──ハンター協会本部・会長室。
「ズズッ……。今日のお茶は一段と美味いのぅ…フゥ…平和じゃ」
深夜の静まり返った部屋で、一人の老人がのんびりと湯呑みを傾けていた。
ハンター協会最高責任者であり、世界最強の念能力者の一人──アイザック=ネテロ。
普段と変わらない、どこにでもある穏やかな老人の夜。
しかし、その平穏は、凄まじい音と共に一瞬で粉砕された。
バァァァァァァンッ!!!!!
「ネ、ネテロ会長ぉぉぉーーーっっっ!!! 大変です、大変なことが起きましたっ!!」
室内の重厚な扉が文字通り叩き割らんばかりの勢いで開け放たれ、の室特別警戒区域調査室長が顔面蒼白で飛び込んできた。息は完全に上がり、額からは大粒の冷や汗がポタポタと床に滴り落ちている。
「これこれ、落ち着かんか。せっかくの美味いお茶が冷めてしまうがな」
「お茶を啜っている場合じゃありませんッ! モニターを見てください、これです!!」
室長が震える手でデスクのスイッチを押すと、壁一面の巨大なモニターに、世界地図の一部が不自然に白く塗りつぶされた、通称『永久凍土の大陸』の衛星画像が映し出された。
今から十数年前。
とある実験施設が存在していたとされるその広大な大陸は、ある日を境に、一瞬にして生命の居住を拒絶する極寒の地へと姿を変えた。
国家規模、いや人類規模の生存を脅かす「超S級警戒区域」として完全封鎖されたその土地は、今日まで絶え間ない絶対零度の暴風雨が吹き荒れ、近づく者すべてを瞬時に氷の彫刻へと変えてきたのだ。
だが、今モニターに映し出されているその大陸の姿は、いつもと明らかに違っていた。
「……おや?」
ネテロの細い眼が、わずかに鋭さを増す。
「吹雪の出力が落ちた、というレベルではありません。……止んだのです! 十数年間にわたり、あの大陸を完璧に閉ざし、世界から隔離していたあの超常的な冷気の嵐が、完全に、です!」
モニターに映し出されるのは、不気味なほど静まり返った白銀の大陸。
あまりにも美しい、死の世界。
「ふむ……。あの嵐は、ただの天災ではなかった。十数年前、かの地で亡くなった何者かの『死後に強まる念』。それも、世界を丸ごと拒絶するほどの、悍ましくも純粋な狂気の塊じゃ」
ネテロの脳裏に、かつて暗黒大陸から持ち帰られた数々の「災厄」の記憶がよぎる。
あの大陸を覆っていた氷は、それに匹敵する、あるいはそれ以上の、世界の理を無視した超常の力だった。
「嵐が止んだということは……その『念の主』の怒りが収まった、ということでしょうか?」
室長の淡い期待を、ネテロは湯呑みをデスクに置きながら、乾いた笑いではねのけた。
「逆じゃよ。檻の鍵が壊れた。……中にいた『ナニカ』が、ついに眠りから覚め、その眼を開けたんじゃろうて」
ネテロほどの男をして、その表情には隠しきれない「厄介事」への歪んだ愉悦と、一抹の警戒が混ざり合っていた。
「直ちに、現地へ調査隊を派遣せよ。プロハンターを5名。目的は『戦闘』ではない。大陸の現状把握と、何が起きているかの偵察じゃ。絶対に刺激するでないぞ。アレは、一瞬で大陸一つを永久凍土に変えた…化け物じゃ…ズズッ」
「は、はいっ! 直ちに!」
────
──……。場面は変わり…
「……これから、どうしよう」
自分を縛る檻はもうどこにもない。ここからどこへ行って、何をしても自由。
けれど、いざ「気ままに生きていい」と言われても、自分が何をしたいのか、さっぱり分からなかった。やりたいことを見つけるのって、こんなにも大変なことなんだ。
頭のどこかに、ぽっかりと不自然な空白がある。
前世? 転生?……そんな妙な単語が脳裏をよぎるけれど、中身は何も思い出せない。何か大切なものを知っていたような気もするけれど、それは完全に真っ白に消え去っていた。
だけど。
「ルミエ族」として生まれ、美しかった故郷を炎に包まれ、暗い実験施設で大切な親友を奪われた──あの悍ましい地獄の記憶だけは、今も私の魂に鮮明に、生々しく焼き付いている。
