シュピーゲル0 ~ 名無しの暗殺者と名有りの少女 ~ 作:氏家まさら
カレンが
二人は団長クラウスに呼び出され、日の暮れた執務室にいた。重厚な執務机の前に並んで立つ二人。今日はキャスパーの姿はなく、部屋には三人しかいない。
「ジャック、仕事だ。コイツを始末してこい」
クラウスが古びた羊皮紙を机の上に滑らせ、突き出した。
ジャックはそれを受け取り、視線を落とす。
「…承知した」
ジャックは淡々と応じ、そのまま踵を返そうとした。
「待て。ジャック」
クラウスが右手を上げて呼び止めた。
「…?」
ジャックが不審そうに振り返る。
「今回はその娘も同行させろ」
クラウスは、ジャックの隣に立つ黒装束姿のカレンを顎でしゃくった。
「…それは無茶だ。コイツはまだ実務ができる
ジャックは呆れたように首を横に振った。
「確かに期限は三ヶ月だ。しかしな、三ヶ月が経過するまで実務をやらせないとは言っていないぞ?なに、今回の標的はただの小物だ。心配するな」
クラウスは机に右肘をつき、顎に手を添えた。
「適性検査だ。コイツにもやらせろ。分かったな?」
有無を言わさぬ眼差しが、二人を射抜く。
「……」
ジャックは目を細め、僅かに眉間に皺を寄せる。
カレンは黙ってジャックを見た。
「行くぞ」
ジャックが踵を返し、出口へと向かう。
「…ああ」
カレンが短く応じ、その後ろを追った。
ガチャ…。
バタン…。
二人が退出し、重厚な扉が閉まった。
「…ふん」
一人残されたクラウスは、手元の葉巻を
「…随分と気に入られたようだ」
ジャックが正面の闇を見つめたまま、吐き捨てた。
「…全くだぜ」
カレンも同じく呆れたように鼻を鳴らす。
「だがよ…要はやっちまえばいいんだろ?」
カレンが素手のまま、ナイフを突き刺す仕草をした。
「…無理だな。お前はまだ未熟だ」
ジャックは歩みを止めることなく、淡々と告げる。
「…はあ?」
カレンが目を見開く。
「しかし、俺一人でやったのでは逆効果だ。その場合、お前は『
ジャックはピタッと立ち止まり、右手を顎に当てて思案を始めた。
「はぁ…。仕方ない。『プランB』だ」
ジャックは低いため息をつくと、無表情のまま、長身の身体でカレンを見下ろした。
「プランB?」
その言葉の響きに、カレンは怪訝な表情を浮かべ、じっとジャックを見上げた。