ハリーに憑依したらライバルが女の子だった件 作:TSドラコファンクラブ終身名誉会長
あとトムくんの魂の破片は本家ハリーよりもハリーに憑依した主人公君のことが大好きな様子。
(さて、盤面の第一手は完璧に決まった。クィレルが酒場でハグリッドに接触した瞬間、あいつの破滅は確定する。だが、"俺”自身の『力』が足りなければ、土壇場で不測の事態に対応できない)
粉雪が舞う庭を足早に通り抜け、スリザリンの地下寮へと一度戻ったハリーは、濡れた防寒着を脱ぎ捨てて身軽な私服ローブへと着替えた。冷たい石造りの談話室は休暇中の静寂に包まれており、ドラコニアたちの不在が、ハリーの単独行動にこれ以上ない自由を与えている。息を整え、万全の注意を払って地下から城の最上層へと足を進めた。
(映画の記憶と"俺の中の断片“の感覚が正しければ、城の七階……『間抜けなバーナバスのタペストリー』の向かい側だ。誰にも見られず、音も漏れず、あらゆる術理を検証できる理想の鍛錬場が、あそこにあるはずだ)
七階の人気の途絶えた廊下に辿り着くと、壁面には記憶通りの異様な織物が掛けられていた。トロールにバレエを教えようとして棍棒で滅多打ちにされている、実に滑稽なバーナバスの姿だ。ハリーはその向かいにある何の変哲もない滑らかな石壁の前に立ち、目を細めた。頭の中で強く、明確にイメージを形作る――
《誰の視線も届かず、あらゆる高度な魔術の鍛錬と実験を安全に行える空間》
「素晴らしいな……防音、衝撃吸収、魔力の遮蔽に至るまで、俺が望んだ通りの環境が一瞬で構築されている」
壁の前を、一定の歩調でゆっくりと三往復する。足音が止まり、静寂が廊下を支配した瞬間、冷たい石肌の表面に微細な魔法の光が走り、優美な真鍮の取っ手を備えた重厚な木製の扉が、まるで最初からそこにあったかのように音もなく浮かび上がった。
「書棚には禁書指定すれすれの古い魔術書、中央には頑丈な呪文標的のダミー人形。これなら階下のスネイプやダンブルドアの目を気にする必要は皆無だ」
真鍮の取っ手を回して一歩足を踏み入れると、そこは外の冷気とは隔絶された、重厚な革張りのソファと無数の標的ダミー、そして黒ずんだ装丁の書物が整然と並ぶ私設の研究室であった。
「さて、まずは基礎呪文の魔力効率化と、そこに『悪意』や『破壊の意志』を乗せた際の変化を測定するか」
暖炉には静かな青白い炎が揺らめき、分厚い壁は城のいかなる探知術式をも遮断する完璧な沈黙を保っている。
「『フリペンド』……いや、威力を絞って貫通力に振るべきか。……『ディフィンド』」
少年の繊細な指先が柊の杖をひと振りするたびに、空気を切り裂く鋭い風切り音が室内に響き渡った。
標的の人形に向けて放たれた魔力の弾道は、通常の一年生が放つ頼りない火花とは一線を画していた。淡い青紫の閃光が正確無比に標的の急所を抉り、石のように硬い防護木を深く抉り取っていく。
「……なるほどな。教科書通りのイメージだとごく普通の切断術だが、魂の奥底にあるあの冷淡で暴力的な感覚を少し引き出すだけで、術式の収束速度と威力が跳ね上がる」
内なる転生者の冷徹な論理思考が魔力のロスを極限まで削ぎ落とし、同時に額の傷の奥深くに眠る闇の魂が、呪文にぞっとするほど純度の高い殺傷性を付与していた。善悪の彼岸にある力への好奇心と、生き残るための合理性が完璧に噛み合い、少年の魔道は異常な速度で研ぎ澄まされていく。
「ヴォルデモートの魂の残滓か。気味の悪い同居人だが、武器として使える以上、徹底的に骨の髄まで利用させてもらうさ」
かつて数字と結果だけを追い求めて盤面を支配した営業マンの才覚は、この魔法の世界においても些かの狂いもなく発揮されていた。自身の魂の異常性すら冷厳なリソースとして計上し、来るべき破滅の未来を覆すための手札を一つ、また一つと増やしていく。
「 ふぅ……。威力を引き上げるだけなら、想像していたよりもずっと簡単だ。だが、問題は『痕跡』だな。闇の魔術特有の残滓――あの独特の焦げ付くような魔力の匂いと波長。これを撒き散らしたまま実戦で使えば、ダンブルドアやスネイプのような手練れには一発で見抜かれる」
