ガラスは赤い羽根を閉じ込める。   作:an-ryuka

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第3話 返してほしいもの

 

 男は、階段から落ちる寸前まで、自分の腕を見ていた。

 

 右手を開く。閉じる。指の間へ息を吐くように力を込める。

 何も起こらない。

 もう一度同じことをして、後ろへ下がり、踵を踏み外した。

 

 ホークスは先に羽根を飛ばした。

 背中を受け、頭を壁から離す。男の体を踊り場へ戻すと、羽根を振り払おうとした手まで一緒に支えた。

 

「落ち着いて。階段から落ちると、普通に痛いですよ」

「出ねえ」

「そうみたいですね。怪我は」

「出ねえんだよ!」

 

 こちらへ向けて手を突き出す。

 登録された個性が正しければ、その掌からは相手を吹き飛ばすだけの圧縮空気が出るはずだった。

 

 ホークスは男の正面を外したまま、顔を見た。

 奥歯が鳴っている。

 

「いつから?」

「分かんねえ。起きたら……おい、戻せよ。お前、ヒーローだろ」

 

 男の肩を支えていた羽根が、シャツ越しの震えを拾った。

 

「確認します。まず座って」

 

 手錠をかけるために警察官が近づくと、男はまた腕を振った。

 何も起こらなかった。

 

 抵抗を押さえるのに、大きな羽根は一枚で足りた。

 

     *

 

 発見されたのは三人だった。

 

 郊外の使われていない事務所。匿名の通報を受けた警察官が踏み込むと、指名手配中の男たちが床に寝かされていた。

 目を覚ました一人が逃げようとして、廊下へ出たところでホークスと鉢合わせたのだ。

 

 全員が、個性を使えないと訴えていた。

 

 現場には、彼らが使っていた携帯や帳簿も置かれている。捜査員が端末の一つを確保したとき、画面には、子供の写真が開かれたままだった。

 

 学校の門。

 登校する子供たち。

 一人だけ、赤い丸で囲まれている。

 

 ホークスは画面を見て、手配資料の内容を思い出した。

 

 この三人は、ある密売組織の関係者を脅迫していた。組織の金の流れを警察へ話した男と、その家族だ。

 家族は保護されたが、連中は居場所を探し続けていた。直接手を出せなければ、親戚や、以前の職場へ行く。子供の通っていた学校へ、何度も車を寄せる。

 

 捕まえたかった相手には違いない。

 

 ホークスは携帯を捜査員へ返した。

 

「これ、家族にはまだ見せないで。確認が必要なときだけでお願いします」

「分かりました」

 

 階段の方から、戻せ、と叫ぶ声がした。

 

 返せと言われても、ホークスには失われたものを戻す方法が分からない。

 怒鳴る男を黙らせるより、そのことの方が気になった。

 

 自分の翼が無意識に開きかけている。

 狭い廊下で広げる理由はない。彼は肩を動かし、元の幅へ畳んだ。

 

     *

 

 玻璃に連絡を入れたのは、三人が病院へ運ばれたあとだった。

 

「記憶の確認をお願いします。個性が使えなくなる直前に、何があったか」

『全員ですか』

「まず一人。聞いた話に、時間の抜けがある」

『分かりました。準備が済んだら行きます』

 

 仕事の声だった。

 昨夜、明日は一緒に食べようと話した相手と、同じ声ではあるのだけれど。

 

 来た彼女には、対象者の資料と、確認してほしい時間帯だけが渡された。

 現場の詳しい様子や、三人の証言の細かな一致は、先には教えない。閲覧で得た情報と、こちらが教えた情報を混ぜないためだった。

 

 対象になった男は、処置を受けて眠っていた。

 

 玻璃が手首へ触れる。

 ホークスは今度、彼女の正面ではなく、少し斜め後ろに立った。動く指と、男の顔と、記録係の手元が一度に見える位置だった。

 

