「…………」
全くこいつは何をしているんだか……自分から子どもに戦いを挑んだのに無様に負けやがって…………俺までボスに怒られないと良いんだが……
とりあえずこいつを持って帰んないとな……ああ……めんどくせえ……
「『ハイド!』」
まったく。俺のスタンドはこういう労働担当じゃねえってのに…………『ハイド』であいつを持って来ようとしたがやっぱり重いなこいつ……はあ……ほんと、めんどくせえ………………こいつの目が覚めたらボッコボコにしてやる……フフッ……
「…………ひどいなこれは」
僕こと吉良吉影はこの惨状に目を見開いた。
壁などが壊れて瓦礫がそこらに落ちていて、そこらじゅうにに大量の血が付着している。しかもその血は中心で倒れている志熊のものが大半だと分かる。
そして、いつの間にかいたであろう男が居なくなっていることに気付いた。
まあ、そんなことより今は志熊と向こうで転がっている碓氷の治療だな…………
「……志熊……少しは認めてやろう……」
この僕はみんなが逃げて無人となったペグタントに隠れていたので戦っている様子を見ることができた。
最初は、『こいつらにかかわったせいでこんなことに……あのクソどもが!』
と思っていたし、スタンドとやらは見えなかったが志熊が戦いで押されているのが解ったし、碓氷に至っては一瞬で気絶している始末。
こんなやつらが護衛とか全く安心できないので、僕を狙うやつもいなくなったことだしこいつ等と縁を切って静かな平穏な毎日を送ろうと思っていた。
けど……志熊の言った言葉、僕が大切な物の一つだと言ったことを聞いて、いままでそんなことを言われたことが無かったので一瞬びっくりしたが、どうせ口だけだろうと思い僕は目をそむけた。
でもあいつは、志熊はその言葉に対する覚悟を見せた。自分が死ぬかもしれないことを迷いなくやってのけた。
今まで本気で覚悟を示したものを見たことがなかったからね……君はそこらのくそみたいなガキどもとは違うんだね……ふんっ、まあ少しくらいは評価してやってもいいかな……その覚悟が嘘じゃないかどうかこの目で見させてもらうよ……
そう僕は思いこいつらともう少しだけつるんでやろうと思った。
が、やっぱり日々平穏がモットーの僕にストレスの種を持ってくるこいつらを見て、間違いだったと気づくのはまた別の話だ。
「……うっ……ぐっ!……」
俺が目を覚ますと胴体の右側に鋭い痛みが走った。
これは肋骨が折れてるかもしれないな…………あっ!!そんなことより錬は!あの男はどうした!?俺は胴体を起き上がらせて、周りを探した。
「……目が覚めたか碓氷」
「吉良君!……っつ!!」
すると、吉良君がそばに立っていた。驚いて声を掛けたが、痛みが襲ってきた。
「いっ……つう……なんでこんなに痛いんだよ…………じゃなくて!っつ……なんで吉良君がここにいるの!?どっかに言ってって言ったじゃんか!……うっ……」
声を荒げるたびに痛みが襲ってくるのを学習せず何回も繰り返す俺、バカじゃないの?