ドクン、と。
胸の奥で、私の中に宿るもう一人の私が、低く冷たい声で囁きかけてきた。
『──あはは。やりたいことが分からない? 本当に可哀想な私。自由、自由、って。お前は本当に呑気だね』
魂を引き裂いて生まれた、もう一つの人格。
それは私の、汚い大人への強烈な恨みと、「死にたくない」という生の執着そのもの。
彼女はくすくすと嘲笑うように、けれど酷く愛おしそうに私の耳元で言葉を紡ぐ。
『でも、行きたい場所なんて、最初から一つしかないじゃない。忘れないで。私たちが今まで、あの汚い大人たちに何をされてきたのかを。痛くて、寒くて、暗い檻の中。優しかったお父さんもお母さんも、みんなあいつらに壊された。あの子の冷たくなった手の感触を、忘れたとは言わせないよ?』
もう一人の私の言葉が、私の凍りついた心を激しく揺さぶる。
私は彼女の言葉を拒絶しなかった。拒絶できるはずがなかった。だって、それは私自身の本心でもあるのだから。
「……うん、分かってる。忘れるわけないよ。あいつらの顔も、声も、全部ここ(魂)に刻まれてる」
私はそっと目を細め、脳内の声に深く同調するように、冷たいオーラを揺らした。
「自分の欲のために人を踏みにじる、あんな汚い大人たちなんてみーんな大嫌い。あいつらは私たちの力しか見ていない。都合よく利用して、ボロボロになったらゴミみたいに捨てる。……もう二度と、あんな冷たい暗闇に戻るのは御免だわ。絶対に死にたくない。」
『ふふ、そうだよ。その意気だよ、クリシア。人間はね、優しく見えても裏では何を考えているか分からない。世界は私たちの敵で満ちている。……全員、凍らせて、バラバラに壊してやろうよ』
「……でも」
私は、白銀の大地を見つめながら、ぽつりと呟いた。
胸の奥に、小さく、けれど決して消えない一つの「温もり」が残っている。
「……あの子みたいに、純粋な心を持った人間まで、壊したくはないよ」
地獄の檻の中で、ボロボロになりながらも私の手を握り、一緒に美味しいものを食べようと笑ってくれた、あの最初で最後の親友。あの子のような綺麗な心を、私は、どうしても憎みきることができないのだ。
脳内の声は、私の言葉を聞いて、今度は酷く愛おしそうに、切なげに囁き直した。
『……お前は本当に、優しくて馬鹿な私だね。分かっているよ。お前が気ままに生きたいなら、あの純粋な輝きだけは守ってあげよう。だけど、その輝きを濁そうとする汚い大人が近づいてきたら──その時は、私が全員残さず殺してあげる』
「ええ。もう誰にも私を縛らせない。私は私のために、あなたはあなたのために。もし私たちの歩く道を遮る汚い人間がいるなら、神様だろうが誰だろうが、私の冷気で跡形もなく噛み砕いてあげる。……私たちは、絶対に死なない」
私と、私。二つの人格が完璧に溶け合うように、冷たい冷気が大陸の底から湧き上がる。
お互いの憎悪と、たった一つの純粋な願いを燃料にして、私たちの『死後に強まる念』は、さらに深く、強固なものへと変質していく。
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ーーーー
「ネテロ会長からの極秘依頼だ。さっき説明した通り通称永久凍土の大陸の吹雪が突然停止した。異常事態だ。お前たちプロハンター5名には調査をしてきてほしい。いいか?あくまで調査だ。怪しい物を見つけても刺激せず戦闘は極力控えろ」
室特別警戒区域調査室長はネテロ会長の指示を受けてプロハンターを派遣した
(いい結果が帰ってきたらいいのだけど…鬼が出るか蛇が出るか…)
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「ハハハ!ついたな!」
一人の大男が大声で叫んだ
「ちょっとうるさいわよ。大男。ここはもうあの永久凍土の大陸よ!何があるかわからないわよ慎重に行きましょう」
「まずは自己紹介からしないか?俺は去年からプロハンターになった幻獣ハンターのニコロだ。短い間だがよろしく」
