輪廻の輪を外れたからもう一度生きてる   作:佐波 大和

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第二十八話

「……んじゃまあ、まずは小手調べから行くぜ」

 

 

そうして戦いは始まった。

小手調べの一撃、こちらが躱せると判断した攻撃だ。

 

 

「……俺は始めっからガンガン行くぜッウラァ!!」

 

 

俺はその攻撃を避け、スタンドで殴り掛かった。

 

 

「おっと、怖い怖い。もうチョイ大人をいたわれよな……じゃないとつい手がでちまうじゃねえかよォ!」

 

 

柳哲彦はその攻撃を軽く受けとめた後、俺のスタンドに向かって攻撃をしてきた。

……ハッ、バカなことを言う。

 

 

「冗談だろ?お前はそんなタマじゃねえだろ。……そうじゃなくても俺、気に入らない人間はたとえ大人だろうが向ける敬意なんて持ち合わせてねえんだよ!」

 

 

柳哲彦と戦う時に気をつける事、と言うか俺のスタンドよりパワーが強い奴と戦うときはガードをあまり使用せず避けることだ。

……だけどそんなことをしていたら防全一方になっちまう……

 

 

「うおおっ!見よう見まねだが! ウラァ!ァア!?」

 

 

「……何がしたかったんだテメエ……?あれか?クロスカウンターか?」

 

 

「グッ……」

 

 

……意外と高等技術!? なんだあれ!? タイミングが全然合わなかったぞ!?

チクショウ……相馬さんが軽々といとも簡単のようにやるから実は簡単じゃないかと思っちまったじゃねえかよ……なんてこった、相馬さんと戦ったときにやられた殴り掛かっているスタンドの腕を内側から殴り軌道を逸らす。

あれをやろうと思ったが全然タイミングが合わなくてバカみたいに相手の攻撃をくらっちまった……

 

……しょうがねえ、っていうか特訓もせずにいきなり相馬さんみたいに戦うなんて無理な話だ。そんなことをいきなりやろうとした俺がバカだったんだ。

 

 

「悪い、ちょっとバカな考えをしてた。……よし、こっから本気だ。アンタも本気で来い、柳哲彦」

 

 

俺は俺の戦い方で戦う。姑息で卑怯だと言われるかもしれない、正々堂々力で来いとか言うかもしれない。だけどしょうがない。卑怯?しょうがない、策を、道具を使わなければまともな戦闘にならないからだ。

……最初はこんな戦い方少しは抵抗があったが相馬さんと戦ってそんな思いは吹き飛んだ。

 

上の実力の奴に勝つためにはそうも言ってられないんだなこれが……

それでも最大限知恵を回しても相馬さんには勝てる気がしない。だって俺より何倍かは頭いいからなあの人。

 

 

「クカッ、それだ、それだよお前のいいところ。俺がこの前より強いと分かっていながら恐れずに挑んでくる。かなり気持ちいいぜその姿勢」

 

 

「……そいつはドーモ」

 

 

敵に褒められるっつうのは何か複雑な気分だ……ていうかこいつ今自分で自分の事強いって言ったよな……

 

 

「じゃあ、行くぜェ」

 

 

「…………」

 

 

……来た、戦いのピリピリとした空気。……まあ、悔しいがこいつにいろいろ言われて覚悟らできたとき以降しかこの空気を感じたことは無かった。

俺はこの間まで完全に戦いっつう物を舐めてたからな……そう考えると成長したってことでいいのか?

 

 

「……ああ、来い」

 

 

ま、今はこっちに集中しなければいけないな。

 

 

「先手は貰うぜェ!!」

 

 

コイツが突っ込んでくるのと叫び声が重なって肌がビリビリする……こいつほど肉食動物っていう表現が似合うやつはそうそういないな……だが、

 

 

「そう簡単に食われてたまるかよ!」

 

 

アイツを肉食動物と例えるなら俺は草食動物だろう。自然界では肉食動物に食われて終わりだ。

でもそう簡単に食わせてやるわけにはいかないってもんだぜ……

 

 

「悪いが出鼻をくじかせてもらうぜ、ウラァ!」

 

 