「吉良君!……錬は!?あの男は!?どうなったんだ!?」
吉良君に詰め寄って話を迫る俺、体の痛みが来るが気にしちゃいられない。
「……落ち着け碓氷……僕はペグタントに隠れていたんだ……男は知らないな……気づいたらいなくなっていたよ。全く、不思議だよ……志熊だが、かなりひどい怪我だったから救急車を呼んでおいた。今はそこで転がっているよ……」
俺は吉良君が指をさした方を見ると血だらけで、ひどい怪我をしている錬を見つけた。
「錬!!……っつ!クソ!」
俺は自分の無力に対して激しく怒りを覚えた。
チクショウ!これじゃあ2年前と同じじゃねえか!その時に誓ったことを何一つできてないじゃないか!…………チクショウ……
「……碓氷」
「……なんだい?吉良君」
そんなことを考えていると吉良君から声がかかった。
「落ち込んでいるところ悪いが……僕は今の君を失望している……」
「!!?…………そうか……そうだよな……」
吉良君の言葉に驚くが、俺はその言葉に納得した。一瞬で何もすることなくやられちゃったもんな……仕方ないか……
「……先に言っておくが僕は君が一瞬で負けたから失望しているわけではない」
「えっ……じゃあ、なんで……」
予想外の吉良君の言葉に俺の思考は一瞬止まった。
「いいか碓氷、僕が言いたいの事はだな……君が弱いとかじゃあない……君に2年前のあの時はあった凄みが全く無い……つまりだな……信念や覚悟、そういったものが今の君からは感じられないんだよ。確かに君は夢に向かって行動しているし、その気持ちも一応は評価している……だが足りない、圧倒的に覚悟が足りない……」
俺は吉良君の言葉に聞き入っていた。
「君が戦うってところをさっき見させてもらったが……なんだあれは?」
「あれって……?」
「偉そうに言っているが僕も戦いとかはわかんない。だが、そんな僕にもわかるほど君はあの男に対して警戒心を抱いていなかった。志熊に言われても抱いていなかった。」
「……っ!」
言われて気づいたが確かにそうだった。急に俺は情けなくなってきた。
「だからあの男にすぐやられた……僕はスタンドとやらは見えないが場の状況や動きは理解できる。2年前のあの時の君なら急に移動したって防御できたはずだ……なあ碓氷……」
「な、なに?」
「君は忘れているんじゃないか?……2年前に比べたら足りない、圧倒的に足りない。君は戦いにおいての基本の、一番大切なことを忘れてる。それが分からないまではそこらへんに居る一般人と何も変わらないよ……それだけだ……」
そういい、吉良君は錬のほうに歩いて言った。
吉良君の言葉が俺の頭の中で繰り返される。
なんだよ……忘れてるって……この2年間一生懸命努力したのに……2年前よりダメだって……どういうことだよ……分かんないよ……2年前にあったものってなんなんだよ……くそっ……
考えれば考えるほど頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。いろいろな気持ちが心の中をかき乱している。怒り、悲しみ、不安、そんなようなものが俺の顔に表れているだろう……そうしてずっとそんな状態でいると、時間が結構立ったのか、救急車のサイレンの音が聞こえてきた。その音で思考が中断され、いま錬がどういう状況なのか思い出した。
「……錬」
その声は簡単にかき消された。
「おい!碓氷!何している!行くぞ!」
吉良君の声が聞こえてきて、何かと思っていると、救急車のサイレンの音にまじってパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。
似てるから気づかなかったし!じゃねえ!お店にいた誰かが通報したんだ!やばいやばい!連れてかれたらしばらく帰れないし最悪事情聴取をうけて、下手して刑務所行きだぞ!くそっ!こうなったら
「吉良君は先行っていて!俺は錬を背負って病院行くから!」
「……っ!!?本気か!?ここから一キロ以上あるんだぞ!?」
確かに無理だろう、だけど
「大丈夫!こんなことしかできないけど俺は錬の役に立ちたいんだ!」
戦いでは何の役にも立たなかったけど、錬の役に立ちたい。
ごちゃごちゃ悩んでいた気持ちがなくなり、少し吉良君の言っていたことが理解できた気がする。……2年前にあった物が何なのかは分からないがな……
「……そうかい、僕もほんの、ほんのちょびっとだけ志熊がどうなのか心配だしな。仕方ないから一緒に行ってやるよ……」
……っ!吉良君が人の心配をするなんてめずらしい……錬はすごいな……本当にすごいや…………よしっ!俺も役に立てるように頑張らないとな。
「何してる碓氷!もう、すぐそこまで来てるぞ!」
おっと、行かないとね。
「ああ!今いくよ!」
気持ち入れ替えよう、錬の役にたてるように、いいや、俺の夢のために。
分からないかもしれないので言うと、一番最初の人はもう一人の男です。