スター・ウォーズ×ガメラ ~翡翠のジェダイ・マスター~ 作:フォレス・ノースウッド
その上で見たいじゃないですか、選ばれし者以前に砂の惑星のわんぱく坊やの『おふくろの味』
・ラーズ家とジェダイナイトの笑顔な食卓
タトゥーインでの水分採取農業特有の現象として、水分凝結機にキノコが自生すると言うものがある。
この種は『ヴァポレーター・マッシュルーム』と命名された食用可能なキノコであり、タトゥーインでの貴重な食糧源にして水分農夫の貴重な収入源でもあった。
先程ラーズ家近辺に現れたタスケン・レイダーの群れをフォースの幻覚で撤退せしめたアヤネは、いつもならシミが行うキノコの採取作業を代行していた。
万が一、ラーズ家でのルーティン通りにシミが採取している時に別のタスケンの群れが現れないとも限らないので、アヤネが自ら申し出たのである。
「逞しいね~君たち」
「( =ω=)~~?」
「な~に話しかけてんのだって?彼らへの惜しみないリスペクトと感謝」
またキノコが生えてくる様に根元は残して摘み取り、少しでも販売の際の値段が上げられる様に傷は最小限に採取願いますとシミからコツを聞かされていたアヤネは、手作業で一本ずつ丁寧に籠へ入れながら、キノコたちへの逞しい生命力に感嘆して話しかけ、水分凝結作業の方を手伝っているR2から突っ込まれている。
「この銀河の生命は私も例外なく、他の生命を対価に取り込まなければいきていけない、有機生命体は当然食べる形で、君たちドロイドのバッテリーもオイルも、元は惑星と言う生命の身体の資源(いちぶ)を加工されたもの、生きる限り食物連鎖の輪から逃れられないからこそ、頂く時の敬意も忘れないのが私の主義なんだ」
「(*˘ーωー˘* ) ~~ピーピー~~(;-ω-) 」
「分かるとこもあるけど、分からないとこもある?それはそれでいいんだよ、一番大事なのは分からないからと諦めないことと、探求と深堀の姿勢を持ち続けること、君の仕事で言えば、今後ロールアウトされるであろう新型機械の扱い方を覚えてアップデートしていくようなものさ」
「(* ̄∇ ̄)ノ~~♪」
「『それなら僕でも分かる~』、その調子だよR2くん」
◇
その頃、アナキンはラーズ家からすぐ傍の砂地の上に立ち、スタンド付きの設置型日傘で日光から身を守り、砂漠の生活で身体に覚え込ませた定期的な水分摂取も怠らず、フォースの感覚を研ぎ澄ましたまま、任務用に用意していた偵察ドロイドを持前の操縦能力で遠隔操作してタスケンから母の嫁ぎ先を見張っていた。
操縦用端末上部に表示されたホログラムモニターには、ドロイドの特殊フィルターがかかったカメラ視点とナビゲーションモニターが同時表示され、アナキンは器用にラーズ家を中心にドロイドを流麗な渦巻き状に飛行させて探索している。
「そろそろか……」
アナキンは母に代わってアヤネが行うキノコの採取作業の平均時間が過ぎている頃だと時間を見て気づき、一旦偵察ドロイドを帰着させて彼女と作業交代する為ラーズ家自宅に一度戻った。
―――
ラーズ家のドーム状の住居が目と鼻の先にまで近づくと、若い女性たちが談笑しているらしい淑やかな喧噪が内部から聞こえてくる。
覗いてみると、アヤネがベル―から採取したキノコから販売可能な状態を見分け方と、専用ブラシで表面の汚れを取る方法を教えてもらいながら実践しつつも、歳が近いのもあってアナキンにとっては義理の姉の女性とのトークも花開かせていた。
アヤネがジェダイ装束なのを除けば、完全に近所同士の知人同士がなんてことない会話をしている様にしか見えない板の付き具合だ。
多分先日の模擬戦の稽古後のアナキンから見たら、余りのギャップに『本当に同一人物か?』と驚愕していただろう。
