ハリーに憑依したらライバルが女の子だった件 作:TSドラコファンクラブ終身名誉会長
まぁ原因はハリーが原作と違う動きをしてしまってることによる、バタフライエフェクトみたいな感じです。
「なあハリー、チェスでもやらないか? せっかくの休暇なのに、君はずっと難しい本ばかり読んでるじゃないか」
「誘ってくれてありがとう、ロン。でも、もう少しだけまとめたい理論があるんだ。夕食の後なら相手になれるよ」
「ほんと、ハーマイオニー並みに勉強熱心だな……。マルフォイがいたら『怠惰なウィーズリー』って嫌味を言われそうだけどさ」
「はは、ドラコニアなら確かに言いそうだね。でも、彼女がいない間くらいはのんびり羽を伸ばすといいよ」
「まったくだ! あいつがいないだけで、城の空気がずいぶん平和に感じるよ」
大広間でチェスの駒を並べるロンに笑顔で手を振り、ハリーは人気の途絶えたスリザリンの地下牢へと足早に戻った。ドラコニアもハーマイオニーも実家へ帰省しており、約二週間に及ぶ静謐なクリスマス休暇は、ハリーにとって誰の目も気にせず魔術の検証に没頭できる黄金の時間だった。
男子寝室の扉を固く閉ざし、ハリーは手に入れたばかりの銀色の布地をベッドに広げた。触れるたびに水のように指先から滑り落ちる至宝――『透明マント』。自らの指先、私物、そして全身を覆い、鏡の前に立つと、そこには歪みひとつなく完全に切り取られた「虚無」があった。並の幻術や目眩まし呪文のように光の屈折による輪郭の滲みすら生じない。しかしハリーの冷徹な観察眼は、その絶対的な道具の隙を見抜いていた。姿は完全に消えても、歩行に伴う床の軋みや布擦れの衣擦れ音、呼吸の熱、そして人間の体臭までは遮断できない。
そこでハリーは、みぞの鏡の部屋へ潜入した際に用いた自作の複合隠蔽術の再構築に着手した。視覚の偽装を透明マントに一任できる今、魔力のリソースを「音」「匂い」「魔力熱の同化」の三点に特化させ、より強固なヴェールへと術式を磨き上げる。三日三晩の試行錯誤の末、発動のタイムラグを極限まで削ぎ落とし、マントの装着と同時にオートマチックに展開する連携術を完成させた。
「……よし。音と匂いを絶ち、魔力波を周囲の石壁と同調させる。これならフィルチの猫どころか、大抵の探知呪文すら素通りできるはずだ」
一人呟いたハリーの口元に、満足げな笑みが浮かぶ。原作の記憶にある「姿隠しのマントを着ていても足音や息遣いで見つかりかける」という致命的なリスクは、この独自の術との併用によって完全に克服された。
「 術名は――『無響の帳(サイレント・ヴェール)』、とでも呼ぶべきかな」
完璧な情報収集の基盤が整った今、休暇明けに控えるであろう事件――賢者の石を巡る三頭犬の謎や、クィレルとスネイプの動向を探るための手札は、劇的に厚みを増していた。
「呼吸音も、足音も、体温すら完全に消えている……。これなら誰にも悟られないはずだ」
冷気漂う深夜の図書館は、日中の厳格な静寂とは異なる、底冷えするような不気味さに満ちていた。
「目指すは禁書の棚。探すのはニコラス・フラメル、そして――『賢者の石』に関する原典だ」
ハリーは銀色のマントを頭からすっぽりと被り、極限まで練り上げた自作術『無響の帳』を静かに起動させた。床を踏み締める靴音も、吐き出す白い呼気の温もりも、ローブが擦れ合う微細な摩擦音すらも、周囲の冷たい空気と完全に同調して虚無へと還元される。巡回するマダム・ピンスの視線や気配の探知をいとも容易くすり抜け、ロープで仕切られた「禁書の棚」の奥深くへと滑り込んだ。
「映画の知識では、不老不死の妙薬と卑金属を黄金に変える力ばかりが強調されていた。……だが、真にそれだけだろうか?」
微かに灯した杖先の明かりが、革張りの重厚な古文書の背表紙を舐めるように照らし出す。ハリーの指先が、何百年もの埃を纏った錬金術の専門書を慎重にめくっていく。映画のあやふやな記憶を、正確な知識へと上書きするための作業だった。