「車に乗ってます。昨日の夜ですね。……建物に入る。商談か何かに呼ばれたみたい」

「誰に?」

「声じゃなくて、連絡が来てる。携帯で。相手の名前は分からない」

 

 記録係が時刻を確かめた。

 

「それから?」

「エレベーター。五階。廊下……」

 

 玻璃が黙った。

 

 男の手首を支える指は、動かない。

 

 ホークスは待った。急かしても、見えるものが増えるわけではない。

 ただ、彼女が一度だけ眉を上げたのを見逃さなかった。

 

「目盛さん?」

「ここから、今朝の病院になってます」

「間に何もない?」

「今のところ、見つからないです」

 

 別の順番で探し直しても、結果は同じだった。

 知らない建物の廊下を歩く。それから、病院の天井。

 その間に、男は個性を使えなくなり、別の場所へ運ばれていた。

 

「気絶してた、ということですか」

「それは私には分かりません。覚えてないところは見られないので」

 

 玻璃は顔を上げた。

 

 ホークスは頷き、その答えを記録させた。

 昨夜の記憶がないことと、昨夜ずっと意識がなかったことは、同じではない。

 

 残る二人にも、似た空白があった。

 

 三人とも商談に呼ばれたことは覚えている。接触した相手の顔や、個性が使えなくなった瞬間は覚えていない。

 他の日時に関する記憶は読めた。押収された帳簿と一致する取引も、家族を脅すために出向いた先も。

 

 得られた情報は少なくなかった。

 ただし、彼らをここへ置いた人間に繋がる部分だけが、残らなかった。

 

 昼を過ぎる頃には、別の報告も届いた。

 

 ラグドールが、個性を使えなくなっていた。

 

     *

 

「個性を奪う人間がいる」

 

 塚内は、余計な前置きをしなかった。

 

 公安の一室だった。

 ホークスの前には、三人の資料と、ラグドールについて共有された所見が置かれている。閲覧できる者は限られ、玻璃もこの説明には呼ばれていなかった。

 

「一時的に封じるんじゃなく?」

「自分のものとして奪い、別の人間へ与えることもできる。そういう相手だ」

「……便利ですね」

 

 口にしてから、自分の声が思ったより軽く出たことに気づいた。

 

 塚内は笑わなかった。

 

「名は、オール・フォー・ワン。オールマイトが長年追っている男だ」

 

 今回もその男の仕業だと、まだ断定はできない。

 けれど、神野で回収されたラグドールと、今回の三人。関係の違う人間に、短い間隔で同じことが起きた。

 

 ホークスは資料の端を揃えた。

 

「そいつを捕まえれば、個性は戻りますか」

「返させる方法も含めて、調べなければならない」

 

 確実に戻るとは言わなかった。

 それだけの意味を、ホークスは受け取った。

 

「連合の後ろにいる可能性がある、と」

「高いと考えている」

「なら、神野では人質を返して逃げて、今度はこっちが追ってた敵を無力化して置いていった」

 

 並べると、なおさら変だった。

 

 逃げるついでに人質を捨てることはある。

 同業者を潰すこともある。奪った個性が目当てなら、今回の三人は単に狩られたのかもしれない。

 

 ただ、逮捕に使える帳簿まで、わざわざ揃えて置く必要があるだろうか。

 

「俺たちに、捕まえてほしかったんですかね」

「そういう意図も疑っている」

「後片づけを任されたみたいで、感じ悪いな」

 

 ホークスは椅子の背から体を離した。

 

「この三人を捕まえるまでに、警察側で足りなかったものは?」

「所在だ。関係先を何度か捜索しているが、捉えられなかった」

「証拠は、元からあった」

「ある」

「じゃあ、匿名の情報だけでもよかったはずですよね」

 

 居場所を教えれば、ヒーローが踏み込む。

 奪うのが目的なら、奪ってそのまま放置してもいい。

 