「ッ!?これは!……テニスボール……だとォ?……しまっ!?」

 

 

「かかった!隙だらけだぜ!」

 

 

俺は鞄に入れているテニスボール4個のうち1個を柳哲彦の目の前に投げる。そして視線がテニスボールに行った瞬間能力でテニスボールを重くして真下に落とす。

当然テニスボールに視線が行っている柳哲彦はそのまま真下を向く。

 

そして、俺と柳哲彦の距離はスタンドで攻撃ができるほどだ。つまり、

 

 

「ウラララララララララァ!!!」

 

 

「ウゴゲェェェェェェ!!」

 

 

真っ向から不意を付いてやった。

 

 

「一瞬の隙が人間同士ならともかくこれは人間のスピードを超えたスタンドの戦いなんだ……その一瞬が致命的なんだ、その、一瞬だけで……」

 

 

「ウグゥ……カ、カカッ! クハハハハ!!……まさか初っ端からしてやられるとは、やはり俺もまだまだ弱いと言うことか……」

 

 

まあそりゃあ相馬さんとかと比べたらな……

……相馬さんと比べたら大半の人が弱いことになるか……

 

 

「志熊、とか言ったな……気を付けろよォ……ちょっとばかし気合が入った俺は一味違うぜ……出し惜しみは無しだ。さっきは攻撃するときフェイントでもかけようかと思って使わなかったが、移動もバンバン使うぜェ」

 

 

「……そうかい、俺としては使わないでいて欲しいんだがな……」

 

 

「クハッ!、そいつはできねえ相談だ!」

 

 

………………さて

 

 

「………………」

 

 

「………………」

 

 

俺と柳哲彦は無言で睨み合っている。

体幹時間的に10秒くらい、実際にはもっと短いかもしれないがそのくらいの時間が経った時、俺たちの間に一迅の風が吹いた。

 

_____瞬間、俺は突っ込んだ。いや、柳哲彦もこっちに突っ込んできたから俺達は、だ。

 

 

「前はギリギリで相打ちだった……此処で決着をつけてやる……ッ!」

 

 

「ハッ!、それは俺の勝利と言う結果で終わらせてやるぜェ!」

 

 

「違うねッ!俺の勝利ッ……!?」

 

 

まず先に攻撃をしたのは俺じゃなく奴、柳哲彦だった。

 

 

「言ったろ!移動もバンバン使うってなァ!」

 

 

「……ッ! チィ!これは避けきれねえ!」

 

 

「お前の貧弱なパワーで防ぎ切れるかよ!!」

 

 

「グゥッ!……手が痺れてきやがる」

 

 

奴の能力、位置を移動する能力。それを柳哲彦は使い俺の背後にまわった。

今は何とか防御することはできたが、さすがに不意を付かれてしまうと避けることはまず無理だし、下手すると防御もできないかもしれない。できたとしても一撃で腕が痺れるほどだ。何回も受け続けれない。

……今はっきりと分かった……5日前あいつは手加減していた。

……まあ、今本気を出させているんだ……本気だよな?

 

 

「ウッシャア!もう一発行くぜェ!!」

 

 

柳哲彦はそういい、腕をクロスさせている俺のスタンドに向かって思いっきり一撃をぶち込んできた。

 

 

「クッ……やっぱりパワーが強いな……」

 

 

「耐えるか、だが!これはどうだァ!! ハアアアアアアアアア!!!」

 

 

そういい、スタンドのパンチの連打、スピードラッシュをしてくる。

一つ一つの攻撃が重く、強い。

 

 

「ッ!ツゥ……ッテエ……」

 

 

…………だが、……耐えきったぞ……

 

 

「…………次は俺だ! ウララララララララァ!!!」

 

 

「良いパンチだ!だが軽いんだよ!!」

 

 

しかし、俺の攻撃はすべて防御されてしまう。

 

 

「アンタのスタンドのパワーは凄い。それが事実だ。……でもなあ、アンタの欠点はこれだッ! ウゥラァァ!」

 

 

腰に掛けてる鞄の中からテニスボールを2個取り出す。

そして1個ずつ能力をかけ、思いっきり投げる。

そして腕をクロスさせてガードしている柳哲彦のスタンドに命中した。

 