「錬金術の究極点、万物の理を書き換えるほどの奇跡の結晶だ。もしも術者の魔力増幅器として機能するとしたら……」
ページを繰りながら、ハリーの脳内では営業マン特有の冷徹な損得勘定が猛烈な速度で回転していた。生命の霊薬、そして無尽蔵の富。それだけでも途方もない価値だが、極限の魔術結晶であるならば、使用者の魔力回路を拡張し、魔法行使の絶対量を飛躍的に引き上げる『触媒』としての隠された側面があるのではないか――。
「あの石の力で恒久的に魔力を底上げできれば、将来の生存率は桁違いに跳ね上がる。……手に入れる価値は、十分にある」
もし石を我が物にできれば、いつか訪れるであろう闇の帝王との全面衝突を、圧倒的な暴力で捻じ伏せて生き残ることができるのではないか。内心に巣食う死への恐怖と、ヴォルデモートの魂がもたらす無自覚な力への渇望が混ざり合い、ハリーの思考を黒く甘美に染め上げていく。ハリー自身はそれを「現実的なリスクヘッジ」だと信じ込んでいたが、その瞳に宿る打算的な輝きは、かつて強大な力を追い求めた危険な魔法使いたちのそれと酷似していた。古びた羊皮紙の上で指を走らせながら、ハリーは息を潜めて目的の記述を探し続けた。
「……ッ、足音を立てるな。夜警の猫がまだ近くを徘徊している」
「は、はい……我が君。しかし、この一角に本当に例の守りを破る手がかりが……?」
革靴の擦れる微かな摩擦音を察知した瞬間、ハリーは反射的に身を竦め、書架の深い影の隙間へと滑り込んでいた。息を殺し、『無響の帳』の魔力膜を限界まで薄く、かつ高密度に張り巡らせる。
「愚か者が。スプラウトの植物など初歩の知識で焼き払える。問題は……あの忌々しい犬と、ダンブルドアの仕掛けた鏡の術理だ」
「図書館の記録を洗えば、何か対抗の糸口が掴めるはずです……急ぎます、我が君」
心臓の激しい鼓動すら外部の空気へと波及させないよう神経を研ぎ澄ますハリーの視界に現れたのは、巨大な紫色のターバンを巻いた男――クィレル教授だった。
「嗅ぎ回る鼠がいれば、容赦なく始末しろ。……何者にも我らの復活を邪魔させるな」
だが、昼間の講義で見せる怯懦で滑稽な吃音の道化面は、そこには微塵もなかった。ランタンの微光を浴びたその横顔は青白く引き攣り、何かに憑りつかれたように冷酷な光を瞳に宿している。そして何よりハリーの背筋を凍らせたのは、クィレルの後頭部、ターバンの奥底から響く、擦れた蛇の威嚇のような異質な声の存在だった。二重に重なり合うその声は、映画の知識が示す「ヴォルデモートの寄生」という真実を、あまりに生々しい現実として少年の脳裏に叩きつけていた。
二人の怪異は、ハリーが潜む書架のわずか数歩手前で立ち止まり、禁書が鎖で繋がれた『古代魔術の防壁と対抗呪文』の棚を物色し始めた。手を伸ばせば触れられるほどの距離に、世界で最も危険な闇の帝王と、その下僕がいる。ハリーの額に冷や汗が滲む。もし探知呪文一つでも放たれれば、いくら完璧な隠蔽術とはいえ無傷では済まない。一瞬の判断ミスが生死を分かつ緊迫感の中、ハリーは思考を研ぎ澄まし、次の一手を冷徹に計算していた。
「しかし、あの鏡……『みぞの鏡』の深層に石を封じたとて、取り出す条件はいったい何なのでしょうか。ダンブルドアの術理はあまりに難解です」
「焦るな。石が鏡の内に封じられていると突き止めただけでも、一歩前進だ。老いぼれめ、小賢しい細工をしおって……」
本棚の隙間、わずか数ヤード先の冷たい闇の中で交わされる密談に、ハリーの背筋を氷の刃が撫で下ろした。奥歯を噛み締め、『無響の帳』を構成する魔力の一筋すら揺らがせないよう、全身の筋肉を硬直させる。肺に取り込む空気の微かな摩擦音すら神経質に殺しながら、ハリーの脳裏を激しい戦慄が駆け巡っていた。
「は、はい。犬の突破法さえハグリッドから聞き出せば、あとはあの鏡の謎を解き明かすのみ……」
「『欲望』を映す鏡だ。鏡の理屈を逆手に取れば、必ず抜け穴はある。書物を漁り、精神感応の封印術を洗い出せ」
(……嘘だろ。映画の展開と違う……!)
