love live!! そして彼女達の青春が始まる   作:二階堂吉四六

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出来ました。投稿します!


♯11 凛ブリアン

ゴールデンウイークの4日前、生徒は休みへの期待でソワソワし始める。あるものは旅行の計画を、あるものは部活の大会への意気込みを。新入生歓迎式典が終わり、新入生が入部し、ある程度メンバーが揃ってた各部活。しかし、未だに入部を決めていない生徒がいるーーーー西木野真姫、小泉花陽、そして、星空凛だ。生徒会に提出された部活動参加名簿を見ながら考える。前者2人はともかく、星空は『やりたいこと』があるのか、と。

こんなに星空の事が気に掛かるのは何故なのか。小泉の手を引く彼女が、ライブの時に見せた少し寂しげな様子が気にかかったからか。外は桜も散り、緑が目立つようになった。花は盛りを過ぎても、次の年の満開の頃を思われ、焦がれられる時がある。僕も、今は隠れている星が、雲から出てくる時を待ち侘びているのかも知れない。

#11 凛ブリアン

「ねぇ。樹。今年のゴールデンウイークの予定は?」

聡子がそう声をかけてきた。

「親父達が旅行に行くから、その間グランツリーのマスター代理。」

父親は奏に甘い。某関西のテーマパークに奏が好きな魔法使いのアトラクションができるとかで連れていく計画を立てているらしい。俺も行きたい。ウィンカ゛ーディアムレヒ゛オーサー。ゴールデンウイークの前半四日はそれで潰れる。少し残念そうな様子の聡子。

「実は私の叔母が後半三日の初日にレストランの予約してたんだけど、急に行けなくなって代わりに行かないか、って言われたの。お金は向こう持ちだし、折角ならどう?」

ほう、タダ飯はアツイがわざわざ代わりに行くか?

「その日は空いてるけど、何処に行くんだ?場所によるぞ。」

「新宿にある三ツ星。」

おい、ディナーで1人五万は覚悟しないと行けないところやないか。ドレスコードありのやつだろ、そこ。

「ありがとうございます!行きましょう!当日のエスコートは任せて下さい!」

と勢いよく答える。マジ持つべきものはお嬢様の友人。ありがたやーありがたやー。

「あら?楽しそうなイベントですね。是非私も行きたいです。」

と声をかけて来たのは京子さん。ちょっと空気が冷える。聡子は挑発的な目線を向け、

「残念でした♪実はペアで予約済みなの。三ツ星に女同士で行くのも変でしょ?京子とはまた今度、気軽に行けるところに食べに行きましょうよ♪」

音符飛ばすな。余計冷えるだろ。そしてお前が気軽に行けるところは十中八九俺んとこだろ。京子さんを見ると、ニコニコしているけど笑っていない。ことりといい、女の子のこの表情は迫力ある。冷や汗がタラリ。すると京子さんはこちらを向いて、

「樹さん。じゃあ、その次の日一緒に映画見に行きません?この間『お礼は必ずします。』って言ってくださったでしょ?」

あ、ビーフシチュー。京子さんにはそういったんだっけ。聡子には……

「なにそれ、言われてないんだけど。私……」

見ると怒ったような悲しんだような表情。これはヤバイ。

「聡子にもそのうちするつもりだったって!」

「じゃあ、最終日どっか連れてってよ!」

顔を膨らませて怒る聡子。ヤメロ!少し可愛いだろうが!

「あ、最終日は勘弁してくれ。」

「何よ!何かあるの!」

「墓参り、行くんだ。」

そう、皆が浮かれるゴールデンウイークは僕の母の命日なのだ。若くして亡くなった、最愛の母の。アメリカに行っていた2年間、僕は一度も日本には帰ってこなかった。大した不孝者だが、今年は日本にいるのだから会いに行きたい。

母は幸せだっただろうか。30年の人生の中で、楽しいと思える瞬間はどれくらいあったのだろうか。後5年で、僕は彼女の年齢を追い越してしまう。

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放課後、溜まっていた生徒会関係の書類を整理し終え、帰宅していると、グラウンド近くの階段に座り込み、陸上部の練習をぼんやりと眺めている星空がいた。その横顔がどこか切なそうで気にかかった僕は思わず

