現在、神聖ブリタニアがブリテン島を領土としていない発端とも原因ともいえるナポレオン絡みの題材なのがまずいのだろう。(そんなものをどうやって部長が入手したのかは謎だ。)
ただ、文学作品としての評価は高いし、ヒーロー的立ち位置にいるのは神聖ブリタニア人貴族だし、何より面白いものだから、ナポレオンを連想させるものを徹底的に排除し、史実は連想されぬよう架空の地名に全て置き換え手直しされた。それが演劇作品として国立劇場で公演され、大流行りしたのが半世紀ほど前。今では演劇作品として、メジャー…とはいかないまでも、それなりに有名どころな作品となっている。
部長の独断だな、と私はひとりごちた。
いつもなら、公演作品は部員と相談の一つや二つしてから決めるものなのだが、たまに発作を起こしたかのように、部長は独断で公演作品を決める。一度決めたら譲ってくれない、部員が折れるしかない。
この発作のようなものは、何か社会現象であったり、大きな事件があった時、それに煽られたように起こる。今回はきっと、あのテロリスト、ゼロの宣言があってのことだ。
テロリスト、革命軍、ギロチン。なんてきな臭いんだろう。はてさて、このタイミングでそのチョイス、部長は一体何を見ているのか。私には想像もつかない。
そうやって部長の部長らしい残念な行動力と自分勝手さに、やれやれと私が肩を落としていると、広報物作成兼小物係のストークス先輩がやってきた。
先輩が演劇部に入部したのは半年前のこと、何があったかは知らないが何かやらかして手芸部に居られなくなったのを部長が捕まえてきた、らしい。顔立ちは悪くないので、部員達はことあるごとに舞台へ引っ張り出そうとするのだが、彼は毎回拒み断り続け、今の所裏方しかしていない。趣味はレース編みだそうですよ、奥さん。
「アーキン、連絡をみたか? 部長がご乱心のようだ」
「あの人のアレはいつものことでしょう」
ストークス先輩は、「確かにそうなんだが」と苦笑いして、ホワイトボード用のマーカーを手に取ってコツコツとボードを叩いた。
「今回は、部長手づから台本に手を加えるそうで」
「……うわー」
楽しみなような、怖いような。さて、一体どんなスカーレット・ピンパーネルになってしまうのだろう。
「明日は、部長が台本改編に集中する故、『部室には来ないでくれ』とのことだ」
「了解です」
ああ、部長はいつも以上に気合いが入っているらしい。あまり過激な内容にならなければいいのだけれど。
ストークス先輩は、連絡ボードに 明日は部室入室禁止であることをキュッキュと書いてから、ふと思い出したように言った。
「僕はこの、スカーレット・ピンパーネルという作品は知らないが、部長が書いている『スカーレット・ピンパーネル』は確実に『スカーレット・ピンパーネル』じゃあない」
怖い話やめてください先輩。何ですかそれ、もしかしなくとも部長のせいで演劇部取り潰しもあり得るようなくらいの台本ですか? ナポレオンを絶賛でもしたんですか? 部長ならやりそうだから困る。このご時世この国でその名は割と禁句、名前を言ってはいけないあの人となりつつあるのに。
「……学園に公演認可頂けることを祈っておきます」
「この世に出ない方が世の為な気もする」
「……」
連絡ボードに、「部長自重」と切実な気持ちで書いておいた。
×
帰り際、街に行ってはみたものの結局買ってきたのは紅茶葉だけだった。
帰宅すると、庭の郵便ポストから、馴染みの白い封筒がひょっこり飛び出していた。取り出して差出人を確認すれば案の定、兄だった。夕食後にでも開封しよう。
玄関のドアを開ければ、すでにアーサーが帰ってきていたらしく、彼用の足拭きマットがぐしゃぐしゃにちらかされていた。…奴の猫用玄関塞いでやろうかしら。
さて、リビングでいつも通りくつろいでいるアーサーに、今日の学校侵入での収穫を問いかける。主に、ルルーシュ・ランペルージ氏への印象だとか、感想だとか。しかし、アーサーの返答は思わしくなかった。
「会えなかった?」
見ていないものについては話せない、というアーサーに、私は眉根を寄せる。
アーサーはお気に入りの爪研ぎを引っ張り出してきては、どこか澄ました態度で爪を丁寧に削りながら言った。
〈ああ。生徒会室だろう、いなかったぞ〉
……おかしいな。一時期サボっていたところ、最近は割と熱心に生徒会活動に参加しているというようなことを誰かが言っていたのだけれど。今日はたまたま居なかったのだろうか。
無駄足だったな、と嫌みたらしくたらたら今日のことを言うアーサーに、悪かったわねとその額を何気なくがしがし撫でる。どうやら彼にとって気持ちのいいツボだったらしく、不本意な快感に悔しそうに身体を捩り暴れるアーサーは、みていて愉快だった。
