マンダロリアンでグローグーが飯に襲われているのを見て描きたくなった作品です。
「なんで飯が液体なんだよ⋯⋯!」
そう言いつつ俺はカトラリーを机に叩き付け、突っ伏して悶えていた。
隣りに居る青肌の男が溜息をついて肌色の液体を啜る。
「またかよダット、味は普通だろうが」
「確かに味は悪くねぇよベイン、悪いのは液体である事と食欲をそそらない色だ」
目を閉じて一口汁を流し込むと、ダイナーの飯としてはしっかりした旨味があり、店主の頑張りが伺える。
しかし灰色っぽい肌色にドロっとした人肌程度の生温いスープは、前世で嫌という程食べていた牛丼がどれ程素晴らしいのかを思い出させる程のシロモノだ。
「はぁ〜⋯⋯我慢だ、もう少しだけの⋯⋯」
俺の名はランバー・ダット、日本人の記憶を持って生まれたこれでも結構名の売れた賞金稼ぎだ。
多少苦労はしたものの色々知っていたお陰なのか、若い頃からブラスターの扱いや身のこなし、反応速度が非才と噂される程にまで練り上げる事が出来ており、仕事も実直で丁寧にこなす為かなり稼いでいる。
「テメェはなんだかんだ随分溜め込んでるんだろ?それで食えば良いじゃねえか」
横にいる青肌はキャド・ベイン、デュロスという種族の男で腕はピカイチ、そろそろ賞金稼ぎランキングで抜かされそうになっている。
なんだかんだ、手が足りない時は雇い雇われという関係が続いている賞金稼ぎ仲間だった。
「いいや、半年くらい前に溜め込んだ財産の9割は使ったから仕事前に贅沢をする気はねぇよ」
「ハァ?何に使ったんだ?」
「あー⋯⋯その金を頭金として船を発注した」
「船だと?半年前まで溜め込んだダットの稼ぎの9割を頭金とする宇宙船⋯⋯」
ベインの真っ赤な瞳がカッと開く。
「テメェ、まさか!?」
「え?まさか今の情報だけで分かったのか?」
「確信はねぇが、ダットの稼ぎで頭金なら該当する船は少ねぇ⋯⋯戦争でも起こす気か!?」
やはり良い賞金稼ぎは頭も切れる、恐らくベインの予想は当たっているだろう。
「いいや、一隻を運用する程度で戦争は起こさんよ」
「まあそうだろうが⋯⋯それなら余計に分からんな、何をしようってんだ?」
俺はニヤリと笑い、水を飲んだ。
「もう完成しているから丁度今回の稼ぎで引き渡して貰う予定だ、仕事が終わったら見に来るか?」
『見えるか?』
「あぁ、どちらも狙える」
とある惑星の共和国軍集積所から200m程離れた位置、俺は伏せてスコープを覗きながら通信に答える。ベインは既に集積所の中に侵入している。
今回の仕事はパイク・シンジケートから、押収されたブツが首都に運ばれる前に奪取する事。無理なら焼き払う事も辞さないとの依頼だった。
『俺は右をやる、お前は左だ』
「カウント5、5⋯⋯4⋯⋯3⋯⋯2⋯⋯」
ゼロのタイミングでトリガー、発射されたスタン・ビームが左の歩哨の頭を揺らす。
ベインの方を見ると既にもう1人を絞め落としていた。
「お優しいこって」
『テメェが言えた口か』
俺は苦笑いしながら懐から携帯型のモニターを出す。
ベインが建物の中に入って見えなくなった為、ここからは遠隔でのサポートに回る。
「歩哨はまだ居るが既にかち合う事は無い筈だ。監視カメラも今ループ再生させたから暫くは気付かないだろう」
『続けて対応してくれ』
がさごそと無線から音が鳴り、続けて溜息が聞こえた。
『トラブルだ、既に船に荷物が積まれている』
「なんだと?」
『乗せ換えが要る、作戦通りにはいかないぞ』
当初は場所を確保した後運搬用のドロイドを詰めたトランスポーターで一気に乗り込み防衛し、乗せ終わり次第そのまま脱出する計画だった。
入手した情報では荷物を詰める予定はまだ後だった筈だが、どうやら勤勉な兵士が居る様だ。
すぐにベインへ指示を出す。
「機体は何だ?」
『低空強襲用の下にAT-TEを吊る奴だ、AT-TEの代わりに荷物のコンテナを下げている』
「なら渡したデバイスをジャックインしてくれ」
『⋯⋯やる気か?』
「ああ」
モニターを弄りながら、オーバーライド用のファイルが入った外部デバイスを刺す。
ここからが正念場だ。
『出来たぞ』
「そのまま待機してくれ、暫くはバレない」
警報やビーコンの類を次々にオフラインに、起動認証のロックを外して権限を移す。
燃料も満タン、これなら行けるはずだ。
「よし、外していいぞ」
『相変わらず早いな』
「慣れてるし準備もしたからな、運転はどうする?」
『俺がやる』
俺は乗ってきた船へと引き返しながらモニターを操作、遠隔でエンジンに火を入れる。
「ベインに権限を移した、ついでにここの無線シグナルも突き止めたから流すぞ」
『あぁ』
船に乗り込み浮き上がると、無線を合わせて待機。
【ん?もう移送の時間か?】
【いいや?どうした?】
【LAATのエンジンが起動した音が⋯⋯】
「お、耳の良いのが居るな」
『もう遅えよ』