 安全に踏み込めて、ほとんど抵抗されず、証拠ごと確保できる。

 わざわざ、そこまで整えてある。

 

「彼らの保護対象になっていた家族には、どう伝えます?」

「身柄を確保した事実は伝える。保護の継続については、周辺を調べたうえで判断する」

 

 ホークスは頷いた。

 

 あの子供の写真は、三人の手元から回収された。

 少なくとも、今日、それを使って家族に近づくことはできない。

 

 そこだけは、確かな成果だった。

 

     *

 

 家族への説明に立ち会うと、写真の子供は、面談室で算数の問題を解いていた。

 

 小学校の中学年くらいの女の子だ。

 母親の隣で鉛筆を動かし、捜査員が「三人とも」と言ったところで、顔を上げた。

 

「捕まったの?」

「ええ。全員、警察で確保しています」

 

 母親が娘の手に触れた。

 それから、担当者へ質問を重ねた。

 

 間違いなく本人たちなのか。

 今どこにいるのか。

 ほかに、家族の居場所を知っている者はいないのか。

 

 一つずつ返事を聞くたびに、肩が少し下がっていった。

 

 個性が使えなくなっているという説明には、すぐには反応しなかった。意味を確かめるようにホークスを見てから、尋ねた。

 

「また、使えるようになるんですか」

 

 ホークスは、膝に置いた手を動かさずに答えた。

 

「まだ分かっていません。調べているところです」

 

 母親は、そうですか、と小さく言った。

 

 少しの沈黙があった。

 娘が母親を見て、また問題集へ目を落とした。

 

「……戻らない方がいいって、思ってしまいます」

 

 捜査員が何か言いかけ、口を閉じた。

 

「ひどいことを言ってるのは分かってるんです。でも、前に来たときも、扉を壊されて。鍵を替えても意味がないって言われて」

 

 女の手が、膝の上で重なった。

 

 ホークスは午前中の男を思い出した。

 出ない、と何度も手を開いた男。警察官へ腕を振り、そのたびに自分でも驚いた顔をしていた。

 

 彼を制圧するのは、簡単だった。

 

「今すぐ、あの人たちの心配までしなくていいですよ」

 

 女が顔を上げた。

 

「まずは、ご家族の生活の方を相談しましょう。今日から全部、元どおりとはいきませんけど。外出や、これからの予定も」

 

 担当者が続けて、今後確認することを説明した。

 保護は続く。ほかの関係者についても調べる。そのうえで、制限を減らせるところから減らしていく。

 

 女の子が、机の下で足を揺らした。

 

「アイス、買いに行っていい?」

「どこの?」

 

 母親が聞く。

 

「前のおうちの近くの。自分で選ぶやつ」

 

 母親はすぐには答えられなかった。

 ホークスも、買ってきてあげようか、とは言わなかった。

 

 欲しいのは、アイスだけではないのだろう。

 

「そのお店に行けるかも、ちゃんと相談しよう」

 

 担当者がそう言うと、女の子は頷き、問題集の端に何かを書いた。

 ホークスの位置からは見えなかった。帰りに買いたいものでも、計算の続きでも、どちらでもよかった。

 

 説明が終わったあと、母親が何度も頭を下げた。

 

「ありがとうございます。本当に……ありがとうございます」

 

 ホークスは、身柄を確保した捜査員たちへ視線を向けた。

 彼らも、少し困ったような顔をしていた。

 

 捜査を重ねたことまで、無駄だったわけではない。証拠を揃え、この家族を守り、今も仕事をしている。

 それでも、最後の一番難しいところを片づけたのは、別の誰かだった。

 

 礼を受けている間、ホークスは、三人がどのように床へ並べられていたかを考えていた。

 

     *

 

「遅かったね」

 

 玻璃は、先に店の個室へ通されていた。

 

 彼が予約の名を告げて入ると、メニューから顔を上げる。

 机には既に水が二つあり、彼女の前のグラスだけ、紙の包みが下に敷かれていた。照明が底へ抜けるのを見ていたらしい。

 