(内心、背筋が凍る思いだ。もしこの場をスネイプにでも見られでもしたら、説教どころかアズカバン直行コースの尋問が待っている。……絶対にボロを出すわけにはいかない)
「『無響の帳』の術式を攻撃呪文の展開フレームと並列同期させたらどうだ? 音だけでなく、放たれる光と魔力の拡散を、放出した瞬間に逆位相の魔力で相殺・内包する……」
次々に思い浮かぶアイデアに一喜一憂することなく、淡々とタスクをこなしていく。
失敗のリスクなどまるで考えない-いや、自身が失敗するはずが無いという確信がハリーにはある。
「……試してみる価値はあるな。左手で相殺膜を編み、右手の杖で穿つ。二重思考(ダブル・タスク)の並列処理だ。元いた世界のプレゼン資料を作りながら根回し電話を捌くようなものと思えば、技術的には可能だ」
「 ――『サイレンシオ』×『ディフィンド』――」
青白い炎に照らされた若きスリザリンの横顔には、誰にも見せることのない冷徹な計算と、その裏側にへばりつく薄氷を踏むような恐怖が同居していた。指先が微かに震えるのを、ハリーは自嘲気味に息を吐き出すことでねじ伏せる。内心のビビりを覆い隠すためのポーカーフェイスは、もはや皮膚の一部のように完璧に定着していた。
杖先から放たれたのは、音も光も完全に削ぎ落とされた「不可視の刃」だった。室内の空気が一瞬だけ真空のように収縮し、標的の樫木のダミーが、まるで最初からそうであったかのように上下真っ二つに音もなく滑り落ちた。切断面は鏡面のように滑らかで、焦げ跡も、魔力の残り香すらも、ハリーが編み上げた不可視の帳の内側に完全に捕食され、霧散している。
額の傷痕の奥で、異質な魂の欠片が満足げに脈動したような錯覚を覚えた。ハリーは眉をひそめ、冷えた指先で額の皮膚を軽く押さえる。人を欺き、禁断の知識に手を伸ばすことに対する倫理的な歯止めが、日に日に摩耗していく感覚がある。だが、破滅の運命から自身と身近な者たちの平穏を買い取るためのコストとして、この程度の精神的摩耗はあまりにも安い代償に思えていた。
「次は、一番の懸念事項であり、この世界で最も不条理なルール……『アバダ・ケダブラ(死の呪い)』への対抗策だ」
冷え切った必要の部屋の空気が、少年の鋭敏な論理によって急速に熱を帯びていく。羊皮紙の上に描かれた緻密な数式と幾何学的魔方陣は、伝統的な魔法界の常識を根底から覆す、きわめて現代的で機能主義的な防衛プロトコルを形作っていた。
「 盾の呪文も意味をなさない。当たれば即死、防御不能。……ゾッとするほど理不尽な仕様だ。内心じゃ膝がガクガク震えるのを止められないくらい恐ろしいが、だからこそ絶対に逃げ道を作っておかなきゃならない」
死への恐怖をエネルギーに変え、最悪の事態を想定して二重三重の保険を張り巡らせるその手腕は、かつて熾烈なビジネスの最前線でリスクを徹底的に排除してきた男の真骨頂であった。
「ルールが『生物に直撃すれば死』であり、『物質に当たれば爆発・物理干渉で止まる』なら、答えは極めて単純な工学的アプローチだ。着弾の瞬間に、俺の肉体と呪文の間に『質量を持った遮蔽物』を割り込ませればいい」
冷静に、魔法で防げないのであれば物理的に他で補う方法を考える。
「 だが、呪文の弾速を肉眼で見てから障害物を呼び寄せるのでは、コンマ数秒の遅れが命取りになる。人間の反射神経の限界を超えている」
(……なら、自動化(オートメーション)だ。前世の車載センサーや対空迎撃システムと同じ発想でいく)
「死の呪いが放つ特有の魔力波長――あの不快な緑の閃光と殺戮の圧力をトリガーにして、足元の石畳や周囲の瓦礫、あるいは自身の衣服の一部を強制励起させ、瞬時に『高密度の物理装甲』へ変形・隆起させるリアクティブ・アーマー(反応装甲)術式……」
――『オプスキュロ・テラ』……と後にハリーが命名する変形術と瞬間物質召喚の複合。緑の魔力圧を検知した瞬間、無意識下で足元の床が跳ね上がり、盾となって呪文を食い潰す。これにより術者自身が反応できなくても物理的に射線を遮断できる