「陸上部、入らないのか?」

と声をかけた。

「神波先生……」

「今日は小泉は一緒じゃないんだな。珍しい。」

「そんないつも一緒にいるわけじゃないです。今日は西木野さんの家に用があるみたいで……」

とうつむく星空。思い詰めたような顔。続く言葉を待つ。

「かよちんはーーーー」

ん?と相槌を打つ。

「昔からアイドルになりたかったんです。小学校の頃からずっとアイドルを追いかけて、この間先輩達のライブをみて、何かを考える事が多くなりました。多分、アイドルをやってみたいって思ってるんじゃないかな……」

彼女は友達思いのいい女の子だ。小泉が身の振り方を決めていない今、彼女が何かを始めるわけには行かない、と思っているんだろうか。

「へぇ、成程。通りでチラシの前でぼおっとしてた訳だ。」

知ってたけど。

「先生、かよちんはアイドルに向いてると思いますか?可愛いし、歌も上手だし。」

「向いている、向いてない、は僕には分からないな。でも、応援はしたくなるよ。そもそも人は何かになれるものじゃない。何かになるんだ。」

そう、人は自分の立場を決めた時に始めてその立場に相応しい人格を作る。小泉が『アイドルになりたい』と願えば、それは叶うはずだ、と思う。

「で、星空はどうなんだ?」

「えっ?」

「星空は何になりたいんだ?」

「凛は……凛は……」

うつむく星空。その視線は何を捉えているのだろうか。彼女もまた、小泉のようになりたい存在があるのだろうか。

「先生、凛はアイドルになれますか?女の子っぽくなれますか……?」

思わず耳を疑う。まさか彼女がアイドルに憧れているなんて。

「はははははっ!」

笑ってしまう。まさかそんな事があるなんて。小泉がアイドルに憧れているのは、何となく分かっていたが、それが星空もなんて!彼女は傷ついたように、

「そうですよね……凛がアイドルなんて変ですよね……」

と消え入るような声で言う。

「ごめん、ごめん、急に星空が変な事言うから。なぁ、星空。君達くらいの年で何かになれない、なんてことないよ。アイドルもそう。星空がアイドルを目指すんなら、応援するよ。なれると思う。」

星空は小泉にコンプレックスを感じていたのだ。か弱く、たおやかな彼女の、その少女性に。その意識が少女しか持ち得ないのに。

「それに星空、君は十分すぎるくらい可愛い女の子じゃないか。」

そう言うと星空は泣きそうになりながら

「ありがとうございます……」

と呟いた。

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ゴールデンウイーク直前の日、2時間目が終わり、職員室に帰ろうとすると、廊下で小泉と西木野、そして星空がいちゃついているのが見えた。星空はこちらを見ると、

「神波せんせーー!!」

とこちらに小走りで来る。

「どした?今日も元気だなー、星空は。」

「それが凛のいいとこだからにゃ~。あのね、先生!実は真姫ちゃんも、かよちんも、凛もスクールアイドルをすることになったんです!」

その報告に思わずびっくりする。

「小泉はともかく、西木野もか。どうしたんだ?」

と目線を向けると、西木野が照れくさそうに、

「凛と花陽が『どうしても』って言うから仕方なくよ!」

と顔を背けた。ツンデレ頂きました!!

「でも、凛ちゃんも、真姫ちゃんも一緒に入ってくれて嬉しいです!!」

と小泉。ふと彼女が眼鏡をしていないことに気付く。

「小泉、やっぱり眼鏡ない方がいいな。」

と笑みを浮かべながら言う。いつかの内気な彼女は何処に行ったのか、明るく、

「はいっ!!」

と答えた。人は何かになる。彼女達もまた、嘘偽りのない、本当の彼女達になるための一歩を踏み出したのだ。3人はお互いの顔を見合い、笑っていた。その穏やかな一幕に、彼女達の未来が満天の星空のように輝かしいものであれば良い、そう、思った。




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