BLEACH ~No Future Worth Your Ruin~ 作:冬冬✻
第1話 MEMORIES OF NOBODY YET
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あなたが空の玉座を欲しがるとして
世界はあなたを見つけるだろうか
世界があなたを欲しがるとして
私は世界を捨てられるだろうか
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「阿散井君」
「朽木ルキアを置いて、退がりたまえ」
男は穏やかな表情で語りかける。
しかし、その声は普段と比べて、あまりにも冷たく、
低いものだった。
藍染惣右介。
それがこの男の名であり、今となっては、
この尸魂界において世紀の大罪人の名と化していた。
その彼が今、かつての部下だった者に対して刃を向けている。
「……断る」
赤髪の死神は片膝をつきながらも、そう言い返す。
彼は既に満身創痍であり、包帯で覆われた身体を死覇装で覆い隠しているだけの状態であった。もっとも、その死覇装も所々が裂けており、真黒の中から白が浮かび上がっているのだが。しかし、膝をつこうと、その手には強い力が込められており、朽木ルキアと呼ばれた女はその腕の中にいた。
彼の名は阿散井恋次。
瀞霊廷に侵入した旅渦である黒崎一護から
彼女を託され、今こうしてその約束を果たさんとしている。
「…誰が離すかよ、バカ野郎が…!!」
恋次は顔を上げ、そう強く口にした。
藍染はその心が未だ折れていないことを察する。
先程までと違い、その表情には驚きや、絶望だけでなく、
普段の彼らしい威勢のよさが戻り始めていたのだ。
「そうか」
その決意を聞き、彼が何を思ったのか、
それは、恋次にはわからなかった。
ハッ、笑ってやがンのに笑ってねえな…
藍染の笑みが、僅かに深くなる。
「残念だ」
その言葉とは裏腹に、彼の瞳には、一切の惜しみも感じられない。
刃は無常にも振り降ろされた。
次の瞬間、その刃が空を切っていた。
その場所で本来倒れているはずの恋次の姿はない。あるのは何かが通り過ぎた跡だけ。
「早かったね」
藍染は静かに口を開く。
その視線は未だに、振り下ろした鏡花水月の刃先から動いていない。
しかし、既に彼の意識は別の場所へ向けられていたようだった。
恋次はルキアを抱えたまま、自分たちがいたはずの場所を見ていた。
先程まで、あの場所で膝をついていた。
その体は重く、迫る刃を避ける余裕などなかった。
そのはずだった。
ルキアもまた、有り得ないものを見たという恋次の表情を、
彼の腕の中から見上げていた。
そんな彼らに背後から一人の青年が声をかける。
肩に五番隊の副官章を付けた死神。
「阿散井、朽木。間に合ってよかった」
その声に振り返った恋次は思わず、目を見開く。
そこに立っていたのは、先程、自分とルキアを単身逃がした男だった。その後、藍染と遭遇し、少しして東仙と市丸が合流してきた時点で、
恋次の心にはある可能性が色濃く浮かんでいた。
「
東仙の野郎だけ戻ってきたから、てっきり殺られちまったと……」
――ゴツン!!
