俺は吉良君を連れて走る。
今の俺の気持ちは自分の情けなさに対する憤怒と、あの男に対する恐怖、そしてまた同じことを繰り返してしまった後悔でいっぱいだ。
涙で俺の視界はもうぐしゃぐしゃになっている。
あんなに錬に啖呵をを切ったのに、いざあの男を見ると恐怖であの男に立ちかえなかった。情けない。情けなさすぎてどんどん涙がこみ上げてくる。
みんなを笑顔にするための道を切り開くなんて言っておきながら、一人おいて逃げているこの現状はなんだ?
しかも俺の一番大切な親友の錬を置いて逃げている。
俺は腹の底から自分に対する怒りと錬を置いてきてしまった悲しみでもう頭の中がぐちゃぐちゃになっている。
「…………そんなに泣くくらいならば戻ればいいじゃないか」
吉良君のそんな言葉で俺の頭はいったん真っ白になった後様々な言葉が思い浮かんでくる。
「………そっ!それができないからこうして悩んでいるんじゃないか!!」
自分でも理不尽な怒りだということを理解していても吉良君にぶつけてしまう
「なぜ、戻れないんだい?」
「それは錬が逃げろって言ったし、どうせ戻ってもまた怖くなって逃げ出すんだ……」
「……なあ碓氷新、君は親友がいったら逃げるのか?」
「当たり前だろ、錬がそう判断したんだ、俺はそれを信じるよ」
そう、錬が間違ったことなんて今までなかったんだ、だから今も信じて行動すれば……
そこで俺の考えを打ち抜くような言葉が吉良君からはっせられた。
「その親友が危険な目に当ているのにか?」
「!!?…………だけどっ!……俺は言っても怖くて動けないから役に立たない……」
俺は昔から人の雰囲気というかそんなようなものを薄々だけど、感じることができる。それのせいで錬以外友達とかはできないけどね、あの男を見たときは残酷で外道なやつみたいな負のオーラが感じられた。
いままでそんな人とはあったことがないし、スタンドを持っているから、恐怖で動けなくなってしまうほどだった。
「…………碓氷新、君には正直失望したよ」
「なに?」
吉良君はなにを言っているんだ?
「この吉良吉影を友達にしようとしている人間が、恐怖で親友を助けに行けないような人間だったとわな」
この一言で俺の怒りは爆発した。
「!!!!お前に!!お前に何がわかる!!俺だって錬を助けに行きたいよ!でも!体が動かないんだ!しょうがないだろ!!!」
好きに言いやがって!俺も助けたいよ!!だけど!……だけどっ!…………
「君にとって志熊錬とはあの男に対する恐怖に劣る程度の存在なのか?」
「!!!、そんなわけ………ないだろ…………」
「ならば恐怖を乗り越えろ、これは『試練』だ……今までの過去に打ち勝てという『試練』だ……成長しろ碓氷新」
吉良君の言った言葉はものすごい勢いで心に響いていく。
途端に今まであった恐怖が薄れていくことが実感できる。 俺は今までの俺に終止符を打つ!恐怖を乗り越えたのならば、後は助けに行くだけだ。
『覚悟』を決めろ俺、道を切り開くんだ。『覚悟』をもって道を、錬を助けるためのみちを切り開け!俺!!
「……ありがとう、吉良君。君のおかげで一つ成長できたよ。じゃあ俺は行くね」
「……ふん、ちょっとはいい顔をするじゃあないか。死んで来い。静かになっていい」
俺は錬のもとに急いで戻った。そこで見たのはやられている錬と、今錬にとどめをさそうとしているあの男だった。それを見て激しい怒りがわいてきた。もうあの男を見ても怖くもなんともない。錬をこんなにしやがって、絶対に許さねえ!!!
「俺の……俺の……俺の!、俺の親友をこんなにしやがって!!絶対に許さねえぞ!」
「あっ……新?……なんでもどっ……て……」
よかった、意識はまだあるみたいだ。
「安心してくれ錬、今の俺には恐怖はない。あるのはこの身を焦がすような激しい怒りだけだ!!!!」
さあ、始めようか。そう意気込み俺はスタンドを出す。能力がない俺のスタンドじゃあ圧倒的不利だ、でも、それでも、戦わなくちゃいけないんだっ!俺のッ!逃げる人生を、ここで……ッ、ここで終わらせるッ!!
