シュピーゲル0 ~ 名無しの暗殺者と名有りの少女 ~   作:氏家まさら

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【第8話】無情な初仕事 ~ 業務改善計画組 ~

 カレンが剥離の鴉(スクラップ・クロウ)のアジトへ引き入れられてから、約一週間が経過したある日――。

 

 二人は団長クラウスに呼び出され、日の暮れた執務室にいた。重厚な執務机の前に並んで立つ二人。今日はキャスパーの姿はなく、部屋には三人しかいない。

 

「ジャック、仕事だ。コイツを始末してこい」

 クラウスが古びた羊皮紙を机の上に滑らせ、突き出した。

 

 ジャックはそれを受け取り、視線を落とす。

 

「…承知した」

 ジャックは淡々と応じ、そのまま踵を返そうとした。

 

「待て。ジャック」

 クラウスが右手を上げて呼び止めた。

 

「…?」

 ジャックが不審そうに振り返る。

 

「今回はその娘も同行させろ」

 クラウスは、ジャックの隣に立つ黒装束姿のカレンを顎でしゃくった。

 

「…それは無茶だ。コイツはまだ実務ができる段階(レベル)じゃない。それに期限は三ヶ月のハズだ」

 ジャックは呆れたように首を横に振った。

 

「確かに期限は三ヶ月だ。しかしな、三ヶ月が経過するまで実務をやらせないとは言っていないぞ?なに、今回の標的はただの小物だ。心配するな」

 クラウスは机に右肘をつき、顎に手を添えた。

 

「適性検査だ。コイツにもやらせろ。分かったな?」

 有無を言わさぬ眼差しが、二人を射抜く。

 

「……」

 ジャックは目を細め、僅かに眉間に皺を寄せる。

 カレンは黙ってジャックを見た。

 

「行くぞ」

 ジャックが踵を返し、出口へと向かう。

 

「…ああ」

 カレンが短く応じ、その後ろを追った。

 

 ガチャ…。

 

 バタン…。

 

 二人が退出し、重厚な扉が閉まった。

 

「…ふん」

 

 一人残されたクラウスは、手元の葉巻を燻(くゆ)らせ、その紫煙を天井へと吐き出した。

 

 

        

 

 

 剥離の鴉(スクラップ・クロウ)のアジトの廊下を、ジャックとカレンは並んで歩いていた。

 

「…随分と気に入られたようだ」

 ジャックが正面の闇を見つめたまま、吐き捨てた。

 

「…全くだぜ」

 カレンも同じく呆れたように鼻を鳴らす。

 

「だがよ…要はやっちまえばいいんだろ?」

 カレンが素手のまま、ナイフを突き刺す仕草をした。

 

「…無理だな。お前はまだ未熟だ」

 ジャックは歩みを止めることなく、淡々と告げる。

 

「…はあ?」

 カレンが目を見開く。

 

「しかし、俺一人でやったのでは逆効果だ。その場合、お前は『業務改善計画組(どれいにぎゃくもどり)』になる」

 ジャックはピタッと立ち止まり、右手を顎に当てて思案を始めた。

 

「はぁ…。仕方ない。『プランB』だ」

 ジャックは低いため息をつくと、無表情のまま、長身の身体でカレンを見下ろした。

 

「プランB?」

 

 その言葉の響きに、カレンは怪訝な表情を浮かべ、じっとジャックを見上げた。

 

 

 

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