ガラスは赤い羽根を閉じ込める。   作:an-ryuka

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第12話 返されたもの

 

三度目の移動先にも、黒い霧が現れた。

 

扉の前ではなかった。

 

緑谷がいた部屋の、天井近く。

 

監視映像には、黒い染みのようなものが数秒だけ映っていた。相澤が顔を上げた時には、既に閉じている。

 

ホークスは映像を止めた。

 

部屋の割り当てを決めたのは、緑谷が建物へ到着したあとだった。使用する棟は複数用意し、現場で選ばせた。警護の連絡経路も、前の二回とは分けている。

 

それでも、来た。

 

「居場所が漏れてるんじゃない」

 

ホークスは呟いた。

 

担当者が顔を上げる。

 

「居場所を変えても、本人が見えてるんだ」

 

*

 

ラグドールは、すぐに来てくれた。

 

個性は戻っている。

 

その確認を、彼女自身が何度もしていた。

 

「緑谷君は、今も分かります?」

 

「分かるよ。合宿のときに見てるから」

 

「返してもらったあと、もう一度会い直さなくても?」

 

「うん。覚えてる対象は、そのまま」

 

ホークスは、研究施設から押収した記録を開いた。

 

同じ個性名に、複数の管理番号が付いている。

 

当初は、試料の採取番号か、保管先の区別かと思われていた。だが、それぞれ別の検体への移植記録がある。単に同じものを移動したという順序にはなっていなかった。

 

「個性を、複製している可能性があります」

 

ラグドールの顔が止まった。

 

「私のも?」

 

「まだ断定はできません。でも、あいつはあなたに返した。自分の手元からなくした、とは言ってない」

 

彼女が、自分の手を見た。

 

戻ったものが、また汚されたような顔だった。

 

ホークスは先に言った。

 

「返してもらったのが間違いだった、って話じゃありません」

 

ラグドールは顔を上げた。

 

「戻ってなかったら、今も向こうだけが使ってた。あなたの個性は、あなたのものです」

 

彼女はゆっくり頷いた。

 

「じゃあ、こっちも追える」

 

「はい」

 

ホークスは緑谷の位置を示した図を出した。

 

「もし連れていかれても、探せる。そのために、力を貸してください」

 

ラグドールは椅子を引き寄せた。

 

「連れていかれる前にも、できることがあるよ。あの子の周りにいる、私が知ってる人たち。位置が急に変わったら、すぐ言う」

 

ホークスは頷いた。

 

返したことまで、失敗にしない。

 

相手が残したものを、こちらでも使う。

 

*

 

緑谷の警護は、隠すことを中心にしたものから変わった。

 

居場所を知られても防ぐ。

 

周囲に生徒や一般人のいない訓練施設を使い、警護の人数と配置を見直した。移動させ続ければ、そのたびに車と道路を危険に晒すことになる。

 

オールマイトは、緑谷と同じ棟に残ると言った。

 

相澤もいた。

 

外周には警察とヒーロー。指揮所は離した。ホークスはラグドールと一緒に、映像と無線を見ていた。

 

机の下で、足を組み替える。

 

長く同じ姿勢でいると、まだ背中が痛んだ。

 

『ホークスさん』

 

緑谷から連絡が入った。

 

『移動、終わりました』

 

「確認してます。今日は、そちらで待機してください」

 

『はい』

 

返事のあと、少し間があった。

 

『僕のせいで、皆さんが動けなくなるのは』

 

「そうならないように、人を割り振る仕事もしてます」

 

ホークスは画面の配置図を見た。

 

「君が勝手に動くと、そっちの仕事が増えるんで。今は待っててくれた方が助かります」

 

『……分かりました』

 

「何か欲しいものがあったら言って。飯とか、教材とか」

 

『ノートが、もう一冊あると』

 

「了解」

 

通信を切ると、ラグドールが小さく笑った。

 

「勉強するんだ」

 

「するでしょうね、あの子は」

 

ホークスは補給品の欄に、ノートと書いた。

 

その横に、ペンも足した。

 