「さあ来いッ!俺が相手になってやるッ!」
足が震えるッ、だからなんだ、錬を見ろ、こんなになっても逃げ出したりはしなかった。
「ああ?なんだてめえ、スタンドを持っているってことは一般人じゃないんだろうが、どちらにしろ俺の抹殺対象だボケがッ!!」
男のスタンド、錬から能力は聞いていた。だけど実際に見るのとでは感じ方が違うな……とりあえずこの攻撃をどうよけるか、
「良い悲鳴を聞かせやがれよッ!!」
……今までの俺なら逃げるか回避をしていただろうな……でも、今の俺は恐怖を我慢して、燃えるような『勇気』をもってこの場にいるんだッ!こんな攻撃なんて……ッ
「逃げ出した時の苦しみに比べればこんなもん!!」
ちゃんと攻撃が来ることを覚悟していれば、耐えられるッ!
「うをおおおおおおおおッ!!!」
走る、走る、走る、男の所に向かって走る。痛いけど、それがなんだ、怖いけど、それがなんだ、
「俺はッ!逃げたりなんかしたくないんだよォ!!」
錬を傷つけた奴を前にして引いたら、絶対に俺は後悔するッ!!
今、ここで逃げるくらいなら、死んだ方がましだッ!!
「ひっ!なっ!なんだこいつッ!」
「はああああっ!!」
俺のスタンドは動物みたいな形をしていて錬みたいに人間の形をしていないから殴ったりすることはできない、だけど、体当たりとかは動物のほうが人間より強いッ!!
「ウグゥッ!……くそっ、何ビビッてやがる、相手はただのガキだろうが……ッ」
そして、攻撃方法は体当たりだけじゃあないッ!!
「うおおおおおおおッ!!」
叩き付けたりもできるんだよッ!!
しかし、その攻撃は男のスタンドが一個の大きな手になったもので防がれてしまう。
「くそがあッ!、一つにまとめて防いだのにッ、なんてパワーだ……ッ!」
しかしッ、俺碓氷新のスタンドは、叩き付けること、体当たり、それらに関しての攻撃だけ、錬やこの男のスタンドのパワーを大きく上回るッ!!
「イッケエエエーッ!!!」
「グッガァアァアァッ!!」
そのまま男のガードを突き破り、地面に叩き付ける。
「はあ、はあ、……よし、まだまだこれからだろ?」
「……ッ!!ガアアアアアアアッ!!!!」
「……ッ!?なんだっ!?」
……一体なんなんだよ……急に男が叫びだしてビックリしたよ……
「クソクソクソクソクソッ!!なんで俺様がこんなガキに向かってビビらなきゃなんねえんだ!」
「……?どういう事だ?」
「ぜってえぶっ殺してやるクソガキがァ!!」
ビビる?、何に?…………ッ、俺、……か
「言ってる事は理解したけどなんで俺なんかにビビったのなんか理解できないね……でも、ビビってくれてるって言うならこっちの物だっ!」
男のスタンドが刃物のようになって襲い掛かってくる。でも、
「そんなの簡単に避けられるよっ!!」
男の攻撃は一直線の単調な動きだ。錬が言っていたのは自由自在に遠距離から刃物のような水を操るってことだけど……まるで違う。
「わかるよ、臆病者だから俺、その気持ちわかるよ」
怖いものを前にしたときっていうのは柔道でいうと練習してきた技を使うんじゃなくてまずパンチがでる物なんだ。
怖いってそういう物なんだよ。
「でも、俺を怖がってるからって、今の俺はアンタに手加減は出来なさそうだ」
「なっ、……舐めやがってーッ!!」
「遅いッ!セヤアアアアア!!」
思いっきりスタンドで叩き付けてやるッ!!
「グウゥウウヲオオオオオ!!!」
男がそれを腕でガードし、耐える。耐えようとする。
「でも……無駄だよ」
男のガードがまるで紙切れのようにつぶされた。
「グああああああああ!!!」
その攻撃は地面に男ごと窪みを作った。
男はそのまま立ち上がる気配はない。
「……終わった……錬、やったよ……初めて勝ったよ……」
この初めてはただの勝負に勝ったという事ではない。これは自分の恐怖に勝った。自分との戦いに勝ったという意味だ。
「……今頃、足が震えてきちゃったよ」
終わったからか……?
「情けないな俺……」
こんなんじゃまだ変われないよ……
「そんなことないぞ新。お前はスゲえ」
この声は……ッ!?
「錬!良かった!もう大丈夫なのか!?」
「ああ、済まねえな迷惑かけて」
迷惑なんかじゃあないさ、錬の役に立てたことは俺もうれしいんだから。
「ううん、そんなことないよ」
「新……成長したな、スゲエよお前」
「!?……ありがとう、錬……」
君に近づけたかな、錬?
「さ、帰ろう新」
「うん、行こうか錬」
「っと、その前に吉良のところ行かなくちゃな」
「ああそうだったね」
吉良君には礼をしないとな、吉良君のおかげで俺は成長できたようなものなんだし、友達になれたらいいな吉良君とも
もう絶対主人公にする人を間違えたよ。