柊の杖を一閃させると、床の石畳が鋭い金属音とともに跳ね上がり、ハリーの眼前数センチのところで分厚い黒曜石の盾へと変形した。直後に放たれたダミー人形からの模擬呪文を、その石板が見事に身代わりとなって粉々に破砕されながら受け止める。破片が四散する風圧を浴びながらも、少年のポーカーフェイスは微動だにしなかった。
(だがこれはまだ未完成だな。俺自身が実際の死の呪文への理解がまだ浅い。術式に検知させるにも検知させる対象の解像度が不明確では誤作動を起こすリスクが高すぎる)
その内奥で冷え切った安堵が静かに広がるも、冷徹な理性が冷ややかに現段階での術式の不安定さを指摘する。
(しかし現状これ以上の手が打てない以上、一旦この術式の改良は後回しだな)
死の呪文への対策は現段階では骨子を作る段階に留め、次のタスクに取り掛かる。
(とりあえずは反復と自動化……これこそが生存確率を最大化する唯一の解だ。頭で考えてから杖を振るのでは遅すぎる。筋反射のレベルまで魔力運行を叩き込む)
「さて残るピースは、どんな防壁も貫通し、一切の反撃を許さずに目標を完全に排除する『決定打』……必殺技の開発だ」
必殺技、年頃の男児が憧れるワードの一つと言ってもいいそれを口にするも、ハリーの表情は氷のように凍てついている。
「 目指すべきは、破壊の規模ではなく『不可避性』と『致死性』の極限だ。派手な爆発や炎など、こちらの位置を暴露するだけの愚策に過ぎない」
彼が目指すのは見栄えの良い派手な攻撃魔法ではない。
地味で目立たず、それでいて確実な蛇の毒。
必ず相手を殺す技こそがハリーの欲する力。
「切断術(ディフィンド)の極小集中、空間圧縮のベクトル、そして闇の魔術が持つ特有の『壊死・侵食』の概念――これらを針の先ほどの極小点に凝縮し、音速を超えて撃ち出したらどうなる?」
(検証するしかないな)
氷の如き冷気が支配する城の最上階で、少年の孤高の研究は連日連夜に及んだ。必要の部屋は主の執念に応え、ある日は猛吹雪の雪原、ある日は魔力を乱反射する鏡張りの回廊へと姿を変え、極限の負荷を肉体と精神に課し続けた。
そしてついにハリーは自身の望む必殺技を完成させる。
「――名付けるなら『ニードル・エクリプス(黒針穿孔)』。魔力障壁をすり抜け、触れた瞬間に内側から物質構造を崩壊させる。目に見えず、音も鳴らず、暗殺の極致……」
完成した必殺の術式は、冷徹な合理主義と禁断の知識が生み落とした異形の果実であった。柊の杖から放たれる漆黒の極小光線は、音もなく大気と結界を貫き、標的となった巨大な防護岩を外傷ひとつ残さず、分子結合を解かれた灰となってサラサラと崩落させた。
(……正直、我ながらゾッとするものを作り上げてしまった。だが、あの這い寄る死の影――ヴォルデモートやクィレルを確実に屠るには、これくらいの毒を持たなければ生き残れない)
圧倒的な威力と、それに反比例する無音の不気味さ。自らの内なる怪物を飼い慣らした少年は、残骸を前に静かに息を整え、杖をポケットへと滑り込ませた。
「休暇も残りわずかか。指先の震えも、魔力の循環も、完全に掌の上で制御できている。……よし、そろそろ『善良で社交的な優等生』の仮面を被り直す時間だな」
年が明け、ホグワーツの窓外を覆っていた分厚い雪雲の切れ間から、淡い冬の陽光が差し込み始めている。長く孤独な鍛錬の日々は終わりを告げ、間もなくドラコニアや他の生徒たちが賑やかな談笑とともに城へと戻ってくる。
闇の魔術の殺傷力、死の呪いを物理で強行遮断する自動反応装甲の骨子の作成。誰にも知られぬ隠し部屋で積み上げられたこれらの技術は、スリザリンの一年生という無力な羊の皮を被った怪物の骨格を、着実に、完璧に組み上げつつあった。
感想でドラコのTS要素より圧倒的に憑依ハリーの暗躍に焦点当たってると言われて、確かにこの小説のタイトルで見に来た人に、これじゃない感強いかなと思い近々タイトル変更します。
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