*

 

襲撃は、日暮れ前に始まった。

 

最初の変化は、警報より早かった。

 

「相澤君が動いた」

 

ラグドールが言った。

 

「違う。飛んだ。別の棟にいる!」

 

ホークスは映像を切り替えた。

 

緑谷のいる部屋に、白い光が残っていた。閃光。黒い霧。覆いかぶさるように立ったオールマイトの背中。

 

相澤は、隣棟の廊下に投げ出されていた。

 

『敵襲! 複数のゲート!』

 

ホークスは手元の回線を開いた。

 

「第二班、相澤さんの経路を確保。窓の外へ出さないで、建物内で戻して!」

 

相澤は起き上がっていた。

 

捕縛布が手すりへ巻きつく。身体が引かれ、階段を二段飛ばしで降りる。

 

目を閉じさせ、その一瞬に、遠ざけた。

 

黒霧が狙ったのは、まずそこだった。

 

主棟の壁が震えた。

 

オールマイトが、霧の向こうへ拳を突き入れていた。

 

画面が白く飛ぶ。

 

音が遅れて割れた。

 

映像が戻ったとき、入口の壁がなくなっていた。外に、顔を器具で覆った男が立っている。

 

オール・フォー・ワン。

 

避けていた衝突を、今度は自分から起こしに来た。

 

『少年を奥へ!』

 

オールマイトが叫んだ。

 

緑谷は後方へ走った。警護のヒーローがその前へ出る。

 

黒い霧が、床に開いた。

 

小さい。

 

足を呑み込むほどではなかった。

 

緑谷が跳ねるように身を引く。脚の裾に、何かが刺さっていた。

 

彼の身体を走っていた光が、途切れた。

 

ホークスは椅子を倒しかけた。

 

「接触させないで! 薬です!」

 

別の霧が、緑谷の腰の高さへ開いた。

 

警護の男が腕を掴む。

 

男はそのまま少年を引き戻そうとした。

 

そこへ、もう一つ、黒い面が滑り込んだ。

 

警護の男だけが、廊下の端に開いた出口から転がり出る。

 

緑谷が、向こう側から腕を伸ばした。

 

指が、映像の中で一瞬見えた。

 

それから、消えた。

 

*

 

「位置!」

 

ホークスが言った。

 

ラグドールは目を閉じていた。

 

「遠い。南西。海の方、建物の中」

 

担当者が地図を広げる。

 

ラグドールが画面を指した。

 

「ここ。動いてない」

 

物流用の埋立地。

 

古い冷蔵倉庫が並ぶ区画だった。

 

ホークスは現地の警察へ連絡した。航空隊、近隣のヒーロー、既に待機させていた車両。順に動かす。

 

一つずつの指示を、言い切る。

 

同時には喋れない。

 

以前なら、喋りながら羽を飛ばせた。

 

今は、電話が繋がる音を待たなければならなかった。

 

「最寄り、到着まで」

 

『八分』

 

「了解。入口を押さえたら、必ずこちらへ」

 

八分。

 

長い。

 

長いが、距離は縮まらない。

 

訓練施設では、オールマイトが戦っていた。

 

相澤を戻す経路を、黒霧が塞いでいる。オール・フォー・ワンは、戻ってくるヒーローをまとめて吹き飛ばそうとした。

 

オールマイトが、前へ出た。

 

衝撃を受ける。

 

後ろにいた二人は、転ばずに済んだ。

 

次の瞬間、オールマイトの拳が男の顔へ届いた。

 

器具の一部が砕ける。

 

ホークスは息を止めた。

 

倒せる。

 

そう思った。

 

だが、崩れた男の身体を、黒い霧が受け止めた。

 

『待て!』

 

オールマイトが踏み込む。

 

その足元で、建物の支柱が折れた。

 

上階にいた警護員の声が、無線へ飛び込んできた。

 

オールマイトの顔が上を向く。

 

追うために伸ばした腕が、落ちる梁を受け止めた。

 

霧は閉じた。

 