けれど……‥昔公文書館でオビ=ワンに読むよう言われた書物によれば、知的生命体の意識は『頭の中にある沢山の自分が常に会議をしていて、時と場合に応じてどの自分を表面に出すか議論している』らしく――その本の内容も踏まえれば、これもマスター・アヤネの数多くある『人間味』の一味だと、今の自分なら汲み取れた。
きっと……自分がフォースを通じて見たアヤネがタスケンに見せたであろう『幻覚』の中身も込みで。
では自分の場合はどうかと、ここ数日で急速に鍛えられてきた客観的目線をコツに想像してみて――。
「アナキン?交代の時間だろう?」
「あ、はい」
いつの間にか目の前にアヤネの翡翠色の瞳が、十年の時で母シミの背丈を通り越した自分を見上げている。
「警戒任務お願いします」
「承知しました、ところで何の考えごとだったのかな?」
「あ、意識とは『たくさんの自分が会議している』ってことを踏まえると、僕の脳内会議はしょっちゅう紛糾してるな……と思い知らされまして」
今の想像を内容を伝えたら、アヤネは口を押えて堪えているが……大笑いそのものははっきり表に駄々漏れしていた。
「マスター……笑い過ぎです」
「ごめんごめん、今議場の机に足立てて憤慨してる君と必死に止めてる方の君たちの模様を想像したらツボに嵌り過ぎちゃったみたいで」
どうしよう……思い出の中のパドメの笑顔はまた違った『可愛らしさ』でキュートだと、おそらくオーダー内では滅多に見せない一面に、アナキンの胸はほっこりした気がした。
「それも自分の課題点として、肝に銘じておきます」
「よろしい、君の中の『議長』もさらなる向上を祈ってね」
これも貴重な体験だな~と噛み締め、アナキンはアヤネに追跡ドロイドの操縦端末を手渡して業務交代をし、アヤネは屋外へと赴いて行く。
「ママ、僕にも手伝えることは?」
「じゃあアニー、シチューのメインに使うイオピー肉を洗ってくれる?」
「分かったよ、久々だな~これ」
機械弄りに夢中になり過ぎてもう夕方になった頃、夕食の準備を手伝ってと母に呼ばれて我に返った記憶を思い返しながら、十年経っても身体は覚えていると実感して手伝うアナキンだった。
◇
時間帯は夕方、空は澄み渡った蒼穹から砂塵も赤らめさせる暁色に変わり、二つの太陽の内、右側の光球の方が先に赤身の夕陽となる。
「マスター!夕餉にしましょう、母のシチューは昔も今も絶品です!」
「は~い!」
(いい匂いがするな~~)
帰郷したシミの息子(アナキン)と、彼の偉大な先生の一人な客人(アヤネ)で、いつもより賑やかなラーズ家の今回の夕食のメニューは『イオピー肉のシチュー、今日アヤネが採取したキノコと長期保存加工された根菜、固めに焼いたパン、飲み物に少しアレンジされたパンサミルク』の組み合わせだった。
「大分固いですねこのパン」
「ええ、シチューとの組み合わせありきだから」
シミからの説明に合点がいったアヤネは、そのまま噛むと大分手強い固焼きパンを、淡いパステルオレンジがかったシチュークリームに漬けてさくっと頬張ってみると……クリームが沁み込んでいい具合の歯ごたえになったパンとシチューの合わせ味が、アヤネの口いっぱいに広がった。
「美味しいです」
ジェダイ・ナイトの中で屈指の食通なアヤネの舌も唸らし、頬も火照って、思わず口元へ手を添えたくなる領域の美味に、ラーズ家の方々も『そうだろう?そうでしょう?』と笑みで応じ。
「久々なのに、昨日のことみたいだ~~ママのシチューの味」
アナキンも一〇年分のブランクを経ても身体が覚えていた母親(おふくろ)の味を、慌てずじっくりとスプーンで掬って味わう……表情はすっかり当時の『アニー少年』に戻っていた。
「シミ、ミルクがいつもより飯に合う美味さだが、何か入れたのか?」
「クリーグ殿、それは私の入れ知恵です」