ハリーの記憶にある原作映画では、クィレルは地下の最終関門に辿り着いて初めて、そこに置かれた『みぞの鏡』を前にして「どうやって石を取り出せばいいのか」と立ち往生していたはずだった。だが今、奴らは仕掛けの核心――賢者の石がみぞの鏡の中に隠されているという事実を、潜入する前の現時点で既に看破している。この世界の時間軸と敵の知能は、映画のような都合の良い脚本通りには動いていないのだ。もしクィレルたちが事前に鏡の術理を解明し、解除方法を用意した上で地下へ突入すれば、自分が介入する余地などなく石はヴォルデモートの手に渡ってしまう。
「かしこまりました、我が君。……夜明け前には必ず、手がかりを見つけ出してみせます」
「急げ。セブルスの嗅覚を侮るなよ。あの裏切り者の目を盗める時間は限られているのだからな……」
冷や汗が額から滑り落ち、頬を伝う。元営業マンとして培ったリスク管理の思考が、最悪のシナリオを次々と弾き出していた。幸いなのは、奴らがハグリッドからフラッフィーの突破法(音楽で眠らせること)をまだ聞き出せておらず、鏡の解除法も完全には解けていない点だ。書架を漁る乾いた紙の音と、低く響く蛇の吐息に耳を澄ませながら、ハリーは自らの呼吸すら完全に忘れたかのように、漆黒の闇と同化し続けていた。
「我が君、これです……『古代封印と鏡像魔術の相克』、そして『魂の射影に関する試論』……」
「必要な箇所だけを抜き書きしろ。本を持ち出せば、あの忌々しい司書とダンブルドアに嗅ぎつけられる」
「 は、はい……! 羊皮紙に要点だけを……すぐ終わらせます」
クィレルが意気揚々と目当ての本を掲げ、ヴォルデモートに報告し、すぐさま羊皮紙に重要な項目の書抜きを行う。
「 足音が近づいている……フィルチの出来損ないの猫だ。ここまでだ、立ち去るぞ」
「あ、あと数行……くっ、かしこまりました。棚を戻します……!」
重々しい古書の閉じる音が狭い空間に響き渡り、乱雑に棚へ押し戻された革表紙がきしんだ音を立てた。足早に遠ざかる足音が禁書の棚のロープを擦り抜け、冷たい夜の空気の奥へと消えていく。ハリーはなおも動かず、一分、二分と静止したまま呼吸を極限まで押し殺し、城の深淵が再び絶対の静寂を取り戻すのを待った。
「『鏡面投影における因果の反転』……なるほど。鏡が『欲望』を媒介にして空間を遮断しているなら、術者の自己認識そのものを偽装して突破しようという魂胆か」
『無響の帳』を慎重に維持したまま、ハリーは物陰から滑り出るように身を起こした。クィレルが触れていた書棚の前に立ち、微弱な杖先の明かりで本棚の隙間を照らし出す。わずかに埃が払われ、乱暴に押し込まれていたのは二冊――『古代封印と鏡像魔術の相克』、そして精神感応術の深層を記した錬金術の註釈書だった。
「 映画のみぞの鏡は『石を使おうとせず、見つけたいだけの者』にしか取り出せない仕掛けだった。奴らはそれを『無欲の自己暗示』で無理やりこじ開けようとしているのか……?」
開かれたページの折り目と、インクの乾ききっていない微小な飛沫を冷徹に検分し、ハリーは奴らが「鏡にかけられた認識封印を外部から強制突破、あるいは騙す論理式」を探していた痕跡を突き止めた。
(だが、この理論には致命的な欠陥がある。ダンブルドアの術理はそんな表層的な精神偽装を容易に弾くはずだ。……いや、油断は禁物だな。相手はあのヴォルデモートだ)
「奴らの調査を少しでも遅延させる。……さて、ビジネスでも基本の嫌がらせ――『ファイリングの意図的な混乱』といこうか」
