love live!! そして彼女達の青春が始まる 作:二階堂吉四六
凛ちゃんとYAZAWAさんは次回、次次回です!
ライブが終わり、講堂には拍手が響く。小泉、後から来た星空、西木野。穂乃果ちゃんの友達はどうやら隣のクラスのヒデコ、フミコ、ミカの123トリオだった様だ。客席の間には黒髪ツインテールの見知らぬ3年生。僕も心から拍手をする。すると、入口から絢瀬が入ってくる。階段を降りると3人と同じ位の目線が置ける中段通路から、
「それで、どうするの?」
と冷たく言い放った。先程の生徒会室での会話が思い出され、内臓が冷たくなる。穂乃果ちゃん達は、彼女に何を伝えるのか。
「続けます!」
「何故?これ以上続けても、意味はないように思えるけど。」
「やりたいからです!」
奇しくもそのセリフは僕が絢瀬に伝えた言葉と似通っていた。続けて言う。
「私、今もっともっと踊りたい、歌いたいって思ってます。それはことりちゃんも海未ちゃんも……私、やってよかったって初めて思えたんです!今はこの気持ちを大事にしたい。もしかしたら、誰も応援なんてしてくれないかもしれない……見向きもしてくれないかもしれない……」
彼女の言葉が確かな力を持って僕に届く。
「でも、私達が頑張って、一生懸命頑張って、この思いを届けたい!今私達がここにいる、この思いを!」
そこにいる誰もがその言葉に心を打たれたように感じた。先程までの冷たさは鳴りを潜め、彼女が身を切るような思いで紡いだその想いが、心の奥底で暖かさを発していた。ここからは絢瀬の表情は伺い知れない。でも、絢瀬にもその気持ちが届いていれば、そう祈ることを止められなかった。
#10 樹ソノール
ライブは無事に終了し、下校の時刻が迫っていた。部活紹介を終えた生徒はどこか満ち足りた顔で家路に着く。後片付けを終えた3人が校門に向っている。それを後ろから追いかけて、
「お疲れ様!ライブ良かったよ!」
と告げる。3人は全く同じタイミングで振り返り、
「ありがとう!樹お兄ちゃん!」
「ありがとう!樹先生!」
「有難うございます!先生!」
と声を揃えて答える。3人は満ち足りているかのように、穏やかに微笑んだ。
「練習で苦労したステップが上手くいったんです!思わずガッツポーズしちゃいそうになりました!見ててくれましたか??」
「ああ、ことり、ちゃんと踊れてたな!良くやった!」
と手放しで褒める。
「お兄ちゃん!私も頑張ったよ!」
「ああ、キラキラしてたよ、穂乃果ちゃん。凄かった!」
今日くらいはペナルティは無くしてやろう。ライブ終わりはハイテンションになるものだし。
「園田も衣装バッチリ決まってたしな!」
「短いスカートでしたけど……3人でお揃いなのは少し嬉しかったですね。」
いや、普段から制服のスカート短いだろ、というツッコミは無粋過ぎるからしないでおくことにする。
三者三様の喜び。でも、そこには3人だけに共通する達成感があった。
「よし、今日は頑張ったご褒美だ!僕がグランツリーでパフェを奢ってやろう!」
と伝えると穂乃果ちゃんが目をランランと光らせて
「本当!!!やったー!!!!私、お母さんに遅くなるって伝えるね!!」
と喜び、携帯をポチポチ。ことりはその様子をニコニコしながら見ていて、園田は恥ずかしそうにしていた。
「ん?どうした、園田?あ、お家の方が厳しいのか?」
と聞く。他の町なので顔しか見たこと無いが、祭りの時に顔を合わせた厳つい道場主を思い出す。ただ、専ら僕より年配の人達が言うには、あそこの道場でほんとにマズイのは奥さんの方らしい。
「いいえ、男の人とパフェを食べるなんて初めてなので……」
思わず笑ってしまった。凛とした表情を見せていたのに、こういう所は子供なのだな、と思った。
「まぁ、部活の先生が食べ物奢るってよくあることだろ、グランツリーは僕の実家だし、気にすることないさ。さぁ、行こうか!」
