結構独自解釈で書いたので公式と違う可能性があります。
温かい目で見て、読んでくださると嬉しいです。
「……」
「……」
重苦しい空気が二人の間に募る。
「……ヒカリン」
「…なによ?」
「…私、実はうっすらと気付いていたんです。最近自分の体がなんだかおかしいな、って」
「!」
ヒカリは、隣で三角座りをして蹲るハルカの言葉に身体を震わせた。
つい先刻、ロイヤル星導学園に定期視察に来ていた団長と学園の創設者・ミスリルが、人気のない場所で会話をしていたところへたまたま通りがかり、予想だにしなかったことを聞いてしまったのだ。
『最近の戦闘によってハルカの、サタニアの素体が限界に近いかもしれないから、改修を手伝ってくれないか』ーーーと。
サタニアとは、前文明の遺物である防衛システム『天使』の1人である。
大昔の戦争による素体の破損修復の過程において、ミスリルがサタニア本人の人格の封印をせざるを得なくなった際、『ハルカ』という全く別の人格を生み出し、姿を一新した事。
そもそもハルカをヴァルキリー小隊に加入させたミスリルの目的が、内側から監視し『自分達が脅威となった際の抑止力(カウンター)』に仕立てる事。
現在はとある装備がハルカの元に届いたとほぼ同時に、そのサタニアの意識もハルカの中で再び目覚めている事。
そこまではヒカリとて以前ハルカから打ち明けられた時に知っていた。
ーーーだが。
元天使であろうが、ハルカはハルカ。
その認識はヴァルキリー小隊のメンバー全員の共通認識であり、何も問題はないと思われていた。
…しかし造られたものは何であろうが、例え天使であってもーーーいずれ素体の劣化や戦闘中の破損等の様々な要因で壊れてしまう定め。
最近は戦争マシンの勢いが凄まじく、苛烈さも増しつつあった為に出撃の回数も増えていき、いくらミスリルがメンテナンスしているとはいえーーーハルカの身体には細やかな損傷や負荷が蓄積してしまっていたのである。
「先月くらいから…ミィちゃんとは話してて……」
「ハルカ、あんた……どうしてそれを言わなかったのよ?」
「あはは…それ、サタニアちゃんにも言われました。『ヴァルキリー小隊には相談しないのか?』って」
「じゃあなんでーーー」
哀しげに笑うハルカが次に発した言葉に、ヒカリの背筋は凍り付く。
「ーーー怖くなっちゃったんです。元とはいえ…私は『[b:天使]』だから」
「…ッ!」
自身のこれまでの『天使』に対する攻撃的な発言が、ハルカの心のどこかで少なからず『凝り』として存在し続けていた現実を、彼女は素早く理解しーーー言葉に詰まった。
「改修を受けて強くなれば、もっとみんなの役に立てるってことは分かってます」
「…」
「でも、もしーーーサタニアちゃんのような、天使っぽさが増えるような装備への改修だったら、今度こそヴァルキリー小隊の誰かから拒絶されちゃうんじゃないか……って思ったら、」
「この話から目を背けずには居られなくなっちゃったんです」
[b:「…ヴァルキリー小隊のみんなが、大好きだから」]
ハルカの本音に、ヒカリは左手は腰に当て、右手で伏せた顔を覆った。
「……困ったわね」
ヒカリは確かに『天使』を徹底的に敵視していたし、差別的発言をしたのも確かである。
しかし、『人』は時間が経てば考え方が変わる時がある生き物だ。
最近は団長を介した状況下での天使達との(比較的)穏便な接触を経て、少しずつではあるが彼女も認識を改めつつあった。
ーーー『やたらと好戦的な天使は居るっちゃ居るが、大抵はこちらから余計な事を仕掛けなければ基本的に無害』だと。
しかし、今回のハルカの悩みを解決するには、単純にそれを言うだけでは済まない。
過去の自身の過激な発言を認めた上で、ハルカだけではなく……彼女の中で聞いているであろう、かの天使にも伝えなければならない。
(団長のせいね、こんな風に考えるようになるなんて…… あたしもちょっとは丸くなったのかもしれないわね?)
ヒカリは口には出さずに、そうひとりごちた。
その一方でハルカは、思わず弱ったところを見せてしまったのを取り繕おうと少々パニックになっており……
(い、言っちゃった……! ど、どどど、どうしようサタニアちゃん……!?)
«あそこまで言ってしまったのなら、もう打つ手はないし、彼女がどう答えるのかは予想はつく»
(だけど、これは私とサタニアちゃんの問題であって……)
ハルカが抱え込もうとしているのを察知したサタニアは、『はぁ…』とため息をつき、あたふたしているもう1人の人格の名を優しい声音で呼んだ。
«……ハルカ»
サタニアは真剣な眼差しでハルカと向き合う。
(…サタニア、ちゃん…?)