「すみません。待ちました?」

「十五分ほどです、ホークスさん」

 

 案内してきた店員が、飲み物の注文を聞いた。

 ホークスは酒を断り、料理をいくつか頼んだ。玻璃は魚の小鉢を一つ追加した。

 

 襖が閉まると、彼女はメニューを畳んだ。

 

「啓悟、私、それも食べる」

「どれ」

「今頼んだ、鶏の」

「どうぞ。足りなきゃ頼むし」

「うん」

 

 靴を脱いだ足を少し伸ばし、ホークスは息をついた。

 

 昼は手早く何かを腹へ入れただけだった。今になって、味噌の匂いがひどくうまそうに感じる。

 玻璃は彼の背中を見ていた。

 

「羽、ずっと動いてる」

「え?」

 

 振り返る前に、一枚が畳の上へ伸びかけているのに気づいた。

 落ちてもいない箸袋の端を、羽の先が追っていた。

 

 ホークスは羽根を戻した。

 

「気になる?」

「さっきから何回も。落ち着かないの?」

 

 見られていたらしい。

 

 機能しているかを確かめるつもりはなかった。

 ただ、動かそうと思う前に、少しずつ使っていた。水の位置を直す。椅子もないのに背後を空ける。手で届くものへ羽根を伸ばす。

 

「今日の連中を見たからかな」

「個性?」

「うん」

 

 玻璃はグラスから手を離した。

 

「なくなったら困る?」

「そりゃ困るよ。いつもどおりに動こうとして、誰かを落とすかもしれない」

「飛べなくなったら、飛ばなきゃよくない?」

「そう簡単に切り替わるもんでもないでしょ。今日、落ちかけた人もいたし」

 

 玻璃は首を少し傾けた。

 

「仕事、できなくなるのが嫌なの?」

「それもある」

「辞めたいって言うことあるじゃん」

「忙しくない方がいいとは思ってるよ。俺が辞めても、助けが要る人は残るからね」

 

 彼女は、ふうん、と言った。

 

 その返事に、どのくらい納得が入っていたかは分からない。

 ホークスは自分の手で水を取った。

 

「あと、仕事じゃなくても、飛べなくなるのは嫌だよ」

「なんで?」

「気持ちいいから」

 

 玻璃が顔を上げた。

 

「それだけ?」

「それだけじゃ、駄目?」

 

 聞き返すと、彼女は小さく首を振った。

 

 彼はグラスを置いた。

 上空の風を思い出す。建物の高さを抜けたところで、急に体の前が空く。下でどれだけ忙しくしていても、翼を広げれば、体はちゃんと次の流れを拾う。

 

 誰かを抱えているときには取れない角度がある。

 急いでいるときには、わざわざ回らない場所も。

 

 そういう話なら、いくらでもできた。

 けれど言い始める前に料理が運ばれてきて、彼は膝を引いた。

 

「私、それがいい」

 

 玻璃が、皿の端を指す。

 ホークスは取り箸で一つ取り、彼女の小皿へ載せた。

 

「大きいの選んだ?」

「うん」

「俺のおごりだと思って」

「啓悟がそう言ったんだよ」

 

 知ってる、と返して、自分の分を取った。

 熱くて、すぐには噛み切れなかった。

 

 玻璃も口を閉じたまま、しばらく動かない。

 二人で同じことになっているのがおかしくて、ホークスは少し笑った。

 

 飲み込んだあと、彼女が言った。

 

「今度、見せて」

「何を?」

「飛んでるときの記憶。仕事してないときの」

 

 箸を持つ指が止まった。

 

「空から?」

「うん。気持ちいいって、どんなのか」

 

 ホークスは彼女を見た。

 玻璃は小鉢の中の魚を選んでいて、こちらの返事を待ちながらも、食べる手を止めるつもりはなさそうだった。

 