「今日はあいにく用事か何かだったのよ、きっと。
寮に妹さんと住んでるってきいたから、明日はそっちをあたってみたらいいかもね」
「さて」と、私は手を洗い、先ほどアーサーを撫でたことでまとわりついてしまった毛を丁寧に落とす。綺麗になったところで、気をとりなおして夕飯の支度をはじめた。
なかなか上手くできたトマトソースを堪能した夕食後、私は兄からきた手紙を開封した。
相変わらず何をやっているのかはわからない。仕事のことは一言も漏らさないあたり、根が真面目な兄らしい。
同室の同僚がモテて癪だとか、淹れたてのコーヒーを飲んで舌を火傷しただとか、とりとめのない日常的なことの報告を少ししたかと思えば、あとは私をひたすら可愛がり心配するような内容。いつも通りだ。
読み終えて早速に筆をとった。便箋はシンプルなデザインのもの。ワンポイントの黒猫が気に入っている。どこぞの猫とは違って、変な模様もついていないデフォルメされた可愛い猫だ。
さて、何を書こうか。最近の出来事で話題にできそうなことといえば、友人ができたことか。……スザク君にも私のことが友人と認識されているといいのだけれど。これで一方的にこっちが勘違いしていただけだったら、悲しいなあ。
好きな人については、書けるはずもない。兄に知られるのは、どうにも恥ずかしいし、報せたら兄がどんな行動に走るか分からない。第一、軍関係の施設に届くであろう手紙だ。兄に届くまでに誰が読んでいるか分からないのに、態々醜態を晒す必要もない。
結局、それ以上新たな話題は書くことなく、紅茶を一緒に送ることを書いて締めた。
ソファに身体を沈ませる。なんだか疲れてしまっているようだ。このところの慌ただしさが原因だろうか。
どうにも、落ち着かない。何かを予感している。――一体何を?
言葉にできない妙な不安感を洗い流すように、水をかぶるようにシャワーを浴びに行く。早く寝て、忘れてしまおう。目が覚めた時には、この不安が消えていることを願って。
そんなことを考えていた筈なのだが、布団に入った頃には全てが全て忘却の彼方で、不安感など一切なくて。消えたものはどこへいってしまったのか不思議に思いながらも、自分の図太さには感謝しながら穏やかに眠りについた。
(エレイン・アーキンの日記 7)
兄へ、アールグレイの紅茶葉付きで手紙を送った。もしかすると紅茶に手紙がついているのかもしれないけれど。喜ぶ兄が見えるようで、嬉しいような、照れ臭いような、調子に乗るなと小突きたいような。そんな気分だ。
スザク君への皆の態度は不思議でならないけれど、そういうものらしい。本当に不思議。
アナに「私たちに危害を加える気があるか、スザク君に聞いてきてあげようか」なんて言ったら叩かれた。その質問がスザク君に失礼だったというのはわかるけれど、多分アナが私を叩いたのは、そういうことではないんだろう。スザク君がどう答えようと、疑うことはやめない気がした。
私も、彼を疑わないのは、肝心のところ彼を信じていないからかもしれない。いや、信じてはいるのかな。ただ、裏切りを最初から甘受する気でいるだけで。酷い話だ。とはいえ、実際裏切られることなんてそうそうあったことではないので、大概が杞憂なのだが。ああ、アナ達も似たような感じで疑うことがやめられないというなら、少しわかるような気がしなくもないかもしれない。スザク君にとってはどっちもいい迷惑だろう。ここで謝ってもどうしようもないだろうけれど、ごめんね。
部活の次の公演、スカピンなのが嬉しい。しかし、ストークス先輩が言われていた不穏な言葉は、やはり気になる。部長は一体何を書くつもりなのだろう。部長が変わったことを書くのは今に始まったことではないけれど。最近の部長はどこか調子がおかしいような気もして、少し心配。もっとも、それなりに付き合い長いはずながら一ミリも理解できない部長の考えているであろうことなんて、予想がつくはずも理解が及ぶはずもないのだけれど。
(スカーレット・ピンパーネルについて)
「紅はこべ」とも。イギリスの小説、バロネス・オルツィ作。フランス革命時期が舞台。
残念ながら作者は原作小説は読んだことがありません。宝塚星組公演で惚れ込みました。
作中でいう『スカーレット・ピンパーネル』はざっくり公演ストーリー寄り+神聖ブリタニア風味です。尚、それをこれから部長が捻じ曲げ料理するそうですよ。ぶるぶる。
現実では別に禁書扱いなんてされてません。戯曲化されて流行るまで、小説出版させてもらえなかったとかなんとかはあったみたいです。せちがらい。
神聖ブリタニアは、ナポレオンさんに割と散々な目に遭わされてる(海戦敗北・ロンドン侵攻)ようなので、妙な苦手意識がある、その話題は腫れ物扱いしている…という勝手な設定を盛りました。