そんな恋次の頭に鈍い音が炸裂する。
「このたわけ!!勝手に死人にするなど、柊副隊長に失礼であろう!!」
「オメエもさっき似たようなこと言ってたじゃねえかよ……」
恋次の返しにルキアは口を黙らせる。
どうやら彼女も先程まで、似た様な心境だったらしい。
そして、そのやり取りに、柊と呼ばれた死神は思わず吹き出す。
「二人とも元気そうでよかった」
その声は、どこか安堵に近いものが含まれており、
恋次とルキアもそれに気づいた。
あんな状況になっても、
してたのかよ…
彼にとって、自分の優先度は最も低いのだと、恋次はそう感じた。
当の柊本人も、暫く目の前の2人を見つめていたが、やがて、
その視線は尸魂界を欺いた大罪人の方へと移る。
「藍染隊長、止めに来ましたよ」
その声には強い意思が宿っている。
ただの敵への言葉ではない。
それは百年物の決意であり、
彼にとっての歯車が動き出した日から、
今日まで持ち続けたものであった。
そして、その意志をぶつけられた男もまた、
決意の重みとそこに込められた覚悟を理解していた。だからこそ、
彼の顔に浮かび上がっていた笑みは、より一層深いものへと変わった。
「柊君、君一人で止めるつもりかい?」
その言葉に最初に反応したのは、柊ではなく、阿散井恋次だった。
目の前には藍染惣右介。その後ろには、無言でこちらに顔を向ける東仙要と、いつもと変わらぬ不敵な笑みを浮かべながら、眼前に広がる光景を楽しそうに見物している市丸ギンの姿がある。
柊副隊長一人で、どうにかできるわけがねえ……
恋次がその結論に辿り着くには、それほど時間はかからなかった。
柊は自分よりも遥かに長い間、副隊長として務めている。
詳しい在任歴などはあまり知らないが、自分が五番隊に配属された時に既に五番隊の副隊長は彼であった。だが、柊がいくら他の副隊長よりも実力があったとしても、隊長三人から自分とルキアを守り抜くなど、まず不可能だ。実際、東仙を単独で足止めしていたことを考えても、副隊長の実力ではないのだろう。しかし、それでも今の状況は命が幾つあっても足りない。
そんな恋次を余所に、柊はふと口元を緩めた。余裕でも、諦めでもない。
それは……
「いえ……一人じゃありませんよ」
その直後、二つの強大な霊圧が柊の後ろへ現れる。
「柊、言われた通り連れてきたぞ」
白銀の髪をした、小柄な死神が柊へ声をかけた。彼は見た目でいえば、まだ少年のような外見をしているが、その霊圧は大きく、恋次とも柊とも違う、白い隊長羽織を身につけていた。
――彼の名は十番隊隊長、日番谷冬獅郎。
「日番谷隊長、ありがとうございます。
それに更木隊長も」
「なんだ、ほんとうに生きてんじゃねぇか」
もう一人の眼帯を付けた大男が口角を上げながら呟く。
しかし、そこにあるのは驚きではなく、単に死んだと思っていた男が生きており、お陰で斬り合う相手が一人増えたという認識でしかなかった。
柊は、彼が藍染への興味を持ってくれていると察し、一言だけ伝える。
「更木隊長」
「あァ?」
「藍染隊長は任せます」
大男は答えなかった。
彼は護廷の守護などには対して興味はない。
今の頼みも、彼にとっては守るべき任務でもなんでもなかった。
しかし、男はその口元を大きく吊り上げる。
そして。
――ブチッ。
眼帯を引き剥がした。
次の瞬間、凄まじい霊圧が周囲へ解き放たれる。
その暴力的な霊圧を受けて、大地は軋み、大気が悲鳴をあげた。
勿論、その圧は彼の眼前に立つ三人の死神たちにも伝わっている。
その中でも、東仙は険しい表情でそれを見据えていた。彼は盲目であり、視界は闇にある。しかし、その霊圧は彼にとって、目を背けられないものであった。その溢れ出す力の奔流は目を閉じていても、
視えてしまう。
自身の卍解――閻魔蟋蟀を破った男。
彼の五感を全て奪いながら、圧倒的力の暴力によって捩じ伏せられた。その記憶が東仙の警戒心を掻き立てる。
大男はいくつも刃零れした斬魄刀を肩に担ぐ。
彼の刀は始解すらしていない。死神であれば、誰もが持つ
浅打でしかなかった。
にも関わらず、その存在は周囲を押しつぶす様な圧を放っていた。
最強の個であり、力の権化。
人は彼を、かつての最狂の剣士の名に準えて、
更木剣八と呼ぶ。
「簡単にくたばるんじゃねえぞ、藍染!!」