元気良く伝えると3人を連れ立って、夕焼けが眩しい町へ足を向けた。
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「あら、樹くん。いらっしゃい。」
梓さんが迎えてくれる。店内にはチラホラとお客さん。常連さんもいれば見たことないお客さんもいる。
「こんにちは、梓さん。四人で。」
畏まりました、と朗らかに微笑むとカウンターに案内する。一番奥では奏が塗り絵をしているようだ。
「よっ、奏。元気してたか?」
と声をかけると、クルッとこっちを向いて、キラキラした顔でおにーちゃーん!と突っ込んでくる。ひしっと突っ込んできた奏を高い高いしてあげるときゃっきゃっと喜んだ。
「樹先生……」
と後ろを振り向くとことりが鋭い目つきでこちらを見ている。穂乃果ちゃんは目をウルウルとさせて、園田はどこか軽蔑するような目線でこちらを見ていた。
「ん?どうした?ほら、早く席につけよ。」
席へ彼女達を促す。その間も奏をあやすのに暇はない。
「樹お兄ちゃん……奥さんいたの??しかも子供まで……」
「しかも、あんなに大きなお子さんがいるなんて……不潔です……」
何か重要な勘違いをしている様だ。弁解しなければ!あのな、と口に出した瞬間、奏が、
「おねぇちゃんたちこそ誰よ!おにいちゃんはカナのおにいちゃんなんだから、おにいちゃんのことおにいちゃんって呼ばないでよ!」
と穂乃果ちゃんをビシぃッと指さす。穂乃果ちゃんはウルウル溜めてた涙をこぼしそうになりながら、
「樹お兄ちゃんは昔から私の事お世話してたんだからね!そんなぽっと出の小さい子にお兄ちゃんは渡さないんだから!」
おい、ぽっと出ってなんだ。実の妹だぞ。半分しか血は繋がってないが。
「私……樹先生に奥さんがいるなんて知りませんでした……お母さんは『独身だ』って言ってたのに……」
ことりちゃん、残念!義理の母です!確かに見た目若いけど!
常連のおじさん方から
「よっ!樹くん!色男!」
と茶々が入り、店の中は爆笑の渦に巻き込まれた。
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「はっはっはっ、そんなことがあったのか、いや、その場に居たかったねぇ。」
と僕の父でもあり、グランツリーのマスターである神波 崇は盛大に笑った。
「「「すいません……」」」
と3人は恥ずかしそうに言った。
「ほんとだよ……恥かいたわ……」
僕も負けず劣らずしょんぼり。いや、なんか最近女難の相出てないか?厄祓いしとくべきだったか……
「それにしても、穂乃果ちゃん、久しぶりだねぇ。最後に来たのは二年前か。」
とどこか懐かしむような表情の父。
「あの時は『えっ……樹お兄ちゃんアメリカいっちゃったの……?』って泣きながら言ってたなぁ。」
「あああああ、やめてよ!おじさん!お兄ちゃん、そんなこと無いんだからね!」
とまたしてもテンションage↑。すいませーん、sage↓進行でお願いしマース。
隣でふふーんと奏がどこか胸を張りながら言う。
「ほのかちゃん、おにいちゃんがいなくって泣いてたんだー。カナはちゃんとガマンできたよ!」
嘘つけ、お前覚えてないだけだろ。意外なことに奏と穂乃果ちゃんは面識が無かったようだ。まぁ、梓さんが店を手伝ってるのは奏が保育園に行っている昼間だけだし、週末は家でゆっくりしてるみたいだし。どうやら父は僕が幼い頃一人で家で寂しく過ごしていたのを気にしていたらしい。母はこの店の専属ピアニストだった。自然と僕は夜営業の時は一人家で過ごすことが多かった。といっても、小学校中学年になる頃には大抵の事を一人でこなすようになっていた僕は「寂しい」っていう感覚は無かったのだが。