ホークスは、救助の班へ回線を切り替えた。

 

*

 

玻璃は、運び込まれた少年の手首を押さえた。

 

先生に言われたからだった。

 

夢の中に人影を見たことがあるかもしれない、と聞いていた。そうした記憶があれば探すように、と。

 

表面にあるのは、さっきの部屋だった。

 

光。

 

黒い霧。

 

誰かの大きな背中。

 

力を出そうとして、出なかった感覚。

 

玻璃は、少し顔をしかめた。

 

あの日の啓悟も、こうだったのだろうか。

 

手を離したくなったが、先生がそばへ来た。

 

「見えたかい」

 

「今、起きたことばっかり。怖がってる」

 

緑谷は、目を開けていた。

 

身体を起こそうとする。拘束された腕が動く。

 

「触るな」

 

玻璃は彼を見た。

 

「夢のことを聞きたいだけ」

 

「嫌だ」

 

「玻璃、急がなくていい」

 

先生が言った。

 

「今は、彼の状態を確かめよう」

 

玻璃は手を離した。

 

先生が代わりに、少年の腕へ触れた。

 

緑谷の肩が強く跳ねる。

 

「渡さない」

 

声が震えていた。

 

でも、はっきり言った。

 

「僕のものだけじゃ、ないんだ」

 

先生の手が止まった。

 

しばらく、そのままだった。

 

何も起きていないように見えた。

 

隣の機械を見ていたドクターが、低い声で何かを告げた。薬の作用が、まだ十分ではない。

 

先生は指を離さなかった。

 

緑谷は目を閉じ、歯を食いしばっていた。

 

玻璃には、その奥に何があるのか見えない。

 

本人が覚えている夢なら読める。今、誰かの声を聞いているなら、その体験も拾えるかもしれない。

 

だが、個性の中にいるという誰かを、直接取り出すことはできなかった。

 

ドクターが機械を操作した。

 

「これ以上は、因子そのものを傷める」

 

「その手前でいい」

 

先生が答えた。

 

緑谷が息を吸った。

 

起き上がろうとしていた身体が、急に沈む。

 

眠ったのではない。

 

目は開いていた。

 

「……待って」

 

誰に言ったのか、玻璃には分からなかった。

 

先生の腕へ、太い筋が浮いた。

 

袖が裂ける。

 

何かを握り潰すように指が曲がり、その手から、薄い光が広がった。

 

寝台の金属が鳴った。

 

ドクターが声を上げた。

 

先生は、緑谷の腕を離した。

 

肩で、一度だけ大きく息をする。

 

身体が軋むような音がして、それから、ゆっくりと背筋が伸びた。

 

緑谷が自分の手を見た。

 

指を動かす。

 

何度も。

 

玻璃は、その動きを知っていた。

 

*

 

「動いた」

 

ラグドールが言った。

 

ホークスは地図を見た。

 

「どちらへ」

 

「違う、また飛んだ。近い。ここから東、病院の前」

 

ホークスは担当者を見た。

 

その病院は、救出後の受け入れ先として確保していた場所だった。

 

車両が向かう。

 

病院の監視映像が、指揮所へ繋がった。

 

救急入口の脇に、緑谷がいた。

 

座らされている。

 

隣に黒霧が立ち、職員が出てくると、数歩下がった。

 

ホークスは音声回線を開かせた。

 

「本人から離れろ」

 

黒霧が、カメラの方を向いた。

 

「治療に必要な情報を、お渡しします」

 

床へ、書類の入った袋を置く。

 

緑谷は顔を上げなかった。

 

医療スタッフが近づく。警察官がその間へ入り、黒霧に止まるよう命じた。

 

黒霧は、それ以上近づかなかった。

 

「薬の作用は、時間とともに低下します。ただし、個性の回復はありません」

 

ホークスは、机に置いた手へ力を入れた。

 

「何をした」

 

黒霧は答えなかった。

 

霧が、彼の姿を隠した。

 

職員が緑谷の前へ膝をつく。

 

少年は自分の手を見たまま、何か言った。

 