 

「パワーはあるがスピードは無い。……遅いぜアンタ、スロウリーだ」

 

 

「グウゥッ!!?……こっこの間もくらったが……その威力はどういう原理なんだァ?……一個はガードしていたところに当たったから痺れるし痛い、ぐらいだがもう一個は見事に腹にぶち当たってコリャア臓器が傷ついたんじゃねえのかァ?……マジ吐くぜ」

 

 

「……気持ち悪いだけなのか?それは人を吹っ飛ばすくらいの威力の筈なんだが……」

 

 

効いてないのか……?

正直あの技が通用しなかったら俺はダメージを与える手段がなくなるんだが……

 

 

「アア?ナワケねえだろ、今すぐ腹抱えて地面を転がりのたうち回りてえエ。そんな悶絶もんだぜアリャア」

 

 

「……そんなふうには見えないんだが」

 

 

「ハッ、そんなん簡単だァ、怯んだら負けだ。隙をさらすことになるから今でこそこんな話をしていられるらしいが俺と戦ってたのがお前じゃなかったら絶対にさっきの瞬間にも容赦なく攻撃していてただろうな。だから怯まねえ。それだけだ。」

 

 

……俺はまだまだらしい。

……だがふてくされはしない。前向きに、

 

 

「だったら俺がそんなふうにできるように、成長するためにお前を倒す。だからッ、もう一発だぜ!!」

 

 

持っていた最後の一個のテニスボール、それをさっき一緒に持っていた。投げはしなかったが能力付与はしている。

 

 

「もう一個持っていやがったのか!」

 

 

「逆に誰がもう一個持っていないって言った!」

 

 

「それもそうだなァ、でもインターバルは終わったぜェ!!くらえ!!」

 

 

その瞬間柳哲彦は俺の目の前に現れた。

もちろんさっきの攻撃はくらっていない。

 

 

「ああ……知ってる」

 

 

でもそれは予想の範囲内だ。

俺の本来の狙いはこっち、奴の移動できる範囲は10メートルくらい、だから俺はそのギリギリのところからボールを投げた。

普通に後ろとか横とかに移動する可能性はあったがほぼ信じて無かった。

理由はこいつの性格からして、あんまり関わったことは無いが大体は分かる。

アイツはこっちに移動してきて攻撃してくるって信じてたッ!!

 

 

「ウラァ! ラァ!」

 

 

「ウゲッ! フゲエ!」

 

 

腹に思いっきり一発目をぶち込み頬に向かって二発目を殴りつける。

 

 

「ブッ、チッ、こむぜェええ!!! ウゥラララララララララララ!!!」

 

 

「フグアアアアアアア!!!!」

 

 

無防備な柳哲彦に向かって全力の攻撃、アンタがパワーで来るなら俺はスピードで行くぜッ!!

 

 

「ウゥゥラァアァ!!!」

 

 

「ホゲエェェェェェェ!!!」

 

 

そして最後にこれでもかと言うほど力を込めた右ストレート。

それをくらった柳哲彦は地面をザァーっと滑って行く。

 

 

「アンタは確かに強い。持久戦になれば負けるのは十中八九俺だろう。だが、力とかは関係ない、相手の裏を付く、そうすれば直接の力は意味をなさない。……アンタが分かりやすい性格で良かった。もしアンタが相馬さんみたいに、とは言わないが頭が働いている奴、そしてなおかつ何考えてんのか分かんねえような不気味な奴だったらと思うとゾッとするぜ……」

 

 

相馬さんが強い、その大きな理由がこれだろう。

 

 

「……柳哲彦、俺はあんたには感謝しているんだ。いろいろと考え方が変わって良かったよ。……ありがとう、アンタのおかげで俺は大きく成長できた」

 

 

5日前の俺と今の俺とじゃだいぶ違うと思う。

……柳哲彦、真正面からアンタと戦っても勝てない、それどころか次戦ったら勝てるかも分からない。だけど勝ったのは俺だ。それは変わらない。

……アンタのことはたぶん一生忘れねえぜ。

 

 

「さて、相馬さんの所行くか」

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