幸いにして、フィルチの巡回によって調査は途中で中断されたらしく、決定的な解除式まで辿り着いた様子はない。だが、敵は確実に『みぞの鏡』というダンブルドアの防壁を着実に解析し始めている。映画のシナリオが前倒しで崩壊しつつあるという冷厳な事実を前に、ハリーはノートへ手早く書名と該当箇所の要約を書き留めながら、自らが打つべき次なる布石を脳内で組み立てていた。
「『古代封印と鏡像魔術』を、隣の棚の『十七世紀における吸血鬼追放令の法的解釈』の隙間に……よし。これならマダム・ピンスでもすぐには見つけられない」
杖先の極限まで絞った光を頼りに、ハリーはクィレルが閲覧していた箇所の前後を高速で精読した。営業マンとして培った大量の資料を要約・分析する能力、そしてヴォルデモートの魂の残滓がもたらす天賦の魔術的直観が、古めかしい難解な術理を驚くべき速度で噛み砕いていく。鏡の防壁は強固だが、特定の反転術式と強力な精神干渉を組み合わせれば、ダンブルドアの「無欲の鍵」という条件をすり抜ける理論的抜け穴が存在しうる――その危うい可能性を、ハリーは冷徹に理解した。
理解を深めた後は、即座に実利的な妨害へと移る。持ち出すのは司書の探知に触れるため不可能だが、数百冊が埃をかぶる禁書の棚において、類似した革装丁の全く無関係な区画へと紛れ込ませることは容易だった。目録の分類とは完全に無縁の場所に滑り込ませ、背表紙の角度をわずかに狂わせる。ほんの数センチの偽装だが、深夜の短い制限時間の中で焦りながら探すクィレルにとっては、これ以上なく厄介なタイムロスとなるはずだ。
手応えを感じながら、ハリーはノートを懐にしまい、再び『無響の帳』を完璧に展開させた。一連の工作を終え、心臓の鼓動は不思議なほど平穏を保っていた。他人を欺き、妨害し、自らの優位を築く行為に罪悪感は微塵もない。それどころか、盤上の駒を自分の手で動かしているような、冷たく澄んだ高揚感すら芽生え始めていた。
「奴らはまだ、あの三頭犬――フラッフィーの突破法を手に入れていない。ハグリッドの口の軽さを突いて情報を引き出すのが映画の筋書きだったが……」
書架の陰から滑り出し、誰もいない夜の廊下へと足を踏み入れながら、ハリーの脳内では冷徹なリスクヘッジの青写真が急速に組み上がっていた。
「ならば、先手を打って情報源そのものを汚染すればどうなる? 奴らがハグリッドから『正解』を聞き出せないようにするんだ」
映画の記憶において、ルビウス・ハグリッドという男は情に厚く親しみやすい半面、致命的なまでに秘密を守れない「重大なセキュリティホール」だった。奴らは遠からずパブかどこかでハグリッドを酒で酔わせ、ドラゴンの卵などを餌にしてフラッフィーの沈黙法を聞き出すはずだ。ならば、情報漏洩を止めるのではなく、漏洩する情報そのものを致命的な偽情報(デマ)へと書き換える――ビジネスにおける逆スパイ工作の初歩的な手口だった。
「 単純な忘却術(オブリビエイト)じゃ不自然すぎる。ハグリッド自身が『弱点』だと思い込んでいる別の嘘を、自然な形で刷り込む……『偽の記憶の植え付け』だ」
普通の一年生であれば、他人の記憶を改変するなどという発想自体、恐ろしさに足がすくむはずだった。記憶の改変や偽記憶の注入は、下手をすれば対象の精神を破壊しかねない高等かつ危険な術理だ。だがハリーの胸中には、ハグリッドに対する個人的な悪意がないのと同様に、彼を欺くことへの倫理的な躊躇いもまた存在しなかった。ヴォルデモートの魂の残滓がもたらす「目的のために他者を利用する冷淡さ」が、元営業マンの功利主義と美しく噛み合ってしまっているのだ。
