love live!! そして彼女達の青春が始まる   作:二階堂吉四六

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出来ました!投稿します!


#14 μ’s,№2, 『un jour dans notre avenir』

土曜日の正午、働き詰めで疲れた体を癒すため、犬のように寝ているとそれを妨げるような一本の電話。着信画面を見るとそこには『グランツリー』の表示。珍しい事もあるものだ、と思い、電話に出る。

「もしもし……」

寝起きなので声が掠れて少し不機嫌に聞こえたか、まぁ、親父相手だからいいだろう。すると電話の向こうでガタガタッという音が聞こえたかと思うと、

「おとーさーん!!おにーいちゃん、おこってるーー!!!」

と半泣きの声が聞こえた。なんだ奏か。

「カナちゃん!カナちゃん!お兄ちゃん怒ってないよー!!!」

電話の向こうの奏に全力で主張する。年の離れた妹というものは可愛いものだ。ましてや、奏は世界で一番可愛いと言っても過言ではない。ご機嫌を損ねて、「お兄ちゃんなんかキライ!」なんて言われた日にはうっかり自殺してしまう。

「ほんと……??」

まだ半泣きの奏。

「ほんとだよー、今起きたばっかりだから、ちょっと声が変になっただけだよ。で、奏、どうした?」

「えーとね、ほのかちゃんとまきちゃん?がお店にきて『先生いますか?』って!はやく来てあげて!」

と、はつらつと言う。どうやら僕はつくづく休みが取れない人間らしい。

「OK、なら穂乃果ちゃんと真姫ちゃんに『三十分後に行くから、何か好きな物頼んでゆっくりしてな』って伝えてくれる?」

「分かったー。ほのかちゃーん、まきちゃーん、お兄ちゃんが好きなのたんのでまってて、って言ってるよ!」

すると後ろから「やったー!」と元気な声。こんな休みの始まりも悪くはないか、と思いながら、電話を切る。 空はどうやら雲一つない、快晴のようだ。

#14 μ’s,№2, 『un jour dans notre avenir』

「はぁ、また編曲を、ですか。」

グランツリーについてカウンターに座り、パフェを頬張る穂乃果ちゃんと紅茶を優雅に飲んでいる西木野を発見すると穂乃果ちゃんの隣に座る。席について早々に言われたのはまたしてもオリジナル曲の編曲だった。

「そうなの!昨日皆で話し合って次の曲は皆がセンターの曲にしよう!って盛り上がったの!で、海未ちゃんと真姫ちゃんが歌詞と曲を作ってくれたんだ!」

「なるほどー、それはすごいねー。」

もはや驚愕である。思わず棒読みになってしまう。この短期間に曲を作成してしまう西木野の才能には脱帽だ。

「いや、西木野はホントに凄いな。だって、曲考えたの昨日の晩だろ?よくフレーズ思いついたな。」

と西木野を褒めると

「そんなこと無いわよ。いい曲が思いついたら後は譜面に起こすだけだから。」

と言い放つ。顔をよく観察すると、少し誇らしげな顔のなかに、目の下のクマが目立つ。どうやら夜更かししたみたいだ。クスリ、と笑いながら

「そっか、でも、世の中には曲を作りたくても作れない人も大勢いるから、それでもすごいよ。」

と正直に伝える。どうやら西木野は照れているようだ。真っ赤な顔をしてプイ、と顔を背けた。

「それってすごいの?」

と、西木野の隣に座っている奏が西木野を見上げながら言う。

「そうだよー、カナちゃん、真姫ちゃんはすっごいんだから!歌もピアノも上手いんだよ!」

「へぇーー!!すごーいーー!!」

と西木野を褒めちぎる穂乃果ちゃん。キラキラした目で西木野を見る奏。続けざまに、

「ねぇねぇ、まきちゃん!ピアノ弾いてよ!」

と奏はおねだりする。

「ええっ!?なんで私が弾かなきゃいけないのよ!」

と突っぱねる西木野。すると半泣きの奏が

「まきちゃん、ピアノ弾いてくれないの……??」

と言う。うっ……、と言葉に詰まった西木野に、

「いいじゃないか、西木野。今回の曲もまだCDの中だし、僕も聞きたいな。弾き語りしてくれよ。」

と提案する。

「でも、お店のピアノだし……ジャズ以外弾いたら雰囲気壊れちゃうんじゃないの……?」

と渋る西木野に、父が

「お嬢さん、弾いてやってくれないか。うちの子も楽しみにしてるし。ここは確かにジャズ喫茶だけど、ジャズ以外の音楽を否定してはいないよ?」

とダメ押しをした。

「もうっ!仕方ないわね!1回だけよ!」

と真っ赤な顔で西木野は答える。このツンデレさんめ。

店の奥にあるグランドピアノの所まで行くと鍵盤の蓋を開け、キーカバーを取る。お客さん達は突然ピアノを弾こうとしている美少女に注目しているようだ。

力強いタッチで始まった曲はまたしても素晴らしいものだった。これからの未来を、そこにある思いを皆に伝えたい、その気持ちが詰まった曲。西木野の歌声に乗って、園田が書いたであろう歌詞が伸びやかに世界を広げる。μ’sの7人はこの曲のように、これからもっと大きくなるのだろう、という予感を感じさせた。