「…フン。俺はよぉヴァルクスだ!懸賞金ハンターだ!俺に全部任せとけ!」
「私はミカ。遺跡ハンター。よろしく」
「わいはカミラや!賞金首ハンターやねん。よろしゅうなぁ」
「………シド。財宝ハンター……よろしく」
「よし。じゃこれからの計画だが…どうする?」
「嵐はやんだんだろぉ?普通に歩いて正面からいけばいいじゃねーか」
「いやいや。それはあかんやろて。大陸内にはこの天災を引き起こした奴がおるやもしれへん。常時絶をして地道にいくしかないやろ。あとみんなで調査してたら効率悪いから別れた方がええやろ」
「私も同意見ね」
「俺もだ」
「…同意」
「チッ」
「ミカとシドはわいと行こや。そんじゃあ行こか!目指すはかの恐ろしい永久凍土の大陸の中心部や」
「よし俺らは最深部だぁ!おらボケっとすんじゃね!行くぞぉニコロ!俺らが一番乗りだ!ゴラア!」
カミラ班
「凄く綺麗な景色ですね…視界が全て白銀です…」
「アハハ率直な感想やね。わいもこんな美しい景色は初めてや」
「しかしこの美しい景色がこの大陸全生物の犠牲の元と思うと複雑な気持ちになりますね…」
「せやね…天災の被災地や。きっと本人らも気付く間もなく死んだんやろな…」
しばらく数日中心部に歩き続けると大きな氷の結晶などがたくさん見つかるようになり目的地が近いことを察した。
ここからは更に警戒し前に進んだ
そして到着した…そこは大きな建物で建物を貫きひときわ大きな氷の結晶が真っ二つに割れていた。
「……何ですか…これは…」
「…噓やろて…冗談じゃないて…さすがに予想外やて…この氷の結晶えげつないほど強い念が込められている…どんな念か分からんことが怖いわぁ」
「わ、私の念能力なら視ることができるかも…」
「お!流石遺跡ハンター頼むで」
「え、ええ」
ミカはその氷の結晶に触れた
「解析」
念とは体から溢れ出す生命エネルギー
それを読み取ればどの系統でどんな念かはわかる
念を発しているなら念能力者にとってはまだ想定外で異常な力ではないのだろう
ミカは未知の力ではなかったにで少し安心していた
そして能力を発動する
「開始」
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない
「え?」
あれ?視界が赤い?体の感覚がない…冷たい…
あ。わたし地面に倒れてるんだ…
「おい!大丈夫か?!おい聞こえるか!」
「…そいつ…死んでるよ…」
「噓やろ?!触れただけやぞ!」
「…そいつの能力が触れた物の情報を読み取れる能力なら…おそらく読み取れない程の情報のような何かに飲まれて死んだのだろう…これだけ強力すぎる念だ…有り得ない話ではない…」
「噓やろ…これ、わいらだけでは無理なんちゃうん…?」
「・・・ッツ!!」
「ど、どした?!敵か?!」
「どないしたんや、シド?」
「…………上だ」
「上?」
カミラはシドの視線を追い、空を見上げた。
「…………は?」
そこには、信じられない光景が広がっていた。
人間の頭部が一つ。
そして、少し離れた場所には人間の身体が一つ。
どちらも、地面に落ちることなく宙に浮いていた。
「な、なんやあれは……?」
カミラは目を疑った。
頭部は間違いなくヴァルクスのものだった。
そして、宙に浮かぶ身体も見覚えがある。
「ニコロ……?」
二人の仲間が、まるで見えない糸で吊るされているかのように浮いていた。
「なんでや……?なんであいつらが……」
「カミラ」
シドが低い声で呼びかけた。
「凝をしろ」
「……!」
カミラはすぐさま目にオーラを集中させた。
すると――
「ッ!?」
何もなかったはずの空間に、一人の少女が立っていた。
白銀の髪。
透き通るような肌。
雪景色に溶け込むような白い衣服。
少女は片手を軽く上げている。
その指先から伸びるように、ヴァルクスとニコロの身体が宙に浮いていた。
「……あれが?」
「……ああ」
シドは少女から目を離さない。