マイクには拾えなかった。

 

ホークスは指揮を隣の職員へ引き継ぎ、病院へ向かう車を呼んだ。

 

走り出してから、背中が痛むことを思い出した。

 

止まらなかった。

 

*

 

病院で、緑谷は同じことを繰り返した。

 

渡していない。

 

自分は、渡そうと思っていない。

 

医師は頷きながら診察した。

 

ホークスが入ったときにも、少年はその説明をしていた。

 

「聞いてます」

 

ホークスは椅子を引いた。

 

「君が差し出したとは、誰も思ってない」

 

緑谷の口が止まった。

 

「薬が、まだ効いているだけかもしれません」

 

「検査してます」

 

「だから、まだ」

 

その先が続かなかった。

 

ホークスは黙っていた。

 

今すぐ大丈夫だと言えば、嘘になる。

 

なくなったのだと決めつければ、それも、まだ自分の知っている範囲を越える。

 

緑谷の指が、シーツを掴んだ。

 

「声が、しなくなった」

 

ホークスは顔を上げた。

 

「最後、何か、言ってたと思うんです。皆、止めようとしてて。でも、急に」

 

少年は唇を噛んだ。

 

「静かになって」

 

ホークスは、自分の肩から音が消えた瞬間を思い出した。

 

あれとは違う。

 

この少年が失ったものを、自分の知っている痛みに当てはめてはいけない。

 

それでも、次の一言は聞けた。

 

「そのあとも、君の意識はあった?」

 

緑谷は頷いた。

 

「嫌だと思ってた?」

 

「ずっと」

 

ホークスは記録担当へ目を向けた。

 

書いてもらう。

 

本人の意思は失われていなかった。

 

個性の働きが、その意思を守れなくなった。

 

まだ仮説だった。

 

だが、少年が弱かったから奪われたという説明を、残してはいけなかった。

 

*

 

オールマイトが運ばれてきたのは、それから一時間後だった。

 

自分の足で歩いていた。

 

だが、支える者が隣に二人いた。

 

痩せた身体には、もうあの姿へ戻る余力がなかった。

 

訓練施設で、最後まで梁を支えた。

 

閉じ込められた警護員が出るのを待ち、崩れる床から人を運んだ。

 

その報告を聞きながら、ホークスは廊下で待った。

 

「少年は」

 

オールマイトが尋ねた。

 

「命に別状はありません。今、検査を続けています」

 

彼は目を閉じた。

 

安堵した顔だった。

 

それから、ホークスを見る。

 

「個性は」

 

「まだ戻っていません」

 

オールマイトの喉が動いた。

 

壁に手をつく。

 

ホークスは手を出しかけ、止めた。隣の医療スタッフが、すぐに椅子を寄せた。

 

「会えますか」

 

オールマイトは聞いた。

 

誰かに許可を求める声だった。

 

「本人に確認します」

 

ホークスは答えた。

 

緑谷は、会いたいと言った。

 

扉を開けると、少年がベッドの上で身体を起こした。

 

オールマイトは、その前へ歩いた。

 

どちらも、すぐには話さなかった。

 

ホークスは外へ出て、扉を閉めた。

 

*

 

オール・フォー・ワンから連絡が来たのは、その夜だった。

 

あの弁護士を通してではなかった。

 

確保された研究所の端末へ、通信が入った。警察が記録し、ホークスたちへ回線を繋いだ。

 

画面に映った男は、椅子へ座っていた。

 

顔の器具は替わっている。

 

肩から腕にかけて、太い固定具がついていた。無傷ではない。得たものを、楽に扱えているようにも見えなかった。

 

それでも、声は明るかった。

 

「少年は、無事に着いたかな」

 

ホークスは答えた。

 

「あなたの用件は」

 

「今後について、一つ伝えておこうと思ってね」

 

男の手が、肘掛けを撫でた。

 

「僕から彼を探す必要は、もうなくなった。彼は学校へ戻っていい」

 

塚内の手が、机の上で握られた。

 