「たとえば……『特定の音楽を聴くと激昂して手がつけられなくなる』『弱点は特定の匂いや光だ』という偽の確信を抱かせれば、クィレルが笛を吹いた瞬間に返り討ちに遭う」
課題は少なくない。ハグリッドは半巨人であり、生半可な精神干渉呪文は皮膚の魔力耐性に弾かれる。直接杖を向けて呪文を唱えるような稚拙なやり方では、失敗した瞬間にダンブルドアへと露見するだろう。酒の席で心理的な誘導と微弱な精神変容薬を組み合わせるか、あるいは彼が大切にしている「魔法生物への愛情」を利用して自発的な思い込みを形成させるか。
「問題はハグリッドの巨人の血筋による魔法耐性、そしてダンブルドアに気付かれない精緻な精神干渉術の構築だ。……一筋縄ではいかないが、研究する価値はある」
透明マントの下で唇に薄い笑みを浮かべながら、ハリーはスリザリンの地下談話室への帰路を、静かに辿り始めた。
「巨人の皮膚や筋組織は外来の呪文を弾くが、消化器系や呼吸器系からの緩やかな生体吸収までは完全には無効化できないはずだ」
冷たい地下牢の廊下を音もなく歩きながら、ハリーの思考は研究者の緻密さと営業マンの冷徹な計算で満たされていた。
「ポリジュース薬のような人間専用の劇薬は巨人の生理機能に合わず拒絶される。……なら、狙うべきは劇薬じゃない。『毒』として認識されないほど穏やかなハーブの相互作用だ」
魔法界の薬草学と魔法薬学の教科書、そして前世の化学や薬理学の知識を脳内で交差させ、ハグリッドの半巨人という特殊な体質に対する有効打をシミュレートする。
「たとえば、乾燥させたアリホツィの葉を極微量、リラックス効果の高いカモミールとドクニンジンモドキの根で中和し、発汗作用のある乾燥ショウガとブレンドすれば……」
巨人の血は呪文に対して強固な盾となるが、彼らも呼吸をし、食事をし、酒を飲む生身の生物だ。外壁が鉄壁なら、招かれた客として内部に入り込み、神経系の末端にそっと指を滑り込ませればいい。
「ヒステリーを誘発するアリホツィの作用を極限まで薄め、『特定の連想に対する感情の増幅』だけに特化させた茶を作れるかもしれない」
薬の理論が組み上がるにつれてハリーの口元に酷薄な笑みが浮かぶ。
「そこへ自然な雑談を重ねて心理的プライミングを仕掛ける。『音楽を聴かせると暴れる危険な獣の噂』を共感交じりに語り、本人の記憶とすり替えるんだ」
手本とするのは、かつて営業現場で活用した「認知の誘導」だ。人は自ら思いついたと信じている嘘ほど強固に信じ込み、他人に熱弁したがる。
「 呪文の痕跡は残らない。体内に入ってもただの『少し珍しいブレンドティー』として代謝される。これならスネイプの鋭い鼻も、ダンブルドアの検知網もすり抜けられる」
ハグリッドのような純朴でおしゃべりな性格なら、精神誘導香を漂わせた温かい茶を差し入れ、魔法生物の世話に関する苦労話に耳を傾けながら、「犬種特有の聴覚過敏」というもっともらしい情報を会話の節々に散りばめるだけで十分だろう。本人が「俺のフラッフィーも、音楽を聴くと凶暴になっちまうんだ」と錯覚しさえすれば、クィレルが酒場でいくら酒を奢ろうと、手に入るのは死に至る偽りの鍵だけだ。
罪悪感の欠片すら湧かない自らの心根に、ハリーは薄い苦笑を零した。ハグリッドの命を奪うわけではない。むしろ、彼を破滅から守るための必要な予防線だとすら自己正当化できる。スリザリンの談話室の合言葉を唱え、重い石壁が開くのを見つめながら、ハリーは冬休み明けの温室で手に入れるべき素材のリストを、ノートの裏表紙に暗号で記し始めた。
書いてて流石にこの主人公やべーなって思ってきた(汗)