「いつからそこに……」
少女は二人を見下ろしていた。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「…………ねえ」
その声は静かだった。
「あなたたち、誰?」
少女の視線が、二人の足元へ移る。
そこには、先ほどまでミカが倒れていた。
「……どうして、ここにいるの?」
少女の表情がわずかに曇る。
「ここは、私の大切な場所なのに」
周囲の空気が凍りつく。
「私の大切な人たちが眠っている場所なのに……」
少女は宙に浮かぶ二人を一瞥した。
「どうして、勝手に入ってくるの?」
カミラは思わず息を呑んだ。
目の前の少女は、怒っている。
それも、自分たちが想像していたような怒りではない。
大切なものを踏みにじられたことへの、純粋な怒りだった。
「……シド」
「分かっている」
二人は理解していた。
ここで下手な行動を取れば、自分たちも無事では済まない。
そして何より――
目の前の少女が、自分たちの知る念能力者とはまるで違う存在であることを。
「……どうして、勝手に入ってくるの?」
少女の声が静かに響く。
カミラは少女を警戒しながら、ゆっくりと口を開いた。
「……なあ、あんた。まずは話を聞いてくれへんか?」
「話?」
「せや。わいらはハンター協会から調査を依頼されて来たんや。別にあんたの大切な場所を荒らすつもりやなかった」
「そう」
少女は興味なさそうに返した。
「でも、もう荒らしたよね?」
「っ……!」
カミラは言葉に詰まった。
少女の視線が、ミカの遺体へ移る。
「その子も、あの結晶に触った」
「……あれは、うちの仲間が能力で調べようとしただけや!」
「だから?」
少女は首を傾げた。
「調べるためなら、何をしてもいいの?」
「それは……」
「私の大切な人たちが眠っている場所なのに」
少女の声が少しだけ低くなる。
「あなたたちは、何も知らないまま踏み込んできた」
その瞬間、シドが一歩前へ出た。
「……お前が、この大陸を凍らせたのか?」
少女はシドを見た。
「さあ。どうだろうね」
「とぼけるな。これだけの念を発している存在が、お前以外にいるとは思えない」
「ふうん」
少女は少しだけ目を細めた。
「あなた、よく見えているんだね」
すると、宙に浮いていたヴァルクスの頭部とニコロの遺体が、ゆっくりと少女の背後へ移動した。
「な、何をする気や……?」
「別に」
少女は淡々と答える。
「ただ、ここに置いておくのも邪魔だから」
そして、二人を見つめた。
「ねえ。あなたたちは帰るの?」
カミラは答えられなかった。
帰りたい。
しかし、仲間を置いていくわけにもいかない。
それに、ここで少女を刺激すれば、全員が無事に帰れる保証などなかった。
「……仲間を連れて帰らせてくれへんか」
少女は少し考えた。
「死んだ子たちを?」
「……ああ」
「どうして?」
「仲間やからや」
少女は不思議そうにカミラを見つめた。
やがて、小さく息を吐く。
「……そう」
その表情から、先ほどまでの怒りがほんの少しだけ薄れた。
「じゃあ、連れて帰ればいいよ」
ただし、と少女は続けた。
「もう二度とここには来ないでね」
その声は、お願いというよりも決定事項を告げるような響きだった。
カミラとシドは、しばらくその場から動けずにいた。
目の前にいる少女は、見た目だけなら自分たちよりもずっと幼い。白銀の髪に、透き通るような肌。雪景色に溶け込んでしまいそうなほど、色の薄い姿をしている。
しかし、そんな外見に惑わされるほど、二人は経験の浅いハンターではなかった。
目の前の存在が、自分たちとはまるで違う次元にいることは嫌でも理解できる。
ミカは結晶に触れただけで命を落とした。
ヴァルクスとニコロも、気づいた時にはすでに命を奪われていた。
そして何より、少女からは敵意を向けられているというのに、こちらを圧倒するほどの余裕が感じられた。
カミラ「…………」
シド「カミラ」
