『リブート率、36パーセント』
「うおおおおおっ!!」
気合の雄叫びとともに、士郎は槍兵へ突撃する。
長刀と短刀のオーソドックスな二刀流だ。デモニカで強化された身体能力から放つ斬撃は、耐性のない悪魔になら充分な致命傷を与えられる。
(疾いな)
ファッションセンスにゲンナリしていた槍兵の表情が、獰猛に引き締まった。少年はもう丸腰の兎ではなく、完全武装のハンターだった。
長刀による突きを穂先で逸らし、続く短刀を石突きで弾く。抉じ開けた防御の隙間を縫って、脇腹を水平に薙ぎ払った。
だが、装甲表面に叩きつけた穂先が、攻撃の勢いのまま弾き返された。
(なにっ!?)
咄嗟に後方へ跳んで衝撃を逃がした槍兵だったが、無理やり数メートルも後退させられた事実が、少なからず彼のプライドに傷を与えた。
『リブート率、47パーセント』
「お前、誰の差し金だ?」
片や士郎は、開いた間合いを維持しつつ言葉を投げる。声が震えていないか気が気でない、何しろ技術力で攻撃を躱してくる敵など、初めての経験なのだ。
「クー・フーリンを差し向けて、俺を殺そうとする。校庭でも誰かと戦っていたな。お前は、ダークサマナーの仲魔なのか!?」
リブートが遅々として進まない。情報と時間を同時に得るべく、士郎は槍兵にTALKを試みた。
「……目撃者は消すよう命じられていてな。坊主がサマナーだとまでは、今まで気付いていなかった。知ってりゃ丸腰のまま殺すような真似はしない」
必殺の構えを崩さないまま、槍兵は応える。口調に気安さこそあれ、殺気は微塵も揺るがない。
「やっぱりダークサマナーの――」
「そいつは違う」
「え?」
「俺はサマナーの仲魔じゃねえ。そもそも悪魔でもねえ。詳しく話してやる義理もねえ……と言いたいところだが、俺も確認したいことがある」
槍兵が摺り足で一歩間合いを詰める。士郎も後方へ一歩下がった。
「この街にサマナーは何人いるんだ?」
「……地下に異界化したダンジョンが広がってる。俺も修行や仲魔集めに使っているけど、市外から来たサマナーも利用してる。だから正確な人数は分からない」
「マジか……」
『リブート率、54パーセント』
槍兵に動揺らしい動揺が走るも、士郎の焦りも加速する。視界に映ったリブートの進捗を示すインジケータが、秒ごとに緩慢になっていた。
「だったら坊主、聖杯戦争とも無関係か?」
「セイハイ? ダグザなら仲魔にはいないけど」
「いや、ケルトの聖杯がどうのじゃなくてだな。……まあ、その様子じゃ本当に無関係か」
『リブート率、60パーセント』
槍兵の足下に力が籠もった。前傾気味に身体が沈み、穂先に魔力が集中する。
ゲイボルグの構えだと、士郎も瞬時に悟る。だが、獲得した敵のパラメータに違和感がある。
(呪殺属性? ゲイボルグは衝撃+貫通がほとんどだ。呪殺のゲイボルグなんて……いや原典としては正しいのか?)
リブート率が、62パーセントで完全に止まってしまった。敵の攻撃が何にせよ、自ら受けるしかない。
「まったく。人間相手に使うことになるたぁな。これだからサマナーは侮れねえ。……いくぜ!」
殺意が吹き荒れる。
「
「え?」
同時に、士郎の視界が警告表示で深紅に染まる。
『緊急召喚』
勝手に起動した召喚システム。正面から向かってくる槍兵に対し、デモニカから撃ち出された金と青の輝きが正面から衝突した。
「ぶべらっ!?」
「おうっ!?」
間抜けな悲鳴が二つ重なる。
槍兵は鼻血を噴出して仰け反り、新たに出現した金髪の人影は頭頂部を押さえて蹲った。
『リブート率、100パーセント。オールコンプリート』
「目がっ、目がぁぁ〜っ」
音声は耳に入っていたが、士郎も士郎で突然の強烈な閃光に目をやられ、メットの上から顔を押さえてのたうち回っていた。