チョコレートパフェ大盛りを3人は美味しそうに食べる。ローストビーフとともにうちの名物だ。世界広しといえどもパフェにトッピング大盛りがついているのはうちの店くらいだろう。そういえば以前某カフェでベンティアドショットヘーゼルナッツバニラアーモンドキャラメルエキストラホイップキャラメルソースモカソースランバチップチョコレートクリームフラペチーノを頼んだ時は死んだ。軽くタバコ二箱分くらいの高さのコーヒーとは名ばかりのパフェが出てきた。甘すぎて糖尿になるかと思った。
「そういえば、この店ってジャズの生演奏があるんですよね?」
と園田。ことりがすかさず
「樹先生も弾くんですか?何かお願いします!」
と楽しそうに言う。仕方がないな、と思いながら、内心は心が躍る。先程のライブの熱が冷めやらないので僕も1曲弾きたかったのだ。
「と、お姫様達が言っているんだけど、大丈夫?親父殿。」
「構わんよ。今日の演奏は20:00からだから、少しは弾ける時間はあるだろう。」
「と、マスターが言ってるので、御好意に甘えて何曲か披露しようか。どんな曲がいい?」
とウキウキしながら聞く。すると、穂乃果ちゃんが、
「私達のことを応援する歌!」
奏が
「お星様の歌!」
と続ける。なるほど、と言うとあの曲か。OK、と伝えると奥のグランドピアノに座る。まずはいつも通り、あの曲を。
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♭10 神波樹と『Someday my prince will come.』
緩やかな音と共に、どこか悲しいメロディ。いつか王子様が、と名付けられた曲。暫くすると、一転、明るい音が響く。
「凄い……これって確か白雪姫で使われてた曲ですよね。」
という疑問にマスターが答えてくれる。
「おっ、海未ちゃん、良く知ってるねぇ。そう、この曲は樹の十八番なんだよ。絶対この店で演奏する時はこれから始めるんだ。」
なるほど、彼にとってのスタンダードナンバーという訳ですか。
「絶対ですか?何かこの曲に思い入れがあるんですか?」
「そういえば樹お兄ちゃん絶対この曲弾くよね。何か理由あるのかな?」
と、ことりと穂乃果。マスターに目を向けるとどこか遠くを見るように、
「いや、この曲は実は前のカミさん、つまりあいつの母親が好きだった曲でね。あいつはそれをずっと引き続けてるんだ。もう弾かなくていい、って言ってもあいつは頑なに。多分、思い出を無くさないようにしているのかな。」
改めて先生の方を見ると、流れる曲と同じように楽しそうに、悲しそうに弾いている。いつか、先生の言葉でその理由を聞きたい、そう思ってしまった。
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始めの曲を弾き終わり、リクエスト。彼女達を応援する為の、星に願う曲。
When you wish upon a star.
『もし、君の心が夢を追うなら、遠慮しなくていいんだ。願いを叶えたい人は皆星に祈ってきたんだ。』
彼女達を思いながら弾き、歌う。気分が乗っている時は歌付きの曲をチョイスする事がある。今日はノリノリだ。ゆったりした曲調を一転。走るように指を滑らせる。
『運命の女神は優しい。願いが叶うように、願う人を守ってくれる。』
彼女達を守るのは果たして誰なのか。出来るならその一端でも僕に任せて欲しい。
『運命はいつも突然にやってきて君のことを守ってくれる。』
そう、彼女達のライブを見たとき、僕の運命はやってきた。
『星に祈れば、願いはかなうんだよ。』
かくあれかし、と高らかに弾き、歌う。
弾き終わると店中のお客さんが拍手をしてくれた。3人も惜しみない拍手をくれる。僕も彼女達に感謝するように、自分の演奏を称えるように、手を叩いた。
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