モニターを操作すると貨物船の格納庫が開き、ベインの乗った宇宙船が顔を出す。LAATの貨物用トランスポーターで強襲艦だからスピードが出る機種である。
「対空砲火オフライン、他の格納庫ロック、いいぞ」
『じゃあな、頂いてくぜ』
【警報、警報だ!】
【駄目だ!動かない!】
【対空砲もやられてる!操作を受け付けない!】
急加速して集積所から発進する貨物船を見て慌ただしくなる通信を聞きつつ、俺とベインは悠々と軌道上にある輸送船へ向かう。
「最初の作戦よりスムーズに行ったな」
『バカ言え、トラブルはゴメンだ』
「そういう時の為の俺さ」
『⋯⋯違いない』
鉄火場が嫌いな訳ではないが、最近はテック方面のサポートに回る事が多くなっている。
今回の様に撃ち合う事無く、今回の様に宇宙船も一隻追加で奪えて実入りが良くなる様な事も多いからである。
「喜べ、目録に追加報酬が積まれてると書いてある」
『何度聞いても飽きない報告だな』
「あればあるほどってな」
まだまだ共和国軍は追ってこない。
この様子であれば、目的地まで直行だろうが⋯⋯
「先に到着予定の連絡だけ入れておくぞ」
『お好きに』
「良くやってくれた、流石だと言わせて貰おう」
惑星オーバ・ディアのシンジケート本拠地で俺達を出迎えたのはロム・パイク、まさかのリーダーだった。
「直々にお出迎えとはな」
「事前に裏切り者を映像証拠付きで通信を送ってくれたからな、シンジケートは礼儀を尽くすさ」
「ダット、テメェそんな事をしてたのか」
「今伝えたらドタバタするだろう?こっちの方がスマートに話が進むからな」
「流石、一流の賞金稼ぎは時間の使い方も上手い」
今回、パイク・シンジケートの荷物が共和国軍に奪われたのは身内に裏切って共和国に情報を流して報酬を得ていたパイクがいたのが原因だった。落ち着いている所を見るに裏切り者は既に対処済みなのだろう。
ロム・パイクは頷き、荷物に目を向けた。
「今ドロイド達に荷卸準備をさせてるから置き場所の指示を出してやってくれ、中身を確認しながらな」
「2番倉庫だ、誘導しろ」
ロム・パイクは部下達に向けて簡単に指示を出し、俺達の方へ向き直った。
「報酬は予定通りウピウピと通し番号でない銀河クレジットを両方用意してある。今部下達が持ってくる」
ウピウピはタトゥイーン辺りで主流のハット族が流通させている通貨で、銀河クレジットはこの辺りでは使えないが密輸で稼いでいるパイク・シンジケートだから用意できた共和国の通貨だ。
「契約は完了だ」
ベインがそう返答した後、俺はすかさずモニターを懐から出してロム・パイクへ言った。
「因みにハットの荷物も入っていた。このままならハットに返しに行くがどうする?」
「本当か?ならこっちで買い取ろう。恩が売れる」
「船はどうする?シグナル等は無効にしてあるが」
「そっちも貰おう、密輸するのに共和国軍の船は持ってこいだからなぁ」
ロム・パイクは部下を手招きする。
「精製スパイスを3種類渡せ」
「精製を?いいんですか?」
「構わん、シンジケートは十分な報酬を払う」
生ではなく精製スパイスをくれるのか。
麻薬だが、精製した物は単価が上がるだけでなく捌く事が出来る客が一気に増える。アウター・リムなら一箱交換でそうなりに豪華な家や船すらも手に入る。
ベインの方を見るとコクリと頷いた。
「取り引き成立だ、また仕事を待っている」
「ああ、手古摺りそうならまた呼ぼう」
ベインはウピウピの詰まったトランクを、俺は銀河クレジットの入ったトランクを持って後にした。
目の前でドロイド達が貰った精製スパイスの箱を重そうに運んでいる。
「約束通りなら俺が7でベインが3だが追加報酬貰ったし前に出てもらったからな、分前を増やそうか?」
「いらねぇよ、今回は結局の所テメェがほぼ片付けた様なモンじゃねぇか」
これは俺とベインの中では良く使っている契約で、仕事を持ってきた側が報酬の7割を貰い、手伝う側が残り3割を貰うという物だ。
一見不公平に見えるが交渉や事前準備に依頼完了時の飲み代、失敗した際の際の補填まで含めているので双方合意の契約なのである。
こういう部分でベインは意外に義理堅い為、追加報酬を受け取らない事も多いが⋯⋯
「そう言うな、そのウピウピ全額と精製スパイスを1箱やるから持っていけ」
「⋯⋯テメェのそういう気前の良い所は好きだぜ」
いつも仏頂面のベインがニヤリと笑う。
賞金稼ぎという人種は金払いが良い奴ほど好かれるのが当たり前だからだ。
「さぁ豪勢にいこうぜ!肉をたらふく食うぞ!」
「酒が飲めりゃあそれでいい」
パイク達はスパイスで豊かになっている関係で豪勢な生活を送っている者達が多い。
オーバ・ディアでの食事は初めてだが、大きな期待を込めて飯屋に向かって歩いていく。
「何で飯が魚しかねぇんだよ!肉はどこだよ!!」
「⋯⋯テメェのそういう所は嫌いだ」