動揺が収まらないハルカの頬に、サタニアはそっと手を添える。
«…彼女たちヴァルキリー小隊は強いから大丈夫。どんなあなたも受け入れてくれるはず。私が保障する»
(で、でも……)
«……あなたは1人じゃない»
(だけど…ヴァルキリー小隊のみんなは『天使』に対して…)
«でももだけどもない。彼女たちを信じて、ハルカ»
「ーーーハルカ」
ハルカとサタニアの会話は、ヒカリの堂々とした声で途切れた。
「……ヒカリン」
サタニアと話しても、未だに気持ちの整理がつかないハルカは、
「さっきのお話は…き、気にしないでください! だ、大丈夫ですから!」
と、誤魔化そうとするがーーー
ヒカリは彼女の目の前へと数歩歩き、いつものように腕を組み、自信満々な表情をしてみせた。
「あたしは確かに『天使』は嫌いだし、見下すような事もたくさん言ってきたわ」
「……ヒ、ヒカリン……???」
既に知っている事を改めて言われ、ハルカは困惑する。
「それに対して頭を下げて謝るつもりは無いわ。 そこの根本的なところは今も大して変わってないもの」
「でもね、ハルカ」
照れくさい気持ちを隠す為、ヒカリはそこで1度深呼吸をし、目の前の『2人』に向かって語りかける。
「あんたと『サタニア』はもう立派なヴァルキリー小隊の一員なのよ? その辺の割り切りもできないようなら、あたしが許さないわ」
「«……!!»」
「そもそもの話、あんたが元天使って分かった段階で既に皆受け入れてるんだから……少しは信用しなさいよ、まったく……。 そんなちょっとやそっとじゃ、あんた達に対する考え方が変わるほどヤワじゃないわよ、ヴァルキリー小隊は」
いざ言い切ると、先程堪えた恥ずかしさがぶり返してきたのか…ヒカリは顔を隠すようにそっぽを向いた。
「ヒカ……リン…………う、うわぁぁぁぁん!!」
ヒカリのその言葉に、ハルカの中で限界まで堰き止めていたものがーーー決壊した。
泣き出してしまったハルカを、ヒカリは優しく抱き寄せる。
「私、ずっと……ずっと、頭から離れなかったんです」
「……気付けなくて、悪かったわね」
「うぅ……、き、嫌われるんじゃないかって……ぐすっ」
「さっきも言ったでしょ、嫌いになんかならないわ」
………
«……これで、一件落着»
***
約30分後…
「…そろそろ落ち着いた?」
「……はい」
ヒカリの問いに、ハルカは泣き腫らした目を擦りながら答えた。
「ヒカリンに、見苦しいところ見せちゃいましたね…えへへ……」
少しばかり頬を赤く染めながら、ゆっくりと彼女から離れるハルカ。
それを見て、ヒカリは「もう大丈夫だろう」と判断し、泣きじゃくったハルカの顔があった辺りから伝わる、制服のひんやりとした感触を気にしない事にした。
ハルカが胸に手を当てて深呼吸をするのを見て、ヒカリは問いかけた。
「……気持ちは固まった?」
それに対して、ハルカはーーー
「はい!」
と、清々しい声で返事をした。
「…さて、そろそろ寮に帰りましょ。帰りが遅くなって、心配してるかもしれないし」
「そうですね、さっきの話をみんなにもしなくちゃならないですから!」
そうして2人は沈みゆく夕日を背に、寮へと歩き出した。
(……柄にもないことしちゃったけど、やって良かったわね)
足取りが軽くなったハルカの後ろ姿を見て、ヒカリはそう思ったのであった。
…そしてその2つの姿を、静かに見守る者がいた。
***
「やれやれ、どうなるかと思ったけど……『終わりよければ全てよし』、かな」
ーーーミスリルとの[[emphasismark:極秘だったはずの話 > ・・・・・・・・・]]をしていた団長である。
ハルカとヒカリが自分達の話を聞いてしまったことに気付き、話が終わった後にこっそりと追いかけてきていたのだ。
「…あとはバベルで、デュカリオンやシャープと、緻密に構想を組まないとだな」
……その強化改修プランがまさか、「ハルカとサタニアが姿を切り替えて戦う」ところに落ち着くことになるのはーーーまだ、誰も知らない。
ゲーム内のミスリルの秘録ファイル、かなりシリアスでしたね。
新ハルカのストーリーもすごく楽しみです(*^^*)