「今でもいいよ」

「今日はいい。もう人の記憶、いっぱい見た」

「……そっか」

「今度ね。忘れないで」

 

 そちらから念を押されるとは思わなかった。

 

「忘れませんよ」

 

 ホークスは自分の小皿へ目を戻した。

 

 綺麗な景色を見たいだけかもしれない。

 それでも、ガラスの店の場所でも、仕事の見落としでもなく、自分が気持ちいいと話したものを選ばれたことは、嬉しかった。

 

 そういうところだけ都合よく受け取るのは、相変わらず得意らしい。

 

 携帯が震え、彼は画面を確かめた。

 捜査の途中経過だった。三人が呼び出された建物では、貸室の名義も、連絡に使われた端末も、その先を辿るための確認が続いている。

 

 玻璃が彼の手元を見た。

 

「帰る?」

「いや。連絡だけ」

 

 彼は必要な返事を送り、携帯を伏せた。

 目の前では、彼女が最後の鶏を自分の皿へ移そうとしている。

 

「それ、俺の」

「もう一個頼めば?」

「お前が頼みなよ」

「じゃあ頼む。啓悟も食べる?」

「食べる」

 

 今度は羽根を使わず、自分の指で呼び鈴を押した。

 

     *

 

 帰宅してから、玻璃は棚の中の玉を選んだ。

 

 昨日の夜にできたものは三つ。

 大きさが少しずつ違う。透明さは、どれも悪くなかった。

 

 仕事で見るだけなら、記憶はその人の中に残る。

 抜けば、残らない。

 

 公安で今日探したものが見つからなかったのは、玻璃が探すふりをしていたからではない。

 そこにはもう、なかった。

 

 昨日、先生の前へ連れてこられた男たちは、もっと大きな声を出していた。

 力を使おうとして、使えなくて、どうしてなのか理解したところで、また騒いだ。

 

 玻璃が触れたときには、眠らされていた。

 先生の姿を見た時間と、黒霧に運ばれた時間。意識を失う前に見聞きしたうち、外へ持ち帰らせたくない部分を抜いた。

 

 男たちの中にあったものは、今、玻璃の指に挟まれている。

 

 光へかざした。

 綺麗だった。

 

「こちらでしょうか」

 

 黒霧が、テーブルに用意された小箱を見た。

 

「待って。これ、本当に使うの?」

「先生からのご指示です」

「飲ませちゃうの?」

「ええ」

「……これ、すごく綺麗にできたんだけど」

 

 黒霧は急かさなかった。

 

 先生は、この記憶を、男たちに脅かされていた人間へ渡すと言っていた。

 何をされたか。誰によって力を失ったか。どれほど抵抗できなかったか。

 

 その人が知りたいなら、見せればいいらしい。

 

 玻璃には、その必要があまり分からなかった。もう怖い相手はいなくなったのだから、それでいいではないか。

 わざわざ、人の記憶を飲み込んでまで確かめたいのか。

 

 でも、先生がそうしたいのなら、仕方ない。

 

「別の玉じゃ駄目?」

「この記憶が必要とのことです」

「……じゃあ、持ってって」

 

 小箱へ置く。

 黒霧が蓋を閉めるまで、玻璃は玉を見ていた。

 

「明日は買い物、来てよ」

「午後でしたら、ご一緒できます」

「ほんと?」

 

 顔を上げると、黒霧が頷いた。

 

「お時間が変わる場合は、事前にお伝えします」

「変えないで。弔にも言っといて」

「承りました」

 

 玻璃は残りの二つを持ち、棚へ戻った。

 

 赤い羽根の瓶の近くに、浅いガラスの器がある。

 買ってきた玉と、抜き出した玉を、色と大きさだけ見て並べる。どちらも透明で、光の通り方に違いはなかった。

 

 一つを指先で回してから、明日行く店のことを考えた。

 

 啓悟の空も、そのうち見せてもらおう。

 綺麗だといいな、と思った。

 

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