その言葉に東仙は思わず、刀を握る手に力を込める。彼にとっては目の前の男は、斬ることを楽しみ、暴力を肯定するという、東仙自身の信念と決して相容れぬものであった。
しかし、彼が更木剣八へ刃を向けようとした、その瞬間。もうひとつの霊圧が跳ね上がる。日番谷は自らの斬魄刀を東仙へと向け、
鋭い声で叫ぶ。
「余所見してんじゃねえ!」
「卍解!!」
「――大紅蓮氷輪丸ッ!!」
その瞬間、彼の周囲に巨大な霊圧と、渦巻く冷気が立ち昇る。足元は瞬時に凍り始め、背中からは氷で造られた翼が広がった。
二つの双翼を大きくはためかせながら、東仙へと勢いよく斬りかかる彼の姿は、まるで、氷の飛竜の様であった。
「テメエの相手は俺だ、東仙!!」
日番谷から向けられた剣気を受けながら、
東仙もそれに応じるかのように斬魄刀を構え直す。
「……ほな、僕が」
二つの戦場を眺めていた、市丸ギンが、ゆっくりと歩き出す。その表情は隊長二人の加勢に動じる様子もなく、狐面のような形相は、
ただ、愉しいものを見るかのような深い笑みを浮かべていた。
歩き出した足取りも非常にゆっくりであり、まるで、散歩へ出ているような、異常なまでに自然なものであったり。彼にとっては、まるでここの戦場で起きることなど、暇潰しでしかないかのように。
しかし。
「行かせないよ、ギン」
足が止まる。
ギンの前には斬魄刀を右手に持った柊が立っていた。
その表情は悲しみと敵を斬るという意思が混じりあっているように見え、いつもの柊らしい笑みは浮かんでいなかった。
「…………」
互いに、互いを見ながら、一瞬の静寂が二人の間に生まれる。
次の瞬間、口を開いたのはギンだった。
「ほんま、困りましたなァ」
まるで、日常の些細な問題にでも遭遇したかのような口調だった。
隊務の中で、ギンが柊に軽口を叩いていた結果、書類整理を手伝わされた時があった。
今も、その時と何も変わらない。
困ったといいながら、顔には笑みを浮かべている。そんなことを思い出して、柊の斬魄刀を握る手に力が入る。
「僕かて、
ギンは表情を変えずに続ける。
それに、柊は答えない。
ただ斬魄刀の刃をギンへと向ける。
その様子を見て、ギンは一瞬だけその笑みを消した。
「……せやけど」
「そこ退いてもらえへんのやったら」
彼の口元には、再び笑みが浮かんでいた。
手が、刀の柄へと伸びる。
そして、その刺すような霊圧も膨れ上がった。
「死んでもらわなアカンですわ」
その瞬間、ギンの目が微かに開く、その隙間からは水色の瞳が顔を覗かせていた。
「――射殺せ、神鎗」
次の瞬間、小刀の刀身が凄まじい速度で標的へと向かう。風を斬る音すら置き去りにする刃は、ただ静かに伸びていた。
その刃を見ながら、柊は静かに口を開く。
「――疾れ、風切」
霊圧が膨れ上がり。
その腕で斬魄刀が振るわれる。
瞬間、刀身には風の奔流が立ち込み、
それは、巨大な斬撃となって前方へ疾った。
神鎗と風切。
二つの刃が激突しようとした、
その瞬間―――
時は、記憶を辿るように遡る。
***
――百十年前。
瀞霊廷、五番隊執務室。
「……居ない?」
「はい」
「さっきまで居たんでしょ?」
「ええ。確かにいらっしゃいましたが」
「どこ行ったんだ、あの人……」
五番隊隊舎、その執務室。
そこでは一人の青年が、隊士からの報告に頭を抱えていた。
青年の名は柊周介、五番隊の第三席。
黒髪に、中性的な顔立ち、
その雰囲気はどこかそよ風のような柔らかさがある。
これは一人の死神が、いずれ世界を巻き込む渦となる物語。
第1話 MEMORIES OF NOBODY YET 完
Q. 今後の展開で、特に楽しみにしている要素は?
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柊と藍染・ギンたちの関係性
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柊の戦略や頭脳戦、駆け引き
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原作とは異なる歴史や展開
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平子・浦原など原作キャラたちとの交流
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斬魄刀の能力や戦闘シーン