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「もう!すっごく恥ずかしかったわ!」

グランツリーを出て、3人で道を歩く。2人を『穂むら』に送るついでに、ほむまんを買って来い、という指令を奏から受けた僕はプリプリ怒っている西木野に責められた。ただ、その表情はまんざらでもない。

「いいじゃない、真姫ちゃん。お客さん、皆喜んでたよ!」

とウキウキの穂乃果ちゃん。オリジナル曲は2分弱の演奏だったが、お客さんは大喜び。しまいにはアンコールが飛び交い、それから西木野は数曲披露することとなった。特に僕もギターで飛び入り参加した『情熱大陸』は大盛り上がりを見せた。奏も大喜びだった。

「楽しかったよ、西木野、またセッションしようぜ!」

「いやよ!先生が走り過ぎるから合わせるの大変だったんだから!」

「それでもついていけたじゃないか。楽しかっただろ?」

と言うと、ぐぬぬ……という顔をする西木野。どうやら楽しかったようだ。

「……いいなぁ。」

と寂しそうに穂乃果ちゃんがポツリ、ともらす。

「穂乃果も、楽器、習ってたら良かった……そしたら、お兄ちゃんと真姫ちゃんと一緒に演奏出来たのに……」

と言う。西木野は少し申し訳なさそうな顔をするが、僕は逆にテンション高く穂乃果ちゃんに伝える。

「穂乃果ちゃん、人間が最初に手に入れた楽器ってなんだか知ってる?」

「……いや、分かんない。」

「声、だよ。人間は他の動物と違って色々な音階の声を発生させる事が出来た、と言われているんだ。だから、穂乃果ちゃんが僕らとセッションしたい、っていうなら、歌を歌おう。そしたらピアノなんてなくても一緒に演奏できるよ!」

その言葉を聞くと穂乃果ちゃんの顔が華やいだ。

「うん!じゃあ、穂乃果が高校卒業したらグランツリーで歌わせてね!」

「おう、いいよ、一応ジャズがメインだからジャズの曲練習しないとね!」

と言うと、穂乃果ちゃんは朗らかに笑うのだった。

「そう言えば、この編曲っていつまでにやったらいいの?」

肝心要の締切の事を聞くのを忘れていた。西木野にもらったCDを持ち上げながら聞く。すると、西木野が

「As soon as possible.明日の朝とか最高ね。」

と、僕の休日を奪う最高のセリフを吐いた。まじか。確かに予定はないけれども。絶句していると挑発的な顔をした西木野が

「何?出来ないんですか?」

と言った。少しカチンと来た僕は

「オーケー、グウの音も出ないような完璧な編曲をしてやるよ。明日の10:00に神田明神集合な。そっから学校行って踊ってもらおうじゃないか。フリは出来てるのか?」

「今まさに、ことりちゃん、にこ先輩、花陽ちゃんが考えてくれてるみたい!ありがとう!お兄ちゃん!」

穂乃果ちゃんが感激したように笑ってお礼を言ってくれる。やばい、もしかして奏より可愛いかもしれない。僕ははやく帰って編曲作業に入ろうと心に決めた。

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無事日曜の10:00までに編曲を終わらせた僕は寝起きのテンションのまま神田明神へ。アイドル研究部の皆に叩きつけるようにCDを放ると皆大喜び。そのまま学校へ。屋上で軽くダンスと曲を合わせると皆で合せる作業に入る。話を聞くと今度の部活紹介の最後にこの曲のpvを収録するらしい。衣装とかどうするの?と聞くと、ことりデザインのものを皆、総出で作るようだ。僕も作ってくれ、と頼まれたが、僕は裁縫が全く出来ないので断らせてもらった。その代わりそのpvの動画編集を任された。おい、いつやるんだ、その作業。ああ、残業ですね、分かります。

そして週明け。東條のヘルプを借りながらpvを無事撮影。生徒会に提出する手筈になった。ついでに言うと、あまりにもpvの出来が良いみたいなのでネットにもアップする事が決まったようだ。

アイドル研究部の動画が提出されたことにより、全部活の紹介動画が出揃い、オープンハイスクールの進捗表に○がまた一つ増えた。その日も生徒会室に向かい、状況報告を受けようと思ったら、中で東條と絢瀬が話し合っていたようだ。半開きになったドアの隙間から声が漏れてくる。

「希、何を言ったの?」

「ウチは思った事を言っただけや。誰かさんとちごうて。もう認めるしかないんやないの?エリチが力を貸せばあの子らはもっと……」

「じゃあ、希が力を貸してあげれば!?」

 

「……ウチやない。カードが言ってるんよ。あの子らに必要なのは、エリチや。」

「ダメよ……」

どこか痛ましい声で言う絢瀬。その表情はドア越しには伺い知れないが、ただ一つ分かる事がある。彼女は彼女で踏み出せない何かを抱えているのだろう。人には声がある。歌うことも、伝えることも本質は変わらない。ただ、雨音がうるさい日にはどうしてもその声は聞こえなくなってしまう。絢瀬の心には、まだ雨は降り続いている。これからのいつかに、彼女に傘を差し伸べることのできる誰かが現れることを願いながら、窓を見る。外は憎らしいくらいに快晴だった。

 

 

 

 




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