「先生の?」
「これなら毎日でも飽きませんね」
「どうも」
今宵のパンサミルクは、少々の果実と甘味に、香りが程々に増す乾燥スパイスも加えたアヤネ提案のアレンジ仕様でもある。タトゥーイン暮らしには貴重な栄養源なのもあって毎日飲んでいるラーズ家の面々でも好評なご様子。
「アヤネさんも料理はなされるみたいだったけど、ジェダイの食生活ってどうなってるんです?」
「オーダーの本社と社員寮も兼ねた寺院(テンプル)にいる時は食堂で済ますジェダイがほとんどです、栄養があって食べられるなら問題なしな方針なので、味はあまりお勧めできませんね」
「ほとんどってことは、アヤネ先生も含めて自炊するジェダイもいるってこと?」
「はい、少数派ですけど」
アヤネがジェダイ・テンプルでは自炊してる話自体は初耳だったが、この十年に覚えている限りの食堂での記憶を漁ってみると、彼女がそこで食事をしている姿は掘り上げた分の中だけでも一度たりとも無かったが………逆に彼女らしきジェダイが食材が入った袋を抱えてテンプル内を歩く姿も見たことがあったと思い出す。
「上司のジェダイの方々には、これも『修行の一環』ですと許可を貰って住まいにキッチンも置かせてもらって、仕事で出張中以外はできる限り自分で作ってます―――」
ジェダイでごく少数の自炊派閥の一人らしいアヤネの部屋の調理設備の概要をラーズ家と聞いていたアナキンは……。
(大分本格的じゃないですか……)
と内心で呟く。確かに『フォースとの調和と節度の範囲内なら自炊でも良し』とはなっているが、アヤネの話したレベルの設備となると、評議会も『もはや執着の域では?』と苦言してきてもおかしくない。
となるとアヤネのことだ……『手料理は知力と集中力と判断力を高める立派な修行です、状況認識・並行処理・手先の精密性・計画性と即応力――それらを日常生活の中で習慣化すれば鍛錬となります』、と許可を通り越して黙認するしかない理論武装で評議会から了承させたのでは?と想像していると、その疑問が顔に出ていたらしく、自身がアレンジしたパンサミルクを口にしたまま当人からウインクが来た。
先輩からのお茶目を貰い受けたアナキンは、自分の想像通りだったと頷いた。
「ジェダイさんにとっては料理も修行になっちまうんですかい?」
「クリーグ、アヤネ先生も少数派と言っていたでしょう?修行と言いつつもその顔は楽しんでる人がする顔です」
「あ、分かります?」
おそらくジェダイテンプルでは自室での手料理を食した時にしか機会のない朗らかなアヤネの表情は、母の見立て通りだと雄弁に語っている。
(もし時間ができたら、僕もやってみようかな?マスターの読書家具合なら、部屋に料理本もありそうだし、機械弄りとはまた違った楽しさもありそう)
天井を見上げて母の手料理を味わうアナキンは、自身の好奇心から新しい扉を開きつつあると同時に。
「アヤネさん……良ければだけど、オーウェンたちにもあなたの手料理を見せてくれない?」
「構わないよベルーさん、もう数日は滞在する前提で予定(スケジュール)を組んできてますので」
(マスターの手料理か……楽しみだな、もし一緒に買い物を頼まれたら手伝うことにしようっ~と)
そう決めたアナキンは、母がじっくり煮込んだエオピー肉を固焼きパン同士でサンドし。
「懐かしいわねその食べ方、『アニー特製バーガー』」
「あ、そう言えば……」
「無我の境地で母の味を再現か」
「こんな時にまでジェダイっぽく言わないで下さい!」
無意識の内に少年時代の食べ方を再現してアヤネに揶揄われたアナキンは恥ずかしさを感じたまま、口はしっかりバーガーを噛んで味わい、その日のラーズ家の夕餉はいつも以上に笑顔が多い食卓になっていたのだった。
つづく。