小さく名前を呼ばれ、カミラはわずかに視線を動かした。
シドは少女から目を離さないまま、ほんの少しだけ顎を引く。
これ以上、刺激するな。
言葉にしなくても、その意図は十分に伝わった。
カミラ「……分かった。連れて帰らせてもらうわ」
少女「うん」
あまりにもあっさりとした返事だった。
まるで、二人がどうするかなど最初から分かっていたかのように。
少女「その子たちも、連れて行っていいよ」
そう言って、少女は宙に浮かんでいた亡骸へ視線を向けた。
カミラは一瞬だけ表情を曇らせる。
カミラ「……おおきに」
少女「お礼を言われるようなことはしてないよ」
カミラ「それでもや。連れて帰ることを許してくれたんは、あんたやからな」
少女「…………」
少女は何も答えなかった。
ただ、カミラの言葉を聞いているようだった。
その間に、シドは慎重にミカのもとへ歩み寄る。少女の視線がこちらに向いていないことを確認しながら、静かに彼女の身体を抱き上げた。
シド「……ミカ」
返事はない。
当然だ。彼女はもう、この場所で命を落としている。
シドは一度だけ目を伏せると、彼女を傷つけないように抱え直した。
一方、カミラもヴァルクスとニコロの亡骸を回収する。
仲間を失った悲しみも、怒りも、今は胸の奥に押し込めるしかなかった。
ここで感情に任せて動けば、残された自分たちまで帰れなくなる。
それだけは避けなければならない。
カミラ「……なあ」
少女「なに?」
カミラ「ここで、ずっと一人なんか?」
少女「うん。ずっと一人だよ」
少女は迷うことなく答えた。
その声に寂しさはなかった。少なくとも、カミラにはそう聞こえた。
カミラ「……寂しくないんか?」
少女「どうして?」
カミラ「いや、こんな広い場所にずっと一人でおるんやろ?誰とも話さんのも、退屈やないんかなって」
少女「ふふっ。変なことを聞くね」
少女は小さく笑い、建物の奥へと視線を向けた。
少女「ここには、私の大切な人たちが眠っているから。私は一人でも、独りぼっちじゃないよ」
カミラ「…………」
少女「それに、私は一人でいることには慣れているからね」
その言葉はあまりにも自然だった。
まるで、それが当たり前であるかのように。
カミラは少女の表情を窺ったが、そこから寂しさや悲しみを読み取ることはできなかった。
ただ、長い時間を一人で過ごしてきたのだろうということだけは伝わってきた。
カミラ「……そっか」
少女「うん」
シド「カミラ。そろそろ行くぞ」
カミラ「ああ」
二人は仲間の亡骸を抱え直し、出口へと向かおうとする。
しかし、カミラはその前にもう一度だけ少女へと視線を向けた。
カミラ「……あんた、ここを守っとるんやな」
少女「守っているというより、ここにいたいだけだよ」
カミラ「そうか」
少女「それに、ここは私の大切な場所だから。誰にも荒らされたくないの」
カミラ「……分かった。もう二度と来ん」
少女「うん。そうして」
カミラ「約束するわ」
少女「約束だよ」
カミラ「ほな、さいなら」
少女「さようなら」
二人は建物を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ハンター協会本部
永久凍土の大陸から帰還したカミラとシドは、休む間もなくハンター協会本部へと向かった。
本来、五人で出発した調査隊が二人だけで帰還した。その異常事態は、受付を通じてすぐに上層部へと伝えられた。
そして二人は、会長室へ呼び出されることとなった。
コンコン。
「失礼します」
扉を開けると、そこには会長のネテロと数名の協会関係者がいた。
ネテロ「おお、帰ったか。ご苦労じゃったな」
ネテロはいつもの飄々とした笑みを浮かべていたが、二人の姿を見た途端、その目つきがわずかに変わった。
ネテロ「……五人で向かったはずじゃが?」
カミラ「その件について、報告があります」
ネテロ「ふむ。まずは座りなさい」
二人は勧められた椅子に腰を下ろした。
しばらく沈黙が流れる。