ホークスは画面を見ていた。

 

「あなたの許可で通ってる学校じゃありませんよ」

 

「もちろん。邪魔をしないと伝えているだけだ」

 

「個性を返せ」

 

オールマイトの声だった。

 

別室から、回線に入っている。

 

男は少し顔を上げた。

 

「その話は、終わったよ」

 

オールマイトが息を吸う音がした。

 

男は続けた。

 

「君は今日も、人を助けたそうだね。最後まで君らしい」

 

「そのために、あの子へ渡したんだ」

 

「彼も、人を助けることはできる。力がなくてもね」

 

ホークスは、指を机へ押しつけた。

 

自分に言われた言葉ではなかった。

 

それでも、殴りたかった。

 

男は、こちらの沈黙を待った。

 

「君たちの通常の活動を、妨げるつもりはない。これからも必要な情報は届けよう」

 

「それで、済むと思ってるんですか」

 

ホークスが言った。

 

男は少し黙った。

 

「済まないと思う人間が、これから何をするか。その話をすることはできるよ」

 

画面が暗くなった。

 

通信を追っていた担当者が、別の経路を確認し始める。

 

誰も、椅子から立たなかった。

 

ホークスは、通話の記録が保存されたことを確かめた。

 

消してはいけない。

 

この男が、何を言ったか。

 

こちらが、何を返せなかったか。

 

*

 

三日後、緑谷の体内から薬の作用がほぼ消えたと判断された。

 

個性は戻らなかった。

 

同じ頃、確保した倉庫からも報告が上がった。

 

残された装置の測定記録と、黒霧が病院へ置いていった医療資料。別々の経路から得られた記録が、同じ変化を示していた。

 

少年の個性因子の反応が弱まり、消失したこと。

 

ほぼ同じ時刻に、別の被験体で、測定範囲を大きく超える反応が現れたこと。

 

ワン・フォー・オールは、奪われた。

 

オールマイトも、残された力を使い切った。

 

報告書へ、その二行を書く担当者の手が止まった。

 

ホークスは訂正を求めなかった。

 

別の言葉にしても、取り戻せない。

 

ただ、その下にある一行だけは、直してもらった。

 

本人の抵抗にもかかわらず、個性を奪取された。

 

意思による譲渡ではない。

 

そこは、明確に残した。

 

*

 

緑谷が退院へ向けた説明を受けた日、ホークスは病室へノートを持っていった。

 

襲撃前に頼まれていたものだった。

 

買って、補給の荷物に入れたまま、届けられずに残っていた。

 

「遅くなりました」

 

緑谷は両手で受け取った。

 

表紙を撫でる。

 

その指が動くのを見て、ホークスは少し息をついた。

 

まだ、動く。

 

何かを書ける。

 

「学校には、戻れそう?」

 

「戻ります」

 

緑谷は答えた。

 

「何ができるかは、まだ分からないです。でも、戻って考えます」

 

ホークスは頷いた。

 

その返事を、自分の救いに使わないようにした。

 

少年が前を向いたから、自分たちの失敗が軽くなるわけではない。

 

それでも、そのための手伝いはできる。

 

「困ったことがあったら、連絡してください。俺ができんことでも、誰に聞けばいいかは探せるんで」

 

「はい」

 

緑谷はノートを開いた。

 

最初の頁に、日付を書いた。

 

ホークスはその文字を見てから、席を立った。

 

廊下へ出ると、携帯に連絡が来ていた。

 

商店街の会計担当だった男について、面会の希望が出ている。

 

あの惣菜店には、嫌がらせの形跡はない。

 

照明の寄贈団体は、警備契約の条件を一部変更した。

 

すべて、まだ続いている仕事だった。

 

ホークスは一つずつ返事をした。

 

最後に、今日の報告書を開く。

 

緑谷出久、救出。

 

その行だけなら、成功に見えた。

 

ホークスは、その下へ、自分で書いた。

 

警護失敗。

 

個性奪取を阻止できず。

 

それから画面を閉じ、次の面会へ向かった。

 

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